IS〜愛しき貴女へ捧げる我が人生〜   作:TENC

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今回は、一夏vs鈴の後半戦です。
が、殆んど双刃とセシリアの解説回です。

この回の箒は、少しアホの子だと思う(唐突)。
悪意は無いよ。善意も無けど。


episode. 7

「‥‥‥衝撃砲ってとこか」

 

「わ、分かるんですの?!」

 

「具体的な事は知らんがな」

 

一夏が、何か分からない攻撃を受けてから思考をフル回転させて出た答えを呟くと、観覧席で隣に座っていたセシリアは驚きの声を上げる。

 

「視覚的に捉えられないと言う事は、空気砲のように大気中の空気を使った強烈な風圧の様な物。此処まで考え切れれば、兵装としては衝撃砲が一番考えられる」

 

「前々から思っていましたが、双刃さんってかなり頭の回転が早いみたいですわね」

 

「まぁ、此れでも三年間学年一位を維持してたからな」

 

自慢する事じゃないが、学力は高いのだ。まぁ、あのマッドサイエンティストの野郎が本気出したら俺なんかよりもずっと頭良いんだがな。

 

「其れで、セシリアはアレが何か知ってるんだろ?」

 

「資料でなら見た事がありますわ」

 

セシリアの説明を聞くに空間自体に圧力をかけ砲身を生成、余剰で生じる衝撃をそのまま砲弾化して打ち出すと言う物らしい。

 

「特徴は、砲身も砲弾も全てが空気で出来ているため見えないと言う事と360度死角無しの射角ですわ」

 

「成る程ね。つまり一夏は、正面の鈴本体からの攻撃に加え360度何処から来るか分からない衝撃砲を警戒しながら戦わなきゃいけないって訳か」

 

「そ、そんな!」

 

絶望的なまでの不利に箒が、嘆きの声を上げる。

 

「対処は無い訳じゃ無いんだが、一夏に其れが出来るか分からねぇな」

 

「常に動き回ると言う事では無くてですの?」

 

「其れだと、エネルギー消費が激しいだろ。衝撃砲って言っても、空気で出来ているなら僅かにでも空間に歪みがあるはずだ。其れと、鈴は天才型の人間みたいだが流石に扱い慣れていないんだろうな。彼奴の視線の先に衝撃砲が放たれている」

 

多分、あの武装を使えこなせる熟練の操縦者。山田先生クラスだったら、態と視線で誘導させてから死角からの攻撃なんて事をしそうだが、鈴は代表候補生と言えど成ってからは日が浅い。

そんな奴が、癖のある武器を使いこなせるとは思えない。

 

「成る程、その様な手がありますのね」

 

「って言っても一番良いのは、俺がセシリアにやったみたいにやりたい事をやらせないだがな」

 

「あ、あの時の事を振り返らないで下さい!」

 

隣にいるセシリアを揶揄いながら、試合の様子を眺めると鈴には目立った外傷は無いが、さっきから避け続けていたのだろう一夏には、疲れが見えた。

一夏。こっからが正念場だ。お前の意思を見せてみろ。

 

そう思っていた時だった一夏が、攻勢に出た。

その行為は、前と同じだったが違った要因が一つだけあった。鈴が、一夏が前に飛び出ると同時にさっきまでの様に衝撃砲で打ち返すのでは無く。上に避けたのだ。

何も知らない奴から見たら其れが如何した。と言われそうだが、鈴の性格を考えればあり得ないのだ。

 

そこまで考えた所で、一つの要点に気づいた。

 

「一夏の奴。零落白夜(切り札)を態とバラしたな」

 

「なっ!?な、何故一夏はそんな事を!」

 

俺の言葉に箒は驚愕の声を上げる。

 

「零落白夜は、確かに強力だ。デメリット付きの諸刃の刃だとしてもそのデメリットを払拭する圧倒的なまでの力を持っている」

 

そして、そんな強力なまでのモノを持っている奴が突っ込んで来たら、人は如何する?

 

「‥‥成る程。だから凰さんは、先程の突撃に避けたのですね」

 

「?どういう事なんだ?」

 

俺が内心で呟いた言葉は聞こえていない筈だが、セシリアは如何やら気付いた様だ。流石は代表候補生。

けれど、箒を含めた周りの一組の学徒達は首を傾げている。如何やら、気付いていないらしい。

 

「分かりやすく言いますと。相手が、何でも貫く槍を持って突撃したら箒さんは、如何しますか?一般的な考えで」

 

「其れは‥‥当たりたくないから避け‥‥そうか!」

 

セシリアの言葉で、箒も他の人達も気付いた様だ。

 

「相手が圧倒的なまでのモノを持っていたら、人が咄嗟に取る行動は其れが当たらない様に避けるだ。織斑先生も言ってただろ?試合で一番の弱点は、無意識にする行動だって。世界最強と言われた織斑先生でさえ無意識の行動には、如何しようもない」

 

「そして、一夏さんは知ってか知らずか。零落白夜と言う最強の矛を態と晒すことにより、相手に無意識の行動させたと言う訳ですわ」

 

そして、無意識の行動の後ってのは多分、かなり人に余裕が無い状態。そんな状態で、ISは勿論の事。武装をマトモに使えるはずも無く。

 

内心でそう思っていたら、隙を見せた鈴に一夏が雪片弐型を払い一閃した。

 

「お見事」

 

「素晴らしいですわ!」

 

一夏の行動に、俺とセシリアが賞賛していると一夏と鈴を隔てる様に極光がアリーナに放たれた。

 

 

本当に博斗の警告はよく当たるものだ。

 

 

極光が止むと、アリーナの上空にはアンバランスな身体と腕のISが一機、佇んでいた。

 


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