一応今回も和真さんがメイン、な気がする。多分きっとそのはず
今回は早めに書き終えた…!
ある日、珍しい客が来店した。
「いいか、アクア。絶対喧嘩とかするなよ?暴れるなよ?」
「私は女神よ?なんでそんなチンピラみたいに扱われてるのか不満しかないんですけど?カズマは私のことなんだと思ってるの?」
店の前で話す二人の声がよく聞こえてくる。近所迷惑まではいかないだろうけど、ボリューム落としたほうがいいんじゃないか?とりあえず、オモチャの弓の準備でも…
隣で弓矢を準備している俺を見て不思議そうにする二人。ウィズはこの後どうなるかぐらい気付いてもいいと思うんだ。
カランカラン、と小さな鐘の音がなる。ドアを開け、二人の男女が入ってくる。
「いらっしゃ……ああっ⁉︎」
「あの時のクソアンデット!見つけた後どうなったかなぜか全然覚えてないし、目が覚めたら馬小屋だったけど!今日こそ成仏させてやるわ!私があんな馬小屋で寝ているのにこんな店開いてるなんて生意気よ!神の名の下にこの店を燃やしぃたいっ⁉︎」
入店と同時に暴れたアクアを和真がダガーの柄で後頭部を殴り、俺が矢で前頭部を射る。
頭を押さえて店の中で踞るアクアを無視して
「ようウィズ。久しぶり。約束通り来たぞ。美遊ちゃんも久しぶごふっ⁉︎」
第二射目は和真の前頭部に命中した。来店した客二名は来店と同時に店の中で頭を押さえて踞っていた。迷惑極まりない。
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「この店は人の頭に矢を射るのが当たり前なのか…」
未だに踞るアクアをよそに和真は立ち上がり、文句を言ってくる。
因みに美遊は店の奥に逃げていった。和真は苦手なようだ。
「美遊が嫌がること分かってるんだからそろそろその呼び方やめたらどうだ?俺もいちいち射るのは面倒になって来たんだから」
「面倒なら射らなきゃいいだろ。俺だっていちいちこの店入るたびに射られちゃ前頭部に穴開くわ!」
「美遊が嫌がるようなことさえしないなら何もしないんだって。和真はいちいち美遊を怖がらせるだろ」
「そんな覚えは…この紅茶美味いな。士郎が淹れたのか?」
「最近日本茶っぽいものより何故か紅茶を淹れる方が上手くなってきたんだ」
和真とのんびりと話しているとウィズが
「そう言えば、カズマさんはどうして今日はこちらに?」
「ああ、そうだった。ウィズに何か使えるスキルを教えて欲しくてさ。リッチーならではのスキルとかあるんだろ?」
そう和真がウィズに問いかけた時、背後で何かを感じた。
殺気とも取れそうな雰囲気を感じ、振り向くとそこには
-ーー頭を押さえたまま涙目で和真を睨むアクアがいた。
「どういうことよ、カズマ!リッチーよ、リッチー!こんなの薄暗くてジメジメしたところが大好きな、いわばなめくじよ!」
「ひ、酷いっ⁉︎」
「店長泣かせるな」
叩いて黙らせる。言いたい放題言ってもらっては困る。
「うぅ……シロウもシロウよ!こんななめくじいたいっ!リッチーのいるような店で働くなんて!なめくじになるわよいたいいたいっ!」
「とりあえずウィズをなめくじ扱いするのはやめてやれ。泣きかけてるぞ…」
なめくじと言うたびにビクッと震えるウィズ。その度にアクアを軽く叩いていた。この馬鹿は口で言ってもやめないということはよく知っている
ウィズはよく見るともう泣いてるんだが…。
「リッチーのスキルは普通は覚えられないから覚えておいて損はないだろ?それに今のままじゃ強い相手に勝てないんだ。士郎がいない時にクエストに行って、危険な目にあって助かるとは限らないだろ?戦力アップのためにウィズから教えてもらおうと思ってるんだ」
和真が頭を押さえているアクアにスキルを覚えようとする理由を説明する。アクアは納得したらしく何も言わなくなった。
「一通りのスキルをお見せしますから、覚えていってください。これは見逃して頂いたお礼です」
そう言った後、何か気が付いたかのように、俺と和真とアクアを見ながら困りだした。
「ウィズ?どうしたんだ?」
「私のスキルは、その、相手がいないと使えないものばかりで…つまり、誰かに試さないといけなくて…」
成る程、そういうことか。
「成る程な、ならアクアに……」
「いや、俺がその相手になる」
和真の言葉を遮り、ウィズの前に立つ。
和真がここはアクアに痛い思いしてもらうべきだろと言いたそうだったので
「アクアにやらせたら絶対に何かするだろ。それに一通り見るならアクアで時間取る方が勿体無い」
成る程と頷く和真と舌打ちするアクア。分かり易すぎないか、アクアは。
まぁ、そんなことはどうでもいい。今はとにかく和真にスキルを覚えてもらう。
「いつでもいいぞ」
「まずはドレインタッチなんてどうでしょう。では、失礼します」
ウィズの手が俺の手を包む。すると同時に身体の中から何かが吸われていき、少しだけ身体が重くなっていく。
触れていたのは十数秒に満たないが、それでも相当吸われた。これが相手の体力と魔力を吸い取るドレインタッチか。
「はい、これがドレインタッチです。シロウさんは少し休んでいてください」
「ああ、すまない。意外と吸っていくんだな」
ウィズが「すみません!ドレインタッチは久しぶりで加減が、今ポーションを持って来ますねっ!」と店の裏へと駆けていく。
すぐに戻って来たが、回復系のポーション以外も持って来ていた。
「ウィズ、他のポーションは何に使うんだ?回復だけならこれで十分だと思うんだが…」
「いえ、あの…他のスキルをお見せするんですが、次はどうなるのかがランダムで…」
次に使うスキルは『不死王の手』というスキルらしい。
直接もしくは間接的に触れた相手にランダムで状態異常を付与するというスキル。状態異常を引き起こす確率は幸運依存なので和真にとって持っておいて損はないスキルだ。
「どの状態異常が付与されても対処出来るよう、ポーションを持ってきたんです」
毒以外の状態異常は放置してても大丈夫な気もするが…。
とりあえず回復用のポーションを飲み干し、体力が戻ったことを確認する。魔力は今も自動的に戻っているので問題はない。
「よし、いつでもいいぞ」
「では、いきます」
ウィズの手が俺の体に触れる。違和感はすぐに来た。
身体に何かが染み渡っていく。それは身体中を蝕み、焼けるような痛みを与える。
そういえば、運が低いんだったと思い出す。
引き当てた状態異常は毒だった。
「ウィズ、解毒ポーションを…」
「はいっ!えーとえーと、あっ、これです…っ⁉︎」
一番最悪な状態異常が付与されたことに焦るウィズ。こういう時に焦るとろくなことがない。そして、運がない俺が被害を受けるとなるとどうしようもなく大変な目に。
まず、ウィズが慌てて解毒ポーションを取った時にその他のポーションが机から落ちた。高いポーションも混ざっていた為、少しばかり赤字だ。
そして、その音に驚いたウィズは開けかけていたポーションを俺の方目掛け投げてしまった。そのポーションを取ろうと手を伸ばすウィズだが、その手は空を切る。
中身の液体は俺の---目に
「なんでs目がぁ、目がぁぁぁぁ⁉︎」
毒が消えていく感覚と目がとんでもなく染みる感覚が同時に来る。毒が消えていくことが気にならないほど目が痛い。
そんな痛みを受けている中、それを眺めていた二人は
「おい、アクア。こういう時なんて言うか知ってるか?」
「ええ、もちろん知ってるわよ」
「「バ○ス」」
遊んでいた。
「お兄ちゃん、大丈夫⁉︎」
俺の目がぁぁぁと叫んだ声が聞こえたのか、慌てて美遊がこちらへと来たようだ。
「ひっ、ミユさん⁉︎あっ…」
ポーションをほぼ全て落として割ったということを知られるとまずいウィズは美遊が来たことに驚き下がろうとして、滑った。
「ごふっ」
鳩尾にウィズの頭が勢いよくぶつかって来る。なんでさ、本当になんでさ…
足を引っ掛け、俺も倒れてしまう。が、倒れたというのに痛みはなかった。硬い床ではなく、柔らかい何かに…
「ねぇ、カズマさん、カズマさん。やっぱりカズマさんよりシロウの方がよく私のことをわかってるわ。私の魅力に惹かれてこっちに倒れて来たのよ」
「おーい、士郎。そんな奴にラッキースケベみたいなの決めても頭上からバカな声しか聞こえないんだから、嬉しくもないだろ。さっさと離れないとその馬鹿がもっとつけあがるぞー」
「おに……士郎さん……?」
どうやらアクアの方へと倒れてしまったようだ。
正直に言うと上からの馬鹿な発言がなければ、これでもいいと思えるんだが。
それと美遊が後退りしながら複雑に感情が混ざったような声で俺のことを呼ぶ…あれ、おかしいな、兄妹になる前の呼び方に戻ってないか、美遊…
「なん……でさ……」
ちなみに呼吸させてくれないアクアのせいで俺は気を失った。
その後、美遊は3日間ずっと士郎さんと呼ぶようになった。意外と辛かった。
あと和真は不死王の手を覚えたらしい。
和真さんはチートスキルを手に入れたっ!
あとこれ以上ネタっぽいものは書けないと思った。酷いわこれ…
次回から、オリジナリティ…来る?