もこたんのヒーローアカデミア   作:ウォールナッツ

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もこたんとルミリオン

 ようやく波動から解放された妹紅が通形の前へと歩み出る。彼も妹紅を見ると、ニコッと笑みを見せた。しかし、その目には戦意が宿っている。通形としても妹紅とは戦ってみたかったのだろう。そういう意思が見てとれた。

 

「君たちの大トリは、やはり『不死鳥』だよね!トリだけに!」

 

「もこー…。私たちの仇をとってー…」

 

「ああ、任せてくれ」

 

 通形渾身のギャグをスルーして、妹紅は腹部を押さえて蹲る葉隠たちの声援に応える。幸いにして彼の個性を客観的に観察することができた。

 妹紅の予想では、通形は恐らく『すり抜ける』個性だ。どうやって『ワープ』しているのかまでは掴めなかったが、少なくとも彼は『ワープ』する前に必ず地面に潜っていた。それが条件なのではないかと妹紅は考えていた。

 

「さぁ、行くよ!」

 

(沈んだ。来る!)

 

 またも通形が落ちるように地面に沈んでいく。先ほどの緑谷はブラフと予測によって彼の出現位置を特定したが、逆に裏をかかれてしまったら大きな隙を晒してしまうだろう。

 故に、妹紅の作戦は緑谷の逆。攻撃の直前にカウンターを仕掛けるのではない、攻撃の直後にカウンターを仕掛けるつもりである。妹紅は頭部を重点的にガードしながら通形の出現を待った。

 

「ここだよね!」

 

 やはり通形は出現位置を変えてきた。妹紅の真後ろから少し左にズラした死角から現われた通形がボディブローを仕掛けてくる。直後に妹紅が反応して、腕に炎を纏わせながら通形を攻撃した。

 通形の拳が妹紅の腹にめり込むと同時に、妹紅の拳も振るわれる。妹紅の狙いは実体化していると思われる彼の腕だ。しかし、妹紅の炎を纏った拳は空を切った。

 

(タイミング的には問題なかった筈なのにスカされた。腕は、少なくとも拳くらいは攻撃のために実体化していると思っていたけど、この先輩そんなレベルじゃない。拳の攻撃面だけを薄く実体化しているのかな。凄い個性制御…)

 

 妹紅は通形の制御精度に舌を巻きながらも炎で追撃する。無論、それは簡単に回避されてしまった。再び姿を消したので同じように仕掛けてくるかと思ったが、彼は少し離れた位置に上半身だけ姿を現すと困った笑みを見せていた。

 

「うーん、やっぱり腹パンは効かないかー。他の子たちよりもかなり深めに入れてみたんだけどね」

 

 通形もあの記者会見を見ており、妹紅が無痛症であることを知っている。その上で腹部への殴打を試してみたのだが、やはり効果は微塵もないようだった。

 

「腹部など急所強打により発生する悶絶躄地(びゃくじ)*1や血管迷走神経反射性の失神。残念ですが、私には起こりません」

 

「なるほど。無痛症の相手とは戦ったことがないから参考になるよ。残りは頭部への殴打しかない訳だけど…、そりゃ頭部を重点的にガードするよね!」

 

 殴打を主体とする通形では、妹紅を撃破する手段は限られてくる。そこで彼は狙いを腹部から変えた。

 通形は無痛症のヴィランとの交戦経験はないが、薬物中毒者のヴィランと戦った経験くらいはあるのだ。重度の薬物中毒者も痛みを無視しての行動が可能であり、時には高電圧のスタンガンすらも意に介さず襲いかかってくることで知られている。これを素手で撃破するには首を絞めて意識を落とす、もしくは頭部殴打による脳震盪で倒すくらいしか手段がなかった。

 炎を放つ妹紅を素手で絞め落とすことは実質的に不可能なので、残るは頭部への殴打のみ。しかし、それを理解しているからこそ妹紅も頭部のガードを堅くしていた。

 

「それで、どうしますか?降参していただけるのなら皆の仇討ちは成るのですが…」

 

「まさか!もちろん、続けるさ!」

 

 通形がまたも沈み、妹紅も構える。顔下半分を拳で押さえるような構え、ボクシングでいうピーカブースタイルだが、妹紅は顎を締め付けるように拳を完全密着させている。そうやって頭を強く固定している以上、防御をすり抜けて頭部を殴打されても脳は大きく揺れないのだ。

 だが、通形には策があった。

 

「頭部を攻撃する隙が無いのならー…、隙を作れば良いだけだよね!必殺『ブラインドタッチ目潰し』!」

 

 妹紅のほぼ真下から姿を現した通形が、彼女の目に向けて指を突き出す。緑谷もやられた通形の必殺技だ。眼前に急に物が接近すると、思わず目を守ってしまうのは動物の反射である(眼瞼閉鎖(がんけんへいさ)反射という)。すり抜けると理解していてもガードしている腕は目を守るように浮いてしまうし、目蓋も必ず閉じてしまう筈なのだ。

 通形はその浮いたガードの隙を縫って顎か側頭部を殴打するつもりだった。その攻撃がヒットすれば妹紅とて脳震盪でダウンするだろう。

 

「……」

 

「えッ!?」

 

 しかし、妹紅のガードは崩れなかった。通形の指が妹紅の眼球へ迫り、そして通過していく。だが、妹紅のガードは浮かず、目は瞬きすらしていない。すり抜けていく指の隙間から彼女の瞳は通形の姿を捉え続けていた。

 そのまま妹紅は頭部をガードしつつ炎を放つ。通形は炎に呑まれたように見えたが、やはり彼はすり抜けて回避していた。

 

「今のタイミングでもダメか…」

 

「驚いた、あの目潰しで怯まなかった相手は初めてだよね!しかも、そのまま反撃に転じるなんて…!」

 

 妹紅にも通形にも互いにダメージは無い。しかし、それでも驚きが大きかったのは通形だった。

 『眼球を守る』という誰もが保有している筈の自己防衛本能。しかし、妹紅はそれが無かった。幼少期からの虐待で防衛的な本能がほとんど破壊されてしまっているからだ。

 

「つまり君は…それほどの事を“経験”してきてしまったんだね…」

 

 そのことを察した通形は声を震わせた。

 多くの人間が報道を見て妹紅の事情を知っただろう。だが、それは表面を僅かに知っただけで、真に理解できた訳ではない。こうやって相対して見えたものですら極一部なのだということに、通形は気付いてしまったのだ。

 

「……もう一度いくよ!」

 

 通形の戦闘スタイルは殴打主体。故に、妹紅の過去を気遣って僅かに躊躇った。

 しかし、インターンで戦うことになるだろうヴィランたちにそんな慈悲など無い。だからこそ通形はもう一度妹紅に向かった。ただし、今度は服を着直して格闘術での模擬戦のようだ。

 

(個性を使わず格闘戦?とりあえず、合わせた方がいいのかな…?)

 

 確かに個性有りの戦闘では勝敗がつかない。妹紅も無言の内に納得して炎を消した。そしてピーカブースタイルを止め、自然体に近い構えを以て通形を迎え撃つ。

 慧音直伝のワーハクタク流格闘術。これこそが妹紅にとって最強の構えである。

 

「はァッ!」

 

「フッ!」

 

 妹紅は通形の動きを完全に目で追えていた。顔面に向けて打ってきた拳を下段に叩き落とすように左手でパリングしながら、右手で彼の鳩尾にカウンターを放つ。だが、通形はステップを踏んで簡単に回避した。そして、彼はその回避の動きから繋げてローキックを繰り出す。

 身長181cm筋肉質の恵体から放たれる強烈すぎる下段回し蹴りを、避けきれないと判断した妹紅は重心を落としてわざと太腿で受けた。決着がついてもおかしくない大きな打撃音が体育館に響く。しかし、その程度で2人の戦闘は止まらなかった。

 

「そんな、ミリオの格闘に1年生がついていけるなんて…!?」

 

「ワーハクタク流格闘術っていうんだって、あれ。知ってる?」

 

 拳も蹴りも、互いに避けて捌いて弾いて受ける。『不死鳥』の再生だけは自動で発動してしまうので個性無しの純粋な力比べとはいかないが、それでも高レベルの格闘戦である。その様子に天喰は面食らい、波動は楽しげに語っていた。

 

「ミリオとは頭一つ分くらいの身長差があるし、体重は倍近く違うはずなのに…!」

 

「もこたん凄いよねー!私、格闘戦は苦手だな~」

 

 妹紅の身長は女子高生の平均より少し高い程度。逆に、体重は平均より少し軽いくらいだ。体型的には細身で天喰の言う通り格闘戦に向いているとはとても言えない。

 だが、妹紅は相手の打撃に痛みも恐怖も感じない為、精神面では非常に強い。そして、それ以上に神野区で慧音と共に戦って心を重ね合わせたことが大きかった。元から慧音の教えを深く受けていたという下地もあり、妹紅は極限状態の共闘の中で彼女の技術を完全に受け継いでいたのだった。

 

「うん、強い!流石だよね!」

 

「く…!」

 

 しかし、やはり通形も手強い。恵まれた肉体はもちろんのこと、インターン先のサーナイトアイ事務所で学んだ予測による格闘術に、たとえ銃器を向けられても平常心を崩さぬ精神力。

 心技体の内、妹紅が心と技を修めているというのならば、通形は心技体全てを高水準で修めているのだ。弱い筈がなかった。

 

「君たちがヴィラン連合に拉致されたと聞いた時、俺たち3年ヒーロー科の生徒は1人残らず捜索・救出行為の許可を校長に願い出たよ。面識が無かったとしても同じ学校の大事な後輩だもの、先輩として当たり前だよね!」

 

(目では追えているのに翻弄される…!)

 

 戦いの中で通形が語り出す。一方で、妹紅に口を開く余裕など無かった。

 鍛えられているとはいえ、通形の身体能力は個性によらない自前のもの。パワーもスピードもオールマイト級だったあの脳無と比べれば遙かに劣る。そのはずなのに妹紅は押されつつあった。

 そう、格闘戦というのは単純なパワーとスピードだけでは決まらない。それを活かす技術と経験値がなければ真価は発揮しないのだ。だからこそ妹紅と慧音は脳無に勝てた訳であり、今の状況では通形相手に苦戦を強いられているのである。

 

「でも、捜索救出の許可は下りなかった。むしろ、俺たち3年ヒーロー科は自宅待機を命じられたんだ。いくらインターンでプロ顔負けの活躍をしていようと、先生方からすれば未だに俺たちは守られる側だったんだよね。それはとても悔しかった!神野区の悪夢では、君やオールマイトの戦いをテレビの前で歯噛みしながら見守るしかなかった!」

 

 通形の連打は止まらない。

 全て(オール)とはいかないが、100万人(ミリオン)を救う者になれるようにと名付けたヒーロー名『ルミリオン』。しかし、後輩たちを救う力にも成れずして何がルミリオンだと忸怩たる思いを通形は抱いていた。

 故に、相澤から1年生にインターンの説明をしてくれと頼まれた時、通形は二つ返事で承諾した。極度の上がり症である天喰ですらも今回の説明に参加しているほどなのだから、3年ヒーロー科の生徒たちが抱いていた思いは皆同じだったということだろう。

 

「だから、俺たちは決めたんだよね!次こそは後輩たちの力になろうって!もちろん、このインターンの説明だけじゃないよ!何か疑問があればドンドン聞いてほしいし、相談にも乗るさ!必要とあらば模擬戦だって相手になるよ!出来ることがあれば何だって協力する!」

 

 通形のフェイントを交えた連撃のコンビネーションに、妹紅は追い詰められていく。妹紅の攻撃も何発か入っているが、体重差があり過ぎるせいか通形にダメージはほとんど無かった。

 故に、ここで決着がついてしまった。妹紅が体勢を立て直そうと後方へ一歩下がろうとした瞬間、その動きを予測していた通形が下段足刀蹴りを放ち、彼女の足の甲を強打したのである。妹紅は移動を阻止されバランスを大きく崩されつつも、咄嗟に腕で頭部を守る。しかし、通形は左ジャブでそのガードをはじき飛ばした。

 

「それがッ!先輩として俺たちがやれることだと思うんだよねッ!」

 

 渾身の右ストレートが妹紅の顎部寸前でビタリと止められた。寸止めだ。そのまま打ち抜かれていたら妹紅は間違いなく昏倒していただろう。何処からどう見ても妹紅の負けだった。

 

「…参りました。ごめん、皆。仇は討てなかった」

 

「ううん。格好良かったよ、妹紅」

 

 妹紅は両手を軽く上げて素直に負けを認めた。回復してきた葉隠たちに謝ると、彼女たちは首を横に振る。一撃で敗北した自分たちに比べればビッグ3相手に充分な戦果だったのだ。

 それに、妹紅としてもこの格闘戦は有意義なものであった。相澤の『抹消』のように個性を消す個性の持ち主がヴィランにも居る可能性はあるのだから、これほど高レベルな格闘戦の機会を逃す手はない。

 しかも、肉体が完成している通形ならば妹紅が本気で殴っても怪我をさせる心配がないというのも良かった。個性有りの一般的な模擬戦よりも、余程有益な時間だったと妹紅は思っていた。

 

 

「そうだ。ちょっと聞きたいんだけど、全身を常に高温の炎で覆っていれば俺は一切攻撃出来なかったんだよね。君もそれは気付いていたはず。何故やらなかったんだい?」

 

 通形の個性は『透過』。ワープはその応用。それらの解説とインターンを推奨する説明を終えた後、彼は妹紅にそう尋ねてきた。

 確かに莫大な炎を常に纏っていれば、その時点で常時カウンター状態になる。その時点で妹紅の勝利は確定なのだ。妹紅はそれが分からないほど馬鹿ではないし、そもそも当初から随分と炎を抑えて戦っていた。

 そこに通形が疑問を持って聞いてみると、妹紅は視線を少し外しながら答えた。

 

「体操服が焼け落ちてしまうので…。実技の授業という訳でもないので今日は下着(インナー)も普通の素材のものを着ていまして…」

 

「だから炎を全然使わなかったのかい!?俺が急に手合わせしようなんて言い出してしまったから!?女の子相手にそれは普通にゴメンだよね!」

 

 そんな理由だとは思っておらず、通形は慌てて謝った。

 基本的に学生のコスチュームやその装備品の類は学校で管理されている。その為、自主練など授業以外の事柄でコスチュームを使用する時は申請が必要なのだ。

 それもあってか通形の提案で急に始まった今回の模擬戦は、彼を含めて全員が体操服だった。妹紅の耐炎インナーもコスチュームの一部なので普段着のようには当然使えない。故に、着ているインナーは普通の私用であり、全身発火すれば全裸になっていたに違いない。流石の妹紅もヴィランの襲撃とかならともかく、模擬戦程度で裸になるつもりはないのだ。

 しかし、峰田だけはそんな妹紅の返事を聞いて大興奮していた。

 

「藤原ァ!第2ラウンドだ!通形センパァイ!今度は本気で戦ってくれェ!激闘を!一心不乱の大激闘を!ブヘェッ!?」

 

「学習しねぇなぁ、峰田は…」

 

 蛙吹の舌ビンタで吹っ飛ばされる峰田を見ながら男子たちが呆れたように言う。

 因みに、女子陣は呆れるという次元は既に通り越しており、峰田はそういう生命体なのだという認識になっていた。ただし、珍獣というかチン獣という不名誉な枠組みであることは言うまでもないだろう…。

 

 

 

「しかし、今日も体操服を焼いてしまったな…」

 

「雄英の体操服もかなり頑丈に作ってあるけど、妹紅は火力が高いもんね」

 

「私の『酸』だと、よほどの強酸性でもなければ溶けないからあんまり気にしてないけど、妹紅は自動再生でも炎が出ちゃうから気になるよねぇ」

 

 女子更衣室で妹紅が焼け焦げた己の体操服を見ながら言うと、葉隠や芦戸も困ったように頷いた。

 入学から半年。その間に妹紅がダメにした雄英の体操服は今回の模擬戦で7着目になる(その内、体育祭で4着破損している)。雄英負担で支給してくれるとはいえ、国立の高校なので元は市民の税金だ。入学試験で破壊したロボットなどと比べればゴミみたいな金額かもしれないが、流石にこうも頻繁に支給を受けていると少々申し訳なく感じてきてしまう。孤児院という環境で、物を大切にしてきた生活を送ってきていたこともその理由の一つかもしれない。

 そんなことを考えていると、見かねた八百万が助け船を出してくれた。

 

「妹紅さん、私が新しい体操服を創りましょう。最近は強化繊維や不燃繊維についての勉強もしておりますので、既存の物より多少なりとも丈夫なものが出来ると思いますわ。それに体操服以外にも普段着なども耐炎の物が必要でしょう」

 

「ありがとう。服やインナーは個性サポートメーカーのデトネラットに注文しようかと思っていたけど…なら、お願いするよヤオモモ」

 

「ええ、お任せ下さい!」

 

 ライフスタイルサポートメーカーのデトネラット社。個性によって各人の規格がバラバラになった超常社会において、日用品の業界No.1に輝く大手メーカーである。『個人単位でのデザインを3日以内のスピード提供!』の謳い文句で顧客を増やしまくっており、テレビでもCMが良く流れていた。

 『不死鳥』の個性で服や下着が燃えることに困っていた妹紅もデトネラット社には興味を持っていたが、それらを八百万が創ってくれるというのならば、学費などを奨学金で払っている身としても非常にありがたい。もしかしたら八百万もそれを気にかけて提案してくれたのかもしれないと考えると、妹紅はその思いやりが嬉しかった。

 

「とはいえ私の『創造』では妹紅さんの個性に呼応するような特殊繊維は作れませんが、それでもよろしいですか?」

 

「あれは最先端のコスチューム技術だし、デトネラットでも作れないんじゃないか?ヤオモモ、全然構わないよ」

 

 大手といえどもデトネラット社は普通の日用品メーカーだ。そんな最先端の特殊繊維は恐らく取り扱っていないだろうと妹紅は言う。それにどうせなら八百万に創ってもらいたい。そう伝えると、彼女は照れながらも微笑むのであった。

 

 

 

 一方で、インターンの説明が終わったビッグ3の面々は早々に着替え終わり、自分たちの教室に戻っているところであった。

 

「ね、ね、通形!どうだった?もこたん強かった?」

 

「もちろんだよね!でも、彼女だけじゃない。全員が手強かった!きっとお互いに切磋琢磨して強くなっているんだろうね!特にあの問題児くん。俺の初手を分析して予測を立てた上で罠を張ってきた。“サー”が好きそうだ!」

 

 波動の問いかけに、通形は廊下を歩きながら意気揚々と答えた。

 妹紅は強かった。しかし、強かったのは彼女1人だけではない。ヴィラン連合に襲撃され、友を拉致される悔しさを経験した生徒たちもまた手強かった。少なくとも彼らは例年の1年生を大きく越える実力を身につけているだろうと通形は思った。

 そしてケンカ騒動を起こした問題児の片割れ、緑谷出久。“予測して動く”という動きは通形のインターン先の有名ヒーロー、サーナイトアイの教えなのだが、緑谷はそれを言われるまでもなく自らやってみせた。その様子にサーと己以上に気が合うかもしれないと感じていたのである。

 

 そう答えながら通形が波動の方へと振り返ると…、彼女は収穫した妹紅のリボンを自分の髪に結んで、それを天喰に見せているところだった。波動のロングヘアも相まって、妹紅の紅白リボンが見事にマッチしている。彼女もご満悦の様だった。

 

「見て見て、もこたんのリボン着けてみたの!可愛いよね!天喰くんと通形も欲しい?いいよ、結んであげるね!」

 

「え…いや、別に何も言ってないんだけど…」

 

「尋ねられたから答えたのに全く聞いてない!?タハー!」

 

 話を一切聞いていなかった波動は、天喰と通形にもリボンを結ぼうとしていた。

 なお、ちょっと拒否した程度では彼女が止まらないことを良く知っている2人はそのまま受け入れることにした。数十秒後には彼らの頭頂部には立派な紅白リボンが優雅に鎮座しており、ビッグ3はそのままクラスに戻ることになる。

 そして、リボン姿の彼らが教室に入ると『いや、お前たち何しに1年生のところに行ったんだよ!?』という渾身のツッコミをクラスメイト全員から受けるのであった。

 

*1
立っていられないほど悶え苦しんで、地面を這いずること




3年A組、B組
 公式キャラブックによると天喰とネジレちゃんはA組で同クラス。ミリオがB組だそうです。ガチムチのミリオが大きな紅白リボン着けたまま意気揚々と1人で戻ってきたらクラスメイトたち全員爆笑しそうです。ていうか、ミリオの短髪にリボンを結びつけたネジレちゃんの器用さが凄い。

妹紅VS通形ミリオ
 妹紅が常に強力な炎を纏っていればミリオは手が出せないでしょう。また、彼の透過ワープは『地面から地上に弾き出されている』ことを応用してのことなので、空中の高い所にはワープ出来ないようです。その為、妹紅が空を飛ぶとミリオは手が出せなくなってしまいます。つまり個性有りの本気同士だと互いに見せ場がありません。格闘戦なら流石にミリオに軍配が上がりますね。
 それと思ったのですが、1年A組と模擬戦したのならばミリオはB組ともインターン説明ついでに戦うかもしれません。そこで、ミリオを強個性とみた物間が『透過』をコピー。それを発動すると地面の中に落ちていって、慌てて『透過』を解除した瞬間、雄英校内のどこかに全裸の物間がワープしてしまい…という事もあるかもしれません。物間くんは無限の可能性を秘めています!

もこたんの体操服破損件数
 初日の体力測定(炎翼飛行)、体育祭の第一種目(炎翼飛行)、体育祭最終種目の一回戦(八百万戦)、二回戦(飯田戦)、決勝戦(爆豪戦)、神野区での脳無戦(拉致時のトガにナイフで破かれた部分はマグネが裁縫)、今回のミリオ模擬戦で計7着。
 妹紅的にはちょっと申し訳なくなっている感じですが、ヒーロー科的には破損前提なので雄英も相澤も全く気にしていない模様。でも、今度からはヤオモモが創ってくれます。

デトネラット社
 異能解放軍最高指導者リ・デストロが経営する会社。
 表向きには業界No.1の大手日用品メーカーで、今の時点ではヒーローサポート業界への参入は発表していないので妹紅たちも普通の会社だとしか認識していない。でも裏では違法な個性サポートを闇市に流している。なお、技術力はかなり高く最先端の技術も著作権をガン無視してアイテムを作っている模様。

 社員全員が解放軍信者という訳でもないので、もしも妹紅がデトネラットに耐炎の服や下着などを注文していたら、「ん?送り先が雄英高校?ファッ!?もこたんから注文きとるやんけ!会社の良い宣伝になるわ、ハゲ社長に伝えたろ!」という一般社員の反応から始まり、それを聞いたデストロが妹紅のデータ搾取に動いたりします。
 相変わらず解放軍は思想的に妹紅の個性と生立ちが大好きなので、デストロもこの機会を逃さなかったでしょう。しかし、偶然ながらヤオモモが防いでくれました。サンキューモッモ!

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