IS〜愛しき貴女へ捧げる我が人生〜   作:TENC

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episode. 8

同日。数十分程前。

 

 

第一アリーナの屋根の上で、二つの人影が下の賑やかさを他所を静かに風に当たっていた。

 

 

「そんでアリア。もう一度確認するが、敵さんは何体だ?」

 

「四体です。篠ノ之博士の事ですから、他にある事もあり得るかと思います」

 

「そうだな。おい博斗」

 

アリアに確認を取った後、俺は今着けているバイザーから博斗に通信を繋がる。

 

「一応もう一度聞いとくが、どんぐらいまでやっていいんだ?」

 

『人を殺さなきゃ好きにやって良いよ。刃は、怪我までは許容できるから』

 

「了解。まぁ、無人機なんだろ?」

 

『何とか手に入れた情報ではね』

 

俺とアリアがこうしているのは、博斗が偶々見つけた篠ノ之束のラボから、俺とアリアが暴れて生まれた数秒の隙に手に入れた無人機ISの情報を見つけたからだ。

ISの無人化は全く開発されていない技術だったが、そんな事で驚いてはいけない。

あのヤブ医者の事だ。篠ノ之束が襲撃する事も知っているだろう。昔喧嘩した悪友と言えど中高共に過ごした仲間だ。

そんな奴が、危険になるかもしれないんだ。阻止するに決まっている。

 

『僕は、アリアのサポートはするけど君にはいるかい?』

 

「いや問題ない。神楽を発動させれば、通常時間の通信じゃあ意味ないからな」

 

『了解。それじゃあアリア。君が守ってもらう事を伝えるよ。一つ、学徒達を危険に晒さない。二つ、やる事をやったら直ぐに撤退する。以上だよ』

 

「Yes.MyMaster」

 

俺とアリアと博斗の準備が整うと、アリアは目を瞑り俺は神楽を腰に構え精神を統一する。

 

接続開始(リンク・オン)

 

戦闘形態(バトルモード)移行(スタンバイ)

 

二人同時にそれぞれの掛け声を言う。

俺の神楽は、刀身が初期動よりも蒼く光り。アリアは、メイド姿からISの様に機械的だがスマートな感じへと変化する。

 

「確認した四体は、俺が相手になる。けど、取り逃がしたら様子を伺った後に自分で判断して対処」

 

『了解いたしました。此れより任務を執行します』

 

機械音となったアリアの言葉と共に、俺はアリアが確認した敵の方へと大きく跳躍して突撃した。

 

「さぁ、開戦と行こうか!」

 

 

 

“Anti・Unreasonable・Weapon”通称AUWの仕組みを簡単に説明すると、先ず使い手になる者の細胞にAUWと適合する半電子体内機能増進細胞を組み合わせ身体と適合させる。

そして、接続開始の掛け声と同時にその細胞とAUWが合致すると、AUWは内臓された半永久機関が起動し、使い手は体内機能増進により身体が活性化する事で、人智を逸した力を手に入れられる。

 

「そう言えば刃が言ってたなぁ‥‥」

 

圧倒的な身体能力を持ち人外と呼ばれる統真だが、事戦闘に関しては刃の演算処理戦闘を上回る程の実力を持つ。

 

「人間離れした反射神経と身体能力、そして無意識の行動をコントロールする。そんな統真にAUWを与えたら‥‥‥」

 

細胞によって活性化されたのは、何も筋肉や神経だけではなく脳もだ。

そして、統真の唯一の弱点と言えば頭が残念だと言う事。

けど、活性化される事で人並み以下の情報処理能力である統真でさえ、人並み以上の処理能力を得られる。

 

「僕のAUWが凄いのか、其れを使いこなせている統真が凄いのか」

 

目の前のモニターで戦っている()()()()()()()()統真を前にして、ため息を吐きながら頬づえをつく。

 

 

「複合抜剣術!蛇頸雲!」

 

鞘から抜かれると同時に斬撃を飛ばす。飛んだ斬撃は、蛇の首の様にしなりをつけると一気に伸び、無人機に一撃を浴びせる。

 

一機に一撃を浴びせた所で、別の一機からの砲撃を避ける。

 

「差異の目!」

 

一定テンポで斬らず、態とずらして斬りつけ更に脚のバネを活かして後ろに軽く跳躍する。

 

「はっはっー!バレてるぜ!」

 

にしても、やっぱ一対一なら兎も角として多対一じゃあ、通常だと無理があるな。

仕方ない。篠ノ之束が見ているかもしれないからあんまり使いたくなかったが、やるしかねぇな。

 

「自由断絶」

 

小さく呟くと同時に、俺の眼に入る世界全てがスローモーションになる。

俺以外が感じる時間は、僅か一秒足らず。だが、使用者の俺からすれば約その60倍。時間にして1分!

 

切り抜き、居合、唐竹、閃光、頭取。時間の許す限りありとあらゆる剣技を放つ。

 

「僅か1分。されど1分。達人は、刹那の時間に4度斬り伏せる」

 

カチンと刀身を鞘に収めると、スローモーションの様にゆっくりと動いていた時間が、徐々に元の時間へと動き出す。

 

「どうだ。魔法みてぇだろ?」

 

その呟きが誰に聞こえたかは知らないが、目の前に佇んでいた四体の無人機は、抵抗する暇もなく斬撃の嵐に見舞われ爆散する。

四体のコアが、完全に停止したのを確認して、一息ついた時だった。後方のアリーナの方から、眩い光りが見えた。

 

「クソが!もう一機隠していやがった!」

 

『接続を解除して!これ以上やったら、細胞が壊死するよ!』

 

「ちっ!アリア!」

 

『お任せ下さい』

 

クソッタレ。此処で、退場か。

まぁ、アリアと博斗の奴があっちに行ったんだ。大丈夫だろ。

頼んだぜ。

 


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