このきっと素晴らしい世界で美遊に祝福を   作:録音ソラ

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はい、3話では終わりませんし終わらせません。
投稿少し遅れました。
前回の終わり方的に次回作ご期待くださいとか書かれそうですね、あれ。

これから始まっていきます。


3話 異世界生活

 俺と美遊はこの街を見て歩いていた。

 俺としては冒険者としての登録を済ましてからの方がいいと思ったが、美遊が街の中を見てみたいって言い出した。

 まだ、この世界のことを受け止められていないこともあるだろうが、初めて見るものに興味津々なんだろう。

 まだ日も昇っている事だから、ゆっくり探してもいいか。

 そう思い、美遊とのんびりと歩く。

 

 途中、何かとぶつかった。

 

 黒いマント、三角帽子、変わった形の杖を持った何かが真横で倒れた。

 

「っと、すみません」

 

 ぶつかった拍子に倒れたのだろうと、手を差し伸べる。

 しかし、何故か

 

 動かない。

 

 不思議に思いしゃがんでみるとうなり声のような声が聞こえた。

 ぶつぶつと何か言っている。

 

「お、お腹が空きました…もうダメです」

「大丈夫か、あんた」

 

 とりあえず、倒れている人を立ち上がらせる。

 意外と軽かった。

 それに見てみると小さな少女だった。

 眼帯をしているが、見た目から魔法使い、というのが似合いそうな格好。

 そして、赤い目。

 

「ぶつかってしまったのは悪かった。歩けそうか?」

「もうダメです…何か食べさせてください…歩くのも限界です…」

「あ、ああ…何処か飲食店を探そう」

 

 その少女を背負い、美遊の手を引いて飲食店を探すことにした。

 ふと、視線を感じ横を見ると何故か美遊が背負われた少女を見ながら羨ましそうにしていた。

 

 ------

 

 ガツガツもぐもぐバリムシャァ

 

 なんて、効果音が聞こえてきそうなほど凄い勢いで平らげていく変わった少女。

 それ程までに腹が減っていたのか?

 というより、遠慮ってもの知らないのか…?

 実際、遠慮されるよりも満足してもらえるのが1番だが物価などさっぱりな俺からするとどれだけの出費になるか不安だ。

 

「もぐもぐ……はふぅ…ありがとうございます、通りすがりの人」

「通りすがりの人の前で遠慮もせずよく食べるなぁ…」

 

 小さなその見た目のどこに入るんだと言わんばかりの量を平らげた少女を呆れながら見ていた。

 隣で美遊が引いたような目で見ながら、ゆっくり食べている。

 まぁ、見てるだけで腹がいっぱいになりそうな食べっぷりだったからなぁ。

 

「そんなになるまで、なんで食べなかったんだ?」

「ある事情よりパーティを組まなければクエストさえままならないのです。なのに、何故か誰もパーティを組んでくれないんです。なので、お金がなく、ご飯も食べれない状態でした」

「そうなのか」

 

 多分彼女も冒険者なんだろう。

 ただ、何というか妹と歳は近そうな雰囲気だが、そんな歳の子でも冒険者として働くことができるのか。

 

「君、冒険者なのか?」

「はい!しかし、最弱職では無く、上位職!アークウィザードの我こそは!めぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手!最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

 

 多分カッコいいポーズをとっているつもりなんだろう。

 頑張ってそんな感じのポーズをしている風に見えて何だか可愛らしい。

 しかし

 

「冒険者に最弱職とかあるのか…」

「あの、スルーは流石に少し寂しいのですが…」

「あ、悪い…」

 

 流石にアレを無視するのは失礼だったみたいだ。

 美遊はあのポーズの意味を考えているらしい。

 多分、意味なんてないと思うぞ…

 

「ところで、えーっと……」

「めぐみんです」

「め、めぐみんって本名なのか…?」

 

 あだ名をわざわざ格好つけてまで言わないか…

 それに、自分でつけた名前にしては、名乗りの勢いに合わないような名前だった。

 

「私の名前に文句があるなら聞こうじゃないか」

「文句も何もない。ただ驚いただけだ。そんな名前の人とは会ったことがないから。俺は衛宮士郎だ。あと隣で色々考え込んでいるのは妹の美遊だ」

 

 美遊は「めぐみん……名前は親が子に与える際、意味や画数による風水などを考えつけるはず…あの名前にどんな意味が…」なんて考え込んでいた。

 ずっと考えっぱなしだが、大丈夫なのだろうか。

 疲れきってないだろうか。

 

「あー、めぐみん。俺たちは今から冒険者の登録をしたいんだが…」

「登録していなかったのですか?冒険者ギルドはすぐそこにありますが」

 

 そう言ってめぐみんは窓から見える建物に指を指す。

 飲食店を探しているうちにすぐ近くまで来ていたようだ。

 

「ギルドでは食事も取れるのでそちらへ連れて行って貰えると思っていましたが、すぐ近くのこちらへ来たのはここへ来るのが初めてだったからなんですね」

「ああ、来たばかりで右も左も分からないんだ。だから、少し歩き回っていた。それに美遊が街の中を見てみたいって言うからな」

 

 美遊にとって、この広い街や沢山の人を見かけると言うこと自体が珍しいんだ。

 前にいたところは、ジュリアンが行なった儀式の失敗から現れた闇により人も街もほとんどなくなっていた。

 それに美遊は結界のある家の中で人目に触れることなく生きて来た。

 俺や切嗣と会ってからもずっと家の中に居たんだ。

 こんな街を見れば、いろんなところを見たくもなる。

 

「確かに色々ありますが、こんな駆け出しの街より王都の方が凄いですよ」

「王都?」

「はい、少し離れてはいますが、ここにいる人たちよりレベルが上の人が行くところです」

 

 多分そこが勇者なんて呼ばれるような奴が集まる街なんだろう。

 

「冒険者カードもない人はここからスタートですね。ご馳走になったお礼にギルドまで案内しますよ」

「すぐそこなんだろ」

「案内しますよ」

 

 笑顔で迫って来る。

 正直近すぎる。

 ここまで言われると断れない。

 

「わかった。お願いするよ、めぐみん」

「任せてくださいっ」

 

 なんて、話しているうちに美遊も食べ終わったようだ。

 会計を済ませようと、とりあえず紙幣で払うと6000エリスほど返ってきた。

 あれ、10000エリスだったのか。

 あと美遊、めぐみんがもうよく分からないからと言ってずっと引っ付かれたままだと歩きにくいんだ…

 それにめぐみんはめぐみんで、袋の中を見て目を輝かせているがそれ程までに金欠なのだろうか。

 

------

 

 その後、めぐみんに着いて行きギルドへと入る。

 結構広い空間だった。

 目の前には窓口が3つあり、1つだけ長蛇の列ができている。

 クエストが貼ってあるボードもある。

 ここで食事をしている人の姿も見える。

 カウンター席まであるのか。

 

「この長蛇の列は無視して、空いてるところから冒険者登録をしましょう。あと、一人登録料1000エリスかかりますよ」

 

 登録料1000エリス…

 高いのかよく分からないが、タダでは冒険者出来ないのか。

 資金面をなんとかしてもらって正解だ。

 

「冒険者登録をしたいんだが…」

 

 3つの窓口のうち左にあった窓口へ。

 真ん中の窓口にはどうやら金髪の少し露出が多いのではないかと思う服装の女性がいた。

 多分彼女目当てなんだろう。

 しかし、あの服装はどうなんだ……

 

「はい、冒険者登録ですね。お一人1000エリスの登録料がかかります」

「妹も登録するから2000エリスだな」

 

 袋から先程の釣り銭のうちの2000エリスを取り出し渡す。

 

「はい、確かにいただきました。では、こちらのカードに触れてください。それであなた方の潜在能力が分かりますので、潜在能力に応じてなりたいクラスを選んでくださいね。選んだクラスによって、経験を積む事により様々なクラス専用スキルを習得できる様になりますので、その辺りも踏まえてクラスを選んでください」

 

 俺と美遊はカードに触れる。

 すると、そこに名前や数値などが書き込まれていく。

 

「はい、けっこうです。エミヤシロウさんですね。潜在能力は……こ、幸運以外がとんでもないものですよ!極端に幸運が低いですが…冒険者としてやっていくにはあまり関係ないものですので、どんなクラスにもなれますよ!」

 

 それもそうだろう。

 完璧とは言えないが、アーチャーの技術や魔術回路がこの身体と同化、いや置換されていたのだから。

 多少容れ物がポンコツだろうと、長く英霊と同調していたのだ。

 身体能力は英霊の紛い物ほどにはなっている。

 

「魔力と魔力容量も多く、知力も十分ありますので、アークウィザードと言った魔法使い。筋力などを活かしたソードマスターなんていうものにもなれますよ!」

「他にどんなものがあるか見てもいいか?」

「はい!色々なクラスがありますので自分に合ったものを選んでください」

 

 あるのなら、彼と似たものにしよう。

 置換されているからというわけでもないが、戦闘スタイルとしては1番合っている。

 探している間に美遊の結果を聞いておこう。

 

「はい、けっこうですよ。エミヤミユさんですね。潜在能力は……凄い…この歳でここまでの潜在能力があるなんて…!それに魔力容量だけが特にとんでもない量になっていますよ⁉︎ほぼ無限にあると言っても過言ではないほどに!」

 

 …そこまで凄いのか。

 確かに美遊は運動も得意で、勉強も出来る。料理も何でもこなす自慢の妹だ。

 そこまで凄くても不思議ではないのかもしれない。

 

「お兄さんと同じでどんなクラスにでもなれますよ!魔法使いやプリーストなんていったクラスでしたら、無限に魔法が使え、近接戦でも戦える万能職になってくれるほどです!」

「プリースト」

「プリーストですね。上位職のアークプリーストにしておきます!」

「これでお兄ちゃんが傷付いても助けることが出来るよ」

 

 美遊はそう微笑みかけてくる。

 美遊を助けたあの日、ボロボロになるまで戦ってきた俺を見たから、なのだろうか。

 戦いに前に出るものを選んでいたら止めるところだったが、回復役なら安心して美遊を守ることが出来る。

 

 それに、俺は探していたものがあった。

 

「俺はアーチャーにするよ」

「わかりました。では、アーチャーで登録します」

 

 登録の終えたカードを渡される。

 このカードに色々と書かれているようだ。

 自分の持っているスキルなどが書かれており、触れると色々と確認も出来るようだ。

 

「では、今後の活躍を期待しています。シロウさん、ミユさん」

 

 そう言って笑顔を浮かべた。

 

 因みに俺たちの隣でめぐみんが「無限の魔力容量…無限…爆裂魔法が撃ち放題…!」なんて言いながら妹を見ていた。

 怖がってるから流石に注意した。

 

 ------

 

「では、冒険者登録が終わったみたいなので私とパーティを組んでください」

 

 ギルドにあるクエストを見ようとした時、めぐみんが言った。

 そう言えばめぐみんはパーティを組まないとまともにクエストさえ受けることができないとか…

 

「構わないけど、いいのか?今、登録したばかりでレベルも1らしいが…」

「私も6なので問題ありませんよ」

 

 レベル6。

 少しはクエストを受けたことがある、ということだろう。

 ならば、ある程度教えてもらえる仲の人がいるのはいいかもしれない。

 

「分かった、ならよろしく。めぐみん」

「こちらこそよろしくお願いします。シロウとミユ」

「よろしくお願いします…」

 

 挨拶も済んだことだから、と、クエストを探す。

 3日以内に五匹のジャイアントトードの討伐

 

 そのクエストが目に止まった。

 今見た中では討伐系がこれしかない。

 というより、殆どがジャイアントトードの討伐依頼だった。

 

「なんで、こればっかりなんだ…?」

「今の時期、繁殖期ですから」

 

 小さな子から繁殖期ですからなんて言葉聞きたくなかったなぁ…なんて思いつつ、とりあえず受けることにした。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!武器とかはあるんですか!」

「それなら問題ない」

「それにスキルポイントを使ってスキルも手に入れないと」

 

 スキル。

 この世界では、スキルポイントを振り分けることによってスキルが使えるようになるらしい。

 というわけで、そのスキル欄を見てみると

 

「スキルポイント使いました?」

 

 なんて聞かれた。

 そこには、スキル欄には

『鷹の瞳』『心眼』『弓』『剣』など様々なものが書かれており、『投影魔術』『強化魔術』なども書かれていた。

 

「聞いたことのないものが多いですね…スキルポイントを使わず元からあったスキルということでしょうか?」

 

 そう言い、カードを返してくる。

 そして、今度は美遊のカードを見る。

 そこには

『魔力供給:対象 衛宮士郎』『聖杯』と書かれていた。

 

「なんですか、これは?魔力供給というのは文字通りなのでしょうけど聞いたことありませんし、聖杯?というのも初めて見ますね」

 

 聖杯。

 この文字を見た時、俺たちはまだ逃れられないのかと。

 これの効果が願いを叶えるものであれば、美遊はまた同じことになるかもしれない…

 

『聖杯』と書かれた場所に触れてみる。

『聖杯』:このスキルの所持者、または魔力供給の対象となっている者が手に入れる経験値の2割を魔力として貯蔵していくスキル。保有できる魔力容量はスキル所持者の半分程度。

 

 どうやら正しい聖杯としての在り方ではなくなっているようだ。

 しかし、こんなにも魔力というものは貯められるのだろうか?

 

「こんなにも魔力を貯めてしまうと、ボンッてなったりしないんですかね…」

 

 不吉なことを言うな。

 ただ、聖杯に魔力を貯めすぎるのは良くない気がする。

 

「まぁ、変わったスキルを持っているみたいですが、とりあえずミユはアークプリーストとしてのスキルを全部習得してしまいましょう!ぽちぽちと押していくだけですよ」

 

 めぐみんがひたすらぽちぽちと押していく。

 美遊は何かよく分かっていないようでされるがままだ。

 なんだかんだでこの2人は友達になれるかもしれない。

 歳も近いだろうから、仲良くなってほしいと俺は思う。

 

「よろしくな、めぐみん」

「?ええ、任せてください。紅魔族随一の力お見せしましょう!」

 

 ポンっと頭に手を置く。

 少し睨まれたが、なんでさ。

 美遊は何をされたか分からずオロオロしている。

 

 これからクエストを受けるのだが、大丈夫なのだろうか?




変なところだらけでな気がする……
と、まぁ、めぐみんです。とりあえずどんなタイミングでも腹空かせてそうなめぐみん登場!
ウェブ版めぐみん可愛すぎかよ、惚れるわ……

時間軸的にクズマサンはまだ来てません。もう数話続けば出る、はず、かと思われ…
読んでいただけるとやる気につながりますのでどうぞよろしく。そして、これはひどい!とか、見てられねぇ!とかありましたら感想の方で容赦無く…

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