元同性の親友とその想い人がアプローチを仕掛けてくる件 作:作者B
『クラウスーッ』
向こうからオリヴィエが腕を振り上げ、普通の人間と
『オリヴィエ、腕の調子はどうだい?』
『はい! ローレンツのおかげでこの通りです。流石は貴方の従者ですね!』
彼女は嬉しそうに、義手の5本の指を滑らかに動かして見せた。その見た目、動きは人間のものと何一つ変わらない。それは彼女の操魔技術の腕も勿論のこと、何より義手で人間の繊細な動きを再現してみせたローレンツの技術の賜物でもあるだろう。
『そうでしょうとも。彼は僕の自慢だからね』
『ええ! いっそこのまま、私の専属になって頂きたいものです』
『はっはっは。流石はオリヴィエ、冗談が上手い』
『ふふふっ。いやですわ、クラウスったら。貴方は、私は嘘をつくのが苦手だと知っているでしょう?』
あはは、うふふ、と笑い合う僕とオリヴィエ。この後、特に深い意味はないけれど、互いにアイコンタクトを交わした僕らは手合わせのために中庭へと向かった。特に深い意味はないけれど。
これは、オリヴィエとの貴重な記憶。例え大地が焼け、国が亡び、この身が崩れようとも色あせることのない、輝かしい思い出の一つ。
なお、これを見ていた侍女達は、何故か青ざめた表情で僕たちから距離を取っていた。何故だろう。別に僕たちは、中庭でお話し(物理)をしただけだというのに。
今、ツインテと一緒に保護されている俺は、St.ヒルデ魔法学院に通う極一般的な男の子。強いて違う所をあげるとすれば、前世の記憶があるってとこかナ。名前は――
「レン・ラドフォード。St.ヒルデ魔法学院中等科二年で、近くのスーパーに買い物に行った帰りに現場に遭遇、でいいかしら?」
「あ、はい」
くそぅ、自己紹介のタイミングを取られた。
俺は今、短髪のねーちゃんことノーヴェ・ナカジマさんの連絡でやってきた管理局の局員たちに保護され、何故かその局員の一人の自宅へとやってきているのだ。
そして、目の前で軽く取り調べをしているのが執務官のティアナ・ランスターさん。なんでこんな事件に執務官クラスの人が来るんだと思ってたけど、どうやらノーヴェさんの姉経由で連絡が入り、一緒に来たらしい。
「それで、ストラトスさんのことだけど……」
「すとらとす?」
「アインハルト・ストラトス。貴方と一緒に保護した女の子のことよ。同じ学校だから、もしかしたら面識があるかと思ったのだけれど」
「それは……」
これは、どう答えるべきか。確かにそのツインテ――アインハルトとは初対面だ。だけど、アイツの使っていた技、そして気絶する寸前に呼んだ俺の名前。俺の中では既に結論が出ているようなものだけど、確かな証拠もないし。うーむ……
「あら? 何か知ってるの?」
どうやら思案顔になっているのを不審がられたようだ。しまったな、こうなってしまったら今更白を切っても面倒そうだ。ここは、言葉を選びながら―――
「いえ、
「……というと?」
「アイツの戦い方が、俺の親友にとても似ていて……」
「因みに、その親友は今何処に?」
「わかりません。もう何年も会ってないので」
とりあえず嘘は言ってない。アインハルトと初対面なのも本当だし、アイツの戦ってるときの型が俺の親友にそっくりなのも嘘じゃない。さらに言えば、その親友に最後に合ったのは前世だから、何年もあってないのも本当だ。
「……なるほどね。ごめんなさい、答えづらい質問をしてしまって」
「い、いえ、気にしないで下さい」
な、何だか変な空気になってしまった。まったく気にしてないと言えば嘘になるが、それでも俺の中ではある程度割り切れてるからそこまで気にしなくてもいいんだけど……
「ティアー、あの
「あら。それじゃ、私は彼女のところに行ってくるわ。遅くまで引きとめてしまって、ごめんなさいね」
話が一区切りついたところで、同じく俺たちを保護してくれたスバル・ナカジマさんがやってきた。なお、俺が今お邪魔している家は彼女の住んでいるアパートである。
それにしても目を覚ましたのか。それなら――
「あ、あの、俺も一緒にいいですか?少し確かめたいことがあるんです」
「え? うーん……まあ、大丈夫かしら。寝起きなんだから、あまり負担を掛けないようにね」
よし、これでとりあえず話ぐらいはできそうだ。あいつには色々と聞かなきゃいけないことがあるからな。
俺はスバルさんとティアナさんの後を着いていき、アインハルトが居ると思われる部屋の扉の前に来た。
「ノーヴェ、開けるよー」
『ああ、いいぞ』
ノーヴェさんの返事を聞き、部屋の扉を開ける。すると中には、ベッドの上で上体を起こして顔を俯かせているアインハルトと、そのすぐ横で椅子に腰かけているノーヴェさんが居た。
「様子はどうかしら?」
「……はい、大丈夫です。すみません、ご迷惑をおかけしたみたいで」
先の戦いと同一人物とは思えないほど、アインハルトはしおらしくなってた。
これが素なのか? 随分と印象が違うな。
「ノーヴェから聞いてた話と随分違うわね。いきなり襲われたって聞いたけど」
「さっきからずっとこの調子なんだよ。まあ、確かに戦ってるときは様子が変だったけど」
俺もティアナさんから軽く説明があった程度だが、聞く限りだと、どうやらアインハルトは突然ノーヴェさんに襲い掛かったらしい。だけどあの時のアインハルトには、ノーヴェさんを通して別の誰かを見ているような、そんな違和感があった。もしかしたら、正気じゃなかったのかもな。
「それで、そっちは取り調べは終わったのか?」
「ええ。それで、ストラトスさんに聞きたいことがあるって言ってね。連れて来たの」
「……え?」
それまでずっと下を向いていたアインハルトが、顔を上げる。そのまま俺を視界に捕らえると、ハッと目を見開いた。
「あ……ああ……」
悲哀、歓喜、憂虞、慕情、悔恨。色々な感情がぐちゃぐちゃに合わさったような表情を見せ、そして――
「ローレンツ!」
ベッドから飛び起きた彼女は、俺の方まで駆け寄り、そのまま俺の胸へ飛び込んできた。
「うわッ――っとと」
「会いたかった……ローレンツ……ッ!」
それはまるで、生き別れた恋人に再会したかのように、死に別れた友と再会したかのように、アインハルトは俺の身体を抱きしめながら身体を震わせ、その瞳から大粒の涙を零していた。
「クラウス……」
俺は優しく抱きしめ返した。今は百万の言葉を紡ぐよりも、こいつの思うがままにさせてやろう。それが、こいつの最期を看取れなかった、親友としての精一杯の罪滅ぼしになると思うから。
―――――――――――――――
――――――――――
―――――
「……お恥ずかしいところをお見せしました」
数分後、一通り泣いたアインハルトは我に返った。さっきからずっと暖かい目で見守られていることに気が付いたアインハルトは、慌てて俺から離れ、再び大人しくなってしまった。その時に顔を赤くしていたのは、きっと涙で腫れたせいだけではないだろう。
「気にしなくていいよ。まるで恋人が再会したみたいに感動的な場面だったし」
「こ、恋人……ッ!?」
スバルさんはニコニコしながら答える。ぜってー楽しんでたな、この人。
あと、アインハルト、なんだその視線は。頬を赤くしながらチラチラこっちを見るな。なんで恋する乙女みたいな反応してるんだよ。
「はいはい、そこまでにしときなさい。取り敢えず、聞きたいことが増えたんだけど、どうしようかしら」
あら、執務官殿がこっちを見ていらっしゃる。そりゃそうだよな。初対面って言ったのに、さっきまで意味ありげな再会シーンを見せつけてたんだし。
さて、どうしたものか。別に本当のことを言うのは構わない。最悪、俺が頭の痛い子ってことになるだけだからな。だけど、アインハルトも関係してるから、俺が勝手に説明するわけにもいかないし……
「あの、それなら私がお答えします」
すると、俺の考えを察したのか、アインハルトが自ら名乗り出た。
「それじゃあ、まず最初に……そこの彼、レン・ラドフォード君とは知り合い?」
「ラドフォード……?」
アインハルトが確認するかのように俺へ視線を向けた。俺はそれに対し、自分のことだ、と頷いて返す。
「……はい、確かに彼のことは以前から知っていました」
まあ、後はこいつに任せて、適度に補足なり何なり入れればいいか。仮にも元一国の王子だし、口には多少の覚えがあr――
「彼とは…………夜な夜な汗だくになった私をお風呂に連れていってそのまま一緒に入ったり、その後も同じベッドで一緒に寝たり、そんな仲でs――あいたっ!」
「何言ってんの!? ねえお前ホント何言ってんのホント!」
なんでそこをピックアップしたんだよ! ていうか、なんで意味ありげに言ったんだよ! 違うからね!? あいつの夜の鍛錬に付き合って、汗臭いからって風呂に連行しただけだから! 第一、お前あの頃はおとk―――ほらーッ! ティアナさんすっごい呆れた目で見てるし!
「……最近の子供は随分進んでるんだな」
「いや~中学生ともなれば、恋の一つや二つくらいするんじゃない?」
「恋って言うには、ずいぶんと爛れてる気が……」
早速ナカジマ姉妹が勘違いしてるーッ!
「ちょっ! 違いますからね! おいコラ、クラウス! 変なこと言うなよ! お前わかっててやってるだろ!」
「変なこととは失礼ですね。本当のことじゃないですか。あと、今の私はアインハルトで―――痛たたたッ!」
「夜にお前の自主練に付き合ってやっただけだろうが!」
「は、離してください! 別にそこまで痛くないですけど、アイアンクローされると前が見えないのd―――痛い痛い!
くそッ! こんな時に非力な我が身が恨めしい。
「そう、それよ!」
すると突然、ティアナさんが俺のことを指さした。
「な、なんですか? アイアンクローのことですか?」
「違う違う。というか、いい加減離してあげなさい。仮にもその娘、怪我人なんだから」
ティアナさんの言葉を聞いて、俺は渋々手を離す。
ちっ、精々この人に感謝するんだな。まあ、どうせ大して効いてないんだろうけど。小声で『ローレンツに拘束されるのも、それはそれでありですね』とか言ってるし。
「今……最初会った時もそうだけど、別の名前で呼び合ってたわよね。それに、今もまるで旧知の仲の様に話していたけれど、そこのラドフォード君にストラトスさんの名前を聞いたときは本当に知らなそうな顔をしていた。正直に言って、矛盾を感じるのよ」
この人、目敏いな。普通に聞いてれば聞き流しそうなものを。
すると、さっきまで蟀谷を抑えていたアインハルトが、さっきとは一転して真面目な表情でティアナさんへ向き直った。
「……わかりました。改めてお話しします」
「大丈夫か? 何なら、俺から話した方が……」
「いえ、貴方にも知っていてほしいので」
俺にも知ってほしい? それってどういうことだ?
「私は昔、それこそ幼少期ですが、その頃は少なくとも只のアインハルトであり、何処にでもいる普通の女の子でした」
只のアインハルト、か。益々分からなくなってきたな。
「それが変わったのは、覚えている限り5歳くらいの頃。断続的に、見たことのない景色を夢で見る様になりました」
「見たことのない?」
「はい。私は生まれてからずっとミッドチルダに住んでいるのですが、ここでは到底見ることのできないような、木々は枯れ大地は荒れ、地平線まで炎が埋め尽くす、そんな場所でした」
それは、恐らくあの頃の、聖王統一戦争のことだろうか。
「その夢を見る頻度は次第に増していき、4年前からは、一人の女性が立っている光景を見る様になりました。荒廃した大地を燃え盛る炎が覆う、そんな中でも決して輝きを失うことのない金色の髪を風に靡かせ、紅と翠の瞳で私の方を見つめてた彼女を、私は――」
「ちょ、ちょっと待って! 紅と翠のオッドアイって、まさか……」
「はい。恐らく貴女の想像通り、彼女は聖王女オリヴィエ。そして、彼女と対峙していたこの記憶の主こそ、私の先祖でありオリヴィエと同じ時代を生きた、クラウス・G・S・イングヴァルトです」
アインハルトの言葉を聞いて、スバルさんとノーヴェさんが目を見開いて驚き、ティアナさんは難しい顔になる。そして、俺も恐らく3人とは別の意味で驚いた。
てっきり、俺みたいに『生まれ変わり』っぽいことが起こってるのかと思ったけど、まさか記憶だけが現れるだなんて。
「その後も、暫くは時折夢に見る程度で大きな問題はありませんでしたが、1年前ほど前から夢を、クラウスの記憶を見る頻度が急激に増し始めました」
そう語るアインハルトの表情は、苦虫を噛んだかの様に歪んでいく。
「それだけではありません。怒り、憎しみ、後悔。クラウスの負の感情ともいうべきものが幻聴の様に私へ訴えかけ、酷い時は昼間に立ったまま記憶がフラッシュバックする事さえありました」
クラウスの負の感情。それがどれほどのものかわからないけど、それは多分、少女一人の精神を押しつぶすには十分すぎる重圧だったんだろう。
「最近では起きているときも意識がはっきりしないことが多く、気が付けば意識を失って再びクラウスの悪夢に魘されて起きる、ということを繰り返していました」
「もしかして、今夜ノーヴェを襲ったのも」
「はい。今回だけでなく、今までの事件に関しても私には覚えがありませんでした。いつもの様に
そうか、そういうことか。これで、あの時のアインハルトの違和感の正体がわかった。
こいつはノーヴェさんを通して戦い続けていたんだ。あの戦争の続きを。
「今までの襲撃は、夢と現実が曖昧になって、現実の相手を夢の中の敵と誤認してたのかしら。意識が朦朧としていたのは、夢遊病みたいに夜中出歩いて睡眠時間が不足したせいかも。……ご両親に相談とかしなかったの?」
「……わかりません。誰かに話す、なんて発想も出てきませんでした。クラウスの狂気に少しずつ侵食され、もう私はアインハルトなのかクラウスなのか、そんなこともわからなくなっていたんだと思います」
アインハルトの言葉を聞き、俺は拳を強く握りしめる。
歴史にもしもなんてない。ないけれど、もし俺が最期までクラウスの傍に居れたなら、少なくとも目の前の少女は苦しまずに済んだのではないだろうか。
「ですが、それも今日で終わりました。ローレンツ、貴方と出会うことができたから」
「……え?」
「狂気に囚われていた私の瞳に貴方が写った途端、その狂気が消え、まるで嘗て4人で野山を歩いたときのあの空の様に、穏やかな感情が心の隅々まで行き渡りました。抽象的な例えですが、衰弱し痩せ細った私の心の隙間を、クラウスの暖かい感情が埋める様に流れ込み混ざり合う、そんな感覚でした」
アインハルトが穏やかな表情で俺の手を取る。
「ですから、貴方には謝らないといけません。私は真の意味で、貴方の知る
途中まで聞いて、アインハルトにその先の言葉を言わせない様に軽くチョップした。
「な、何を?」
「アホか。そんなことで一々お前との縁を切るかよ」
「な、何故それを!?」
やっぱり、そんなこと言おうとしてたのか。
「で、ですがローレンツ!」
「どうしても気になるって言うんなら、もう一度友達になろう」
「……え?」
俺の言葉に呆けるアインハルトを余所に、今度は俺からアインハルトの手を握りしめる。
「お前はアインハルト・ストラトスで、俺はレン・ラドフォード。ほら、これでもう友達だ」
「あ……っ」
俺は、今できうる精一杯の笑顔を向ける。俺の言葉を理解したアインハルトは、再び目から涙を零した。
「まったく、お前少し泣き虫になったんじゃないか?」
「なっ! 別にそんなことは――わっぷ!」
「じっとしてろ。涙を拭けないだろ」
俺はあきれた様子でハンカチでアインハルトの目元を拭う。まったく、戦闘以外では手がかかるのは今も昔も変わらないな。
そこで、ふと思い出した。そういえば、この場には俺ら以外にも居たよな、と。少し視線をずらすと、ティアナさんとノーヴェさんが再び暖かい視線で俺を見ており、スバルさんに至っては『い゙い゙話だな゙ー』とハンカチ片手に涙を流していた。
……やっべ。俺今すっげえクサい台詞吐いてた。めっちゃ恥ずかしい!
「なるほど、ね。それじゃあ、次は貴方に聞きたいんだけど、いいかしら?」
「あ、俺ですか? 別に大丈夫ですよ」
ハンカチを懐に仕舞い、再び真面目モードになったティアナさんの方へ顔を向ける。
「といっても、こいつみたいに壮絶なドラマなんてないですよ? 説明するのは難しいんですけど、例えるなら『死んだと思っていたら、いつの間にか赤ん坊になっていた』って言うのが近いかも」
「そうだったんですか?」
「ああ」
正直、死んだときのことははっきりと覚えていない。まさに、気が付いたら赤ん坊状態だったから、当時は大慌てしたもんだ。
「こいつとの関係も、前世でクラウスの付き人をしてたってだけです。こいつらみたいな戦闘力は持っていませんし」
「むっ、訂正してください! 貴方は私の一番の親友です。自分を卑下することは貴方が許しても私が許しませんよ!」
「あーわかったわかった! 別に付き人なのは本当のことだからいいだろ!」
まったく。当時は敬語なんぞ一切使わなかった俺も悪かったが、どうにもこいつは身分差というものに疎いな。それで、よくリッドにタメ口で話すように言って困らせてたっけ。
「それに貴方の本職はデバイス技師なのだから、力がなくとも問題ありません!」
「あら、そうなの?」
「ええ、まあ。後はこいつらの鎧の修理とか、トレーナーの真似事みたいなのもやってました」
クラウスは放っておくと無茶ばっかりするからな。俺が見張ってるうちにいつの間にかオリヴィエとリッドも加わって、あれよあれよという間に三人分のトレーニングメニューを考えることになっていた。
どうしてこうなったんだ!
「なるほどなるほど……こんなもんかなっと。よし、取り調べ終了。ご協力感謝するわ」
「あの……」
メモを取り終えたティアナさんに声をかける。取り敢えず一つだけ聞いておかないといけないことがある。
「そのクラ――アインハルトはどうなるんですか?」
「何も心配いらないわ。今回の一連の襲撃事件は元々被害届が出てなかったみたいだし、話を聞いた限りじゃストラトスさんの方は計画性もなくまともな精神状態じゃないのもわかった。だから、念のため明日病院に行って検査して、何事もなければそのまま解散かしらね」
よかった。取り敢えず一安心だ。
「何から何まで、ご迷惑をおかけしました」
「いいのいいの。それじゃあスバル、悪いんだけどこの子たち泊めてあげてくれない?」
「いいよー。ティアもノーヴェも泊まってくでしょ?」
「そうね、もう遅いし」
「悪いけどそうさせてもらうわ」
こうして、二人目の旧友との再会を果たした、長い一日が終わりを告げた。
なお余談だが、牛乳を事件現場に置いていったせいで、翌日再び買いに行く羽目になったのは別の話だ。
~アインハルトの独白~
「なあ」
皆が寝静まった頃、部屋数の関係で同じ部屋に寝ていたローレンツ、いや、レンが話しかけてきた。
因みに、私はベッドでレンは床に敷かれた布団に寝ている。私は一緒のベッドでも構わないといったのだが……
「なんですか?」
「結局のところさ、今のお前ってどういう状態なんだ? こう、お前の主観の話でいいんだけど」
「そうですね……自分はアインハルトであるという自覚があるとともに、クラウスの記憶も『映像として見た』のではなく『実際に体験した』という感覚です。例えるなら、アインハルトとクラウスの魂が混ざり合ったとか、そんな感じでしょうか?」
こう言っておいてなんだが、私は今の状態に大して違和感を感じていない。それは、幼少の頃から
……私はどうすればいいのだろうか。私は彼の知る
「まーた馬鹿なことを考えてるだろ」
「……え?」
すると、私の心を見透かしたかのように、レンがまた話しかけてきた。
「お前が誰だろうと、俺はお前の親友だってさっき言っただろ?それに、小一時間話しただけだけど、お前は自分で言うほど別人じゃねえよ。特にその、良くも悪くも思い込んだらまっすぐ突っ走るところとか」
その言葉を聞いて、鈍器に殴られたような
離 し は し な い
おかしい。この作品はギャグ路線のはずなのに、ギャグが足りない。
補足ですが、ここのアインハルトは原作よりもクラウス成分が強めです。だけど、人格的には女の子です。
あと、ヒロインは別に病んでません。
次回は3人目のヒロインが……出せればいいなー