ドラゴンボールNEXUS 時空を越えた英雄   作:GT(EW版)

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烈戦

 雷光――その表現が最も適している、悟飯の鋭く重い攻撃だった。

 超越形態となった悟飯の拳がブロリーの腹部を突き刺し、一瞬の交錯につき百発もの連打を浴びせていく。

 

「ぐっ……おおお!?」

 

 ブロリーの目が驚きに見開かれる。

 悟飯が初めて見た彼のその反応は、超越形態となった今の状態ならばブロリー相手にもダメージを与えられることを意味していた。

 

(いける……! これなら!)

 

 悪魔ブロリーは間違いなく化け物だが、超越形態となった今の悟飯もまた同じ領域の化け物だった。

 しかしこの力がいつまでも保っていられるものではないことを、変身二回目にして悟飯は理解していた。

 この姿になってからは、ただ時間が経過しているだけで身体中の細胞という細胞が爆ぜて悲鳴を上げているような感覚に侵されている。

 自分自身の急激なパワーアップに、肉体が対応しきれていないということなのだろう。

 だが、それでも構わない。

 

(寿命なら、いくらでもくれてやる……! だから、俺に力を! コイツを倒せるパワーをくれ!)

 

 一秒につき一年分の寿命は削られているのではないかと感じるほどに、今の悟飯は蒸発しそうな理性の中で破滅的な感覚に襲われていた。

 その苦しみに苛まれようとも、悟飯はただひたすらにブロリーの身体を乱打し、一心不乱に攻撃を叩き込んでいく。

 時折返ってくる反撃の拳を残像を残すスピードでかわし、背後に回って背中を蹴り飛ばす。

 ブロリーが苦悶の声を漏らせば、黄金のオーラをとめどなく垂れ流した悟飯がさらに回り込んで右腕を振り払い、敵の身体を地面へと叩き落とした。

 大地に地殻変動を起こしながら立ち上がったブロリーが、空を睨んで悟飯のいた場所に目を移す。

 しかしその時には既に悟飯の姿はその場になく、黒髪を逆立てた彼はブロリーの真後ろに佇んでいた。

 

「っ?」

「勝てんぜ、お前は!」

 

 ブロリーが気配に気づき振り返るよりも早く、悟飯の振り上げた膝蹴りがブロリーの腰を打ち付け、続けざまのハンマーパンチで彼方へと弾き飛ばしていく。

 

 しかし、ブロリーの復帰は早い。

 

 ここまで悟飯の猛攻を受け続けてもブロリーが動揺を表すことはなく、それどころか自らの唇から滴り落ちる血液をじゅるりと舌で舐め取る姿は、敵の攻撃を受けることを喜んでいるようにすら見えた。

 血と戦闘を好む殺戮の戦士である彼は、自分が圧されている状況すら喜悦に変えてしまうのだ。

 

「やっと戦えるようになったようだが……その程度で俺を倒せると思っているのか?」

「……倒せるさ」

「ふん……であああっ!!」

 

 悟飯達の超サイヤ人とは違う翠色のオーラを纏ったブロリーが、咆哮を上げて急迫してくる。

 スピードが上がった――やはり今まで、彼は本気で戦っていたわけではなかったのだろう。

 悟飯の姿をはっきりと自らの敵と認めたブロリーが、先ほどまでの緩慢さとは打って変わって痛烈な一撃を繰り出す。

 しかし超越形態の悟飯は金色の瞳でその動きを完全に見切ってみせると、風圧だけで地面に直径50メートルものクレーターを作る彼の拳を両手で受け止めてみせた。

 それだけではない。

 

「だりゃあああああ!」

 

 掴み取ったブロリーの拳を引っ張り上げると、悟飯は背負い投げの要領でブロリーの身体を思い切り投げ飛ばしていく。

 その先で叩き付けた廃墟のビル街が一斉に崩れ落ちていく光景を見据えながら、悟飯は舞空術で飛び上がり、両手で印を結んで必殺技の体勢に入った。

 

「これで……!」

 

 敵が実力を出し切るまで、悠長に待っている気はない。

 超越形態として得た力の全てを両手に集中すると、太陽の如き光点が悟飯の身体に集中した。

 そして。

 

「終わりだああああっっ!!」

 

 10倍魔閃光――合体13号を葬ったその技が、遂に解き放たれる。

 赤い光となって迸り出た孫悟飯最強の技が、地面を抉りながら唸りを上げて直進していく。

 その光に込められたのは力だけではない。

 ブロリーを葬り去る為に懸けた、全ての「希望」がそこに込められていた。

 

 どうかこの一撃で、完全に消え去ってしまえ――自身の放った閃光の結果を祈るように見届けた悟飯の視線の先で――ブロリーの身体が爆発し、視界が翠色の光に覆われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まさか取り逃がしたカカロットの息子があそこまで強くなって帰ってくるとはな、と……キングキャッスルの最上階から戦いの様子を見ていたパラガスが、感慨深げにそう呟いた。

 一体どういう手を使ったのかはわからないが、孫悟飯のあの姿は超サイヤ人を超越しており、今のブロリーを完全に凌駕していた。

 ブロリーが突然地球へ行くと言い出したのも、そんな彼の存在を感じてのことだったのだろうとパラガスは理解した。

 

 取るに足らない子供だと思っていた若き混血サイヤ人の成長には、一児の父親として賞賛する気持ちもある。

 

 だが、こちらにとってアレも邪魔な敵である以上、パラガスに慈悲はなかった。

 

「……圧されていますな。ブロリー様は」

「ああ、そうだな」

「13号を倒したのは知っていたが、孫悟飯があれほどの力を付けていたとは……」

 

 ドクター・ゲロがパラガスの横から戦いの様子を眺めながら、自らの誤算に対して苦々しげに呟く。

 彼は超サイヤ人のブロリーを相手に、完全に圧倒している孫悟飯の力を見て驚きの声を漏らしていた。

 もちろん、驚いているのはパラガスも同様である。

 ブロリーとまともに戦える人間がまだこの宇宙にいたなどとは、彼とて思いもしていなかった。

 しかしゲロとは違い、パラガスは冷静だった。

 

「恐れているなぁ、ドクター・ゲロ」

「……あの血統の人間には、ろくな思い出がないのでな」

「ふふ」

 

 しわがれた顔を不機嫌に歪めているゲロの姿を見て、パラガスが思わず微笑を浮かべる。

 そんなパラガスの反応に対して怪訝な表情を浮かべるゲロに、パラガスは続けた。

 

「なに、心配することはない」

 

 この地球に戻ってきたカカロットの息子は、あの若さでは考えられないほどに恐るべき強さである。まさに脅威的と言ってもいいだろう。

 しかし、彼の実力を正当に評価した上で、パラガスにはなおも絶対的な確信があった。

 息子の力に対する確信が。

 

「ブロリーが負けることはありえんよ」

 

 今は圧倒されているブロリーだが、あれはただ久しぶりに歯応えのある戦いができることに、面白がって遊んでいるだけだ。

 彼はまだ実力の半分も出してはいない。

 何故ならば、彼は――

 

「伝説の、超サイヤ人……」

 

 ゲロの呟きに、パラガスの笑みが歪みを深くする。

 

 それは、孫悟飯の必殺技がブロリーを捉えた――次の瞬間だった。

 

 この地球の空が一瞬だけ真っ白に染まると、翠色の光が爆発するように拡散していったのである。

 

「ああ、久しぶりだな。ブロリーがあの姿になるのは……地球では初めてか」

 

 パラガスがその姿を見たのも、今となっては随分と昔のことだ。具体的には、南の銀河を滅ぼした時か。

 それは本気になったブロリーの真の姿――伝説の超サイヤ人の姿だった。

 

「うーふっふっふ……その調子だ。宇宙最強の力を、カカロットの息子に見せつけるがいい」

 

 いいぞ、ブロリー、お前がナンバーワンだ。そう呟きながら、パラガスは息子の変貌に対しサムズアップをするように右手の人差し指を突き立てる。

 地獄に行ってもこんなに恐ろしい殺戮ショーは見られないだろう。

 遠くから迸るエネルギーの余波だけでキングキャッスルの外壁に亀裂が走り、窓ガラスが砕け散っていく部屋の中で、パラガスはその場から微動だにせず息子の戦いを見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウウゥゥ……エエッへアアアアアアッッ!!」

 

 ブロリーにとどめを刺すべく放たれた悟飯の10倍魔閃光は、不発に終わった。

 

 赤い光が彼の身を飲み込もうとした瞬間、けたたましい絶叫を上げたブロリーの身体から膨大に過ぎる量の「気」の嵐が噴き上がり、それが防壁となって彼の身を守ったのである。

 その光景に……彼の「気」の高まりに、悟飯は慄然とした。

 

「嘘だろ……まだ、上があるっていうのか……!」

 

 絶望的な光景が、そこにあった。

 超サイヤ人を超えた超サイヤ人に至ったのは、自分だけではなかったのだ。

 恐れてはいた。懸念してもいた。

 しかしそれでもなお、悪魔が秘めていた力は悟飯達の想定を遥かに上回っていたのだ。

 

「クウゥゥゥゥッ……!」

 

 周辺の環境を一瞬にして更地に変えたブロリーが、美しくも禍々しいオーラを放出しながら獣のような唸り声を上げる。

 まるで恒星が爆発したかのような、理屈を超えた凄まじい力の解放であった。

 その変化を目にした悟飯は、全身の震えを自覚する。

 武者震いなどではない。あまりの恐ろしさに、身体中が金縛りにあったように動かなくなったのだ。

 

「……血祭りに上げてやる……!」

 

 今までよりもドスの効いた声で、彼は吐き捨てる。

 その身に宿る力を完全に解放した彼の姿は、外見も大きく変化していた。

 身長は三メートルを超えるほど大きく巨大化し、全身を覆う分厚い筋肉は通常時の何倍にも膨れ上がっている。逆立った黄金色の髪先はさらに鋭利なものとなり、深い青色だった瞳はその色を失っていた。

 細身な美青年の面影は、もはやどこにもない。

 男の姿は間違いなく、滅びを呼ぶ悪魔だった。

 

「伝説の……超サイヤ人……っ」

 

 伝承に伝えられた超サイヤ人とは、本来血と戦闘を好む殺戮の戦士だったらしい。

 その伝説に当てはめるのなら、悟飯達とは明らかに違う変身形態を持つ今の彼こそが本当の超サイヤ人なのかもしれない。

 生き物としての格が違い過ぎる。今までの自分では、どうひっくり返ろうと敵う相手ではなかったのだ。

 

 だが――

 

「倒す……刺し違えてでも!」

 

 この地球でネオンという女性と、ベビーというツフル人と会えたのは最大の幸運だったのだろう。

 彼が超サイヤ人を超えた姿を持っていたのだとしても、悟飯にもこの超越形態がある。

 残り何分か、もしくは何秒も持たないかもしれない超越形態の力――その全てを振り絞り、悟飯は最後の戦いへと赴く。

 

 この地球には母やトランクス、ブルマや亀仙人達、死なせたくない大切な者達が居るのだ。

 だから、退くわけにはいかない。相手がどんな悪魔であろうと、もはや逃げることは許されないのだ。

 

「はああああっ!!」

 

 怯える心を奮い立たせるように咆哮を上げ、悟飯は伝説の超サイヤ人に向かって急迫していく。

 そんな悟飯の反応にニヤリと唇を吊り上げながら、ブロリーは動き出した。

 ブロリーに、悟飯の攻撃を避ける素振りはない。彼はただ、向かってくる拳に対して嬉々として右腕を突き出すだけだった。

 

 たった、それだけだった。

 

 たったそれだけの動作で、悟飯は彼の強大さを理解してしまう。

 

「っ……!?」

 

 悟飯の拳がブロリーの額を捉える。

 しかしブロリーはその打撃をまともに受けながらも物ともせず、ノーガードで自らの拳を突き出してきたのである。

 驚愕に目を見開く悟飯の胸をブロリーのアッパーが襲い、続けてその頭をキャッチボールのように左手に掴まれた。

 

「ハハハ!」

 

 悟飯の頭を掴んだブロリーは、まるで幼子が玩具を扱うように巨腕を振るいながら、その身体を棍棒のように振り回し、辺りに叩き付けていく。

 一頻り振り回した後は地盤ごと沈んでいく地面に向かって悟飯の身体を叩きつけ、そのまま頭を捻りつぶすように力任せに押し込んでいった。

 

「よく頑張ったと言いたいが……この俺を超えることはできぬぅ!!」

「ぐああああッ!?」

 

 超越形態を持ってしても、真の姿を解放したブロリーの前ではパワー負けしているのである。

 全体重を乗せて押し潰しに掛かるブロリーの巨体を前に、悟飯の苦悶の声が響き渡る。身体中からバキバキと色々な組織が軋む音までも聴こえてきた。

 だが、まだ意識は残っている。

 故に悟飯の闘志もまだ、揺らいではいなかった。

 

「っ、だああっ!」

「? ふふ、カカロット!」

 

 密着した状態から全力で蹴りを放ち、僅かに怯んだ隙を見て悟飯はブロリーの拘束から脱出する。

 地中からマグマを噴き出し、崩壊していく大地から飛び上がりながら距離を取った悟飯は、今の攻撃で完全に破けてしまった上着を投げ捨てて超越形態の「気」を解放した。

 

「はぁ……はぁ……っ、まだだ、ブロリー……!」

 

 超越形態の負担とブロリーの攻撃のダブルパンチを喰らいながら、朦朧とする意識の中で悟飯は再度敵を睨みつける。

 その抵抗を楽しむように、ブロリーは高らかに笑いながら悟飯の姿を見つめた。

 

「俺はまだ生きている……生きている限り、お前と戦える!」

 

 超越形態を保っていられるのも、もはや限界だ。

 ブロリーが油断している隙にこの力で一気に決めるといる当初の作戦は、ブロリーがさらなる変身を隠していた時点で完全に破綻している。

 もはやどう転んでも、一気に決められるような戦闘力の差はない。

 しかしそれを理解してもまだ、悟飯は勝利への希望を捨てなかった。

 

「大人しく殺されていれば痛い目に遭わずに済んだものを……さすがサイヤ人と褒めてやりたいところだぁ!」

 

「俺は死なない! たとえこの肉体は滅んでも、俺の意志を継ぐ者が必ず立ち上がり……そして、お前達を倒す!」

 

 俺は間違いなく、ここで死ぬのだろう。悟飯は自らの終わりを悟っていた。

 だが、それでも、後に残せるものはきっとある筈だ。

 決意の瞳で敵を見据え、ありったけの力を解放する。

 そして、二人の戦いは次なる「超激戦」へと移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悟飯とブロリーの戦いの様子は、新たに現れた人造人間17号と対峙しているネオンとトランクスからもはっきりと見えていた。

 ネオンはブロリーの急激なパワーアップと時間経過による悟飯のパワーダウンを感じ取り、自らの計算の甘さに激しく憤りを覚える。

 

「マズい……このままじゃ悟飯が殺される……っ」

 

 ネオンはこの数日間、義手の開発以外にも自らの出来得る限りの修行も行っていた。

 それによって悟飯やトランクスから「気」の読み方を教わり、今ではスカウターに頼らずとも大まかな戦闘力を感じることはできるようになっていた。それについては、特に悟飯の教え方が上手かったのだろう。「気」の基本については元々ベビーから教わっていたのもあり、習得するまで時間は掛からなかった。

 

 しかしその知覚能力が今、孫悟飯の危機をこれ以上ないほどに強く訴えているのだ。

 

「あー……あれがブロリーって奴か。人造人間でもないのに、素晴らしいパワーだ」

 

 本当ならば今すぐにでも彼を助けに行きたいところだが、ネオンは現状目の前の敵である17号の相手で手が一杯だった。

 この17号――新しい人造人間の力は合体した13号ほどではないが、合体前の13号よりも高いレベルで安定している。それどころかスピードに関しては合体13号をも上回っており、量産機の人造人間とは強さの次元が違う相手だった。

 その17号を、ブロリーと戦っている悟飯の元へ行かせるわけにはいかない。

 ネオンは今彼によって完全に足止めを喰らっている状態であったが、逆を言えば彼女が17号を足止めしている状態でもある。

 そんなネオンは黒髪の少年に体当たりを浴びせると、密着した体勢から義手と左手で敵の両手を拘束しながら、後ろにいる少年に対して命令を与えた。

 

「トランクス君! 悟飯のところへ行って!」

「……!?」

 

 予定変更だ。ブロリーがもう一つ上の変身を残していたとは、想像していた最悪の事態だった。

 この際、パラガスの相手は後回しにするしかない。急いで悟飯の救援に向かい、総力を挙げてブロリーを叩き潰す。

 だが、ここでトランクスや自分が加勢したところで戦力的には何の役にも立たないことはわかっている。

 それを踏まえた上で、ネオンはトランクスに言った。

 

「悟飯に君のサイヤパワーを与えて、超越形態でいられる時間を少しでも伸ばすんだ!」

「――っ、そうか!」

「急いで!」

「はい! ……ネオンさんもお気をつけて」

 

 超越形態の消耗は、仙豆で回復することはできない。

 しかし外部からサイヤ人が持つ特殊なエネルギー「サイヤパワー」を分け与えることによって、その身を蝕む負担を緩和することができた。

 根も葉もない言い方をすれば、ネオンはトランクスに悟飯用のエネルギータンクとなってもらうことを頼んだのだ。

 トランクスはまだ幼いが、年齢不相応なほど聡明な子である。即座にこちらの意図を察すると、急いで悟飯の元へと飛んでいった。

 

 ネオンに両腕を塞がれながら、少年の離脱を悠々と見送った17号が口を開く。

 

「まったく、お前達ほど無駄な努力が似合う連中もいないな」

「……無駄かどうかを決めるのは、君じゃないさ」

 

 涼しげな表情を浮かべながら呆れるように語る彼の姿は、ネオンの目にはあえてトランクスの離脱を見送ってくれたように見えた。

 それはおそらく、たかがサイヤ人の一人が今更救援に向かったところでどうにもならないことを悟っているからだろう。

 

「何故絶対に勝てない戦いをするのか、理解に苦しむ」

「それが人間だからさ。人造人間になってしまった君には、わからないだろうけど」

「そうかい。それは、言えてるな」

「くっ……!」

 

 ネオンが密着し両腕を拘束されていた17号が、右膝を振り上げてネオンの腹部を打つと、強引に拘束を解いた後で素早く回り込み、背中から手刀を振り下ろす。 

 その一撃を諸に受けたネオンは空から地上へと墜落していくが、地面にぶつかる寸でのところで体勢を整え、続けざまに放たれたエネルギー弾の雨を鋭角的な軌道でかわしていった。

 瞬間、ネオンも全力を発動する。

 

「ベビー!」

『わかっている!』

 

 ネオンの両目の虹彩から、白目の部分に掛けて十字を描くような模様が浮かび上がる。

 戦闘的な鋭い目つきへと変わり、放出する「気」の量もまた爆発的に上昇した。

 

 ネオンの本質は、どこにでもいるような平凡な地球人である。

 悟飯のように戦闘民族の血を引いているわけでも、亡きクリリン達のように優秀な師の下で技を磨いてきた武道家でもない。

 それ故に、彼女は己の潜在エネルギーを引き出す能力に関しては如何せん不器用であった。

 そんな彼女は自らの肉体の主導権をベビーに譲り渡すことによって、初めて本来の能力を引き出すことができるのである。

 戦闘技術に関して言えば、サイヤ人を殺す為に生み出された生粋の戦士であるベビーはネオンの遥か上を行く。故にベビーはネオン自身よりも、ネオンの身体を上手く扱えた。

 

「ほー、動きが大分良くなったな。それがデータにあったベビーモードって奴か」

「余裕そうだな、クソガキ。人造人間になっても恐怖に怯えるかどうか、この俺が試してやる!」

 

 ブロリーという大物の相手が残っている以上、彼にばかり構ってはいられない。

 この17号――改造される前は「ラピス」という少年だった彼とは、ベビーとネオンは共に面識がある。

 しかしだからと言って彼らにはもう、望まずして人造人間となってしまった彼にも情けを掛けられる余裕はなかった。

 







 ブロリーやパラガスの台詞は、MADの印象のせいでシリアス感が薄れていないか心配なのだ。

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