執事と仮面は使いよう   作:カモシカ

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はい、遅れました。もう覚えてる人なんて居ないんじゃないかな?でもこれを待っててくれていたと言う方は、本当にありがとうございます。嬉しいです。

ではどうぞ。


刺客。そして勝利。

「はちまーん!帰ろー」

「はいはい」

 

帰りのSHRが終わり、たくさんのお友だち(下僕)をゲットしたお嬢様に従い帰路につく。何だかこのまま行くとお嬢様から魔王様にクラスチェンジしそうで怖い。

ひそひそごにょごにょ囁かれるクラスメート(笑)の声を全て聞きながら、お嬢様の荷物を受けとり教室を後にする。……あぁ、疲れた。

 

「八幡」

「なんですか?」

「疲れた。おんぶして」

 

にひっとでも言いそうな笑顔で、からかうかのように訳の分からん要求をするお嬢様。それを聞いて若干うんざりしつつも、やっぱりお嬢様って見てる分には可愛いよなーと思考に逃げる。

 

「……高校生にもなって何言ってるんですか」

「えー、良いじゃーん。おんぶしてー!」

 

散々駄々をこねるが、これはこれで仮面の一部だったりする。最近は少し怪しいが。

 

「はいはい、分かりました。でももう少し人通りが少なくなってからにして下さい。そしてご自分の立場を気にしてください」

「ぶー、良いじゃない。別にそれぐらい」

「そうも言ってられないんですよ……現に、狙われてますから」

 

そう言って後ろを振り向き、制服の袖に潜ませていた長さ15センチほどの穢殺刃(ケガレザッパー)八幡(ヤハタ)式で、一キロ離れている展望台から放たれた銃弾を迎撃する。そして逆に、穢殺刃を狙撃モードに変更して暗殺者を撃ち抜く。と言っても使ったのは俺特製のゴム弾だから死んでないし洗いざらい吐くまで死なせないけど。

 

「……まあ、そうかも知れないけど」

「ええ。事前に防げなくてすみません。ですがこれで奴の尻尾を捕まえられました。これからはもう少し静かになるでしょう」

「……ねぇ、毎回思うけど八幡ってホントに人間?」

「ええ。おそらく」

「そこは自信を持ってよ……」

 

何故か呆れられた。いやまぁ俺だって自分が人間かどうか時々不安になるんですよええ。まあ佐茅さんに比べれば人間に近いんですよ?擬似的とは言え時間停止に比べれば銃弾を弾くぐらいは普通だ。

 

「ま、そんなことは置いておいて、さっさと帰りましょう」

「ま、確かにどうでもいいしねー」

 

そして俺達は、タイミング良く現れた都筑さんに回収され、雪ノ下宅へと向かって行った。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

八幡たちが都筑に回収された頃、ゴム弾の餌食になった暗殺者はと言えば……

 

「グゥッ……何だよあいつ……1キロはなれてるんだぞ!?」

 

スコープすら使わずに放たれた弾丸に両足を砕かれ、呻いていた。

 

「クソクソクソクソッ!殺してやるッ!」

「んー、残念だけどそれは無理かなー」

「ッ!?だ、誰だ!?」

「んー?誰だろうねー?……まあいいや、取り合えず気絶して貰わないといけないから」

「!?……お前、その包丁は……や、やめろ。それは、それだけは……!」

「問答無用!――『鮪喰(マグロイーター)八幡(ヤハタ)式』起動!」

「全部、全部話すから!い、命だけは……!」

「はいはーい。いいから眠ってて」

 

突然現れた少女は鮪喰(マグロイーター)を構え、暗殺者を見下ろす。その小柄な体躯に似合わない巨大な包丁を片手で振り上げた少女は、高速振動する凶悪なそれを、静かに降り下ろした。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

「お兄ちゃーん、捕まえたよー」

 

ちょっと散歩に行ってくる位の気軽さで現れた八幡の妹、小町もまたメイドである。雪乃の護衛兼友達だが、今日は雪乃を中学校から家まで送り届けた後、八幡の手伝いをしていた。

 

「おー、縛ったままそこ置いといてくれ。後で洗いざらい全部吐かせる」

「お兄ちゃん笑顔が怖い」

「はっはそんなこと言うとお兄ちゃん泣いちゃうぞー」

「冗談、お兄ちゃんがそんくらいで泣く訳無いでしょ」

「いーや泣く。小町に言われたならわんわん声上げて泣く」

「うわ……」

「……泣くよ?」

 

と、バカな会話をしながらも、八幡は捕まえられた刺客に油断ない視線を向ける。人目に見られずここまで連れてきた小町もさることながら、威圧の視線だけで覚醒しかけていた人間をもう一度意識の底に叩き落とすのだから八幡もおかしい。今更ではあるが、基本的にこの兄妹はスペックがおかしいのだ。いや、この兄妹と言うよりは陰乍(シャドウサーバント)の人間がおかしいのだが。

 

さて、人外スペックの兄妹が居るのは雪ノ下宅ではもちろんない。どことも知れない深い森のなかだ。狙われていた人間の近くに狙っていた人間を連れてくるようなことはしないのだ。まあ八幡が居る限り、少なくとも素手で斬撃を飛ばせるぐらいでなければ何も出来ずに瞬殺されるが。

 

「さーて、こいつから搾れるだけ搾らなきゃな」

「そだねー」

 

そう言うと、八幡は懐からうっすらと黄色がかった液体の入った試験管を取り出す。蓋を外し、付属のスポイトで液体を刺客の瞼に垂らす。人間は基本的に、目が濡れていると眠れないのだ。そしてこの液体はそこそこの濃度の酸性の液体。具体的な薬品名は、刺客の心の安寧のため記さずに置く。

 

「いっつ……う、ここ、は……?」

「おはよーさん」

「おっはよー」

 

いきなり視界に飛び込んできた八幡と小町を見ると、一瞬で刺客は絶望に捕らわれる。

 

「さて、洗いざらい喋ってもらおうか」

「……ああ」

 

この刺客は後に語る。悪魔とは八幡の事だと。この世には、生きていたいのなら手を出してはいけない存在が居るのだと。

 

 

 

 

****

 

 

 

以下、刺客の語った情報。

 

 

俺達の組織の名は、『制服美少女JK信仰隊千葉支部』だ。あ?どういうことかって?組織名の通りだ。俺達は制服を着た美少女JKを愛している。だから陽乃様に付きまとう憎きお前を排除しようとしたのだ。……いや、まてまて無言でナイフを突きつけるな。喋らないぞ。

……ふぅ。とまあ、説明すると単純だが、千葉中の美少女達をいけすかないクソイケメン達の毒牙から守るために日夜活動している。もちろんそちらの美少女様も、JKでは無いが保護対象で……す……?……あ、あの、マジスミマセン。お、俺の妹に何をしているか……?なんですと?妹さんなのですか?

あ、あの、分かったのでその箒を下げてくれませんか?怖いです。え、ちょ、何で近づいてくる、い、いや、やめ、やめて!マジやめて!!!ご、ごめんなさーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!

 

 

刺客の名誉のため、また少年少女の健全な精神を保つため、具体的な描写は控えさせていただく。ただそこには、毛根が完全に死滅し、空気穴だけが開けられた袋を被った刺客の男が、亀甲縛りで気に吊るされていたとだけ記しておく。


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