今回ははやく更新出来ました。
現実逃避真っ只中でやる気がボチボチありますね。
それでは、本編どうぞ。
「そういえば、妖精には名前があるの?」
「うーん、わからん。さっきも言ったけど俺はちょと特殊だから」
「その言い方だとあるみたいね」
「・・・」
前世での俺は東雲 朗という名前だった。もちろん、今世に転生するにあたって前世のある程度の記憶は引き継いでいる。名前だけがわからないという不可思議現象も起きていない。
「レオ、それが俺の名前だ」
「うーん、ちょっと変わった名前ね」
「そうか?まぁ、艦娘も提督もみんな漢字だしな。それもそうか」
名前を名乗るにあたり俺は悩んだ。前世の名前をそのままつかどうかを。ただ、今は今だということを意識しなければダメだと思った。前世の俺と区切りを付けるためにも即席ではあるが決めた。
由来は『rebellion』という英単語。反抗・反逆という意味であり、上と下からとってレオとした。何を目的として転生させられたのかわからない現状である、生き残ることが最優先だ。深海棲艦や神さまに対する俺の決意表明みたいなものだな。
「改めて、初春型四番艦初霜です。レオさん、よろしくお願いします」
「あぁ、よろしく頼むよ。初霜」
こうしてお互いが軽く自己紹介を済ませ、名前を呼び合える仲となった。今は「さん」付けではあるが、いずれはレオと呼んで貰いたいものだね。
執務室と食堂はそんなに離れておらず、五分もかからず着いた。食堂と書かれた暖簾がかかっており、扉はなく開放的であった。また、天井が高く、一階と二階をぶち抜いた模様で二階に窓ガラスがある。まだ夕食前だったのか食堂は混んでおらず、まばらに艦娘がいるだけだった。一人で食べている子もいれば、姉妹で仲良く食べている子たちもいる。
ここの食堂は食券制であり、全て無料である。メニューは様々で、ざっと150種以上はある。ただ、燃料やボーキサイト、鋼材が使われているメニューは一つも無かった。これで食事で補給している説はなくなった。補給は一体どうやっているのだろうか・・・。
まぁ、考えても仕方ないのでメニューを選ぶ。選り取り見取りでどの料理が良いのか悩んでしまう。が、そういうときこそ御用達の日替わり定食だな。間宮さんが作ってくれているらしく、外れはないだろうと思った結果だ。
「メニューはどれにしますか?」
初霜はもう決めていたようでボタンを押して、食券を取っていた。
ここは一つ、妖精の身体能力をアピールしてみるか。好きな女の子の気を引きたいという思いにかられ、初霜の質問には答えず体を動かす。
まず始めに初霜の肩に負担がかからないようにソフトにジャンプ!続いて日替わり定食のボタンに張り付く!次に手と足の摩擦力で重力に逆らいつつ、食券の排出口に狙いを定める。そして軽く力を入れて重力に従って排出口に落下する。あとは食券をとって戻るだけっと考えつつ、空中で体制を整え足から着地するように調整する。
が、あと少しで足が着くというタイミングで食券が出てきた。
「え・・・?」
思考が停止し、あとのことはもう身に任せるしかなかった。食券の上に見事に着地したが、斜めの力が加わっているのでそのまま食券ごと体がもっていかれる。手をつく暇もなく、俺は頭から転けた。俺の体の上に食券が覆い被さる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙。そう、沈黙が訪れた。よくある格好つけようとして滑るやつだ。文字通り滑って転けた。俺の頭の中では今ごろ初霜の肩でどや顔を決めていたはずなのに・・・。
「ッ、フフッ」
ふと溢してしまった、そんな笑い声が聞こえた。覆い被さっている食券を取り除き、俺を肩の上にのせる。未だに思考が停止している俺はよそに、初霜は食券窓口へと歩き出す。
「少し、おっちょこちょいなのですね」
「いや、今回の事は俺の計算が間違っていたはずはない。ちょっとしたイレギュラーがあっただけだ。レオに落ち度はない」
「そうですね」
「い、いや!ほんとだって!」
少しテンパってどこぞの駆逐艦のマネをしつつ、言い訳を並べる。初霜は俺の言い訳を聞き流し、優しそうな笑顔で見つめられた。俺はその笑顔を向けられ、黙るしかなかった。……結果オーライかな?
あとで思い返してみたら中々気持ち悪い台詞を言ったかもしれないが、妖精の体だ。むしろ可愛いだろう、うん。
食券を出し終えたあとは空いている席について番号が呼ばれるのを待つだけ。今回の場合は人が少なかったのですぐに食事が出てきた。初霜は誰かと一緒に座ることはなく、六人掛けのテーブルに一人で座った。お盆を持てなかった俺は初霜に持って貰った。俺は初霜の隣の席が良かったため、我が儘を言って横にしてもらう。特に嫌な顔をせずにしてくれたのでホッとしている。
さて、本日の日替わり定食はごはん、味噌汁、チキン南蛮、海藻サラダ、そして漬け物である。
そしてこの時、俺は失念していた。妖精の体で艦娘の食事を一体どうやって食べれば良いのかを。
「食べれますか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「どうみても、大丈夫に見えないですけど・・・」
「戦闘妖精、レオ。いざ参る!」
初霜の心配の声が聞こえたが関係ない。俺は艦これの世界に転生して最初の敵、チキン・ナンバン・テイショクに戦闘を仕掛けた。
まず最初に海藻サラダに手を付ける。比較的容易に食べられると判断したのだ。その判断は間違っておらず、時間はかかるが特に問題は無い。クリティカルヒットだ!
お次はメインのチキン南蛮である。まずはタレを付けるためにチキンを動かす必要がある。獲物の周りに落ちている地雷(衣の破片)を踏まないように近づく。そして、一番軽そうな端っこの獲物を持ち上げる。その際、衣が手にくいこみ、断続的に伝えられる獲物からの熱いオーラに体力が削られる。被弾!損害は軽微!
なんとかタレをつけて口に運ぶ。が、如何せん妖精の口が小さい。ネットリとしたタレに俺の顔はドロドロである。味はとてもおいしい。
主食の次はご飯である。器の端にジャンプしてご飯の前に立つが、奴が放つ熱気にサウナかと間違えてしまうほどだ。さて、どう食べようか。と悩んでいると足が滑った。水滴がついているからそれもそうか、と現実逃避しながらまた頭から突っ込んだ。
「あっつ!火傷する!!」
とんでもない温度にすぐさま出ようとする。まずは頭を出し、足をご飯に付けてジャンプしようとするが出来ない。ひっつき虫みたいにご飯粒どもが全身に張り付くからだ。
なんとか器の端にたどり着き、ベチャッとご飯粒を付けたままお盆の上に落ちる。良い感じにクッションになった。中破!!……もちろん、ご飯もおいしかったです。まる
もう元気がなくなった俺氏。だが、最後の強敵が残っている。それは味噌汁だ。敵前逃亡は銃殺される、逃げることは許されない。
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
自分を鼓舞するように声を上げ、やけくそ気味に味噌汁の器へと飛び込む。だが、ジャンプした瞬間に気付いた。
おれ、服着てるじゃん・・・。
チャポン。……大破!!浸水発生!!このままでは轟沈してしまいます!!
「まだだ、まだ終わらんよ!」
俺は服を着たまま全力でクロールを開始する。ものの数秒で端っこにたどり着くが今の俺は止められない……!!
そのまま壁に激突し、フラッと揺らいだあと、器が傾き倒れる。バシャーーーッ!っとお盆の上に味噌汁がこぼれる。
「ふん、今回は見逃してやる。戦略的撤退だ。戦術的勝利などいくらでもくれてやる」
髪、服から味噌汁の雫を垂らしながら決め台詞を言う。『戦術的敗北 C』
顔を横に向けてみれば初霜が微笑ましそうに見ていた。他にも何人かの艦娘から同じような表情で見られていた。
「レオさん、ダメでしたね」
「いや、違う。これは戦略的撤退だ」
「ただ、食べ物を粗末にすることはダメです」
「はい、すいませんでした」
初霜に注意され、素直に謝る。このあと、初霜にあーんをしてもらい、間宮さんに相談してくれた。……ありがとうございます
あ、一人前はちゃんと食べた。明らかに体の体積以上の量だったが問題なかった。……不思議だね
「ベタベタしたままも嫌ですよね?」
「うん、それはね」
「そうですね、今日は何もないですし、お風呂に行きましょう」
「!?」
お食事の後はお風呂イベントだそうです。
これ、カットインするべきなのか・・・?
サブタイトル詐欺ですね、はい。笑
今回も楽しんで読んで頂けたら幸いです。
それでは、また次回の更新で。