竜の物語   作:白黒金魚

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初投稿です

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偉大なる航路と父親の存在
はじまりと出合い


 目の前にはどこまでも広がる青い海、後ろを振り返ると鬱蒼と生い茂る森、上空を見上げればカモメが気持ちよさそうに飛んでいる。ぼんやりと景色を眺めていたけれど、頬を撫でる潮風にようやく意識がはっきりしてきたことで何故こんなところで座り込んでいたのかという疑問が浮かぶ。

 

 なんでこんなとこに居るんだっけ?・・・たしか、私は自宅でのんびりとしてたはず。明日の大学の準備を終えて、ベッドの上にのって、お気に入りの音楽を聞きながら漫画を読んで・・・

 

 

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 「明日は金曜だから学校終わったら本屋にでもよってこうかなー。新刊出てたはずだから買いに行かないと」

 

 本棚の中から一冊の漫画を取り出し、何度も読み返した表紙を開く。そこには麦わら帽子をかぶった少年が満面の笑みを浮かべている姿が描かれている。

 

 『ワンピース』

 

 モンキー・D・ルフィが海賊王を目指して海へ冒険の旅に出る物語。海兵や国に住む様々な人々だって素敵だと思うけれど、やっぱり一番憧れるのは海賊たちだ。ルフィ率いる麦わらの一味も、白ひげ海賊団も、少ししか出て来なかったけれど、赤髪海賊団も。

 

 

 「みんな格好良すぎるよね。いーなー・・・ワンピースの世界とか行ってみたい。そんなこと出きるわけないんだけど・・・

 

 少しくらい夢みてもいいよね。彼らと一緒に海に出て、冒険して、それから――」

 

 

 本の中で、ルフィを抱きしめながら命を散らしていく彼の姿を撫でる。この結末だけは何度読み返したって納得なんか出来なくて、何度嘘ならいいなって思っただろう。

 

 ワンピースは作り物の世界だ。登場人物たちだって本当に存在するわけじゃない。そんなこと分かってるのに、彼に惹かれている自分がいる。

 

 

 《その願い叶えてやろうか?》

 

 「え?」

 

 

 突然、知らない声が聞こえた。今自宅には私一人しか居ないはずで、そもそも聞こえてきた声は聞き覚えのない声だ。

 

 思わず立ち上がるが、その瞬間強い立ちくらみに襲われ、強く目をつむる。次に目を開いたら一面が真っ白な場所に立っていた。

 

 

 「・・・いつの間に私の部屋は模様替えしたんだ」

 

 さっきまで自宅のベッドでごろごろとしてたはずなのに、気づいたら見知らぬ場所にいるという状態に現実逃避したくなってくる。

 

 《いきなり呼んだオレも悪いとは思うけどな、開口一番に出てくるセリフがそれか?》

 

 またもや声が聞こえたが、辺りを見回しても白い空間が広がっているだけで誰も居ない。

 

 

 「・・・幻聴?」

 

 《幻聴でもないぞ》

 

 「っ!さっきの声はあんた?」

 

 

 どれだけ辺りを見回してもこの空間には私しか見当たらないけれど、声だけはこの場所で反響するようにあちらこちらから聞こえる。

 

 

 《あぁ、オレだ》

 

 「ここどこなの?」

 

 《世界の狭間みたいなとこだな。詳しくは説明しても理解出来ないと思うぞ》

 

 「なんか馬鹿にされてる?・・・まぁ、いいや。さっき私のことを呼んだって言ってたよね?なんで?」

 

 《なんでって、願いを叶えてやろうか?って言っただろ》

 

 「・・・願いを叶えてやるってどういう意味?」

 

 《そのまんまの意味だよ。まぁオレが出来るのは、お前をワンピースの世界に送ることまでしかできないけどな》

 

 

 いきなり願いを叶えてやるとか意味分かんないから聞いたのに。まず、ホントにそんなことが出来るの?そもそもなんで私の願いなんか叶えてくれるわけ?ワンピースの世界に行きたいなんて考えている人なんか他にも沢山いると思うんだけど・・・というかこの声だれ?

 

 

 《おー、なんかぐるぐる考えてるみたいだな。利きたいことがあるなら、一個ずつ答えてった方がいいか?》 

 

 「出来ればそうしてくれると助かりまs――」

 

 こいつ今、なんて言った?いや、私が考えてること口に出してただけか?

 

 《いや、口に出してはいなかったな》

 

 「・・・考えてること筒抜け?」 

 

 《考えていることっていうより、心の声が聞こえるって言った方が正しいかな》

 

 反則かよ

 

 「・・・で、なんで私なんかの願いなんかを叶えようなんて思ったの?」

 

 よし、めんどくさいし聞かなかったことにしよ

 

 《おい、面倒って、それ聞こえるって分かってて言ってるよな?!・・・まぁ、いいや。お前の願いを叶えてやるのは恩返しみたいなもんだよ》

 

 「恩返しってあんたに何かした覚えないんだけど」

 

 《お前が覚えてなかろうが関係ないな。オレがそうしたいからやってることだ・・・というか出来るかどうかは聞かなくていいのか?》

 

 「さっきの心を読める発言聞いて、人間の類いじゃなさそうだなって思ったから信じてみることにした。ずっとワンピースの世界に行きたいって思ってたしね」

 

 《・・・そういう素直なとこは相変わらずだな》

 

 

 相変わらず?どういうことだろう。さっきも恩返しとか言ってたけど、昔から私のことを知ってた?

 

 

 「ねぇ今の――」

 

 《すまん》

 

 

 どういうことなのか聞こうと思ったらいきなり謝られた。聞こえてきた声はとても申し訳なさそうに、けれどこれ以上は話せないという強い意思を感じさせて思わず口をつぐむ。

 

 

 《さっきの質問の続きから答えるよ。口が滑ったオレが悪いんだが、オレがどういう存在なのか、どうしてお前のことを昔から知っているのか、それを話すことは出来ないんだ》

 

 「なにそれ」

 

 《お前をワンピースの世界へ送ったら、もう会うこともないだろうからあんまり気にすんな》

 

 「・・・分かった」

 

 《それから一度世界を渡ったらもう二度ともとの世界には戻れない。それでも行くか?》

 

 「行くよ」

 

 《そっか。お詫びと言っちゃーなんだが、色々オマケもつけといてやるよ。向こうの世界でも頑張れよ》

 

 

 そんな声が聞こえたと思ったら視界が徐々にブラックアウトしていく。

 

 

 呼ばれたのも突然だったけど返されるのも突然なんだ。声の主の名前くらい聞いたら教えてくれたかな

 

 

 薄れていく意識の中思ったのはそんなことだった。

 

 

 

 

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 《くくっ、あそこで考えることがオレの名前かよ。そういうズレたとこも変わってなかったな。つい手ぇ出しちまったから、これ以上干渉することは出来ないが・・・今度こそ幸せになれよ―――さん》

 

 

 

 

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 ・・・あぁそうだ、なんでこんなところにいたのかようやく全部思い出した。あの声、いろいろ急過ぎるだろ。オマケってなんだよ。そこは詳しく説明しとこうよ。

 

 急にとばされた影響かは知らないがまだ頭が働かないけれど、目の前に広がる海を見る限り本当にワンピースの世界に来たのだろう。たぶん。

 

 いや、だって実感全くわかないし。こんな人の気配のない島じゃ、ほぼ確実に無人島だろう。無人島じゃ、ここがワンピースの世界かどうかなんて確かめようがない。・・・ん?

 

 

 「まぁいいや。まずは島周辺から探索してみるか」

 

 

 座り込んでいた身体を起こし立ち上がる。なにやら違和感を感じるが、それもいまは後回しにしとこう。

 

 とりあえず食べる物と、船が欲しいな。人の住んでる島まで行ったらここが何処の海なのか聞きたいし。・・・あれ?船だけあっても航海術なんて持ってないから他の島とか行けない?

 

 

 「・・・うん。深く考えないことにしよう・・・何とかなるでしょ。たぶん。」

 

 

 島の回りを海沿いに歩いてみるけれど、たいしたモノはあまりない。唯一見つけたのは打ち上げられていた廃船だけだ。船として使うことは不可能なほどにボロボロになっていたが、ドクロの旗がついていたので、この船は海賊船だったのだろう。

 

 海賊旗なんて始めてみた・・・ほんとにここはワンピースの世界なんだ。ようやく実感わいたかも。

 

 あと見てないのは森の中だけかな。ちゃんと確かめないことには断定出来ないけど、やっぱりこの島は無人島で間違いなさそう。食べ物とかあるとすれば森の中なんだけど・・・行かないとダメかな。あの森、人はいなさそうなんだけど獣とか絶対いるよな。遭遇したらどうしよ・・・

 

 迷っていても拉致が明かないので覚悟を決めて、鬱蒼と生い茂る木々を掻き分け進んでいく。足元はあちらこちらから木の根が飛び出しとても歩きづらい。しかし、足を引っ掻けることもなく、何処に何があるのか分かっているような感覚を頼りに進んでいく。

 

 

 「それにしても島の回りも結構歩いたし、こんな場所歩き慣れてないんだからもっと疲れててもおかしくないよね?基本的にはインドアタイプだったからそんなに体力があるわけないんだけど・・・?」

 

 私ってこんなに体力あったっけ?なんて蔦を払い、むき出しになっている木の根を踏みつけ、考え込んでいると背後に気配を感じて振り返る。森の奥、数メートル先にある木々の陰になっている場所からこちらを見つめる大きな目と視線があった。

 

 「・・・」

 

 「・・・えっと・・・虎?」

 

 「ガゥ」

 

 

 のっそりと近づいてくるその姿は虎にそっくりなのだが、動物園なんかで見たことのある虎よりも3倍くらいはある。口から伸びる牙は人の腕ほどの太さはあるだろう。あまりの大きさにボケた質問してしまうが、虎が答えてくれるわけもない。爛々と輝く目と、口から漏れる涎に、虎が私を獲物として狙っていることが分かり顔がひきつる。

 

 

 こいつ!私を喰う気だ!

 

 

 突然遭遇した巨体な獣に私がとる選択肢は一択だ。視線はそらさず、虎から逃げる機会を伺いながら少しずつ後ろに下がる。一歩後ろに出した足が枝を踏んだらしく、ポキッっという音を合図に虎に背を向け全速力で森の中を駆ける。

 

 

 「うわぁぁぁ!!」

 

 「グルゥアァァ!!!」

 

 

 空気を震わすような咆哮に鳥肌がたつが、少しでも足を止めたら虎の餌になるのは間違いない。木々の隙間を縫うように走っていると背後から追いかけてくる気配がする。いつの間にやら追いかけてくる存在が増えているような気がして、嫌な予感に背後をみると虎が2匹に増えている。

 

 

 「ゲッ」

 

 なんで増えてるの!?夫婦か何かですか!?

 

 「あーもう!なんで私なんか追いかけてくるの!?そのうち戦えるようにはなりたいけど今の私にあれの相手は無理!!」

 

 あんな巨大な虎、どうやって倒せばいいのか分からん!せめて鉄パイプとかないの!?

 

 

 「メラ!とk――」

 

 とか唱えたら火とか出てこないかな!?なんて続けようとした言葉は、背後に向かって飛んでいく火の玉に驚いて口から出てこない。

 

 火の玉は虎には当たらず空に飛んでいったが、2匹とも警戒してか止まってくれたみたいだ。私の足も驚きのあまり止まっていたけれど・・・

 

 

 い、まの何?え?火の玉が出てきた?!

 

 「・・・もしかして呪文使える?」

 

 

 やけくそ言った言葉が、ゲームの呪文のように火の玉が現れたことに驚いて固まってしまう。

 

 

 「・・・メラゾーマ」

 

 半信半疑確認で他の呪文を恐る恐る呟く。すると頭上高くに巨体な火の玉が作られていく。それはどんどん大きくなっていき、小さな太陽が出来たみたいだ。

 

 

 ってそんなこと呑気に思ってる場合じゃないじゃん!やばいやばい!こんなの撃ったら森燃えるよ!!消えろ!お願いします消えて下さい!

 

 

 予想外に大きくなっていく火に焦る。なんとか消そうと祈っているんだか、念じているんだか分からなくなるが、努力のかいがあって火の玉は少しずつちいさくなっていき、消すことが出来た。

 

 

 「あ、はは・・・」

 

 もはや、笑うしかない。こんな力、制御出来ずに暴走したら周囲が吹っ飛びそうだ。今回、辺りの木の天辺は黒く煤けてしまったが、虎たちもいつの間にやら追い払うことが出来たのでよしとしよう。・・・やり過ぎちゃったけど。

 

 

 

 

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 「おい!今のでっかい火の玉見たか!?」

 

 「落ち着けお頭。恐らく悪魔の実の能力者だろ。あんな何もない島にいる理由は知らないが・・・まぁログは別の島を指してるんだ。わざわざ寄ることもな―――おい、まさか」

 

 「ちょっと寄ってみようぜ!面白そうだ!!おい、お前ら上陸の準備だ!!」

 

 「・・・はあ」

 

「諦めようぜ。あぁなったお頭は止まんねぇって。見てみろよあのキラキラした目を」

 

「・・・ふぅー、戦闘の準備もしておけよ」

 

「たぶん大丈夫だって!楽しみだなー」

 

 

 

 

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 これ以上獣が襲ってくることもなさそうなので、後回しにしていた違和感を確認していくことにした。あんまり考えたくなかったんだけど、放置しといて今回みたいに大事になったら嫌だし。

 

 まずは、起き上がったときにあれ?って思ったんだよ。なんか目線が低いなって。虎に追いかけられてる時も身体能力上がってたせいか、切羽詰まってたからか気がつかなかったんだけど。自分の身体を見下ろしたら一目瞭然だよね。・・・はい、縮んでました。鏡とかないから確認しずらいけど、たぶん7歳くらいだと思う。私には年の離れた妹と弟がいたんだけど、一番下の弟と同じくらいだから間違ってないはず・・・私の家族についてはまた今度ね。

 

 あと、髪の毛の色が黒からミルクティーみたいな色になってた。いや、亜麻色とかの方が近いかな?もしかしたら瞳の色も変わってるかもしれない。

 

 一番気になるのは声が言っていたオマケってやつ。ドラクエの呪文が使えたのは確実にそれが原因だと思うんだけど、何も教えてくれなかったから確かめようがない。他にも生き物の気配とか相手が襲ってきたりするのが分かるんだけど、これってもしかしなくても見聞色の覇気―――

 

 

 そんなことを考えていたら、急にポンッという音がして紙がふってきた。

 

 慌ててキャッチして覗いてみると、どうやらあの声からの手紙らしい。

 

 

 『色々説明するの忘れてて悪かったな。気付いてるとは思うが、その身体はこっちで用意したものだ。オレが用意した身体()お前()が入ってる状態だな。身体の年齢は5歳。ちゃんと成長するから安心しな。基本的な能力は高いから頑張れば頑張るだけ強くなるぜ。すぐに死なれちゃ寝覚めが悪いから見聞色だけはすぐに使えるようにしといた。

 オマケの方は、迷ったがお前がよく遊んでいたゲームの設定を借りることにした。竜神族っていただろ?人と竜の二つの姿をもつ種族。面白そうなんでそれをオマケにしてやった。ある程度の呪文も使えるからこれからに生かせ。

 

 追伸 竜神族(オマケ)は悪魔の実の能力じゃないから海で溺れることはないぞ』

 

 

 読み終わると手紙は音もなく消滅した。

 

 

 「消えるんならそれも書いておいて欲しいかった。でもお陰で知りたいことは結構分かったな。この身体の年齢は5歳だったから、一気に15年も若返ったことか。にしてもオマケがまさかの竜神族・・・ドラクエ8かよ!いや確かによく遊んでたけどさ。何周もするくらい好きだったけど、ワンピースに来てまでドラクエが出てくるとは・・・まぁ、いっか。」

 

 

 竜神族なら変身できるかな。竜の姿になれたら空とか飛べるかな?船探さなくていいし、練習してみようかな。呪文の方はもっと広いとこでやろう。せめて、翼だけでも出せないかなー。

 

 目をつむり背中の肩甲骨あたりから翼が繋がっているイメージで身体を動かす。暫くうなっていると、なんともいえない感覚がして閉じていた目を開けると背中から翼が生えていた。

 

 慣れるまでは大変そうだけど、ちゃんと思う通りに動かすことは出来そう

 

 パタパタと羽ばたくように動く翼に思わずガッツポーズをとる。

 

 「やった!」

 

 「ちょっと待ってくれ!」

 

 突然腕を掴まれて身体が固まる。

 

 嘘、人の気配なんてしなかったのにいつの間にこの島に来たの!?ううん。それより、こんなに近づかれるまで気づかなかった!

 

 慌てて振り返り、私はもう一度固まった。振り替えってすぐ目の前に、それはもう目をキラキラと輝かせた男性の顔。年は20代くらいだろうが表情のせいでもっと若く感じる。なによりも驚いたのは赤い髪、顔に三本傷をもった男の顔には見覚えがあった。

 

 

 「あ、赤髪のシャンクス~~!!!?」

 

 

 

 

 




完結まで頑張っていきたいと思います


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