俺の許嫁と幼馴染が同じバンドメンバーの件について 作:羽沢珈琲店
でば、パスパレとは関係ないこの小説ですが、どうぞ。
前回までのあらすじ
翼が謎の悲鳴を告げた後、死んだ。
「死んでねぇからな!?」
訂正、生きていた。
○○○○○
改めて、前回までのあらすじ。俺と海の二人は俺の幼馴染にある質問を告げるため、幼馴染が通う花咲川女子学園の校門前までやって来た。そんな時に、誰かの悲鳴を聞いたんだ。ひったくり犯が現れたのかもしれない!と思った俺たちは悲鳴がした所へ向かった。でも、そこにいたのは謎のバンド。しかも、そのボーカルが俺の許嫁弦巻こころだったのだ!
「……で、そこから記憶が無いんだが、海何があったか知ってるか?」
「何も無かったんじゃないか?」
海もこう言ってるし、気のせいなのか?まぁ、そんな事よりも俺が一番気になってるのは……、
「何で俺は縄で縛られて正座させられてるわけ!?」
まるで拷問を待ち構えている囚人みたいな状態なんだけど!?一体何故こうなった!?
「それも知らん」
「いやいや!それは流石に分かるでしょ!」
「このバカは放っておいて、まずは自己紹介と行きましょうか」
「スルーしないでくれ!!」
くそっ!親友にこんな裏切られ方するなんて今日はなんて日だっ!
「えっとまずは、金髪のあなたから」
「心の声すらも読む気が無くなった!?」
「うるさい」
海は翼の首元に手刀をいれ、翼を気絶させた。
「えぇ!?だ、大丈夫なんですか……?」
「このバカは丈夫だから大丈夫ですよ」
「そうよ花音。翼は丈夫だから心配いらないわ!」
「それに、こいつを最後に持ってきた方がいいかもしれませんし」
「それってどういう……」
「ではまずあなたからお願いしますか?」
「私?私の名前は弦巻こころよ。そういう貴方こそ名前は?」
「俺は平沢海だ」
「翼とは知り合いみたいだけど、どういう関係なの?」
「全くの無関係です。そういう貴方は、翼の許嫁だそうですね」
「えぇそうよ。翼は私の許嫁なのよ!」
きっぱりと笑顔で応える弦巻こころ。その反応に海は一つ疑問に思ったことを告げる。
「時に弦巻こころさん」
「こころでいいわよ、海。敬語も無しね」
「じゃあこころ。許嫁という意味を知ってるか?」
「ん?当たり前じゃない!大人になってもずっと一緒にいることでしょ?」
「具体的な意味は?」
「具体的な意味?一緒にいること以外にすることなんてあるのかしら?」
(やはりな)
俺はこころの発言に許嫁の意味をあまり理解していないことに気づく。海が初見で感じていたことは、弦巻こころは常識や社会というものをあまり知らないということ。お嬢様として育った弦巻こころは精神年齢は実年齢より低いと思われたのだ。
「話が脱線したな。次は貴方ですけど、確かうちの学校の先輩ですよね?」
「おや、私のことを知っているのかい?そう言えば、うちの学校の制服だね。と言うことは新入生かな?」
「そうです」
「あぁ……儚いね」
「儚い……ですか?」
「あぁすまない自己紹介だったね。私の名前は瀬田薫。よろしく頼むよ」
紫色の長髪で女性なのに男性のようなかっこよさがあり、顔がキラキラとしている
「それで、ひまりとは一体どういった関係で?ひまりがそっち系のやつだったとは思わなかったので、真相を知りたくて」
「海!別に私はそういうのじゃないよ!確かに薫先輩は好きだけど、そういう意味じゃなくて……そう!憧れだよ、憧れ!」
「何やら誤解を生じているみたいだけど、彼女もまた一人の犠牲者なのだよ。私の美貌のね。あぁ……何て儚いんだ」
「はぁ……」
すまん、ひまり。俺にはこの先輩をどう対処すればいいか分からん。
「じゃあ次は……ってはぐみか。なら、飛ばしてもいいな」
「海君!それはちょっと酷い紹介だよ!」
オレンジの髪の色で、元気なボクっ娘をイメージすれば想像しやすい奴が、
「俺が知ってる奴を紹介されてもな」
「だからって今の扱いは酷いよ!」
「悪かったから。だから、そう怒るな」
ポカポカと無邪気な子供ように殴ってくるはぐみ。一見可愛らしい一面もあって、少しは心を揺さぶられそうになるんだが、このポカポカ地味に痛い。はぐみはよく少年少女野球チームの助っ人に行ってるらしく、女子にしては力がある。その分、このポカポカは少し胸にダメージが来るんだよ。
俺ははぐみを落ち着かせ、殴るのをやめさせてから次の自己紹介へと移った。
「はぐみの次は貴方ですね。二年生ですか?」
「え……っ!?えっと……、はい、そうです……」
「そんなに怯えられると俺が悪人みたいになって罪悪感を感じるんですけど」
「はうぅ!ご、ごめんなさい……」
「えっと、では名前を聞いてもいいですか?」
「わ、私は……
終始オドオドとしていて人前に出るのが恥ずかしそうなタイプの女の子、松原花音先輩。水色の髪におさげの髪型。動物に例えたらうさぎに少し似ているかもしれない。
さて、最後のメンバーだが、
「………クマ?」
「まぁ、そう思いますよね」
バンドのメンバーにしては異質な存在を放っているのがこのクマ。確かこのクマは商店街のマスコットキャラ、ミッシェルだったはず。声がするということは中に誰か入ってるのか。しかし、何故クマ?
「貴方の考えはわかっています。何故マスコットキャラのミッシェルがバンドやってるか疑問に思ってると思いますが、とりあえずそれは置かせて下さい。私の名前……の前にまずは」
この中で一番まともそうで常識人そうなクマ(女の子)が、気絶している翼の前に立つと、一言呟いた。
「いつまで寝てんの、翼」
「ッ!?」
たった一声かけただけで翼は一瞬のうちに覚醒し、バッと顔を上げた。
(数時間は気絶させる手刀をお見舞いしたのに、あの一声だけで起きるなんて。あいつ、バカを通り越して変人になったか?)
手刀で気絶させる方も変人だとは皆まで言わない。
「えっ、クマ!?でもさっき……!」
翼は心当たりのある声を聞いて起き上がったが、目の前にいたのは大きなぬいぐるみのクマ。現状を飲み込めていない翼にクマはそっと翼の肩に手を置く
「えっ……?」
「ホント、あんたってこころと同じくらい変人だよね」
中の人がぬいぐるみのクマの頭を取り外し、素顔を翼に見せる。
「久しぶり……翼」
「………みーちゃん?」
今、ここでグルグルに縛られている男と、顔以外クマのぬいぐるみを着ている女が感動の再会を果たした。
後に、海はなんだこの再会と思うのだが、それはまた別の話。
翼が主人公なのに海が主人公っぽい……。
側から見て、縛られている男とクマのぬいぐるみが会話していたら怖くて近づきたくないですよね普通。まぁ、美咲みたいに可愛かったら別ですが。
けー。。。さん、評価ありがとうございます。