このきっと素晴らしい世界で美遊に祝福を   作:録音ソラ

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士郎、お腹が空きました。

カズマさんが登場したので続々とと言うほどでもないですがキャラが現れてきます。
その予定です。

評価とか貰えて喜びの舞をしてます。優しさに泣いた。


8話 カエルのクエスト再び

「代わりにクエストを受けて欲しい?」

 

 翌日、ウィズの店に行くとそう言われた。

 

 理由としては、元々気分転換にクエストを受けようとしたらしいのだが、美遊にそんなことをしている暇はないと止められたそう。

 しかし、その時にはもうクエストを受注済みでやるしかないらしい。

 だが、離れられないので戦える俺に頼んだということらしい。

 

「俺はいいが、運ぶものとかはないのか?」

「私は色々と仕入れようとしていたんですが、ミユさんに全部却下されてしまって……」

「まぁ、そうなるだろうな」

 

 何を仕入れるつもりだったんだ、ウィズは…

 一応これで無駄な出費は無くなったし、俺の仕事も無くなったと。

 

「けど、いいのか?ウィズが受けたクエストだろ?俺がやっても意味がないような」

「それでしたら大丈夫です。私の代わりにシロウさんが受けるということはギルドの方で了承済みです」

 

 断る道はなかったようだ。

 いや、元から断るつもりなんてなかった。

 衛宮士郎という人間はとんでもない無茶でない限り断ることはない。

 

「了承済みなら、受けてくる。どんなクエストなんだ?」

「ジャイアントトードを一週間で十匹討伐というクエストです。何故か、今年のジャイアントトードの繁殖期は例年以上に盛んなようで…少し前から何故か外に出ている姿も確認されていたそうで」

 

 多分、原因がわかった。

 原因を察した美遊は俺と目が合うと目を逸らした。

 この反応からしても間違いない。

 原因はめぐみんだ。

 

「原因もわかった。それには少し説教しておくから、多分これ以上は酷くならない筈だ」

「私も言っておきます…」

「???」

 

 一人だけ分かっていないウィズは首を傾げていた。

 

 ------

 

 その後、ウィズの店を出た後、ギルドに向かった。

 了承済みだろうと一応言っておかないと。

 

「金がないと装備も買えない。そうなると、クエストさえ受けられないってどういうことだよ…冒険者に優しくないな、この世界」

「装備がタダでもらえたりするわけないじゃない。バカなの?もしかしなくてもバカなの?」

 

 なんて騒がしい二人組がギルドから出てくる。

 こちらには気づいていないようなので、此方からも何もせず、すれ違う。

 普通は装備品も買わないとダメだったんだな、と当たり前のようなことを考えながらギルドに入る。

 

「シロウさん、こんにちは。今日はどうかされましたか?」

 

 夜にクエストを受けるとき、何度か話し仲良くなった受付の女性、ルナさん。

 多分ここの制服を着ているだけなのに、眼福、いや、目に毒だ。

 

「ああ、今日はウィズのクエストを代わりに受けるっていう話を一応しに来た。聞いているとは思うんだが」

「はい、それでしたら聞いています。一週間で十五匹のジャイアントトードの討伐ですね」

 

 聞いていたのより五匹ほど多くはないだろうか、ウィズさんや。

 

「あ、ああ。それなんだが、勝手に承諾するのはどうかと思うぞ…」

「えっ、確認も取らず、シロウさんに代わりに受けてもらうなんて言っていたんですか。ウィズさんは」

 

 勝手に俺まで承諾していることになっていた。

 なんでさ。

 

「ということは、このクエストでパーティを組んでいることも聞いてませんか?」

「初耳だぞ、それ!」

 

 そういう話は先にしてくれ。

 クエストを代わりに受けたりするのは構わないが、重要なことぐらいは伝えてもらいたい。

 

「キミがウィズの言っていた代わりの人だね」

 

 ふと、横から声が掛かった。

 振り向くとそこには頬に傷のある銀髪の少ね…いや、少女がいた。

 そして、その横に硬そうな装備を身に纏う金髪の女性がいた。

 

「あんた達がウィズのパーティか?」

「一時的なパーティだけどね。わたしはクリス。盗賊だよ。こっちはクルセイダーのダクネス」

「俺は衛宮士郎。アーチャーだ。」

 

 俺が名乗ると少し驚いていた。

 しかし、そんな素振りもすぐにやめ、笑顔になった。

 

「後衛職が代わりでよかったよ。わたしはどちらかというと前衛職、ダクネスは完璧なまでの前衛職だからね。後衛職が欲しかったんだ」

「なるほどな。けど、盗賊ならこんなクエスト受けるべきではないんじゃないか?」

 

 盗賊と言えばイメージ的に率先して戦うような職とは思えない。

 どちらかというと宝探しとかをする非戦闘員のイメージだ。

 

「本来なら探索ダンジョンに行くつもりだったんだけどね。ジャイアントトードが出過ぎたせいで探索ダンジョンへ向かう道にも現れて、全部中止された。だから、他のクエストを受けたんだ」

 

 それでこれしかなかったと。

 …後衛として働くけど、最悪前衛で戦う羽目になるかもしれないな。

 このパーティだと。

 

「わかった。よろしく、クリス。ダクネス」

「うん、よろしく」

「…ん。よろしく頼む」

 

 ------

 

「えっ⁉︎レベル2なの⁉︎」

 

 街から少し離れた場所でどんなスキルとかを持っているのかと聞かれたのでカードを見せることにした。

 1番初めに目につくのはレベルだろうから、この反応は仕方ないと思っている。

 

「そんなに驚くことか?」

「ウィズからは優秀なアーチャーだって聞いてたからね。レベル2だなんて思わないよ」

「レベル2であれば、私たち二人で戦うのと変わらん」

 

 流石にそれには少しムッとした。

 

「あのな、レベルだけが全てとは限らないだろ」

「基本はレベルだよ。スキルの種類も豊富になるにはレベルが高くないと」

 

 確かにこの世界はレベルを上げ、スキルを取得することも大切だ。

 だが、経験が一番だと思う。

 

「…それによく見れば、君は装備すら持って来ていないのだな」

 

 今更なことをダクネスが言う。

 最初見たときに気がつくと思うが…

 

「本当だ」

 

 クリスもか。

 

「武器ならある」

「弓も矢も隠し持つことは不可能だろう」

「何か、隠し持っているのかな」

 

 クリスは俺の方へと手を向ける。

 

「『スティール』ッ!」

「っ⁉︎」

 

 クリスが叫ぶ。

 すると、下半身が涼しい。

 まるで、ズボンを履いていないかのように。

 

「あのさ、どうやったのか知らないがズボンかえーー」

「わあああああああああああ!なんてもの取らせるのさぁぁぁぁぁ!」

 

 悲鳴とともに叩かれた。

 なんでさ。

 

 ------

 

「ごめんね、本当に何も持ってなかったとは思ってなくて…」

「街の外に何も持ってないとは普通思わないだろうからな。説明不足で悪かった」

 

 ズボンを履き直した俺はクリスの謝罪を受けていた。

 ダクネスは顔を手で覆っていた。

 

「窃盗スキルはランダムだから…」

「ランダムなものを使おうとするなよ…」

 

 正直、目的地に着く前にここまでのんびりとしていたら今日どれだけ倒せるか分からないので早く行きたいところだが

 

「すまない、ダクネス。見たくないものを見せてしまうことになった」

「…ああ、此方こそ取り乱してすまなかった。もう大丈夫だ」

 

 俺が謝ることかどうかは疑問ではあるが、一応謝っておく。

 そして、ようやく目的地へと再び歩き始めた。

 

「そう言えばどこに向かってるんだ?」

「元平原、かな」

「元?」

 

 元平原なんて言葉聞いたことないぞ。

 

「元々は本当に単なる平原だったらしいんだけど、最近見たらクレーターだらけだったらしいんだ」

 

 めぐみんのせいだな。

 爆裂魔法を撃ちまくったりしない限り、クレーターが平原を無くすほどに埋め尽くせるわけがない。

 

「そこに十五匹もいるのか?」

「それ以上いるかもしれないね。その時のためのキミだよ」

 

 狙撃して数を減らせ、と言うことだろう。

 

「どうやって狙撃するのか、興味がある」

「武器も無しに狙撃なんて出来ないと思うけど」

 

 まぁ、普通はそうだろうな。

 

「着いてからのお楽しみだな。別に教えてもいいんだが、実際に見せた方が早い。意味のないところで出すぐらいなら着いてからだ」

 

 今使っても魔力が減り続けるなんてこともないから出してもいいが、なんとなく出し渋っておこう。

 

 それから、数十分後。

 ようやく目的地に着いた。

 なるほど、元平原というのも分かる。

 

 そこは凸凹だらけでカエルだらけだった。

 

 正直あまりにもカエルが多く気持ちが悪い。

 クリスも引いている。

 ダクネスは恍惚な表情を浮かべている。

 

「ダ、ダクネス?」

「あ、あれだけのジャイアントトードの中に放り込まれれば、踏まれ蹴られ、そして舌で弄ばれた後食べられてしまうっ…!」

 

 何故それを嬉しそうに語る。

 こんな前衛でいいのか?

 

「ダクネスのことは放っておいていいから、ほら狙撃狙撃」

「あ、ああ。ーーー投影、開始(トレース・オン)

 

 前回と同じようにイメージする。

 片手に黒い弓。

 片手に螺旋状の剣。

 

 螺旋状の剣は、矢のように細い。

 

 それを見たクリスは理解が追いついていないような顔をしている。

 

「ど、どこからそんな大きな弓が…それより、それは矢というより」

「ああ、これは剣だ」

 

 螺旋剣(カラドボルグ)

 これは、ケルトの戦士が使っていたとされる剣。

 本来のものであれば、圧倒的な攻撃範囲と圧倒的な威力を誇る剣とされている。

 しかし、投影したものは本物とは違い、矢として使えるような形になっている。

 しかし、ただ矢として放ったとしても簡単に敵を貫通するほどの威力を誇る。

 あのカエル程度なら簡単に。

 

「それはただの剣というより、神器に近いーー」

「これは宝具と呼ばれていたものだ。かつての英雄が使っていたとされる武器。俺はそれを劣化品としてだが投影出来る」

 

 クリスはその剣をずっと眺めている。

 

「神器や宝具という言葉が聞こえたが、それはそれ程に凄いものなのか?」

「凄いなんてものじゃない!劣化品とは言ってもこんなものを簡単に作ってしまうなんて、あり得ないことだよ!」

「そんなに騒ぐとこっちに近づいてくるぞ」

 

 とりあえず、騒ぐクリスには静かにしてもらいたい。

 俺は軽く深呼吸をし、構える。

 

「---I am the bone of my sword.(我が骨子は捻れ狂う)

 

 螺旋剣に魔力が篭る。

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)

 

 剣を放つ。

 その剣は吸い込まれるようにカエルの集まる場所へと飛ぶ。

 そして、カエルの一匹に触れたと同時に爆発が起きる。

 

 壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

 

 宝具に篭った魔力を爆発させるもの。

 偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)ほどの宝具を爆発させるとAランク程の威力を出すことができるとされている。

 

 カエルの殆どを今ので仕留められただろう。

 威力はクレーターとカエルの死体が物語ってくれている。

 

 それを見たクリスとダクネスは驚きのあまり放心していたようだが、ハッと意識を戻しこちらを見て問いかけてくる。

 

「い、今の神器に近いものなんだよ⁉︎あんなに簡単に爆発させてどうするの⁉︎」

「あ、あれは投影したものだから、気にするようなことじゃ…」

「あ、あれを私目掛けて撃ってくれ!」

「なんでさ⁉︎」

 

 クリスには説教を、ダクネスにはあれを放ってくれと頼まれる。

 クリスのことに関しては確かに分かるが、ダクネスの言うことはさっぱり理解出来ない。

 

「劣化品でも、もっと他の使いかひやぁっ⁉︎」

「クリスっ⁉︎」

 

 それは突然の出来事だった。

 倒しきったと油断していたからだろう。

 こちらへと伸びてくる舌に気がつくことができなかった。

 クリスはそのままカエルの口へーー

 

 口の中へと行く前にカエルはクリスを宙に放り投げた。

 何故なら

 

 舌に深々と刺さった二本の剣。

 それがカエルに痛みを与えたからだった。

 

 俺はクリスが掴まれたと同時に干将・莫耶を投影した。

 それをカエルへと投げた。

 

 干将・莫耶は夫婦剣。

 二本が揃うことによりあらゆる効果が生まれる。

 そして、この剣の特性上、引き離されることはなく、互いに引かれ合う。

 それにより、投げた二本の剣が同じ場所へと突き刺さる。

 その為に舌の根元目掛けて、この二本を投げていた。

 考えて行った行動なんかではなく、身体が勝手に動いていた。

 

 宙に放り投げられたクリスを両腕で受け止める。

 

「大丈夫か、クリス!」

「は、はいっ」

 

 そのまま離れて距離を取ろうとするが

 

「こいつともう一匹いたのか…!」

 

 このまま下がってクリスを置いたところで、一体倒してる間に食われるのがオチだろう。

 なら

 

「クリス、落ちないように俺に掴まれ」

「えっ、あ、はいっ」

 

 クリスが落ちないよう俺に抱き着く。

 もう少しあっただろうとも思ったが、そんなことを考えている場合じゃない。

 

 干将・莫耶を投影する。

 それを投げ、再び投影し、投げる。

 数回投げつけると身体のいたるところに干将・莫耶が突き刺さったカエルになっていた。

 

「弾けろ…!」

 

 魔力を一気に流し込み、干将・莫耶を爆発させる。

 

 これで一匹…!

 

 もう一体の方を見ると…

 

「ああっ…!これから、カエルに食われてしまうのかっ!ゆっくりとだが飲み込まれていくっ……!くっ…!やるならひと思いにっ…!じわじわと飲まれていくのもまたいい…!」

 

 恍惚な表情を浮かべたダクネスが食われかけていた。

 

「あれ、助けなくてもいいか…?」

「一応、あれでもわたしの友人だから助けて貰えないかな」

 

 クリスは食われかけの友人から目を逸らしつつも、頼んできた。

 

 

 こうして一週間でジャイアントトードを十五匹討伐するというクエストはクリアした。




はい。クリスとダクネスの登場でした。

クリスとウィズの絡みは無かったと思うし、あるはずもないと思うんだ。だって、クリスってあれだし、ウィズはあれだし。
お互い話す機会とかもないと思うんだ。

今回のクエストは元々ウィズが受けたものでしたが、ダンジョン探索を中止させたジャイアントトードに対して怒りの鉄槌を下そうとしたクリス(とおまけのダクネスの二人)が受けようとしたクエストでもあり、被ってしまった流れでパーティに的な感じです。

クリスはヒロインでもいいと思う。

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