fate/grand order 花の魔術師の義弟   作:all

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4話

夢を見た。自由と、自身の生まれた目的を追い求めていた青年の夢を。景色は辺り一帯氷でおおわれた銀世界。山も、湖も、人や炎(・ ・)でさえも凍りついている世界。そこに立つ青年は、溜め息をつきながら辺りを見渡す。

『はあ…。また違ったか…』

そう言って青年は歩き出す。

場面が変わった。今度は対照的に緑でおおわれた場所。そこにいるのは先程にも見た青年と、美しい金髪の少女。

二人は草原に腰を下ろして隣り合っている。二人は楽しそうに会話をして、笑い合う。時々青年が少女の頭を撫でると、少女が頬を赤く染めて恥ずかしそうにする。

この光景を見ていると胸が締め付けられるような感覚になった。

これはやはり、キャスターの記憶で、あの少女は立花のセイバーだろう。仲がいいとは思っていたが、これは勝つのは少し厳しいだろうか?まあ、諦めるつもりは毛頭ないのだけど…。

それに、あの光景、すべてが凍りついた光景は何だったのだろう?あの言葉には、なんの意味が込められていたのだろう?英霊の座に着くような人物だ。当然なにか抱えているものはあったのだろう。キャスターは何かを探している。その何かがなんなのか、私にはわからない。

けど、それは今後ゆっくりと知っていけばいい。

私は彼のマスターで、彼女にはない唯一の関係なんだから。

 

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「さてさて、マスター。やってもいいんだよね?」

 

「いいけど、手加減だよ?」

 

「了解した!」

 

この特異点に来ての最初の戦闘。私にとっては、初めての実戦となるわけだけど。

 

「アイスメイク…【弾雨(バレット)】!」

 

キャスターが手のひらに拳をのせてそう言うとキャスターの背後に無数の氷の弾丸が現れる。

その氷の弾丸は一気に射出され、敵の方向へと向かい、着弾した。

威力はかなり落としたようだが、人間に耐えられる威力ではなかったのか、敵はあまりの痛みに声を出した後、全員が気絶してしまった。

 

「キャスター…これじゃ話し聞けないよ」

 

「あっ…」

 

どうやら自分の失敗に気付いたようだ。少し落ち込んでいる。

すると、ロマニが通信で話しかけてきた。

 

「ジャスパー、今のは…」

 

「ふふん、まあ私も召喚されるようなこともあったからね。近代的な銃から、日本の太刀まで、私の造形魔術はさらに幅広くなったんだ」

 

「なるほど…流石、自由の魔術と言っていただけに、応用力はほぼ無限ですね」

 

「へえ~キャスター強いんだね!」

 

「見事でした」

 

皆から褒められてキャスターは少し照れくさそうにする。

みんな、情報はどうするの?

 

『確かに凄かったけど、情報はどうするつもりなんだい?』

 

「そうだよ、キャスター」

 

「うっ…まあ、それは私の失敗であることは間違いないんだけど、心に来るものがあるよね」

 

「まあ、召喚されて初の戦闘だったし、体が馴染んでもいないんじゃない?」

 

「いや、単純に相手の脆さを考えていなかった…」

 

キャスターは頭を抱えてうずくまるようにして落ち込んだような仕草をする。

脆さって…。いや、まあ、英霊からしたら普通の武装した人間くらい脆いなんてレベルじゃないだろうけど…。

少ししてからマシュが口を開いた。

 

「調べたところ、どうやら、今は百年戦争の真っ只中のようです」 

 

「「「「ええ?」」」」

 

その言葉に、マシュ本人とロマニ以外が驚いた。

 

「なんだ、私が倒していなくても、ある程度のことは調べられるのか」

 

一番再起動が早かったキャスターが安心したように言う。まあ、それもそうか。

 

「それに、あの空…。真っ先に気づいても良さそうなものを…。私としたものが、見落としていた」

 

「空?…何、あれ?」

 

キャスターの言葉に全員が空を見上げると、そこにあったのは、とてつもない大きさの光の輪だった。

 


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