fate/grand order 花の魔術師の義弟 作:all
私は、所謂転生者と言う存在だった。氷の造形魔法と滅悪魔法と言われる特典を持って転生した先は、あろうことか、花の魔術師こと、マーリンの義弟だった。
マーリンと行動を共にすることで、さまざまなことがあったが、一番の出会いはやはりあの騎士王との出会いだろうか。どこまでも律儀で丁寧で、負けず嫌いで。そんな彼女に私はいつしか心を引かれていた。
まあ、私の最後は、カムランの戦いで命を落とす、というまあなんとも地味でありふれていそうで、特徴のない死に様だったんだが。
…出来ることなら、思いを伝えておきたかったものだ。
そんな私も、ある程度の功績を残して、後世に伝わる程度にはなっていたようで、死後の私は英霊の座に迎えられた。
さて、自分語りはこの辺にするとしよう。
久しぶりの召喚だが、いつもと事態は違うようだ。
まあ、どんな目的であろうとも、どんなマスターだろうとも、私は花の魔術師の義弟として氷の魔術師、ジャスパーとして、どこまでも自由に頑張ろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「じゃあ、白野ちゃん。始めてくれ」
私、岸波白野は人理保障機関カルデアのマスター候補だ。
といっても、今、レフという元職員の裏切りによってカルデアが爆破され、ほぼ壊滅状態でたくさんいたマスター候補も私と藤丸立花という女の子だけで他はコールドスリープ状態だ。ちなみに私はその時一人迷子になってカルデアをさまよっていた。
「うん、わかった」
私が今から行うのは英霊召喚。つまりサーヴァントと契約するのだ。同じ最後のマスター候補の立花はレイシフトによって冬木という場所に飛ばされ、一つの特異点から聖杯を回収してきた。その際にデミサーヴァントとなったマシュと契約をして、その後、アルトリア・ペンドラゴン、俗に言うアーサー王とも契約している。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
私が詠唱を終えると展開されたサークルの中心からまばゆい光が放たれた。
その光が収まるとそこから黒いローブを羽織った、整った顔立ちに金色の髪を持った男だった。
「サーヴァント、キャスター。召喚に応じ参上した。真名はジャスパーという。よろしく頼むよ、マイマスター」
その容姿は端整で美しい青年だった。その透き通った瞳が私に向けられる。
「えっと…私は岸波白野、よろしく、キャスター」
「そう、いい名前だね」
「ジャスパーってあのジャスパーかい!?」
「ん?君は?」
「あ、申し遅れた。僕はロマニ・アーキマン。ロマンと呼んで欲しい」
「よろしくロマン」
いきなり驚いた様子のロマンがキャスターに詰め寄る。
「って、そんなことより!君はあのブリテンの宮廷魔術師、氷の魔術師と言われたジャスパーなのかい!?」
「ああ、そのジャスパーさ。ほら」
そう言ってキャスターは自分の掌の上に拳をのせる。
すると、ジャスパーの隣に、長髪で、少し無愛想な少女、というか私の氷像がたっていた。
「すごい…」
「ま、私の造形魔術にかかればこんなものだよ」
私が自分の氷像をまじまじと眺めていると、外からドカドカガチャガチャと騒がしい音が響いて、ルームの扉が開かれた。
「今の魔力は!?」
「!?…アルトリア、なのかい?」
「ジャスパー…やはり貴方だったか」
「ああ、まさか君と会えるとは…。やはり召喚に応じてよかった…」
「それは私も同じことを思っています…。…?。ジャスパー、泣いているのですか?」
「え…?」
「ねえ、ロマン。どういう状況なの?」
この状況に着いていけず、私はロマンに尋ねた。
「ああ、彼はブリテンの宮廷魔術師、つまり、アーサー王の臣下だったんだ。そして彼はカムランの戦いで命を落とした大魔術師なんだ」
私は神話とか伝承とか伝説とかに詳しいわけではないからよく分からないけど、とりあえず感動の再会なのはわかった。
けど、自分の契約したサーヴァントをとられたようで少し悔しい。
まあ、キャスターも嬉しそうだからいいんだけど。現に今、セイバーに抱きついて泣きじゃくってるし。
あれから数分後には私とロマン、それに加え途中で加わった立花とマシュの目の前には顔を真っ赤にしている二人のサーヴァントがいたとか。