FAIRY TAIL 妖精の戦姫   作:春葵

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お盆になったと思ったらもう終わりですねぇ…。
これからまた忙しくなると思うとすごく憂鬱です。

忙しくなっても、なるべくペースは落とさず頑張ります!
それでは、最後までお付き合いお願い致します!


27.波乱の道中

ベスネルクを出発した二人と一匹は、途中で馬車に乗り込み、少しずつエスティアに向けて進んでいた。このままのスピードで行けたら、エスティアまでは一日も有れば着けるだろう。もっとも、この馬車はエスティアまでは行かないため、途中からは徒歩になってしまうが。

少女にとっては馬車に乗るのは初めての体験のようで、乗ってからしばらくは楽しそうに辺りを見渡していた。しかし、今となっては乗り物酔いで苦しむシスティを前に、楽しむに楽しめない状況になっていた。

 

「うぷっ……気持ち悪い…」

「あの、大丈夫ですか…?」

「大、丈夫……。いつもの、ことだから…」

 

本人はそう言っているが、エリナから見たら全くそうには見えない。こんな弱点丸出しで大丈夫なのか、と正直疑ってしまう。

 

「大丈夫。システィはこれでも聖十大魔道に招待されるほどの実力者だよ」

「せいてん……?…それって凄いんですか?」

「……世間知らずもここまでくると呆れるしかないね…。いい?聖十大魔道っていうのはね……」

 

シェリルが説明を始め、エリナも熱心にそれを聞いている。そんな様子をシスティは乗り物酔いに苦しみながらも眺めていた。

 

あの小さかったウィンディも、今頃エリナくらいの身長に成長してるのかなぁ…

 

ワイワイ楽しそうにする二人を見てシスティは優しく微笑んだ。

 

 

 

 

しばらく進んでいると、突然馬車にブレーキがかかり停止した。だが、システィ達が乗せてもらえるよう交渉した場所にはまだまだ遠いはずだ。二人も今の状況に違和感を感じ、警戒して話すのをやめて黙り込む。システィも、持っていた薄茶色のフード付きケープを羽織って妖精の尻尾(フェアリーテイル)のシンボルマークを隠し、ついでにフードで顔を隠す。外から山賊らしき男が入ってきたのはその直後だった。

 

「テメェら、外に出ろ」

 

銃型の魔法具を突きつけられ、やむなくシスティ達は男に従う。

外に出ると馬車の周りを二十人以上が囲んでおり、ほとんど全員が同じ魔法具を手にしていた。

 

「あれ、王国軍用に開発されたパイソンシリーズの七型です。射程は三十メートルと短いけど、その分威力は強力です」

 

エリナが隙を見計らってシスティに耳打ちして教える。システィにとって情報の有無は大した勝因にはならないが、戦いやすくなることは事実だ。システィは得た情報を元に戦闘をイメージする。

すると、リーダー格と思われる男が空に向かって魔力弾を撃ち上げ、高々に言い放つ。

 

「よしテメェら、手荷物を含む金品を全部寄越せ!!」

 

いくつもの銃口を向けられ、御者さんも仕方なく積荷を下ろして差し出す。システィ達は竜の(あぎと)を除いて貴重そうな物は持ってなかったし、竜の顎自体もただの爪か牙にしか見えないためそのまま立ち尽くしていた。しかし、そのせいで山賊達の目に留まってしまった。

 

「おいそこの女二人、こっちに来い」

「…分かりました……」

 

エリナが怯えた様子で頷き、システィも続いて男の元へ歩み寄る。男の前に立って早々にシスティはフードを取られ、素顔が露わになる。控えめに言っても美人すぎるシスティを山賊が気に入るのは当然のことだった。

 

「……ほう…。中々上玉じゃねぇか。放っとくのは惜しいなぁ」

 

男はシスティの顎を押し上げ、気味の悪い笑みを浮かべる。だが、そのせいで男はシスティの怒りを買った。

 

「汚い手で触れるな」

「グハッ…!?」

 

思わず本気の正拳突きを放ち、男は軽く10メートルは吹っ飛ぶ。仲間が呆けているうちにエリナを背負い、御者さんを背後にして守る。

 

「テメェ、タダで済むと思うなよ!!!!」

 

山賊達は半円を作るようにシスティ達を囲み、銃を構える。

逃げ場のないこの状況の中、ただ一人システィだけが余裕の表情を浮かべていた。

 

「死ねぇ!!!!」

「天竜の旋風!!」

 

放たれた魔力弾は全て上空へと吹き飛ばされ、消滅する。そんな想定外の光景に一瞬の硬直が生じ、システィは一気に突っ込んだ。

崩れた陣形はただ自分達の首を締めるだけで、システィは敵を誘導して同士討ちを誘発させたり、軌道をずらして敵に当てたりして敵の数を減らしていく。相手もこのままでは不味いと感じたのか、攻撃を近距離に変更し接近してくる。しかし、狙って撃つだけの遠距離戦闘とは違って近距離戦闘では相応の技術が要るため、逆に一瞬で残りが片付いてしまった。残るはリーダー格の男ただ一人だ。

 

「さて、そろそろ何が目的か話して貰おうか。あ、もちろん戦いたいなら相手するよ?今度は手加減しないけど」

「……聞くなら聞け。答えられる範疇なら答える」

「そ、じゃあ遠慮なく…。

誰に頼まれてこの馬車を襲ったの?」

 

システィ達が乗っていた馬車は、荷台が小さな馬車で荷物も大して積んでいないのが外から見ても分かる。それなのに襲われた。しかも、山賊達は過剰と言えるほどの装備を揃えている。裏で糸を引いている奴がいると推測しても何も不思議はない。

そして、やはりシスティの推測通り黒幕が存在した。

 

「……ラーガスという名の男だ」

「えっ!?」

「ん?知ってる人なの?」

「はい…。本名はラーガス・グラルフ。エスティアでは父の次に有名な魔法具職人です」

「なるほどねぇ…」

 

狙いは確実にエリナの持つ竜の顎だろう。竜の顎は今の所世界に一つしかなく、魔力の貯蔵と放出という機能は何にでも応用可能だ。もしそんな竜の顎が複製されでもしたら、ルーエル氏の優位が確実なものとなってしまう。ラーガスは恐らくそれを嫌ったのだろう。

 

「……貴方のお父さんが心配だなぁ…。ちょっと急いだ方がいいかも……」

 

人質にとられているなんて事もありえないことはない。

エリナも同じことを考えていたのか、システィの言葉に大きく頷くと二人は馬車に乗り込み、再びエスティアに向けて進みだした。

 

「父さん……無事でいて…」

 

まだまだエスティアまでは遠く、今はただ待つしかできない。馬車の速度にもどかしさを感じながら、エリナはただ祈り続けるのだった。




最後までお付き合いありがとうございました‼︎
黒幕が登場し、早くも?終盤に入っていきます。
やっぱり内容薄いかな…すごく心配です。
次回も是非ともよろしくお願い致します‼︎

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