fate/grand order 花の魔術師の義弟 作:all
私は、久しぶりの再会に嬉しくなった。彼のことは忘れることはなかった。あの戦いで、一番の功績を上げたのは間違いなく彼だった。
そして彼は最後の最後まで私の隣で戦ってくれた。私がどんな道に進んでも付いてきてくれた。私が間違わないように正そうとしてくれた。けれど私はその言葉を聞き入れなかった。そんな彼に、私はなにか出来たのだろうか?こうして再会した今、その思いは強くなっていく。後悔の念が強く残って、後ろめたさを感じてしまう。
彼は私と再会した時に泣いてくれた。その涙を見たとき、私の胸が強く跳ね上がるのを感じた。大人っぽい彼が生前では見せなかった表情。そんな彼に対して何も返していない私はどうすればいいのだろう?彼に聞けば、『私はアルトリアの幸せそうな顔が見ることができたらそれでいいよ』と言ってくれるだろう。
けれど、それでは足りない。自らの身体を氷に変えてまで私を助けてくれた彼に対しては足りない。
ならば、今度は私が手助けをする番なのでは?
『私は自分の生まれた目的を探している』
彼の口癖だった言葉だ。自分はなにか意味があって生まれてきたのだと言っていた。それを彼は見つけることが出来たのだろうか?
もし、まだ見つけていないのであれば、見つける手助けをしよう。
もし、生まれた目的を見つけたのであれば、私はその目的を達成する手助けをしよう。
死んだあとにこんな事を思うのはおかしいことだが、それが私が最愛の彼に出来る最後の事だろう。
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「レイシフト、どうやら成功したようですね」
「フォウ!」
「あ、またフォウ君ついてきてる!」
「…え?」
「へえ…」
レイシフトで特異点に送られた直後、急にキャスターとセイバーの様子がおかしくなった。キャスターは面白そうな目でマシュとフォウを見て、セイバーはマシュの方を驚いた顔で見ている。
何処かおかしいところがあるのだろうか?ああ、そういえばマシュの格好が変わっているから驚いたのか?まだ見たことないはずだしね。
「あの盾は…」
「十中八九、そうだろうね。それにあの獣も…」
なにか二人で話しているけど、私には聞こえない。
…仲良いですね。
『レイシフトは成功したけど、早速仕事だ。生体反応が複数ある。どうやら人間のようだから、手加減して情報を聞き出してくれ』
ロマンの声が聞こえてくる。声のした方には立花がいてホログラムとなって現れたロマニの姿もあった。
「人間ねえ…少し確認してみたけど、全員戦う意思はあれど、疲れきってるようだ」
「確認?」
キャスターが使った確認と言う言葉に疑問を持ち、キャスターに聞いてみる。まだ見えていないものをどうやって確認したのだろう?
「そう、確認。私の目は、現在と過去を見渡せる千里眼なんだ。あまり使わないけどね」
『なるほど。君は冠位の適正を持ってたりするのかい?』
「冠位?」
「先輩、冠位と言うのは、その時代の英霊の最高峰の七騎に与えられる称号で、普通の英霊より強いんです」
「へえ~」
へえ、初めて知った。セイバーはなんとなく納得したような顔をしている。
「あるけど、今回は冠位で召喚されてはいないし、本来なら冠位を与えられるべきは兄のマーリンの方なんだろうけどね」
「フォウフォウ!」
キャスターがマーリンという名前を出すと何故かフォウが怒ったかのように鳴き出した。
…なんで?
「マーリンですか…懐かしいですね」
「そうだね。また会いたいの?アルトリア」
「まあ、会えるものなら会いたいですが…。しかし、マーリンは…」
「ああ…いつもからかわれてたもんね。でも、この人理修復をしているうちに会えるとは思うよ?」
「そうですね」
『!話してるとこ悪いけど、来たよ!』
キャスターとセイバーが話していると、ロマニが大きな声で叫んだ。
前を向いてみると既に武装した兵がやって来ていた。
「キャスター、戦闘準備!」
「了解だよ、マイマスター」
「マシュ、セイバー、行くよ!」
「了解しました、マスター!」
「はい!峰打ちですね!」
私と立花が指示をだし、サーヴァント達が臨戦態勢を取る。
…マシュ、盾で峰打ちってどうやるつもりなの?