竜の物語   作:白黒金魚

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2話です
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ようこそレッド・フォース号へ

 時間は少し遡り、突然現れた手紙を読んでいた頃。無人島の海辺に、竜を模した船頭の海賊船が上陸していた。船員たちが慌ただしく上陸準備をしているなか、シャンクスは接岸と共に船の甲板から砂浜に飛び降りる。

 

 見聞色の覇気を使い島の様子を伺うと、この島のほとんどの生き物は、船の上陸した場所とは反対側集まっているようだ。そしてこの島から感じる人の気配は一人だけ。おそらくこの人物が例の現象の原因。

 

 

 「一人だけ、か・・・それに、以外と近くに居るな」

 

 「・・・わざわざ上陸までしたんだ。会いに行くつもり何だろうが、その後はどうするつもりだ?まさか、ただ見物に来たってわけじゃないよな」

 

 「会ってから決める。見たとこ船は無さそうだし、面白そうな奴なら仲間に誘ってみるか。あっ!ベックはついてくんなよ。お前らもだぞ!」

 

 

 いつの間にか隣にやってきた副船長と、背後の船員達に釘をさす。ついてくる気だったのか激しいブーイングの嵐と、何故かおれへの悪口が飛んでくる。というか悪口言ってる奴等、なんか妙に楽しそうっつうかなんつうか、おれ、お前らの船長だよな?

 

 「あー・・・もう、うるせぇ!船長命令だ!ここで待機してろ!あとおれに対して童顔だのケチだの言ってきたやつ、後で覚悟してろよ!・・・ったく。誰が童顔だ!」

 

 コンプレックス気味である顔のことを言われて若干へこむ。人が気にしてることを言いやがって・・・やはりこのままでは威厳にも関わるし何とかしたい。どうする?・・・いっそひげでも生やすか?

 

 そんなことを考えながら、森へ向かって歩きだそうとしたら肩を掴まれ足を止める。

 

 

 「待て!一人で行く気か!?」

 

 「なんだよ、お前もついてきたいってか?」

 

 「ここは偉大なる航路(グランドライン)だ。この海で航海してるのならある程度名前が知られているはず。なのに、火を使う能力者なんて聞いたことがない。似たような能力を持ってるのは、白ひげのとこの不死鳥と、海軍中将のサカヅキくらいだが、恐らくそのどちらでもないだろう。そんな正体の知れない奴のところに船長だけで行かせられるか」

 

 「・・・心配性だねぇ、うちの副船長は。大丈夫だって、悪い奴じゃねぇよ」

 

 「根拠は?」

 

 「勘」

 

 

 言ったとたん、それはそれは大きなため息をつかれた。くわえていたタバコを口から離して、肺の中に溜まった煙りを深々と吐き出すその顔にはくっきりと疲労が刻まれている。こいつ早くに老けそうだな、なんて頭の片隅で考えながら、ベックマンを説得するため口を開く。――因みに、苦労をかけているその最もたる原因が自分(シャンクス)であるなどとは微塵も思ってない。

 

 

 「今まで、こういう時のおれの勘が外れたことあったか?」

 

 「・・・そこまでして一人で行きたがる理由はなんだ」

 

 「あー・・・なんつうか、呼ばれてる感覚がするってだけなんだけどよ。気になるっていうか、知っている気がすんだよなぁ。・・・それに、戦闘になったからって、このおれがそんな簡単にやられると思うのか?」

 

 腰に差したカットラスを鞘から少しだけ抜き、刃を見せつけるようにして、ニヤリと笑ってやる。

 

 「・・・はぁーっ、勝手にしろ」

 

 「んじゃ、ちょっくら行ってくる!」

 

 

 ベックマンから了承をもぎとり、軽い足取りで森へ向かう。背後では、いつでも動くことが出来るようにしておけと、船員達に指示を出す声が聞こえてきて、小さく笑う。何かあったときすぐに出航できるよう、戦いが起こったときすぐ戦闘準備が出来るようにしておけと、そう指示をしたのだ。

 

 勝手にしろと言った割にはちゃんとサポートしてくれるつもりらしい。

 

 

 「・・・それにしても、こいつは・・・」

 

 

 どうやら件の相手は先程から移動はしてないようだが、森から感じる気配に眉をひそめる。脳裏にちらつく影を振り払うように、気配のする方へ歩いていくと焦げた匂いを微かに感じた。この島にくる前にみた巨大な火の玉が原因だろうか?森へ着弾することなく消えていくのはこの目で見ているので、直接的な原因ではなくても、あれ以外にもこの森で火を使ったのかもしれない。

 

 

 森の中を進み、辺りの木々が一部分だけ黒く炭のようになっている場所にたどり着く。大きな木の根元に、人影を確認して足を止める。地面に座り込んでいるのは、肩まで伸びる柔らかな色の髪、簡素なつくりの白いワンピースを見に纏った少女のようだ。こちらに背を向けなにやら唸っているが、背中から分かる小さな体、手足の短さは、誰かが保護して守ってやらなくてはいけない年齢の子供にしか見えない。

 

 何故こんなところに居るのか、声をかけようと一歩踏み出そうとしたとき、突如少女の背中から服を突き破り何かが飛びだしてきたのを見て息をのむ。

 

 それは蝙蝠の翼のような形をしていたけれど、翼の先から鋭くとびだした爪のような骨と、強靭そうな鱗から、蝙蝠ではない別の生き物なのだと分かる。

 

 パタパタと、翼をはためかせてはしゃぐ姿は見ていてほっこりしてくるが、そのまま今にも飛んでいってしまいそうで、止まっていた足を慌てて動かし少女の腕を掴む。

 

 

 「待ってくれ!」

 

 

 いきなり腕を掴まれたのだから当たり前なのだが、振り返り、こぼれ落ちそうなほど開かれた目で、あんぐりと口をあける表情で、ビシリと効果音がつきそうなほどに固まった体で、全身で驚きを表す少女に思わず笑ってしまう。

 

 

 「あ、赤髪のシャンクス~~!!!?」

 

 

 ただでさえ大きな瞳を目一杯に開く少女は、どうやらおれのことを知っているようだ。

 

 

 なんか、この感じなつかしいなー。

 

 

 「なぁ、お前の名前なんていうんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

 

 

 

 振り返ったら目の前にイケメンのどアップとか、心臓止まるかと思った。しかもそれがあのシャンクスだと!?なんでこんなとこにいるの!?

 

 

 「なぁ、お前名前なんていうんだ?」

 

 「えっと・・・リオンです」

 

 

 いきなり名前を聞かれたので答えようとするが、あることに気付き口を閉じる。

 

 向こうの世界で呼ばれていた名前をそのまま名乗ると、ワノ国の人物だと間違えられるかもしれないと思ったのだ。

 

 最新刊まで漫画は呼んでいたので、ゾウで判明した、ワノ国の将軍が海賊王の船に乗っていたことがあったというのも知っている。そして、シャンクスはその海賊王の船に見習いとして乗っていたのだ。下手なことを言って怪しまれるのも嫌だ。なので下の名前だけ名乗ることにした。

 

 もう使うことのないだろう名前に心の中で別れをつげる。

 

 

 「リオンだな。知ってるみたいだが、おれはシャンクスだ。・・・ってなんだ、そんなに凝視してきて」

 

 「・・・・なんか、若い?」

 

 この男が赤髪のシャンクスであることは間違いない。けれど、何かが違う。違いをさがすように相手の全身をくまなく見て、気付いたのは自分が知っている姿よりも若いということだ。

 

 流石に20代にはなっているだろうが、一歩間違えれば10代後半にも見えそうな顔。なにより、私の腕を掴んでいる手はルフィを庇い無くしたはず。それが存在しているということは、今が原作開始よりも前の時代にいるということだろう。

 

 ひげがないだけで随分と幼く見えるな、とか思ってたら、シャンクスが何故か暗く影を背負っていることに気付く。ズーンと効果音が聞こえてきそうな様子にどうしたのかと、近づくとシャンクスはブツブツと小さな声で何事かを呟いている。

 

 

 「こんな子供にまで言われるなんて・・・」

 

 「なんか、ごめんなさい・・・大丈夫?」

 

 「あぁ、もう大丈夫だ。とりあえず、おれはひげをはやすことに決めた!・・・で」

 

 「?」

 

 

 彼の中で一段落ついたのか、気持ちを切り替えたのか。先程までの影はどこへいったのやら、ワクワクと効果音が聞こえてきそうな笑顔で迫ってきた。

 

 

 「その背中の翼は悪魔の実の能力か?動物系っぽいけど、変化してるのは翼と耳だけだな。ここに来るとき巨大な火の玉を見たんだがあれはお前の能力か?この島に船は無さそうだったが飛んでここに来たのか?それとも遭難でもしたか?まさかお前みたいなガキが一人で旅してるんじゃないだろうな?ほ――」

 

 「あ、ちょ、っ・・・ま、待って。一旦ストップ!」

 

 

 弾丸のように流れる質問に答える暇さえない。好奇心のままにいつまでも喋っていそうで、慌てて相手の口を手で塞ぐ。

 

 

 「そんな一気に質問されても答えらんない!」

 

 「ぷはっ!はっはっはっ、悪かったな。つい」

 

 「悪いとか絶対思ってなさそう!」

 

 「あっはっはっはっ、イテッ、叩くなって。いや、悪かった。1個ずつ聞くって。・・・一体、この島にはどうやって来たんだ?近くに人の住む島はないからこの辺りの住人じゃないよな」

 

 「知らない。気付いたらこの島にいたから。シャンクス、さんは、なんで此処に来たの?」

 

 「呼び捨てでいいぞ。・・・そうか。それなら海軍の支部がある島まで送ってやるよ。海軍なら住んでた場所まで送り届けてくれるはずだ」

 

 「もう住んでた場所には帰れないからいいよ。海軍というか、世界政府あんまり好きじゃないし」

 

 「・・・行く当てがないならおれの船に乗って行かないか?行きたいとこあるっていうんなら連れてってやるよ」

 

 「・・・なんでそんなことしてくれるの?」

 

 「面白い奴だなと思ってよ。他にも色々と聞きたいことが出来たんだが、船ならゆっくり出来るだろ。あと、ここでのんびりしてると小言のうるさいやつが居るんだよ」

 

 「えー、乗せてくれるのは嬉しいけど・・・というか赤髪は子供は船に乗せないって聞いたんだけど」

 

 「どこで聞いたんだ?そんなこと。確かにガキは船に乗せないが、今回は特別だな。他に、船に乗れない理由でもあるのか?」

 

 「特にないけど――って、きゃあ!」

 

 

 よく知らない人を乗せていいのか聞こうとしたら、突如浮遊感に襲われる。ジタバタと暴れてみるけれど、小脇に抱えられ、がっしりとホールドされていてびくともしない。

 

 

 「ないなら問題ないな」

 

 「問題ある!私の意思は!?」

 

 

 確かに、赤髪海賊団とかと一緒に航海してみたいなとは思ってたけど、いきなりすぎて心の準備ができてない!

 

 

 「海賊が怖いってわけでも、急ぎの用事があるわけでもなさそうだから別にいいだろ」

 

 「強引!」

 

 「おれは海賊だからな!」

 

 「あぁぁもうっ!よろしくお願いします!!」

 

 「任せとけ!あ、その翼しまえるか?そいつについても船で詳しく聞かせてもらうぜ」

 

 「・・・はーい」

 

 

 最早、何を言っても無駄そう。それに、赤髪海賊団なら知らない海賊なんかより信用できる。おそらく船の泊めてある方へ向かうシャンクスに、諦めて大人しく連れて行かれることにする。

 

 

 

 

 

 

 

 森を抜けて海へ出てくると大きな船が泊まっていた。船には竜を模した船首に、三本傷のドクロと2本の剣が描かれた海賊旗。

 

 ほとんどの船員は船の甲板にいるみたいだけど、ベン・ベックマンやヤソップ、ラッキー・ルウ、他にも幹部だと思われる人達だけ陸で待機している。そして、ベン・ベックマンはこちらを睨むように見ていて思わず頬がひきつる。

 

 

 「ね、ねぇ。あの人、無茶苦茶睨んできてるけど大丈夫なの?」

 

 「あー・・・あれは、睨んでるわけじゃねぇよ。別に怒ってはないから大丈夫だ」

 

 「ほんとに?」

 

 「・・・たぶん」

 

 

 そこは自信をもって断言してほしかった。

 

 

 

 

 

 

 

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

 

 

 

 「お、帰ってきたな。お頭。ところで、小脇に抱えてんのはいったいなんだ?」

 

 「今回の戦利品ってとこだな」

 

 

 森から出てきたお頭に近づいていき、真っ先に声をかけたヤソップは早速疑問を投げ掛ける。

 

 腕の中の少女は、森から出てきたときは大人しくしていたのに、戦利品という言葉に抗議しているのか、手足をバタつかせて暴れている。一生懸命怒っているのは良く分かるのだが、お頭は全て笑って流しているため全く相手にされていない。その姿に、自分の息子もこのぐらいの年頃まで育っているたろうと思いだし、子供を助けてあげることにする。

 

 

 「おいおい、あんま苛めてやんなって。嬢ちゃん大丈夫か?お頭は、副船長に説明頼む。」

 

 

 お頭から少女を奪いとり地面に下ろしてやる。ついでに、我らの副船長を指差してやると、途端に嫌そうな顔になる。

 

 

 気持ちはわからんでもない。けど、全てお頭が悪いから早めになんとかしてくれ。

 

 

 先程から船の前を一歩も動かずタバコを吹かす姿は、全身から刺々しいオーラを出していて近づき難い。しぶしぶ副船長に向かっていくお頭を横目に、少女へ視線を移す。

 

 

 「ところで、嬢ちゃんはどっから来たんだ?」

 

 「ごめんなさい、分からないです。気付いたらこの島にいて。あの、ここはどこですか?」

 

 「まじか。ここは偉大なる航路(グランドライン)だぜ。よく無事だったな。いや、かすり傷が多いな。どうしたんだ、これ」

 

 「これはたぶん、虎から逃げてたときに引っかけたんだと思う」

 

 「虎って・・・あのでっかい火の玉、それが原因か?」

 

 「あ――」

 

 おーい!リオン、ちょっとこっち来い!

 

 「!あの」

 

 「大丈夫だから。行ってこい」

 

 「はい!」

 

 

 お頭のいる方へ元気に走りっていく姿に苦笑がうかぶ。さて、これからどうなるかねぇ。

 

 

 

 

 

 

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

 

 

 

 シャンクスの居る所に行くと、隣のベックマンと目があい、思わずお辞儀する。

 

 遠くから見たときは怖い顔をしてたけど、今は呆れたような顔になってる。原作よりも前だからか、まだシャンクスに振り回されてるみたい。あと数年したらシャンクスの手綱をしっかり握ってるんだろうなー。

 

 

 「来たな。うちの航海士が、嵐がきそうな天気だっていうんですぐ出航する。忘れ物とかないか?」

 

 「大丈夫」

 

 「よし。おれの隣に居るのがベックマンだ。悪いが、こいつに案内してもらった部屋で待っててくれ。船に乗れ、出航するぞ!野郎ども!!」

 

 「「「「おぉー!!!」」」」

 

 

 

 




シャンクスとかベックマンの口調が掴めなくて別人になってる気がする
予想以上に視点がコロコロしちゃったのでつぎはもう少し抑えます。

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