俺の許嫁と幼馴染が同じバンドメンバーの件について 作:羽沢珈琲店
ここだけの話、本当は一つの作品にまとめたバンドリを書こうと思ったのですが、ややこしくなりそうなので分けてみました。もしかしたら、五つのバンドを主軸とした五つの作品を投稿するかもしれません。その時は、その作品のこともよろしくお願いします。
一つ、みんなに聞きたいことが一つだけある。
もしも、許嫁と幼馴染。どちらかを選べと聞かれれば、みんなはどちらを選ぶだろうか。
許嫁ーーーそれは息子、または娘の幼少期に本人の了承も得ず、仲の良い親同士が勝手に合意し、勝手に結婚の約束をするということ。または、その結婚相手のことを指す。
幼馴染ーーーそれは幼少期に親しくしていた同性、または異性を指し、お隣の親同士が仲良しで、その子供もまた仲良しであることを指す。
さて、もう一度みんなに聞く。性格や行動に少し難ありだけど笑顔が素敵な許嫁と、性格や行動は共に普通で、常識人な部類に入るし顔も可愛いが、こっちの事を好きではなさそうな幼馴染。あなたはどっちを選ぶ?
○○○○○
「という疑問をお前にぶつけたいんだけど、どう思う?」
「クソどうでもいい」
俺にとって凄く大事な疑問をあっさりと斬り捨てた親友を、俺は今後どう受け止めればいいのだろうか。
「別に何も受け取らなくていいんじゃないのか」
「心の声を読んだ!?まさか、海。お前ってエス……」
「ふざけてるなら帰るぞ」
完全にお怒り状態の親友が椅子から立ち上がり教室を出ようとするが、俺も今回ばかりは引き下がれない!
「待て待て悪かった!冗談だよ冗談。こんな事聞けるの、お前しかいねぇんだよ」
俺は掌を合わせて必死に頼み込む。
「あのな、お前のその悩み何回聞いたと思ってんだ。もう数えてねぇぞ」
「うっ……そう言えばそうだったかなー?」
「そう言えばそうだったかなー?、じゃねぇよ。お前の恋愛事情なんか知りたくもない」
「そう言わずに親友を助けると思ってさー!」
「毎回思ってたんだが、いつから俺はお前の親友になった?」
「そんなの会ったときからに決まってるじゃん!」
バンバンッと海の背中を叩く。一目見た時から俺はこいつとは分かり合えると思ったものだ。
「俺は親友になった覚えは無いんだが」
「大丈夫だ!どちらかが親友だと思ってれば、それはもう立派な親友だ!」
(いやいや、絶対にそれは違うから)
海の心のツッコミが分かるはずもなく、俺は愉快に笑っていた。
○○○○○
「それで、何回も聞き飽きて次第に内容を忘れてるんだが、お前の許嫁って誰なんだ?」
漸く俺の話を聞いてくれるようになってくれた海。やはり俺はいい親友を持ったぜ。なんか諦めた感じの表情をしていたけど、気にしないでおこう!
「仕方ないな。そこまで言うなら教えて「とっとと言えや」……言うから待って。グーだけはやめて、ね!」
時々、海の行動には肝を冷やされるなー。
「じゃあ説明するけど、まず初めに弦巻家って知ってる?」
「聞いた話では、どっかの豪邸に住んでるとか。まさか、その許嫁って」
「そう、その弦巻家の娘さんで名前は弦巻こころ。そいつが俺の許嫁」
「ん?ちょっと待て。ってことはお前の家系、相当偉いのか?」
「おいおい今更だな。弦巻家の次に凄いと噂されている神童家の次男と言えば、この俺しかいねぇよ」
俺はキリッとした表情でカッコよく決める。海は海で俺の決めポーズもお構い無しに口をパクパクさせているけど。
「神童……。何処かで聞いたことがあると思っていたけど、まさかそれがお前だったとはな……翼」
「ったくよ。三ヶ月も一緒にいたのに全然知らなかったのかよ。ちょっとショックだぜ」
「変な誤解を生むような事を言うな。それに、お前が一方的に話しかけてきただけじゃねぇか」
「あれ、そうだっけ?」
まぁ確かに自分から話しかけていた感はあるかな。
「はぁ……。それで、お前の神童家と弦巻家の間柄は何となく察しはついた。けど、それの何が問題があるんだ?許嫁なんだから別に困る事一つもないだろ」
「許嫁だから困ってるんだよ!確かに、弦巻こころは外見だけ見れば可愛いやつだよ!けど、性格に難ありというか、ポジティブすぎるというか……」
俺が弦巻こころを受け入れにくい理由。それは、ポジティブすぎる精神力と元気すぎる行動力だ。
もう随分と昔の話だが、会社のパーティーでばったり出くわして遊ぶことになったんだが、色んなところに連れ回され、振り回され散々な一日になったんだ。おまけにお嬢様だから許されると思ってるのか、怖いもの知らず過ぎる。はしゃぎ回っていた反動で丸い机に置いてあったかびんに触れ、割ってしまったにも関わらず、『うちのやつだから大丈夫よ!』とか平気でぬかす奴なんだよ。あの後どんだけ怒られたことか。主に俺が。
「別にポジティブだけなら問題ないだろ」
「海は会ったこと無いからそんな事言えるんだよ。こう言っちゃあれだがな、面倒くさい女なんだよ!弦巻こころは!俺はな、清楚で気立てがよく上品で常識人な奴と結婚したいんだよ!」
「お前、さらっと酷い事言った後に無駄に面倒くさい願望を言ったな」
今度一日中こころと海をくっつけさせて、海に地獄の苦しみを味わせてやる!
「もし、そんな事したら捌くぞ」
「心の声を読んだ!?まさか、海。お前ってエス……」
閑話休題
「兎に角、お前がその弦巻家の娘が嫌なの分かったが、それを俺に言ってどうしろと?」
「お前に相談に乗ってもらいたいのはこっからなんだ。俺が相談したいのはな……幼馴染と上手く話すコツを教えてくれ!」
俺が海に聞きたいことはそれだけだ!
「……何故、お前に幼馴染と上手く話すコツを教えなくちゃいけない」
「それは……えっと………そいつが、俺の……好きなやつ……だから」
「お前、女子に好きの二文字も言えなさそうだな」
「はぁ!?そ、そんなの簡単に言えるし!好き……って言葉ぐらい簡単に……」
(耳まで真っ赤にしているお前を今この場で見せてやりたいよ)
海は手元に手鏡が無いことに非常に残念だと悔やむ。
翼は髪も茶髪でピアスも両耳に開けていて、顔もそこそこイケメンの部類に入る。一見チャラ男に見えるのだが、中身は純情一択。場慣れしてるわけもないし、知識はあっても行動に移せないことから、皆から残念なイケメンと称されている。
「兎に角、お前の純情キャラは置いといて、その好きな女子ってのは誰なんだ?」
「そ、そいつは……えっと……幼馴染で、家が隣同士で……小さい頃によく遊んでた奴だよ」
「ふ〜ん」
「ニヤニヤすんな!!」
くそっ!人を小馬鹿にしたような笑みで見やがって!
「悪かった悪かった。大体事情は分かったが、だからって何で俺なんだ?」
「お前の周りには五人ものの幼馴染の女の子がいるからだ!」
机をバンッ!と思いっきり叩き主張する。ちょっと強く叩きすぎて若干両手が痛いのは内緒だ。
「別に普通に話しかければいいだろ」
「それが出来ないから困ってるんだよ!言っとくけどな、男子内では結構白羽の矢が立てられてるぞ。いつかぶちのめしてやるってな」
「こんなとこで男子の反感を聞かされたくなかったわ」
「だから頼む!幼馴染との接し方を教えてくれ!」
このとおーり!、と土下座でもしてやろうの勢いで頼み込もうとする俺を見て、海は必死に止める。
「分かった!一先ず土下座はするな。……まずその幼馴染は何組にいるんだよ。話はそれからだ」
「そいつは……その……」
「まさかその女子、年上か?……はぁ、年上となると余計面倒くさいな。まぁいいや。兎に角何年何組か教えろ」
「えっとですね……その子は、この学校には……」
「………おい、もしかして違う学校とかじゃないだろうな」
「アハハハハ!そのまさかなんだ!」
「そうかそうか。違う学校か……。よし、帰るか」
「待ってくれー!!」
俺は地面に這いつくばりながらも海の服の裾を引っ張り、帰宅を阻止する。
「違う学校なら話は別だ!大体、何でそいつと一緒の学校に行かない。幼馴染であり好きなやつなら意地でも同じ学校に行くだろう」
「俺だって頑張ったよ!けど……」
俺だって意地でもあいつと一緒の高校に通ってやるって決めてた。嫌だった勉強も必死にして、受験を乗り越えたはずだった!
「……当日、名前を書き忘れて……」
「お前が残念なイケメンと言われてるのがよーく分かった」
グサリと心に突き刺さる言葉を言われ、何も言い返せないのが返ってまた心にきた。
「違う学校なら俺にアドバイスする事なんてない。そもそも、幼馴染なら普通に話す内容なんて幾らでもあるだろ。違う学校なら尚更。今、学校で何してるのかとか聞けばいいだろ」
「それだ!!」
いきなり大声を上げた事でなのか、海に思いっきり殴られてしまった。
「お前……そんな事も考えなかったのか……」
「確かに考えてみれば話す内容なんて幾らでもあるじゃないか!ありがとう、海!お前に相談して良かったぜ!」
「俺は何もアドバイスした覚えはないが……翼がいいならそれでいいや。じゃ、俺はこれで……」
よしっ!こうなったらいてもたってもいられないな!早速あいつに会いに行こう!
「海、行くぞ!」
「はっ?ちょ、ちょっと待てやこら!俺も一緒に行くのかよ!!」
こうして、謎の相談をさせられた海を連れて、当てのない無計画のまま翼は学校から何処かへ向かうのだった。
こころんがdisられてますが、大丈夫です。心の中ではそうは思ってないはずです。
この作品は主に羽休み的な作品でギャグ路線でいきたいと思っています。あ、恋愛もちゃんとやりますよ。笑い6割恋愛4割と言ったところです。
次回は許嫁と幼馴染が激突!?