にしても本当に難し過ぎだ!
「あんた、相変わらず主夫スキルの高さは健在ね」
「そ、そうか?俺としては、此れが普通だったんだが」
「あんたの家は、普通じゃ無いでしょ」
「まぁ、言われてみればそうか」
クラス対抗戦を来週に控えた週末。俺は、鈴と一緒に食事を作って学園の屋上で日向ぼっこをしながら、久々に会った友人との時間を満喫していた。
「俺の家は、両親が居なかったし、千冬姉も仕事とかで殆んど居なかったからなぁ」
「多分、あんたは普通の高校生よりも壮絶な家関係を持ってると思うわね。誘拐もされたんでしょ?」
「まぁな。てか、何で代表候補生になった事あん時に言わなかったんだ?」
「あんたに言っても、「代表候補生って何だ?」て言葉が返ってくるでしょ」
「うっ!」
俺の疑問に、まさに一度あった事を的確に返されて言葉を詰まらせる。
「てか、あんたセシリアだっけ?彼奴に初めてあった時、そう答えたんでしょ?双刃さんから聞いたわよ」
「は、ははは。まぁ、な」
「あんたは、口に出す前に頭で考えなさい。それで、一度大変な目に遭ったでしょ?」
「やめろ。アレは、思い出したく無い」
鈴の言葉で、中学時代のトラウマが蘇りその場で悶え出す。そんな俺を見て、笑いをこらえて居るのか肩を上下に撼わす鈴にムッとなるが、このトラウマの原因は俺にもあるので、何も言い返せない。
「確か、家が少し金持ちなだけの顔が残念な奴が高飛車って「私の様な綺麗な存在を観れた事に感謝しなさい」なんて言って、あんたが「何処が?」って言い返したんだったわね」
「言うなぁー!!!アレが、何気に一、二番目ぐらいに千冬姉に苦労掛けたんだよ!」
「まぁ、呼び出された時の千冬さん何とも言えない顔には、流石に同情したわね」
あの後、千冬姉には怒られたが、その時の千冬姉の言葉は何か歯切れの悪い感じだった。
「それより、いよいよって感じね」
「お前は、大丈夫なのかよ?」
「ふん。一年足らずで、代表候補生に選ばれた実力を舐めないで頂戴」
「そう言えば、そうだったな。まぁ、お互い頑張ろうぜ」
「ええ」
そう言い、二人立ち上がり拳を合わせて自分達の練習場所へと向かう。
対抗戦での相手は、その日に発表されるが誰が来ても全力でやるだけだ。
「統真。君には、アリアと一緒に対抗戦に行って貰うよ」
木陰で昼寝して居たら、近くに来た博斗が突然そんな事を言ってきた。
「そりゃ、突然だな。でも良いのか?あのヤブ医者に見つかったら、どやされるぞ」
ヤブ医者とは双刃の事だ。彼奴は、俺の事を人外と呼ぶ。
「そうなったら僕が何とかしてみるよ。けど、昨日言った事が本当に起きたら‥‥‥」
「その為の対抗策って事か。引き受けた。それで、何処までやって良いんだ?」
ISに対抗するんなら、AUWを使うだろう。なら、何処までやって良くてこれ以上はやってはダメの基準がある筈だ。
「生徒の人たちに被害が無ければ、好きにやって良いよ」
「随分軽いな」
「まぁ、その代わりに姿を隠して貰うよ。色々と面倒になるからね」
「了解」
さてと、そうと決まれば、筋トレでもして来ますかね。
「‥‥‥ん、寝てたのか‥‥‥」
昨日夜遅くまで考えていたら、いつの間にか寝ていた俺は、窓から入った日光で眼を覚ました。
椅子の背もたれにもたれかかって居た背を起こし、机に置かれたノートに眼を落とす。
「この数式だと確率は6割。この部分を4にすると7割9部。どれもこれといった決定的な物では無い」
無数に書き連ねられた数式を見て、頭を抱える。首謀者が、普通の人であるならば8割以上は予測出来るが、今回の相手はあの天災博士だ。
俺の頭で測れる訳が無い。
「けど、何もやらないだけマシか」
クラス対抗戦は来週だ。今日は早く寝よ。それに、何か物凄く嫌な予感がする。
まぁ、それに関しては予想できないでも無いな。
望むなら、誰も傷つかない事を願うばかりだ。