俺の許嫁と幼馴染が同じバンドメンバーの件について 作:羽沢珈琲店
「よし、着いたぞ!花咲川女子学園!」
海のアドバイスを受けて、早速それを実行するために花咲川女子学園、通称花女の校門前までやってきた。
「ここで待ってればあいつとも会えるはずだ!な、海。……ん、海?」
海からの返答がないな。どうしたんだ……って、
「あのー、海さん?指をコキコキ鳴らしてるのは俺の気のせいかなー」
「翼、最後に選ばせてやる。DEAD OR DIE。どっちがいい?」
「どっちも同じだよ!!ま、待って!アイアンクローは、アイアンクローはやめてー!!」
他校の校門の前で、謎の男子生徒の断末魔の声が響き渡ったと学校中で噂されるのはそう長くはかからなかった。
○○○○○
「し、死ぬかと思った……」
「死ねばよかったのに」
「それが親友に対する態度なの!?」
「だから、親友になった覚えはないって言ってるだろ」
海のアイアンクローを何とか耐えきった俺は、再びあいつが出てくるかどうか影で見守る。
「これで頭悪くなったら海のせいだからな」
「大丈夫だ。元々、お前は頭がイかれてる」
「イかれてはない!ただ、勉強が出来ないだけだ!」
「それ、根本的には同じ意味だと思うぞ」
くそうっ!こうなったら何が何でも弦巻こころと海を鉢合わせて二人きりの状況を作り出し、弦巻こころの恐ろしさを味わせてやる!
「さて、準備運動は終わったし次はどんな技で……」
「待って俺が悪かったから。だから、関節を決めにかかるのはやめて!」
「はぁ……。それで、かれこれ30分は経つがもう帰ったんじゃないのか?」
「可笑しいな。今日は木曜日だから、四時からバイトがあるはずなのに。まだ出てこないなんて……。ハッ、まさか学校で何かあったとか!!」
「俺はお前の行動に恐ろしさを感じてる」
でも、それにしては他の生徒が静かすぎるというか、騒がしくない。海の言う通り、もう帰ってしまったのか。
気分が最底辺まで沈み込んでいたその時、女性の悲鳴が聞こえて来た。
「今のは!?」
「悲鳴だな。もしかして、ひったくりか?」
「なら放っておけないな!行くぞ、海!」
「俺も行くのかよ……」
俺は悲鳴が聞こえた方へ全速力で走る。悲鳴は未だに続いており少しずつ大きくなっていく。そうだ、これではまるで……、
「どうやら、ひったくりとかじゃなく唯の歓声だったな」
海も追いつき、目の前に広がる光景を目にする。何十人もの女子生徒が群がり、誰か一人の名前を叫び、悲鳴という名の歓声を上げていた。これを言い換えるなら黄色い声援というのだろうか?
けど、俺にはそんな歓声よりある歌声に引き寄せられていた。
「何でこんなに女子が……?しかも、俺たちの学校の女子までいるぞ。一体何が起こって…………翼?」
「この声、まさか……!」
俺はその歌声の正体を掴むため、群がる女子生徒達の方へ向かう。そして、はっきりと聞こえると思わず立ち止まってしまった。
「急に走ったかと思ったら今度は急停止か?一体何がしたい……この音、バンドか?」
海も気付いたのか、群がる女子生徒達の先には公園のど真ん中で楽器演奏をしている一つのバンドがあった。そして、俺はそのバンドのボーカルに物凄く見覚えがあった。というか、先週見た。
俺が驚きを隠せないでいると、演奏が終了し、一人の女子?が前に出て女子生徒達に感謝の言葉を告げ始めた。
「可愛い子猫ちゃん達。今日も演奏を聴いてくれてありがとう。最高にいいステージになったよ」
「「「きゃああああぁぁぁぁーー!!!」」」
「うーん!はぐみも楽しかった!かのちゃん先輩もそう思うでしょ?」
「わ……私も同じ……気持ちかな。美咲ちゃんは?」
「まぁ、それなりに楽しめたって感じです」
「みーんなが笑顔になってて私も嬉しいわ!これだと世界中を笑顔にする日は近いかもね!」
「いや、何十年とかかる話だ……って言っても聞かないか」
「アハハハ……」
よし、何故かは知らないけどバンドメンバーに気が逸れている内に、ここから立ち去ろう!!
「何、そろりと何処かへ行こうとしてるんだよ」
って思わぬ伏兵いたー!!俺の戦友が俺を逃がさんばかりに強い力で手首を握ってくるんですけど!待って、マジで手首折れそう!!
「その前にその手を離すか、緩めるかどっちかにしてもらえますか!?」
「ん?あぁ、悪い。余りにも握り潰せそうな柔らかさだったから」
「何その発言!?めちゃくちゃ怖いんだけど!海は彼女が出来てもそんな事するのか!」
「いや、しないけど。お前、バカか?あ、バカだったか」
「バカバカ言うな!!」
なんか、さっきから大声を出しまくってるせいか喉が潰れう。
「もしかして、翼?」
その声にびくりと肩を震わせる。
「その後ろ姿、翼よね?そうなんでしょ、翼!」
まだ演奏で使っていたマイクを抜いてないのか、ここにいる全員に聞こえまくってるんですけど。恥ずかしいからやめてくれ!
「ひ、人違いでーす!!」
俺は一目散に逃げた。世界の果てまで行ってやろうという勢いで逃げた。弦巻こころと関わったらろくなことがない!俺は昔から散々な目にあって来たんだ。こんな気持ちを誰かに共有して欲しいとはほんの少ししか思ってないけど、それでも誰でもいいから愚痴をこぼさせて欲しい!あ、海はノーカンで。
「失礼します」
「え……?ぎゃあああぁぁぁ!!!」
そこからの記憶は一切ないです。by数時間後の俺。
○○○○○
海side
翼に花咲川女子学園に強引に連れてこられたかと思えば、ひったくり犯に襲われたかもしれない悲鳴を聞いて駆けつけたと思えば、謎のバンドが公園のど真ん中で演奏してると思えば、翼が顔を真っ青にして気付かれずに逃げようとしたのを捕まえていたと思えば、謎の金髪美少女が翼の名前を呼び、俺が気を取られてるその間に逃げられてしまった。
「ま、別に俺には関係ないしな」
翼の運命やら恋愛事情なんて知らないし、知りたくもないのでさっさと帰ろうと思ったが、意外な人物を目にした。
(ん?あそこにいるのってひまりだよな?)
先程演奏が終わった後に、感謝の言葉を述べていた女子?とひまりが何やら話し込んでいるのだ。
そして、何より気になったのはひまりの目。まるで、恋をしてるかのようなキラキラとした瞳で女子?と話しているのだ。
(そういやこの前、ひまりが言ってたな。先輩にめちゃくちゃカッコいい人がいて、好きになりそう〜とかなんとか)
「もしやひまり……そっち系の人間だったのか」
確かにさっき他人の恋路なんて知らないと言ったが、幼馴染であるひまりが別な道を歩もうとしてるのを見ると、知らないなんて言ってられない。
「ちょっと声をかけていくか」
俺は群がる女子達を掻き分けようとしたその時、謎の断末魔の叫び声が聞こえてきた。
「何だ今の?」
それが親友(仮)の叫び声ということに気にも止めず、俺はひまりの方へ向かった。
海side end
○○○○○
少し前に戻って。翼が弦巻こころに声をかけられた途端、全速力で逃げた時間に遡る。
「翼ー!何処にいくのよー!」
私、弦巻こころは今日、みんなに公園でライブをしようと提案して、演奏していたの。世界を笑顔にするためが私達の目標。今日も同じようにみんなを笑顔に出来たと思っていたら、見たことのある後ろ姿を発見して、声をかけたのに何故か避けられてしまった。
「お嬢様。追いかけましょうか?」
「うーん、そうねぇ……」
「許嫁でありながら、あの態度。許されぬべきです」
「そうね。翼にもみんなを紹介したいもの!連れてきて頂戴!」
「分かりました」
黒服の人達は一つ返事で一瞬で消えて、その後直ぐに誰かの叫び声が聞こえてきたわ。一体何があったのかしら?
「ただいま戻りましたお嬢様。時期に翼様がこちらに来るでしょう」
「あら、意外と早かったのね。でも、これで翼にみんなを紹介出来るわ!」
翼と会うのは何年ぶりかしら。先週のパーティにはいなかったのは、残念だったけれど、早く会いたいわ!
そんなこころとは裏腹に、ひまりと話している少女?以外の三人はこう思った。
(((あの、黒服の人達何者!?)))
結論、弦巻家は権力も強ければ、ボディーガードも人間ではなかった。
前回、激突するといいましたが、ごめんなさい嘘です。いや、その内激突するかもしれませんよ?誰を求めてかは知りませんけど〜。
………まぁ、普通に想像ついちゃうでしょうね。
次回はハロハピメンバー+その他の自己紹介です。(これは嘘ではないよ!)