fate/grand order 花の魔術師の義弟 作:all
キツい。ツラい。止めたい。私は何度もそんなことを思い続けて二度目の生を生きてきた。私がこの世界に来た目的を探している時に色々なことがあった。
生まれて初めて、人に斬られた。生まれて初めて、人を殺した。
それ以外にも沢山の事があった。私はこの度に悩んで、死にたくなって、辞めたくなった。それはそうだろう。私は元はただの人。あの騎士王や、義兄とは違う。彼らは心のそこから、芯から英雄だった。
それでも、私が頑張ってこれたのは、この世界に目的があると信じていたからだろう。その人生の中で、私は強くなったとは思う。身体的に。それ以上に、精神的に。
それでも、彼ら彼女らには及ばないかもしれない。所詮、私は上っ面だけの存在なのかもしれない。
まあ、結局何が言いたいかと言うと、そんな私が彼女、あの高貴な騎士王、アルトリアに釣り合うのだろうか?という話なんだけど…。それは私がこれからも頑張り続けたらいいのかな?
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「キャスターは好きなものとか苦手なものってある?」
「え?どうしたんだい、急に」
「いや、私キャスターの好みとかあんまり知らないなって思って」
気絶してしまった兵士を置き去りにして私達はロマニに辺りを調べてもらっている間、少し歩いたところにあった木陰で休憩をしている。
だが、今いるのは私とキャスターの二人。立花達は霊脈にサークルを設置するため別行動だ。設置を完了したら連絡が入り合流する手筈になっている。
「うーん、まずは好きなものからかな?私が好きなものと言えば面白い事、それと…召喚された時に知った和食かなぁ」
「へぇ…意外。和食食べたことあるんだ」
「まあね。サーヴァントに食事は要らないんだけど、あのときはある人間に憑依しての召喚だったから食事は必要だったんだよ」
「そんなこともあるんだ…」
その場合、何か条件はあるのだろうか?
ここ最近ずっと驚いてばかりな気もするが、しょうがない気がする。だって知らないことばっかりなんだし。
「じゃあ苦手なものは?」
私がそう言うとキャスターは昔を思い出してか少し怒ったかのような顔で喋り出した。
「ものじゃなくて、人なんだけど、生前のブリテンの宮廷魔術師に炎を操るやつがいてね。そいつとはずっと犬猿の仲だったよ」
「うわぁ…炎と氷ってやっぱ相性悪いんだ?」
「そうだね。ま、突っかかってきたらいつも凍らせてやったけどね!」
「相手炎なのに?」
ここまでいって私は気付いた。そういえば夢で見た光景では炎すらも凍っていたことに。
「あ、やっぱり今の質問なしでいいや」
「?まあいいけど…」
「じゃあ次の質問。憧れてた人とかは?」
「憧れねえ…まあ、義兄さんは目標ではあったよ。人間性はともかく」
義兄さんといえば、ロマニから聞いたマーリンのことだろう。聞けば女好きでよくアーサー王、つまりセイバーを困らせていたとか。
「他には誰かいなかった?」
「うーん…」
キャスターが考えていると、立花達がやって来た。一人女性が増えているが…。
どうやら、休憩は終わりらしい。気づけば三時間近くたっていた。
「お帰りー、立花、マシュ、セイバー。それで、そこの女性は?」
「お疲れ様…って、え?」
キャスターが立花達がつれてきた女性を見て驚いて固まってしまった。
「ええと、この人はさっき砦で会って…」
「彼女はサーヴァントなんです」
立花のあまり要領を得ない説明にマシュが付け足す。
「それもこの時代のサーヴァントらしいんです」
セイバーがそう言ってさらに補足する。
よく見ると、セイバーと新しいサーヴァント、顔がすごい似てる。セイバーの言動から家族とかそんなのではないと思うけど…。
「私はルーラーのサーヴァント、真名をジャンヌ・ダルクと言います。よろしくお願いします」
新しいサーヴァント、ジャンヌはこちらに向かって自己紹介をしてお辞儀をした。
って、キャスター、いつまで固まってるの?
「キャスター?キャスター!」
「ッ!…ああ、ごめんつい驚いてしまってね。よろしく、ジャンヌ。かの救国の聖女様と戦えるなんて光栄だ」
私が少し声を大きくして話しかけるとキャスターは私の声に気付いてジャンヌにそういった。
何故か、複雑そうな顔で…。