FAIRY TAIL 妖精の戦姫   作:春葵

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悪魔の島編もそろそろラストスパートです!!

予定では、あと一、二話のつもりです。

それでは、最後までお付き合いお願いします!!


14.災厄の悪魔デリオラ

村を出たシスティ達は遺跡に向かう途中で、グレイから敵の情報と目的を再度聞いていた。

 

 

「なるほど…。つまりその零帝リオンはかつてお前の師匠でもあったウルが命をかけて封印した怪物、デリオラの封印を解き、自身の手でそれを破壊…。そして、師を超えることを望んでいるのか…」

「あぁ」

 

簡潔に纏めたエルザの言葉に頷くと、グレイは足を止めることなく遺跡を睨みつける。

 

「確かに…ウルは俺達の前からいなくなった……。けど、ウルはまだ生きてるんだ」

 

グレイの話を聞き、システィ達は自然と走る足を速める。

そしてふと遺跡を見つめると、ルーシィは遺跡に違和感を感じた。

 

 

「あれ?遺跡が傾いてる…?」

「恐らくナツだろう…」

「なるほど…あれなら月の雫(ムーンドリップ)はデリオラのいる地下まで届かないね」

 

相変わらずこういう時だけ頭が回るんだからと、システィは心の奥で愚痴りながら足を進めると、突然目の前を仮面をつけた民族の集団が現れ、道を塞いだ。

 

 

「っ!くそ!こっちは急いでるっつぅのに!!」

 

目の前に立ち塞がった集団にグレイは愚痴を吐く。

その横でシスティも小さく舌打ちをし、強引に突破しようと魔力を拳に溜めた時、急にエルザが前に出た。

 

「行け…ここは任せろ。グレイ、お前はリオンと決着をつけてこい!!」

 

小さく背後を振り返ったエルザの瞳には、負ける疑いなど一切なかった。

 

 

「っ!!サンキュー!エルザ!!」

 

エルザに礼を言うとその横を通り、遺跡へと走るグレイ。

 

「システィ、お前も行け。ナツ達の成長を見届けてこい!!」

「うん、わかった!!シェリル、お願いね」

 

システィはシェリルに掴まると、一直線に遺跡を目指した。

 

 

遺跡の中へ入ると、システィはそのまま地下への道を走っていく。

 

「多分こっちの方からナツの匂いがきてるんだけど…」

 

竜同等の嗅覚でナツの居場所を探すが、崩れて風通りが良くなったからか、匂いが薄くなっている。

 

「どう、システィ?追えそう?」

「んー………この辺だとは思うんだけど…」

 

薄い匂いを辿ってきたが、そろそろ限界だった。これ以上は薄すぎて追い用がない。

しかし、運良く探し人の方から来てくれた。

 

「待てやゴラぁああああっ!!」

「ナツ!!」

 

走ってきたナツは変な仮面をつけた小さな老人を追っていた。

 

 

「お?システィ!?丁度いい。そいつ捕まえてくれ!!」

「…そいつ?」

 

ナツの追う老人は狭い通路を細やかに逃げている。老人とは思えない素早さだ。それに、システィはその老人とどこかで会った事があるような気がしていた。

 

 

「あ、システィ!ナツ見失っちゃうわよ!!」

「んぇ?あ、うん分かってる」

 

 

あの雰囲気…一体誰だっけ…

 

システィは記憶を巡らせながらナツと共に追跡を始めた。

 

 

老人を追う中、システィはナツの隣に並んで老人を指差す。

 

「ナツ…アレ誰?」

「俺が知るかよ!!けど、あいつの魔法で折角傾けた遺跡が元に戻ったんだ!!」

「遺跡が…!?」

 

今さらながら、システィは自分の走る通路が傾いていないことに気がついた。

だが、ものを元の形に戻すなんてできる魔法は“失われた魔法(ロストマジック)”でもただ一つ。時空の魔法、“時のアーク”しか有り得ない。そして、システィはそれが使える魔導士を一人しか知らない。

 

「やっぱり………」

「ん?システィ、どーかしたか?」

「ううん、何でもない…。それより早く追わないと」

 

しかし、追っている仮面の老人が一瞬にして目の前から姿を消した。

 

「えっ!?」

「消えた!?」

「もしかして…。ナツ、デリオラの所に急ぐよ!!」

 

 

急いで地下へと掛け降りると、システィの予想通り仮面の老人は地下深くのデリオラの前にいた。

 

「見つけた!!」

「火竜の鉄拳っ!!」

 

氷に覆われたデリオラを見上げ、ニヤニヤと笑っている仮面の老人に向けてナツは火を纏った拳を放つ。しかし、ナツの拳はひょいっと軽い様子で避けられてしまう。

 

「ほっほー。よくここがお分かりになりましたね?」

「俺達は鼻がいいんだよ!!」

「それに、貴方の匂いにはどこか覚えがある」

 

システィは鋭い視線を向けるが、老人は怖気づくことなく笑い続ける。

 

「ほっほっほっ…私はね、どうしてもデリオラを復活させねばなりませんのよ…」

「へっ!やめとけやめとけ!もう無理だ」

 

ナツは笑う仮面の老人にニヤッと笑みを見せ言い切る。

 

「グレイがあいつをぶっ飛ばす!!そして、俺がお前をぶっ飛ばす!!それで終わりだこの野郎!!」

「ちょっとナツ、私もいるんだからね」

 

システィは呆れ顔をナツに向ける。

 

 

「ほっほっほっ、そう上手くいきますかな?」

 

すると突然デリオラの氷に紫の光、“月の雫”が降り注いできた。

 

「なに!?上で儀式してる奴がいんのか!?」

 

ナツは月の雫が降り注ぐ天上を見上げ、顔をしかめる。

 

「ほっほっほっ。たった1人では月の雫の効果は弱いのですが、既に十分な月の光が集まっております。あとはきっかけさえ与えてしまえば…」

 

仮面の老人がそう呟いた時、ピシッと乾いた音が氷から響いた。

 

 

「っ!」

「氷に亀裂が…」

「くそ!上にいる奴を何とかしねぇと…!!」

 

そう叫び、来た道を戻ろうとするナツだが、その道を仮面の老人が天上の岩を落として塞ぐ。

 

「んなっ!」

「逃がしませんぞ…。お二人にはここに残って貰います」

「くっ…それなら…。システィ!!」

 

システィはナツの目を見て考えていることを察し、二人同時に息を吸い込んだ。

 

 

「っ!?ま、まさか…」

 

「火竜の…」

「天竜の…」

 

「「咆哮ォ!!」」

 

放たれた火炎と竜巻は入り交じり、より強力な炎の渦となって天井を貫いた。

合体魔法(ユニゾンレイド)。本当に息が合った者同士でなければ発動は難しく、生涯を費やしても習得には至らないと言われるほどの高難度魔法。

だが、システィがナツに合わせることで二つの魔法が真に一つとなり、より強力な魔法となった。

 

 

ドドドドドゴォオオオン!!!!!!

 

 

地下最深部から放たれた火炎の竜巻は勢いそのままで地上の遥か空まで貫いた。

竜巻が消えると、儀式の光は消え月の雫も消滅した。

システィとナツは互いに顔を見合わせ安堵する。

 

しかし、安心するのはまだ早かった。

 

 

 

グォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!

 

 

 

まるで地鳴りのような雄叫びが響き渡った。

 

「うわぁ!?」

「な、なんだ!?」

「え…う、そ……!?」

 

システィ、ナツ、シェリルの目に映るは大きな雄叫びをあげ、氷から完全に解放されたデリオラの姿だった。

 

 

「そんな…復活してる…」

「驚いてる暇はねぇ!行くぞシスティ!!」

「待て!!お前らでどうにか叶う相手じゃねぇ!!!!」

 

突然割って入ってきたのはグレイの声だった。

グレイは先程ナツとシスティが開けた穴から降りてきて、デリオラの前に立ち塞がった。そして、不意にグレイはある構えをとる。

永久氷結魔法、絶対氷結(アイスドシェル)の構えを。

 

「な…グレイ!?やめなさい!!!!」

「絶対氷結!!!!」

 

グレイはシスティの言葉を聞かず、その呪文を唱える。

すると、その呪文と共にグレイの周りに膨大な魔力が集まり始める。

その光景を見たリオンは堪らず声を上げる。

 

「よ、よせグレイ!!あの氷を溶かすのにどれだけの時間がかかったと思ってるんだ!?」

「うるせぇ!!俺が今、こいつを止める…!!」

 

グレイは更に魔力を高め、標準をデリオラへと合わせる。しかし、それを阻むようにシスティとナツは立ち塞がる。

システィはゆっくりと歩み寄り、グレイの目の前へと辿り着く。

 

「どけ、システィ!!それ以上近づくとお前まで凍っちまう!!」

 

実際、システィの体は徐々に凍り始めていた。

しかし、システィはそのことが気にならないほど激怒していた。

 

「……“邪魔”」

 

バシィィン!!!!

 

「なっ…!?」

 

誰も何が起こったのか理解できなかった。

さっきまで発動寸前だったはずの絶対氷結が一瞬にして霧散したのだ。さっきまでの冷気が嘘のように消えている。

 

 

「ねぇ、私言ったよね?なのに何で一人で抱え込もうとするの?

貴方にはみんながいる。仲間がいる。家族がいるじゃない!!」

「…あの時、死んで欲しくねぇから止めたのに、俺の声は届かなかったのか…?」

「っ!?ナツ……」

 

デリオラを見上げるナツの隣にシスティも並ぶ。

 

「こいつがいつまでもグレイを苦しめるなら、私達がその傷を癒してみせる」

「っ!!無茶だ…やめろぉおおおっ!!!!」

 

ナツとシスティがほぼ同時に地面を蹴り、デリオラに向けて飛び出したその時―

 

 

ピシ、ピシピシ、ガラガラガラッ!!

 

 

「っ!?なんだァ!?」

 

突然、デリオラに亀裂が入り、拳から全身が崩れ落ちていく。

デリオラは既に死んでいた。ウルの氷の中で徐々に命を削られ、既にその命を終わらせていたのだ。

 

 

「すっげぇ…すっげぇな!!お前の師匠!!」

 

崩れ落ちたデリオラの残骸を見つめると、ナツは背後で俯いていたグレイを振り返り、満面の笑みを見せる。

グレイは俯き、目元を手で覆っていた。

 

「ありがとう……ございます…師匠………」

「よかったね、グレイ……」

 

これでグレイの暗い闇は消え去った。

海に溶けて帰っていくウルの氷と共に流されるかのように、グレイを苦しめていた長年の闇が涙となって流れ落ちた。




最後までお付き合いありがとうございます!!

自分でも思いましたが、今回のはバトルシーンだったのでしょうか…?
バトルというより、魔法を使っただけのような…。

とりあえず、攻撃魔法を使っただけで一歩前進したということにしておいてください。

次回もどうかよろしくお願いします!!

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