このきっと素晴らしい世界で美遊に祝福を   作:録音ソラ

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お気に入りがもう200いくんじゃないかってぐらいまで来ましたね。驚きです。

あと感想もいっぱいありがとうございます。君たちアーチャーを何だと思ってるんだって言いたくなるぐらいアーチャーに対するコメントしかないなぁ!

ルーキー日間にもちょこちょこ出るようになってますね。いやぁ、上位に入れないにしても50位以内に入れることだけでも嬉しいものですね。

更新を予定より遅れてしまってすみません。大学生活が思いの外疲れる…しんどい。まだ一回生よ私。

遅れることがあるかもしれませんが良ければ読んで楽しんでもらえたらなと思います


5話 この世界

「はい、指定数より少し多いですが、クエストは完了です。ご苦労様でした。こちらが報酬の10万エリスです」

 

 報酬を受け取り、袋の中に入れる。

 しかし、あのカエルをここに持ってくれば五千エリスになったのか。

 まぁ、ほぼ全てが灰になって、一匹が細切れだ。

 持ってこれないものになっていた。

 それにしても

 

「3日かけるような依頼でこれだけってなんか少なくないか?」

「パーティなどで受けると割に合わないという人もいますよ。人が多いと分け前も減りますので、どうしても足りませんからね」

 

 背負われているめぐみんが少な過ぎると嘆く。

 大したことないような敵に思えるが、それもめぐみんや俺のような火力があればの話だ。

 それにアレだけ大きい相手だ。

 初めて対峙した時、まともに戦えるとは思えない。

 倒すとなると確実にパーティを組まないとまともに戦えないようにも思える。

 まるで命を軽視しているように見える。

 

「あの〜…それを私の前で話すのは…」

 

 報酬を渡してくれた受付の人がとても困っていた。

 まぁ、それもそうか。

 

「ああ、悪い。聞こえるようなところで話すことじゃなかった」

「い、いえ…」

 

 場所を考えるべきだったな。

 それに受け取ってすぐに話す内容でもない。

 

「…冒険者は税金が免除されています」

 

 受付の女性がそう口にする。

 

「…本来のクエスト報酬の一部が税金として引かれていると?」

「そう考えてもらえれば」

 

 それならば、妥当、なのだろうか。

 だとしても、元が少なく思える気がしないでもない。

 しかし、この報酬で装備の修理、宿屋への宿泊費などを引けば殆ど何も残らない。

 税金が一切払えないような冒険者だらけになるだろう。

 なら、報酬の一部を先にとっておいて、税金という概念を忘れさせた方がいいのかもしれない。

 

「…こほん、それにしてもとても仲のいい兄妹に見えますね」

 

 どうやらこれ以上、この話をする気は無いということだろう。

 

「そうか?美遊は確かに妹だけど、背負ってるこれは単なる行き倒れにしか見えないだろ?」

「女の子をこれ扱いとは失礼ですね、この人」

 

 行き倒れにしか見えないのは否定しないのか…

 それに、背負っていて思ったが正直ちゃんと食べてるのかと聞きたいぐらいには体重が軽い。

 本当に単なる行き倒れじゃないかこれ。

 

「それに私としてはこの人の妹扱いをされた方が不満です。同じぐらいの歳じゃないですか」

「「えっ⁉︎」」

 

 俺と美遊だけが驚く。

 何を言ってるんだ。

 どう見ても美遊と年齢が近いようにしか見えない。

 

「めぐみんさんとシロウさんの年齢はさほど変わりありません。一つ差ぐらいですよ」

 

 受付の女性もそう言ってくる。

 正直信じられない。

 

「じょ、冗談じゃない、のか?」

「冗談は言いません。これでも17ですよ」

「…それでその体型なのは、栄養不足…?」

「ちょっとあなたの妹さん、失礼過ぎませんか?哀れなものを見るような目で見てくるんですが…」

「し、仕方ないんじゃないかな?」

「兄妹揃って失礼ですね」

 

 美遊と同じ歳だと見間違えるほどに成長してない。

 身長はもちろん、体重も軽い。

 あと、背中に当たる感触も正直、女の子を背負っているのだろうかという感じだ。

 どういう生活を送ってきたんだ…

 俺に背負われているめぐみんが美遊と言い合いをしていると、ギルドにぞろぞろと人が入ってきた。

 クエストが終わった人たちとかだろう。

 

「そろそろ邪魔になるだろうから、離れるか」

 

 とりあえず、外に出る。

 暗くなり始めているのでそろそろ泊まる宿を探したい。

 行き当たりばったりで探すとなるといつ着くのか、それに部屋が空いているのか不安になる。

 

「なぁ、めぐみん」

「私の家の貧乏さを舐めないで…なんですか?シロウ」

 

 貧乏だということを堂々と言おうとしているめぐみんに宿屋の場所を聞いても無駄なのでは、と思いそうになった。

 とは言え、何処かで寝泊まりはしているだろうから聞いてみるか。

 

「いつもどこで寝泊まりしているんだ?」

「馬小屋です」

「……………」

 

 貧乏過ぎやしないか?

 雨風はしのげるだろうが、衛生面的には最悪だろう。

 

「…宿屋って何処にあるか知ってるか?」

「ええ、もちろん知ってはいますが」

「なら、宿屋の場所を教えてくれ。流石に馬小屋で寝る気なんてないし、美遊をそんな場所で寝させられない」

 

 流石にそんな場所で眠れるはずもないだろう。

 エインワーズがどんな場所で美遊を捕らえていたのかは知らないが、あの時の姿からして牢屋に閉じ込めたまま、なんてことはしていないだろう。

 牢屋だとしても、馬小屋よりマシな場所だ。

 

「いいですが、お高いですよ?今日の報酬の殆ど取られてしまいますが」

「そこはそんなにいい場所なのか?」

「いえ、普通の宿屋です」

 

 高過ぎやしないか?

 まぁ、三人ともバラバラの部屋を使えばそうなるのかもしれないな

 

「まぁ、馬小屋よりマシならいいか。一応幾らかはまだある」

 

 彼女の言っていたことが本当ならまだ余裕はある。

 ただ、怪しいから後でこの袋の中身をめぐみんに確認してもらおう。

 

「わかりました。案内します。案内が終わったら、その、馬小屋の方まで運んでください。私はそっちで寝泊まりしますので」

「?何言ってるんだ。色々と世話になったからめぐみんの分の宿泊費ぐらい出す。それにまだ色々と教えてもらうこともある」

 

 この世界の地理とか、物価とか、生活に必要なこととか。

 生きていくためには聞いておかないと。

 

「教えてもらうこと、ですか?」

「ああ、こっちの世界のことはまだ何にも知らないからな」

「こっちの世界?」

 

 何も言ってなかったな、そう言えば。

 

「そのことも宿に着いたら話すよ」

「…わかりました。では、案内します」

 

 背負われためぐみんの案内の元、宿屋へ向かった。

 

 ------

 

「なるほど、そんなことが」

 

 宿に着いてから俺はここに来るまでの経緯を簡単に話した。

 全てを話すわけにもいかない。

 美遊を聖杯として認識されても困る。

 だから、聖杯は聖杯で別のものとして話した。

 少し嘘をついているということに罪悪感を覚えないわけではないが

 

「…意外とあっさり信じるんだな」

「先程の戦いぶりや冒険者カードにあるスキルを見てしまうと納得出来る点が多いですから」

 

 本来、冒険者はカードにあるスキルを取ってからスキルが使用できる。

 しかし、俺の場合、スキルを取る前からアーチャーに必要なスキル、それ以外のスキルも取れていた。

 美遊は必要なスキル殆どなかったからめぐみんが取ってくれたらしい。

 他人のカードを操作することができることが出来てしまうのはどうかと思うが。

 

「それにシロウのスキルには名前からして魔法使い系に近いスキルも多いですからね。アーチャーが取れるとは思えませんし。スキルが元からあるなんてことはほぼ無いですからね」

「色々と異常過ぎたから、信じられたと」

「そういうことです」

 

 成る程。

 しかし、信じられたというより、信じるしかなかったというのが本当だろう。

 …いや、その割にはさっきの話を聞いて目がキラキラ輝いているんだが…

 まさか、本当に純粋に信じたのだろうか…

 もしそうなら、めぐみんが心配になる。

 

「と、まぁ、そういうわけで色々と教えて欲しい」

「わかりました。では、まず我が紅魔族についてから…」

「「それはいい(いらない)」」

「お二人とも酷く無いですかっ!」

 

 そんなこんなで色々と教わった。

 まず俺たちがいるのは駆け出しの冒険者が集まる街、アクセル。

 そして、ベルゼルグ王国という国。

 あの女神が言っていた王都はこの国にあるもののことを指していたらしい。

 他にもダンジョンのことや魔王のことも聞けた。

 あと、結局紅魔の里のことも聞くことになった。

 

「あ、そうだ。この中身なんだが…」

「報酬を入れていた袋ですか?」

「幾ら入ってるのかわからないし、まず何が入ってるのかさえまだ見てないんだ」

 

 あの空間で貰った袋。

 めぐみんはそれを受け取ると、ひっくり返した。

 

 中からは紙幣や硬貨、さらには宝石のようなものまで出てきた。

 なんだこれは

 

「これはこの国のお金ですよ。紙幣や硬貨もあります。これとこれ、あとこれもです」

 

 そう言って、俺の前に置いていく。

 そして、めぐみんがある硬貨を取ろうとして止まった。

 見ると、それは銀貨だった。

 

「どうしたんだ、めぐみん?」

「…………」

 

 物欲しそうな目でじっと見てる。

 銀貨の山に目が釘付けと言った感じで見てる。

 

「おい」

「なんでこんなもの持ってるんですか…」

「それはさっき説明しただろ?」

「そうなんですが……これは、エリス魔銀貨と言って一枚百万エリスですよ…」

「………百…万?」

 

 あの女神は何と言っていた?

 五十万と言っていなかっただろうか?

 いや、よく思い出すと女神とは別の銀髪の子がこの袋を持ってきていた。

 そして、中身を確認せず渡していた。

 

「多めに貰っていた、ってことか」

「多めに貰いすぎなぐらい貰っていますよ!」

 

 銀貨はざっと数えて100枚はある。

 何でこんなにあるんだ。

 普通に渡しすぎではないか?

 というより、普通の紙幣や硬貨より量が多い。

 

「それにこれは最高純度のマナタイトですよ!使い捨てとはいえ、魔力を引き出して使うことが出来ます。あと、高価です」

 

 何個か取ろうとしためぐみんの手を叩く。

 資金面をなんとかしてくれとは言ったが、流石にやりすぎだ。

 

「あ、これ住居代も入ってるのか…」

「だと思いますよ。これだけあれば豪邸でも買えますね。というより、買って拠点を作った方が安く済みますよ」

「明日不動産屋でも見てみるか…」

 

 あと、仕事も探そう。

 冒険者としての仕事だけでは、すぐにこの蓄えも尽きるだろう。

 税金が免除だとしても、水道代とか食費はかかる。

 

「やることは決まったな。明日は俺は不動産屋に行って来るから、美遊はめぐみんと買い物だな」

「え、お兄ちゃん?」

 

 何故これと、というような目で見て来る。

 もしかしたら話も長くなるかもしれないし、そうすれば美遊の服とか欲しいものを買ってやれない。

 だから、めぐみんと行って貰いたいんだが。

 

「私に不満があるなら言ってもらおうじゃないか」

 

 美遊が何を訴えているのかが分かったらしいめぐみんが睨んでいる。

 

「あなたと買い物に行ったら無駄な出費になる」

「そんな無駄になるようなもの買いません」

「一緒に美遊の服を買ってきてくれると嬉しい」

「任せてください。私のセンスにかかれば-」

「黒とか赤とかで格好良さの重視した服を選ぶつもり?」

「何故わか、では無くちがわい!」

 

 なんだかんだ美遊とめぐみんは仲良く話してるように見える。

 見え…るはず、見える気がする、見えてると思う。

 少し不安だがなんとかなるだろう。

 

「とりあえず、美遊にお金は渡すから明日好きなもの買って来るといい」

「…うん」

 

 明日、不動産屋の帰りにでも何か買って帰ろう。

 

「さて、それじゃあ明日に備えて寝ようか」

「そうですね」

「俺はそこの椅子で寝るから、二人はー」

 

 めぐみんと美遊に両腕を掴まれた。

 なんでさ。

 

「お兄ちゃんはベッドでゆっくり休んで、この人を椅子で寝させればいい」

「ちょっと待ってもらおうか。そういうことでしたら、あなたこそ椅子で寝ればいいんじゃないでしょうか。何もしてないんですから」

「お兄ちゃんと寝たいの?」

「ち、ちがわい!」

 

 美遊を椅子で寝させようって大人気ないな、めぐみん。

 この中で1番年下の女の子だぞ。

 

「というより、ベッド一つしかないんだぞ?女の子同士なら気兼ねなく寝れるだろう?」

「1番疲れてる人がしっかり休まなくてどうするんですか」

「お兄ちゃんこそベッドでゆっくり休むべき」

 

 いや、だからその流れだと

 

「俺は結局どっちかと一緒に寝ることになるんだが…」

「嫌なんですか?」

「それは俺が聞くことだ。美遊は妹だからともかく、いや、美遊もお年頃なんだし、兄と一緒に寝ようとはならないだろ」

「お兄ちゃんと一緒がいい」

 

 ------

 

 数分後。

 俺は眠れていなかった。

 というより、どうしてこうなるんだ。

 

 俺の左右で美遊とめぐみんがぐっすりと眠っていた。

 

(美遊が眠れるのは分かるが、めぐみんは何で眠れるんだ…?)

 

 ついさっき知り合った男の隣で眠るのはどうなんだ。

 それに歳も一つ差しかない相手の隣でだ。

 

(女の子って言うのはよく分からないな)

 

 めぐみんを見て、一つ差しか変わらない女の子。

 後輩だった桜のことを思い出す。

 俺にカードを託し、彼女の兄によって殺された後輩。

 もし彼女とあの場から逃げていればどうなったんだろう。

 

 彼女の側にいれば、俺は正義の味方でも、魔術師でもなく過ごしてこれた。

 彼女の笑顔に救われていた。

 俺はそんな彼女を救えなかった。

 目の前にいたと言うのに。

 

 ここへ来たことは良かったと思う。

 美遊が聖杯として、物として扱われることなく、友達になれそうな子もいて、楽しいことだらけになりそうだと思うから。

 

 けど、俺は一人の女の子を守れなかったと言う後悔を胸にここで生きていってしまうのかもしれない。




はい、と言うことで次回は
シロウ、家を買う
美遊、お買い物へ行く

の二本でお送りします(きっと


いやぁ、カズマさん早く来ないかな

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