仮題:はぐれた子達は何を見る   作:ふじはる
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遅くなって申し訳ありません…


広がり続ける溝


サクラ達はあの後ジェームズを除いて遅れて授業に参加した。真耶はジェームズはどうしたのかとサクラに聞いてみたのだが「ブリュンヒルデに殴られて伸びてる」と返されて苦笑いしか出来なかった

「では、今までのところで何かわからなかった方はいませんか?」

「…………あの」

アクシデントはあったものの授業自体は問題なく進んでいき、授業の進行をしている真耶が生徒に確認を取ってみるが流石に初歩的な内容で、それもISについて女子生徒達が手を挙げることはなかったのだが、一夏だけが申し訳なさそうに手を挙げた。真耶は内心当たり前かと思いつつ一夏に微笑みかけた

「はい織斑君、どこがわからなかったんですか?」

「……全部です」

「…………え?う、嘘ですよね?」

「…嘘じゃないです、全部わかりません」

あまりにも予想外すぎる返答に真耶どころか女子生徒達も目を丸くして一夏の方を見た。真耶が「わ、私の進行のしかたがいけなかったのでしょうか…?」と涙目になったところで、授業の補佐として真耶の隣に立っていた千冬が口を開いた

「織斑、貴様入学前に配布された参考書はどうした?」

見てみると全員が開いている辞書の様に分厚い参考書を一夏だけが出していなかった。一夏は千冬から目を逸らしながら呟くように答えた

「…に、荷造りしてるときに古い電話帳と間違えて捨ててしまいましダアッ!!?」

言い切る前に千冬の出席簿が炸裂し、一夏は机に叩きつけられた。そして千冬はそんな一夏を見下ろしながら

「参考書は明日再発行するから一週間以内に全て覚えろ、いいな?」

「あ、あんな分厚いの一週間で覚えきれるわけ「いいな?」…」

千冬の威圧に耐えきれずに頷くしかなかった一夏だが、思い出したように顔を上げてサクラの方を見て声を上げた

「さ、サクラだって急に決まったんだしわからないよな!?」

「……」

「おい!返事ぐらいしろよ!!」

サクラは頬杖をつきながら参考書を見ており、一夏のことを完全に無視していた。一夏はそれが我慢ならなかったのかサクラに掴みかかろうとしたが、それよりも先にサクラがいつの間にか頬杖していないほうの手で一夏の胸ぐらを掴み、そのまま床に叩きつけていた。女子生徒達は小さく悲鳴を上げ、千冬も目を見開いた。一夏が叩きつけられた衝撃で咳き込んでいると、サクラが目線を参考書から外さずに口を開いた

「俺のことは名前で呼ぶなと言っただろ、一人目(ファースト)。それとこの参考書の内容だが俺とジェームズはここ(IS学園)に来る前に全て叩き込んできた。お前みたいなバカと一緒にするな」

「貴様!!一夏に何をする!!!」

「ッ!!止めんか馬鹿者共!!!!!!篠ノ之、織斑は席につけ。授業を再開する。山田先生、続けてください」

「え!?えぇ?……はい、わかりました」

「千冬さん!!?こいつは「いいから席につけ!!!!」ッ……はい」

箒がどこからか木刀を取り出してサクラ目掛けて振りかぶったが、千冬が声を荒げたことで手を止め、悔しそうにしながら自分の席に戻った。一夏もサクラの方を睨みながら席につき、微妙な雰囲気のまま授業は再開された。あんなことがあった直後では授業に集中出来ない生徒も多かったが、当のサクラは先程と変わらず頬杖をついて参考書を覗き込んでいた



















ぎごちなく進行していく授業を見ながら、千冬は先程のサクラの行動について考えていた

(一夏が掴みかかろうとしたときの対応はまぁ、一夏に非があったし見逃したが……問題はその後だ)

千冬は箒が木刀を構えた瞬間、サクラの頬杖をついていた方の手の指先が教室の照明の光を反射したのに気付き、すぐに箒を止めたのだ

(あれはワイヤーの類いか?いや、それだと奴の指も何かつけてなければただでは済まないはず……ISの反応は無かったし何かコーティングがされているのか?)

なんにせよ、千冬はサクラが一夏の時とは違い明らかに箒が負傷する方法を取ろうとしていたのがわかったから箒を止め、無理矢理引き剥がしたのだ。本来なら後手であれ危険な行動に出たサクラを注意するべきなのだが、千冬は学園長からサクラとジェームズの経歴について事前に伝えられており、それについての対処法も納得しきれていないとはいえ聞かされていたのだ

(学園長には私達とは価値観が違うから長い目で見てやって欲しい、とは言われたが…流石に今のは注意するべきだろうか?)

世界最強のブリュンヒルデとは言っても教師としてはまだ新人の千冬には難しい問題だった。取り敢えずこの授業が終わったらサクラには話しておこうと千冬は決めたのたった





授業の終了を告げるチャイムが鳴ると、千冬の目に一夏と箒が真っ先にサクラの元に向かおうとしているのが映った。一夏はともかく、箒は木刀を構えてだ

(あいつらはまったく…特に篠ノ之は力量の差がわかっていないのか?返り討ちにされるだけだぞ)

「篠ノ之、織斑、どけ。ダイヤルシェ、話しておきたいことがあるから私についてきてくれ」

「…わかりました」

これ以上の面倒事は避けておきたい千冬は二人とサクラの間に割り込んでサクラに声をかけた。サクラも嫌がる素振りもなく立ち上がったので、そのままサクラを連れて場所を移そうとしたのだが、一夏が二人に待ったをかけた

「待ってくれよ千冬姉!俺はサクラに話があるんだ!!」

一夏からは見えていないが、サクラと呼ばれたことで彼の目付きが鋭くなったのに千冬は気付き、サクラが振り向く前に一夏を睨んだ

「ほう…それは教師である私の話よりも大事な事なのか?それと私のことは織斑先生と呼べと何度も言っているだろう?ダイヤルシェについても同じだ、織斑、少しは礼儀を弁えろ」

周りで聞いている女子生徒達の中には唯一の肉親に厳しすぎないかと思っている者もいるが、千冬は一夏が唯一の肉親だからこそ礼儀や常識についてはしっかりと叩き込んでおきたいと思い、こうして厳しく接していた

だが、それが通じないのが一夏だった

「わ、わかったよ織斑先生…でも、サクラは別に構わないだろ?男は俺とサクラとジェームズしかいないんだし、別に呼び捨てでもいいじゃんか」

「……ブリュンヒルデ、あなたの弟は脳に障害でもあるのですか?」

「……織斑先生だ、次は無いぞ。脳については正常なはずだ…織斑、私が今言ったことをもう忘れたのか?同じ境遇だらうと仲良くしたいのだろうと礼儀と言うものがある。それを理解しろ。行くぞ、ダイヤルシェ」

「なんだよ…仲良くしたいんだしいいじゃねぇか」

それだけ言い残すと千冬はサクラを連れて出ていった。残された一夏はそれだけ言い残すと席について突っ伏してため息をついた



一方千冬とサクラは、休憩自体が短いこともあって廊下を歩きながら話していた

「ダイヤルシェ、お前のことだ。呼び出された理由は理解しているだろう?」

一人目(ファースト)と暴力女への対応についてでしょう?……俺に抵抗するなと?」

「…まぁその印象になってしまうか。そうは言わないさ、お前()についてはある程度話は聞いている…だからこそ、もう少し穏便に済ませることは出来ないのかと言いたいんだ」

「…………他ならぬ織斑先生からのお言葉ですし、善処しますよ」

「そうしてくれ…………ところでダイヤルシェ。没収した酒類についてなんだが」

「好きにしてください。どうせあいつのことなんで懲りずにまたどこかに買いに行くでしょうし…織斑先生の飲みたい酒も言えば買ってくると思いますよ?」

「教師を買収しようとするな馬鹿者…だがまぁ、そのうち頼むこともあるかもしれんな。今年は厄介ごとが多すぎる」

「3人の男性操縦者に天災の妹、各国の代表候補生ですからね、何も起こらないなんてことはまずないでしょうね」

「……知っていたのか?」

「知っているも何も名字同じだし周りもすぐに気付きますよ。あと人格が破綻しているところも天災譲りでしょうし」

「そう言ってくれるな、あいつもあいつなりに嫌な思いをしてきたんだ…あそこまでひねくれてしまうとは思わなかったがな」

「同情しますよ…では俺はこれで」





千冬との話が終わったサクラは教室に戻るとすぐに自分の席につき、先程の授業中と同じように頬杖をつきながら参考書を見ていると

「貴様!!一夏に言うことがあるだろう!!」

入学初日にも関わらず聞き飽きてしまった怒声に顔をしかめながら目線を上に上げると、そこには木刀を持った箒が立っていた

「……」

よく見てみると箒の後ろには一夏もいた。サクラはため息をついて立ち上がると、近くの女子生徒に声をかけた

「突然で申し訳ないんだが残りの授業、教師に俺は欠席だと伝えておいてくれないか?」

「あ、さくさくだ~いいよ~。どんな理由で伝えたらいいかな~?」

「…さくさく?」

「うん、サクラだからさくさく~、いい呼び方だと思うんだけど~」

制服の袖を手が完全に隠れるまで伸ばし間延びした声で話す女子生徒達のグループはサクラの頼みを快く受け入れた。変なあだ名をつけながらだが

「…まぁいいか。引き受けてくれてありがとう。普通に欠席とだけ伝えておいて貰えたら構わないよ」

「りょうか~い」

「おい!!無視をするな!!」

「では失礼するよ」





「少しよろしいかしら」

箒が木刀を構えながら怒鳴り散らすが、サクラはそちらに一切目も向けずに教室から出ていこうとした…が、横から声をかけられたことで足を止め、声のした方を見た

そこにいたのは、今朝ジェームズとひと悶着あった金髪の女子生徒だった。事前に彼女のことも調べていたサクラは、不自然なぐらいに物腰柔らかに応えた

「俺に何かご用でも?イギリス代表候補生のセシリア・オルコット嬢」

「あら、あなたは私のことをちゃんと知っておりましたのね?」

サクラの態度が気に入ったのか、金髪の女子生徒、セシリアは一夏の方に一瞬見下すように視線を変えた後、少し表情を緩ませた

「ああ、ISに乗れると発覚してから日が浅いが、それを言い訳に祖国の恥になるわけにはいかないのでね、あなた方代表候補生のことは目指すべき目標として調べさせてもらったよ」

「まぁ!なんと良い志の方なのでしょう!!あの野蛮な巨人や織斑さんとは大違いですわ」

サクラは自身のことを目標にしていると言われて上機嫌になったセシリアを見ながら、そういえば今朝ジェームズのことをそう呼んでたな。と思いつつ苦笑いを浮かべながら頭を下げた

「今朝の出来事は完全にあいつが悪かった、申し訳ない…後日謝罪させると約束する。今は織斑先生にやられて伸びているんだ」

「……わかりましたわ、ダイヤルシェさんに免じて彼のことは許してさしあげますわ」

「あぁ、ありがとう…ところでオルコット嬢、俺に何か用事があったのでは?」

「いえ、用事ならもう済みましたわ。あなたの人となりを確認したかっただけですから」

「それなら良かった。では俺はこれにて」

「授業をお受けにならないので?」

サクラと女子生徒達の会話を聞いていなかったセシリアが当然の疑問を口にすると、サクラは今にも突貫してきそうな箒に目を向けて応えた

「これ以上この教室にいてもトラブルに巻き込まれるだけだと判断してね…どこかで参考書を見直そうかと思うんだ」

「成る程……」

セシリアもそれで察したのかそれ以上は何も言わなかった

「では今度こそ失礼するよ」

「待て!!まだ私達との話が終わっていないだろうが!!」

「……そもそもお前達と話をしていた覚えは無いんだがな」

「なっ…ふざけるな!!!」

サクラは振り向かずにそれだけ言い残すと教室から出ていき、それから少しして授業開始を告げるチャイムが鳴った。







「ほう、それでダイヤルシェがいないのか……まぁいい、授業を始めるぞ」

「待ってください千冬さん!何故奴のことは怒らないんですか!!」

サクラに伝言を頼まれていた女子生徒から説明を受けた千冬は一瞬一夏と箒の方を見てから一度ため息をつき、授業を始めようとしたが、先程授業に出てこなかったことで千冬に怒られた箒が納得がいかないのか声を荒げた

「織斑先生だ、次は無いぞ。先程の貴様らと今のあいつでは理由が違う。わかったら口を慎め」

「ぐっ…わかりました」

千冬に論破された箒は悔しそうに目を細めながら席につき、授業は再開された





授業が終わって千冬が教室から出ていくと、入れ替わるようにサクラが教室に入ってきた。一夏と箒はサクラを見るなり何か言いたそうに立ち上がったが、それよりも先に他の女子生徒たちがサクラに集まったことで近づけなくなり、不機嫌そうに席についた

「さっきの授業いなかったけど体調悪かったの?」

「いや、別件でね。心配してくれてありがとう。次の授業からは参加させてもらうよ」

女子生徒たちの質問に答えながら席につこうとした時、小さな人影がサクラの周りの人混みを飛び越えそのままサクラの背中に着地した

「…ミーシャ」

「シェリーから聞いたよサクラー!変なのに絡まれてんだって!?どいつ!?どいつー!?」

「1人目と天災の妹…ってそこまでは聞いてないのかよ。あと降りろ、暑苦しい」

「降りない!!だってシェリーったら自分で見てきなさいって言って教えてくれなかったんだもん!!」

「…あっそ。それでそのシェリーは……あぁ、わかったわ」

周りの女子生徒たちが呆気にとられて固まっている中、サクラとミーシャは二人だけで話していた。そしてシェリーがいない理由をサクラが察したところでミーシャがサクラの耳元に寄って小声で話しかけた

「そゆこと。だからあたしだけで来たのよ…お姉ちゃんから連絡。放課後あたしとシェリーの部屋ね」

「…了解」

「よしっ!それじゃーあたし教室に帰るね!!」

サクラに用件を伝えたミーシャはサクラの背中から飛び降りると教室から出ていこうとしたが、思い出したかのように声を上げて振り向き、一夏と箒の方を見た

「あんた達がサクラに突っかかってる1人目と天災の妹?ふ~~~ん…」

「な、なんだよ…」

じろじろと見てくるミーシャに一夏はたじろぎながらも声を出すが、ミーシャはすぐにサクラの方を見て声をあげた

「二人とも残念スペックだね!特に頭が!!ドンマイサクラ!!こいつら何言っても聞かないだろうからこれからも絡まれるよ~!」

「なっ…」

「そんなことわかっているさ。ほらさっさと自分の教室に帰れ、その頭足りない奴に殴られるぞ」

「え~怖~い!叩かれたくないしさっさと帰りま~す!!バイバイ!」

「待て!!」

周りの女子生徒たちが固まるなか、箒がどこからか木刀を取り出して立ち上がるが、ミーシャは既に教室から出ていっていた。殴る対象を見失った箒は木刀で壁を殴り付けてから席に戻り、女子生徒たちもようやく理解が追い付いてサクラにミーシャとの関係についてなどを授業が始まるまで聞き続けた





「それでは授業を始める…が、それよりも先に決めなくてはいけないことがある」

次の時間は千冬が担当する授業なのだが、千冬は開口一番にそう言うと一度生徒たちを見渡してから再び口を開いた



「クラス代表を決める。誰かを推薦したい者、自推したい者は挙手してから名前を言え」






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