俺の許嫁と幼馴染が同じバンドメンバーの件について 作:羽沢珈琲店
「おおおおぉぉぉー!!」
この前、友人達とそんな話をしました。嘘です。でもまぁこころファンに取ったら一大事ですもんね。
では、第六話です。どうぞ。
前回までのあらすじ
翼、遂に罪を犯す。
「まだ起こしてねぇから!!いや、触れてるということは犯してるのか!?というか、タイトルも言わなくていい!!」
〇〇〇〇〇
俺は今のこの状況に理解が追いついていなかった。いや、追いつきたくなかった。俺の片手がこころのちょっぴり膨らみのある部分に服越しではあるが、触れているのだから。
(何故こうなったー!!)
心の叫びが今にも吐き出しそうになったが、必死に堪える。この状況をこころの親とか、黒服の人達とか、こころの親とか、黒服の人達に見つかればタダじゃすまされない!
まずは誰もいないことを確認しようと、ちらっと扉の方に目を向けると、案の定そこには黒服の人達三人が俺を凝視していた。
(あ、やばい。これ非常にやばい)
表情一つ変えずこちらを凝視してくる黒服の人達。サングラスをかけてるからより一層怖いんですけど!?
(と、とりあえず一旦落ち着け。落ち着くんだ俺。こういう時こそ冷静に分析してだな)
黒服の人達の視線に恐怖しつつも、この状況を打破というか突破する方法を考え始めた。
黒服の人達が現れた!
黒服の人達は戦闘態勢に入っている。
神童翼はどうする?
1、戦う
返り討ちにされて、ジャーマンスープレックスと腕引き締十字固めをされる。OUT!
2、どうぐを使う
しかし、何も持っていない!混乱している間に黒服の人達がスタンガンを持って気絶させる。OUT!
3、誰かと入れ替わる
しかし、誰もいない!混乱している間に黒服の人達が首締めを行い気絶させる。OUT!
4、逃げる
窓から飛び降り、逃げる。
4!これしかない!!
冷静に?分析した後、逃げる準備に入る。ゆっくりとこころから手を離し、ゆっくりと両手を挙げる。
「アハハハハ…………今!」
俺は苦笑して敵の警戒態勢を解いた瞬間、一つしかない窓に向かって一直線に走る。
だが、俺は忘れていた。黒服の人達の凄さを。
俺が逃げに転じた瞬間、黒服の人達が俺を囲い込み、一人はジャーマンスープレックスの態勢を、一人はスタンガンを手に持ち、一人は首締めの態勢に入って来た。
(あ、死んだ。俺死んだ)
ごめん、みーちゃん。俺、何も伝えられないまま逝くよ。
最後の別れを心の中で告げて、死を受け入れた。
「ま、待って!」
こころの一言で黒服の人達がピタリと止まる。
「私は大丈夫よ。だから翼を傷つけないで」
こころのか細い声音から放たれた静止の声で、黒服の人達は完全に戦闘態勢を解放する。
俺はこれを好機とみて、一直線に何も考えずただひたすらに窓に向かって走った。
「うおおおぉぉぉ!!」
パリンッ!と割れた音と同時に、俺は浮遊感に見舞われる。地面に着地した途端、全身が身震いするほどの衝撃が駆け巡ったが、それを耐え抜きこころの豪邸から脱出したのだった。
ポツンと取り残されたこころに黒服の人達は声をかける。
「こころ様。お怪我はありませんか?」
「だ、大丈夫よ。少し驚いたぐらいよ」
「翼様どうしましょうか?主人様に報告し、この世から抹消させてもらいますか?」
「そ、そこまでしなくていいわ。貴方達はもう行っていいわよ」
「分かりました」
黒服の人達は一礼すると、こころの部屋から出て行く。誰もいないことを確認すると、こころは腰が抜けたようにへなへなと床に座り込む。
「この気持ちは一体何なのかしら……」
顔を赤くしながら悶々と悩むこころの姿がそこにあった。
○○○○○
次の日、神童翼を弦巻こころの家に上げさせた張本人である平沢海は今日も今日とて遅刻ギリギリの時間帯に学校に向かっていた。
「ふわぁ〜ねみぃ。何で、平日に学校に行かなきゃいけないんだ」
学校とはそういうものである。というツッコミが誰かがするわけもなく、海は学校に辿り着く。
いつものように下駄箱から上靴を取り出し、それに履き替え1–Aの教室に入ろうとした時、1–Bから禍々しいという異様な空気がダダ漏れていた。そして、その教室を取り囲むかのように集う生徒達。
「何だこれ」
「あ、海」
「モカ、一体どういう状況だ?」
「う〜ん、見てみたら早いかな〜」
「?」
確かに百聞は一見にしかずという諺があるように見た方が早い。モカの言う通り教室内を見ると、そのど真ん中で異様な空気を放っている人物がいた。しかも、その姿が物凄く知り合いに似ていた。
「あぁー」
「ねぇあれって海のともだ……」
「関係ない。俺とは無関係のやつだ。あんな奴知らない」
正直言って関わりたくない。見つかれば一日中追いかけ回される鬼ごっこが始まる。それだけは避けたい。だから、このまま自分の教室へ戻ろうとしたのだが、俺の横を誰かが通ったのだ。言うまでもない、翼だ。
「海、ちょっと来てくれ」
「は?」
そう呟いた瞬間、俺は翼に襟元を掴まれ、久方ぶりの一時間目の授業はまた来週にお預けかと思いながら連れていかれた。
○○○○○
「で、俺を無理やり連れてきた挙句、助けてくれー!と泣き叫んで俺に飛びついてきたところ、俺にジャーマンスープレックスを決められた翼さんはどんなことをやらかしたんですか?」
「分かってるなら技を決めないでくれよ〜……」
シクシクと涙を流しまくる親友(笑)の姿に少しやり過ぎたかとちょっぴり反省しつつ、翼の話を聞くことにした。
要約すると、翼が遂に刑を犯したということだった。
「全然要約出来てないから!!」
「ほう?ならあれか?女性の尻や胸を無理やり揉みしだく行為や、ピーがピーしてピーする行為も犯罪じゃないと言いたいんだなお前は」
「何でさらりとそんなこと言えるんだよお前は!!」
「いや、お前の反応が面白いから」
顔を真っ赤にして狼狽える翼を揶揄わずしていられようか。いや、いられない。まあ実際俺も恥ずかしいが、翼ほどではないし、何よりこいつを揶揄えるのなら幾らでも言ってやる。
「しかし、不可抗力とは言え弦巻家の娘の胸に触れてそのまま何も言わず帰るとかクズ中のクズだな」
「ぐっ!皆まで言わなくていい!」
「クズ中のクズだな」
「言わなくていいって言ったよな!?」
だって面白いんだから仕方ないだろ。
「面白いからと言って言うなよ!」
「おうびっくりした。お前も遂に心を読み取る技を習得したのか。良かったな」
「今、喜べる気分じゃねぇよ……」
「けど、良かったんじゃねぇのか?あくまでお前の目的は奥沢美咲に告白することだろ?」
「こ、告白!?そ、そんなこと出来るわけないだろ!?夢の中では出来てたけど……」
「じゃあお前は美咲とどうなりたいんだよ」
「ど、どうって……そりゃあ恋人同士になりたいなって思うよ……。だからって告白って……」
「お前、面倒くさいな」
奥沢美咲の事が好きなのであろう神童翼だが、ヘタレすぎるのがこいつの欠点だな。顔はイケメン、スポーツ万能、運動神経も良い、優良物件なのに恋愛に関しては奥手すぎる残念系イケメン。それが、神童翼だ。
「兎に角、お前は今までこころの事が嫌いなんだろ?なら、このまま嫌われたままこころがお前から離れて行ったら必然的に美咲と近づくチャンスが出来る。違うか?」
「そ、それはそうかもしれないが……それだとこころが可哀想に思えてきて……」
「……おい翼、どう言う心境の変化だ?てっきり俺は「それは名案だな!じゃあこのままでいっか!」とか言うと思っていたぞ」
「じ、実は事件が起きる前にこころの日記を見つけて……」
翼は俺に事件が起きる前の事を話してきた。
要約すると、翼がとんだヘタレでお人好しという事だった。
「だから要約出来てないって!!」
「いやいや今の話聞いて何処が要約出来てないと?こころの日記を読んで、こころの本当の想いに気付いた途端に申し訳なさが出てきて心が揺れ動いているヘタレ君の何処が要約出来てないと?」
「うっ……。ちょっぴり正論で反論出来ない……」
「兎に角、そんなヘタレな気持ちでいるなら、こころにちゃんと謝る事だな」
「そ、それはそうしたいんだけど……あの黒服の人達の存在が」
「自分が蒔いた種だ。自業自得だ。それぐらいは自分で解決しろ」
「なぁ海〜。一緒にこころの家に……」
「もう一発ジャーマンスープレックスを喰らっておくか?」
「それは勘弁してくれ!」
○○○○○
放課後になり、俺はしつこく頼んでくる翼を振り払うのが疲れたので一緒にこころの家に行くことになった。このしつこさを黒服の人達に見せればいいのに、と思ったが何も言わないことにした。
だが、その時学校の校門前に一台の車が止まった。そしてその車は昨日見たことある車で。
「翼様、失礼致します」
「え、あ、ちょっ、ちょっと!?た、助けてくれー!海ー!」
またもや一瞬で黒服の人達が現れ、一瞬で翼を抱え上げるとリムジン車に乗せ終えると、直ぐに何処かへ立ち去っていった。
「……南無三」
とりあえず翼の無事をほんの少しだけ祈るために合掌した海であった。
さて、黒服の人達に連れ去られた翼は一体どうなる?そして、こころの想いとは?美咲とのイチャコラはもう少し待って下さい。
話は変わって八人様の評価によって一瞬だけ日刊ランキングに載ることが出来ました!!やはり自分の作品がランキングにあるのは嬉しいことですね!ランキングに載ると見てくれる方も増えますし、本当に感謝です。
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