もこたんのヒーローアカデミア   作:ウォールナッツ

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 肝試しに入る前に、もう少し洸汰くん関連を書きたかったのですが、彼についての情報を得るタイミングが妹紅には無いんですよねぇ…。ワイプシも緑谷くんも、洸汰くんの両親が殉職したことをそうそう話す訳無いだろうし、洸汰くんも妹紅を見たら赤面して逃げ出すし…。なので、妹紅は洸汰くん関連にあまり関わらないことになりました。覗き未遂イベントを引き起こした峰田が悪いよ、峰田がー。


 あ、それと今話はグロ注意です。



もこたんと肝試し~Lunatic~

「ブリの照り焼き、きんぴらごぼう、ほうれん草のおひたし、豆腐とワカメの味噌汁…。こんな所か。後は、男子たちが作っている肉じゃがと白飯で夕食の完成だな」

 

「協力すると楽だねぇ」

 

 合宿3日目の夕方。今日の夕飯は和食だ。男子たちに肉じゃがと白飯を任せる傍ら、女子たちはA組B組関係無く一緒にその他のおかずを作っていた。取蔭がしみじみ呟いた通り、やはり料理は協力した方が省力的で良い。

 

MOKOU’S(モコウズ)キッチン!今日はご家庭で簡単に出来る定番の料理をご紹介しましたー!」

 

「よし、仕上げにオリーブオイルをドバドバかけよう!」

 

「ダメよ透ちゃん、和食よ」

 

 なぜか料理を教えている内に、芦戸や葉隠から『MOKOU’Sキッチン』と呼ばれるようになってしまった妹紅だが、オリーブオイルは使うつもりはない。そもそも準備されていないので、使おうにもつかえないのだが。

 因みに、女子たちがこのように仲良くやっている一方で、男子たちは『どちらのクラスがより美味しい肉じゃがを作れるか!?』という謎の勝負を繰り広げていた。やはりというべきか、いざこざの発端は物間であり、彼に煽られた爆豪がご多分に漏れず爆ギレしたらしい。こんな面倒くさい争いに巻き込まれてしまった無関係の男子たちは本当に哀れである。

 

「それにしても、女子みんなで料理するの楽しかったね!明日もやろうよ!」

 

「ん」

 

「じゃあ、明日は私がとっておきのキノコ料理を振る舞うノコ!」

 

「それは楽しみだな」

 

 作った料理を皿によそいながら、明日以降の料理の献立を考える女子の面々。その後は、男子たちが終わらない争いを続けるので、彼等の分の料理を置いて行く代わりに肉じゃがと白飯を勝手に貰い、女子皆で集まって食べることにした。打ち解けた面子での食事というのは実に楽しく、1年女子14人の夕食は終始和気藹々とした感じで行われるのであった。

 

 

 

「さーて、腹もふくれた!皿も洗った!お次は…」

 

「肝を試す時間だー!」

 

「怖いのマジやだぁ…」

 

 夕食後は夏の定番、肝試しだ。しかも、クラス対抗らしい。芦戸はこのイベントを特に楽しみにしており、諸手を挙げて喜んでいた。反面、怖いのが苦手な耳郎は既に気分が滅入っているようだ。

 

「その前に大変心苦しいが…補習連中はこれから俺と補習授業だ」

 

「ウソだろ!?」

 

 顔面崩壊するほどに驚く芦戸たち。すぐに気を取り戻して逃げ出そうとするが、予想していた相澤によって一瞬で捕縛されてしまった。とんでもない早業である。

 

「すまんな、日中の訓練が思ったよりも疎かになっていたので、こっちを削る」

 

「うわああ!堪忍してくれぇ!肝を試させてくれぇ!」

 

「三奈…!待って下さい先生。少しくらい…」

 

 引き摺られていく彼女を不憫に思い、妹紅が相澤に訴えるも彼は一切聞き入れてはくれない。それでも食い下がる妹紅だったが、相澤は鋭い目でそれを制した。

 

「あまり甘やかすなよ、藤原。コイツらの為にならん。行くぞ、お前ら。いい加減自分たちの足で歩け。重い」

 

 そう言われては妹紅も反論出来なくなってしまう。そう、この合宿は補習者ほどキツい。それは実力で劣ってしまった者たちを鍛え上げる必要が有るからだ。妹紅はもちろん、芦戸たち補習者だってそれは理解していた。

 ノソノソと起き上がり、元気なく歩き出す5人の補習者たち。名残惜しそうに何度も後ろを振り返り、足を止めては相澤に捕縛布をグイッと引っ張られて連れて行かれる。その姿はまるで出荷(ドナドナ)される家畜のようだ。涙無しには語れまい。

 

「もこたん…!ここは私たちが肝試しを精一杯楽しんで、それを三奈の墓前に報告する事が最大の供養だよ…!」

 

「三奈ちゃんは死んでないわ透ちゃん、ケロケロ」

 

 妹紅の肩に手を置き、決意を固める葉隠。実際、昨日の晩に行われた補習の後、部屋に戻ってきた芦戸の表情は半分死んでいた(芦戸は夜中の2時過ぎに戻ってきたが、妹紅はその時たまたま起きていた)。恐らく、芦戸は今日も死ぬほど疲れて戻ってくるだろうから、楽しい話で癒すというのも間違いでは無いだろう。

 

 

「はい、という訳で脅かす側先攻はB組。A組は二人一組で3分置きに出発。ルートの真ん中に名前を書いた御札があるから、各自それを持って帰ること!」

 

「闇の狂宴…!」

 

 マンダレイの説明に、常闇がソワソワとし始めた。麗日曰く、彼は昼頃も先ほどのように呟いていたらしい。表情には出ていないが、彼も肝試しを楽しみにしていた1人なのだろう。

 

「脅かす側は直接接触禁止で個性を使った脅かしネタを披露してくるよ!創意工夫でより多くの人数を失禁させたクラスの勝利だ!」

 

「やめて下さい、汚い…」

 

「なるほど!競争させる事でアイディアを推敲させ、その結果個性に更なる幅が生まれるワケか!さすが雄英!」

 

 とんでもない勝ち負けの判別法に、肝試しに乗り気で無い耳郎は素で引いているが、真面目な飯田は相変わらず前向きな解釈で納得していた。少なくとも失禁で個性に更なる幅が生まれるとは思えないのだが、彼はその辺どう考えているのだろうか。

 それはともかくとして、次はペア決めだ。二人一組を作るためにクジを引かなければならない。虎が『男』『女』と書かれた2つの箱を生徒たちの目の前に突き出すと、生徒たちの視線がそれに集まった。

 

「さぁ、クジを引け勇者どもよ!なお、クジ引きの箱は男女別々だ!同性同士でペアを組んでもらう!」

 

「ふざけんなぁ!男同士で肝試しなんかして何が楽しいんだよぉ!誰がそんなこと考えたんだ!オイラは絶対に認めんぞォ!」

 

 これにブチ切れたのは峰田だ。額に青筋を浮かべて怒声を上げている。彼はこの肝試しイベントを心の底から楽しみにしていたのだ。驚いた振りをして女子に飛びつき、その肉体を堪能するも良し。逆に、驚いた女子をスマートに胸で受け止めて男を上げるも良し。いずれにせよ、イメージトレーニングは完璧だった。

 しかし、ペアが男であれば全く意味が無い。と言うより自分が女子とペア組める前提でイメトレしているあたり、結局は峰田の都合の良い妄想でしかないのだが、彼はそれを全く理解していなかった。

 

「えー、なおこれは二夜連続で女子の入浴を覗こうとした男子がA組に居た為である。この状況で男女混合にしてはならないと教師陣と我々は判断した。それで峰田よ。何か異論はあるか?」

 

「あ、無いです」

 

 虎の眼力でギロリと睨まれた峰田はあっさりと掌を返した。全ては己の自業自得であるし、しかもクラスメイトたちを巻き込んでの制裁だ。周りから白い目で見られるのも仕方無い。峰田には心の底から反省してもらいたいものである。

 結局、女子は芦戸を抜いて6人なので、クジで簡単にペアが決まった。葉隠と耳郎、麗日と蛙吹、そして妹紅と八百万といった具合だ。一方、男子は9人。ペアを組めば誰か余る計算になるが、その余りは緑谷になってしまっていた。1人で肝試しなんて正直ただの罰ゲームだと思うのだが、緑谷はそういうところの運がどうにも無いらしい。哀れである。

 

 

 

「じゃあ、2組目はヤオモモキティとモコモコキティだよ!ゴー!」

 

 トップバッターは葉隠と耳郎のペア。そして5分後に次のペアである妹紅と八百万の出発だ。先攻している葉隠たちの悲鳴が辺りに響く中、妹紅たちは森へと入っていった。

 妹紅たちはB組の様々な怖がらせを堪能しつつ、時には中間地点でラグドールに驚かされたり(『サーチ』で妹紅の居場所を確認していなかったのか、妹紅を見た瞬間ラグドールも驚き、顔を引き攣らせていた)と、肝試しを存分に楽しんでいた。

 

「うう…、取蔭さんの生首が飛んで来たのが一番怖かったですわ…」

 

 妹紅と手を繋ぎながら、八百万は空いた手で自身の胸を押さえている。肝試しはまだ途中だと言うのに彼女は既にグロッキー気味だ。その一番の原因となったのは取蔭である。彼女の個性は『トカゲのしっぽ切り』。全身バラバラに切り離し行動できる個性であり、首だけを宙に浮かせることも可能だった。

 暗闇の中からケラケラと笑う取蔭の生首が目の前まで飛んで来た時は、それはもう八百万は大いに驚いた。腰を抜かしかけて、逆に取蔭から心配される程だったのだ。因みに、妹紅はその時『まるで飛頭蛮(中国の妖怪)みたいな個性の使い方だな』と妙に感心していた。

 

「ああ、でも参考になった。生首か…。有りだな。脅かす側でやってみるか、私の生首で」

 

「無しですわ!?」

 

 妹紅が自分の首を指でトントンと叩きながら言うと、八百万は慌てて異議を唱えた。妹紅としては軽い冗談のつもりで言ったのだが、何時もの如く無表情なので八百万には冗談に聞こえなかったらしい。

 

「冗談だ。マネキンの首か何かでやろう。今日の訓練も大変だったみたいだが、まだ創れるか?」

 

「夕食も頂きましたし、マネキンくらいなら単純な構造ですから、余裕で創れますわ。ふふふ、怖がらされた分、やり返して差し上げましょう…!」

 

 散々やられたので、その意趣返しをしたいのだろうか。八百万が彼女らしからぬ黒い笑みを浮かべていた。実際、驚かせるという点においてA組で秀でているのは、透明な葉隠や様々な道具を創れる八百万だ。特に八百万ならば、この森をホラー映画さながらの雰囲気に作り変えることも可能だろう。

 

「長髪のマネキンが良いな。髪で木の枝に首をくくりつけられていると、落ち武者の晒し首みたいで怖くないか?」

 

「良いですわね。加えて、通路沿いにズラッと並べると更に恐怖感が増すと思いますわ!」

 

「私は炎で火の玉を演出しよう。古典的だが……ん?女の子の泣く声が聞こえるな」

 

 お互いに案を出しながら歩いていると、うっすらと誰かが泣いている声が聞こえてきた。高い声質をしているので、恐らく女子だろう。暗い森の奥から聞こえてくる女の子の泣き声。なるほど、確かにこれもホラーな演出である。

 

「うーん、ここまでやるとは。流石はB組の方々ですわね、この発想はありませんでしたわ」

 

「……ヤオモモ。一つ聞きたいんだが、女子にこんな声の持ち主居たか?妙に声が幼い気がするぞ」

 

「え!?た、確かにそうですわ…!?」

 

 怖がるというよりむしろ感心する八百万だったが、そこに妹紅が真面目くさった顔で疑問を呈すと、急に彼女の顔色は悪くなっていく。実際、こんな声の持ち主はA組にもB組にも居なかった筈である。もちろん、ワイプシの声でも無い。

 “まさか本当にこの森には幽霊が…!?”と、八百万はそんなことを考えてしまって妹紅と繋いだ手に力が入る。いや、それどころか妹紅の腕を無意識に抱きしめるほどに彼女は怯懦になっていた。

 

「……フフ」

 

「あ…!」

 

 余りにも分かりやすく狼狽する八百万に、ついつい妹紅の口から笑い声が漏れてしまった。そして、そこでようやく八百万も気付く。幼い女の子に似た声など、裏声を使えば簡単に出せるのだ。少し練習すれば声変わりを終えた男子だって高い声を出すことは可能なのだから、女子であれば更に声を似せることくらい造作もないだろう。

 つまり、妹紅は泣き声が聞こえた当初からB組の女子の誰かがそういう声を出しているのだろうと予想していたという訳だ。

 

「もう!やめて下さいまし、妹紅さん!信じてしまったではありませんか!」

 

「いや、すまないヤオモモ。フフフ」

 

 妹紅の悪戯に綺麗に引っかかった八百万が顔を紅くして咎めるが、怒る姿も可愛らしいので逆に微笑ましいくらいだ。仲睦まじくそうしていると、聞こえてくる泣き声が徐々に大きくなってきた。

 

「ん?声が近づいてくるな。どんな脅かし方で来るか楽しみだ」

 

「まったく、妹紅さんは肝が太くて羨ましいですわ…」

 

 未だに微笑を浮かべる妹紅を見て、八百万は溜息を吐きながら呟いた。だが、彼女の内心では妹紅の笑顔を見ることが出来てちょっと満足しているのは内緒である。

 すぐ目の前の茂みがガサガサと揺れた。泣き声も近い。しかし、八百万もしっかりと心の準備が出来ており、警戒心を最大限まで高めて臨んでいる。ちょっとやそっとでは驚かない自信があった。

 そんな中、茂みの中から―――子どもが現われた。見た目は小学校低学年程度の女の子だ。

 

「子ども…?」

 

「えっと、これはどういうことでしょうか…?」

 

 驚きよりも困惑が2人の頭を支配した。“子どもの姿に成れる個性? B組にそんな事が出来る個性持ちの生徒は居ただろうか?”そんな風に戸惑っていると、その女児は顔を上げて妹紅たちを見た後に、殊更大きな声で泣き出してしまった。

 

「うええん!キャンプしてて、ひっく、おやまに、ううう、入ったら、ぐす、みちが、うう、わからなくなって…うええええん!」

 

「は!?遭難者!?」

 

「まさか、そんな…!?」

 

 妹紅たちは絶句した。確かに女児の姿を良く見れば、目は酷く泣き腫らしているし、頬には木の枝で切ったであろう擦り傷がある。更に足や靴は土汚れで黒ずんでおり、手や腕にも生々しい擦り傷がいくつもあった。何十時間も山を彷徨い歩いたかのような風貌なのは間違い無い。

 

「ええええん!たすけてぇ!」

 

 遭難者の女児が妹紅の足にしがみついて懇願すると、妹紅も呆気にとられている場合では無いと気を取り直す。泣き止まない彼女を保護するべく、すぐに妹紅は両膝を地面に着けて優しく抱きしめた。

 まずはパニック的な発作を治めてやらなければならない。もしも、呼吸が整わないうちに嘔吐などをしてしまえば嘔吐物が気道に詰まり、窒息する危険性があるからだ。

 

「もう大丈夫。大丈夫だからね」

 

「足がいたくて、ひぐ、もうあるけないの。おんぶして、ひっく、ほしいの」

 

 抱きしめたまま背中を擦ってあげていると、女児も少しは落ち着いてきた。だが、落ち着いた故に自分の身体の限界に気付いてしまったのだろう。疲労のせいか手足が大きく震えていた。

 そんな女児のお願いに妹紅はすぐさま屈んで背中を見せてあげた。

 

「うん、ほら乗せてあげる。ね?もう大丈夫でしょ?」

 

「ぐすっ、ありがと、おねえちゃん…」

 

 妹紅はしっかりと女児を背負い、彼女の体重を支えるように両手を後ろ手に組む。すると、首元に熱い雫がポタポタと垂れてきた。涙なのだろう。1人で深い森の中を彷徨い続けたのだ。この女児の恐怖を思うと、妹紅は胸が締め付けられそうになった。

 妹紅は出来るだけ女児を揺らさないようにゆっくりと立ち上がると、安定していることを確認してから八百万に声をかけた。

 

「ヤオモモ、先生方に連絡はとれたか?」

 

「ダメですわ、携帯は圏外です。ひとまずマンダレイ先生が待機しているゴール地点に戻りましょう」

 

「圏外…?いや、そうだな。とにかく早く戻ろう」

 

 施設からはそう離れていないと思っていたのだが、携帯は圏外になってしまっていた。しかし、妹紅は昨日も今日もここよりも離れた場所で訓練に励んでいたのだが、特に電波に問題は無かった筈だ。もちろん、森の中という障害物の多い場所なので多少の影響を受けるのは当然だと思うが、完全に圏外になってしまうほど影響が出るものだろうか。

 妹紅はそう疑問が浮かんだが、些細なことだと頭を振った。今はとにかくマンダレイの元へ急ぐべきである。彼女の個性『テレパス』ならば、複数人に同時に連絡がとることが出来るのだから。

 

「先導します。足元にお気をつけ下さい」

 

「ああ、頼む。それと近くにB組が居れば、彼等にも声をかけよう。この子を連れている時に驚かされたら困る――あれ?」

 

 先を行く八百万を追うように歩き出した妹紅だったが、何か身体に違和感を覚えた。どうも手足の先が痺れるのである。更に目眩もする。その症状の自覚から数秒後、足に力が入らずに膝から崩れ落ちるように妹紅は転倒してしまった。

 

「うわ!おねえちゃん!?」

 

「妹紅さん!?」

 

 急に倒れた妹紅に、女児と八百万が驚いたように声をかけてきた。妹紅としては自分の事よりも、幼い子どもを背負ったまま転倒してしまったので、彼女に怪我をさせていないか心配だったが、幸い何事もなく大丈夫そうだ。

 

「おねえちゃん、だいじょうぶ?」

 

「ごめんね、コケちゃった。すぐに立つから、掴まっててね…ん、立てない?」

 

 女児に心配をかけまいと、妹紅は四つん這いのまま彼女に笑顔を向けた。そして、立ち上がろうとするが…立てない。というより身体に上手く力が入らない。痺れと共に、手足が震える。更に、目眩のせいか、頭がクラクラとしていた。

 

「がんばって、おねえちゃん!」

 

「ありがとう、ちょっと待っててね…。変だな、力が入らないぞ…?」

 

 女児が背から降りて妹紅の目の前まで来ると、ギュッと妹紅の頭を抱きしめた。まるで、妹紅を健気に応援するように。そして、視界を遮るかのように自分の身体を密着させたのだ。

 

「妹紅さん、大丈夫でグッ!?」

 

「ヤオモモ?どうしたヤオモモ…?何かあったのか?ご、ゴメンね、嬉しいけどちょっと離してもらえるかな」

 

 妹紅の視界は女児の身体で塞がれている。そんな中、謎の鈍い音と共に八百万の苦悶の声が聞こえた。次いで聞こえたのは、人体が地面に倒れ伏す音。そしてそれを引き摺り遠ざかっていくような音だ。そして、声をかけても八百万から返事はない。

 ここにきて妹紅は何かが変だと察し始めた。とにかく状況確認の為に辺りを見渡そうとするが、この女児は妹紅の頭を離そうとしない。それどころか、妹紅の両頬を押し上げるように両手で持ち上げると、顔を目の前まで近づけた。

 

「そういえば、おねえちゃんをテレビで見たことがあります。ヒーロー名は確か…もこたん、でしたっけ?とぉってもカァイイです」

 

 女児は顔を見つめ合わせながら、その小さな手で妹紅の頬をムニムニと揉みしだく。それはまるで妹紅を堪能するような手つきだ。それを裏付けするかの如く、女児は蕩けたような艶かしい表情を浮かべていた。思わずゾクリと妹紅の背筋に悪寒が走る。

 

「あ、ありがとう…。それより…少し離れて…うぁっ!?」

 

 今までに感じたことのない嫌な感覚に、何とかして身体を動かして離れようとする妹紅だが、女児の手がそれを抑えつけた。彼女の手は妹紅の頬だけでなく、顎や鼻、耳や唇までジックリ味わうかの如く撫でまわす。そして、女児の手が妹紅の両眼へと向かうと…躊躇することなく彼女の指が眼孔に突き込まれた。

 目を潰された違和感に妹紅は呻き声を上げる。しかし、女児は再生の炎で焼かれるにも構わず眼孔の中をかき回し、視神経を引き千切り眼球を両眼とも抉り出した。

 

「ああ、綺麗。そしてカァイイなぁ、もこたん。でも、血塗れになるともっとカァイクなるから染めてあげるね!」

 

 妹紅の眼球を堪能するだけして、その後はポイッと地面に捨てる女児。そして懐からナイフを取り出すと、満面の笑みで妹紅の首を斬りつけた。

 

「な…、なん…で…?」

 

「なんで?それはもこたんがカァイイからです!あはははは!」

 

 頸動脈が斬られ鮮血が吹き出し、女児にかかる。温かな生き血を頭から被ってもなお、彼女は笑みを絶やさず狂った様に笑い続けた。しかし、突然その狂気の笑い声が一変した。女児から少女の声へ、急に声質が変わったのである。

 そして、妹紅の眼球から再生の炎が収まった時。目の前に居たのは先程までの女児ではなく、妹紅と同い年くらいの全裸の少女であった。

 

(…な!?)

 

「もこたん、初めまして!渡我被身子(トガヒミコ)です!」

 

 トガは自己紹介するやいなや、茫然自失する妹紅の髪を引っ掴んで投げ転がす。ゴロンと力無く仰向けに横たわった妹紅の上に、トガはすかさず馬乗りになった。

 

「ヴィ…ラあ…あ…」

 

(唇まで動かない!?それどころか呼吸まで…!これはまさか…薬物か!?)

 

 妹紅は声を上げようとしたが、思うように口が動かなかった。筋肉が麻痺しつつあるからだ。更に目眩も酷くなってきており、嘔吐感や筋肉の麻痺、おまけに呼吸すらも難しくなってきている。そのことから何かしらの薬物を注入されたのだと妹紅は判断した。

 事実、死柄木から支給されたトガのナイフには、毒が塗られていたのである。その毒の名は“テトロドトキシン”。毒性は青酸カリの約850倍。摂取した際の症状は主に麻痺であり、経口摂取であっても皮下注入であっても症状が出る神経毒である。故に、流石のトガもナイフに滴る血を舐めるような真似はしなかった。

 

「お腹開きますね!すごい!すごい!もこたんの内臓、とっても綺麗です!あちち!あはははは!!」

 

 トガは妹紅の上着やシャツを捲り上げると、白い肌をうっとりと見つめた後に満面の笑みで上腹部(みぞおち)にナイフを突き立てた。そしてナイフを下腹部へと滑らせて妹紅の腹を割く。再生の炎で焼かれながらもトガは構わずに妹紅の腹の中に手を突っ込むと、内臓を引きずり出し、切り刻み、蹂躙していく。

 

「すごいです!さすが不死鳥!ホントに死にません!!」

 

(ヴィランめ!)

 

 割かれた腹が再生するも、その度にトガはナイフを振りかぶる。その凶刃は腹部だけでなく、胸や喉にも及んでいった。しかし、妹紅もただ嬲られているだけでは無い。全身から炎を発し、未だに馬乗りになっているトガを焼いた。

 

「あちち!熱いです!痛いです!だけど炎を浴びて、更にもこたんに近づけた気がします!」

 

(コイツ、ドラッグか何かをやっているのか!?炎じゃダメだ、殺してしまう!)

 

 全裸のトガを炎が包み込む。その熱さで飛び退くかと思ったが、トガは妹紅の上に居座ったままだった。全身にⅠ度(皮膚の炎症程度)の火傷を負い、加えて再生の炎で焼かれた指や腕はⅡ度(水ぶくれを起こす程度)やⅢ度(皮膚の炭化や強度の皮膚障害を起こす程度)の火傷を負っている。それでもなお、彼女は笑っていた。

 そんな様子のトガを妹紅は信じられないモノを見るような目で見ていた。森の木々に引火しないようにと小規模で放ったものだったが、炎は炎。十分な殺傷能力はあったはずだ。“熱い、痛い”と言っているので、妹紅と同じように炎熱耐性が有る訳でも無痛症という訳でも無いのだろう。ならば、危険ドラッグのような物でトリップして感覚が薄くなっているのか、そもそも最初から狂っているかのどちらかだ。

 いずれにしても、そんな相手に炎は使えない。火傷によって殺してしまう危険性が高すぎるのだ。故に、その対策として妹紅は慧音の指導の下で体術を学んできたし、エンデヴァーの酸素濃度を操る技の練習を怠らずに続けていた。しかし、今は身体が麻痺して動かず、目眩と呼吸困難による集中力不足で酸素濃度を操る炎を出すことも出来ない状況にあった。

 

(いや、正直このヴィランの攻撃はどうでもいい。何よりも、いつの間にか注入された薬物の方が問題だ。炎の熱でも不活化出来ていないし、『不死鳥』の再生でも解毒の気配が無い…!この薬物を身体から取り除かないと、たとえコイツを倒せたとしてもヤオモモを助けに行けない!)

 

 テトロドトキシン。フグ毒としても知られているこの自然界屈指の神経毒には幾つかの特徴があった。まず、熱に非常に強いということ(故にフグの毒部分は加熱しても食べられない)。また、経口摂取の場合は食べてから数十分~数時間後に症状が表れるのだが、血液に注入された場合は経口の100倍近い速さで症状が進行するということも挙げられる。

 そして何より、この毒は細胞を破壊するような毒ではないということだ。テトロドトキシンは、体内の神経伝達や筋肉収縮に関わる働きを持つイオンチャネルを抑制するだけ。つまり、これは怪我では無く、単純な身体の生理活性だ。故に、『不死鳥』の再生ではテトロドトキシンを解毒出来ないのである。

 

(どんな薬物か分からないが、そんなこと知ったことか!一から身体を造り直してやる!自爆だ!薬物を抜くと同時に、このヴィランを倒してやる!)

 

 だが、己の命の扱いという点において、妹紅ほど狂っている人間はヴィランにも居ないだろう。妹紅が思いついた策は自爆。腹の底に溜め込むイメージで炎を練り上げ、それを身体の中で爆散させてヴィランを吹き飛ばす必殺技だ。その名も『不死身の捨て身』。他人(特に慧音)には絶対に見せられない必殺技である。慧音にこんな技を考案していたことがバレたら、頭突き三連発では済まないお仕置きを喰らうだろう。

 そういう訳で長らく封印していた技だったが、流石に今はそう言っていられない状況になってしまった。何より、八百万の安否が心配なのである。先ほどの状況から襲撃に来たヴィランはこの変態女だけでは無いと妹紅は考えており、さっさと体内の薬物を除去し、一刻も早く八百万の下へと駆け付けたかった。

 しかし――

 

「おっと、何かしようとしているな?何もしてないだろ!抵抗するなよ?抵抗してみろよ!こっちには人質がいるぜ!?」

 

「んー!んー!」

 

 黒い全身タイツで身を包んだヴィランの男、トゥワイスがナニカを妹紅に押し付けた。それは両腕を後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされた女児。しかも、つい先程まで見ていた顔だった。

 

(さっきの…女の子…!?じゃあ…コイツの個性は…!)

 

「えへへ、私は相手の血を飲むと、その人に変身出来る個性なのです。ほら!」

 

 トガが妹紅の頬に付いていた血を舐めると、たちまち身体の形を変えて妹紅の姿となった。他者の血を摂取することで『変身』出来る個性。それを目の前で見た妹紅は、この拘束された女児こそが本物だと信じてしまった。これではもう自爆も出来ない。人質を傷つけてしまう。

 

(人質…助けないと……ヤオモモ……みん…な………―――)

 

 精一杯の抵抗を続ける妹紅だったが、呼吸は既に止まっており、酸欠によって意識は朦朧だった。そして、それも限界を迎える。歪む視界の端から闇が徐々に浸食していき、妹紅の意識は完全に暗黒へと落ちていった。

 

「その顔!カァイイ!カァイイ!あははは!」

 

「黒霧さん、終わったぜ!前途有望なヒーローの卵の人生がな!いや、鳥生?とにかく、迎えに来てくれよ!リムジンで頼む!」

 

 トガは眼を見開いたまま失神した妹紅を未だ刺突している。その隣で、トゥワイスは妹紅の無力化が成功したことを特殊な無線機で黒霧に連絡していた。

 

「んー!んー!」

 

 一方、拘束されて人質にされていた女児は、猿轡越しに喚いている。顔を紅くし、縛られた身体で懸命にもがいており、その瞳は妹紅を見つめていた。

 そして黒霧への連絡も終えたトゥワイスが、そんな女児の様子に気が付いた。“ああ、そうだった!”といった感じで彼女に近づくと、その手を伸ばした。

 

「ごめんごめん。すぐに猿轡を外すよ、トガちゃん(・・・・・)!付けたままの方が萌えるけどな!はいコレ、トガちゃんの着替え!」

 

「ぷはぁ!ズルいです、偽者の私!私もやりたいです!」

 

 トゥワイスが女児の猿轡を外すと、彼女の口からは到底人質とは思えない言葉が飛び出してきた。それもそのはず、彼女こそが本物のトガヒミコであり、妹紅に危害を加えた方のトガはトゥワイスの個性によって増やされた偽者(コピー)であった。

 本物のトガは女児から元の姿へと戻り、いそいそと服を着る。一方、偽者のトガは妹紅の首元に噛み付いて皮膚と血管を食い破り、顔面を再生の炎で焼かれながらもその血を堪能していた。偽者のトガは変身したままなので、傍目からは妹紅が妹紅の血を啜っているという恐ろしい光景である。

 

「あはぁぁ…!ふぅ、凄く良かったです…!あれ?」

 

「あー…、火傷のダメージで消えちゃったな。まっ、コピーの仕事は終わったし、別に良いか!」

 

 神経毒も混ざっている血を構わず啜り、興奮のあまりビクンビクンと身体を震わせていた偽者のトガだったが、蓄積していた炎のダメージによって泥のように溶けていった。妹紅の姿といえども、炎熱耐性は無い。トガの『変身』で真似出来るのは外見のみで、個性までは真似することは出来ないのである。

 

「良くないです!私ももこたんを殺して楽しみたいです!」

 

「トガさん、それは勘弁願えますか」

 

 毒ナイフだけは増やしたものでは無い。偽者が消えた跡に残されたナイフを手に取ったのは、本物のトガだった。彼女自身は妹紅に何もしていないので酷く欲求不満なのだろう。ナイフを妹紅に突き刺そうとしたトガだったが、黒霧の声と共に妹紅の身体が黒いモヤの中に沈んでいった。

 更に、トガとトゥワイスも同じく黒いモヤに包まれていく。

 

「あ、黒霧さん。あー!待って下さい、もこたんを連れて行かないで下さい!私まだ何もしていないのです!」

 

 トガとトゥワイスが気付いた時には、森が見渡せる場所へとワープしていた。辺りに妹紅の姿は無い。トガが懇願するが、もう遅い。妹紅は既にヴィラン連合のアジトに送られた後だ。

 

「既に意識は無いといえども、危害を加え過ぎると勧誘の際に支障が出る可能性がありますので。…というか、襲撃の際も最小限の攻撃だけに留めよ、と伝えていたはずなのですが?」

 

「え~と…悪いのは偽者なので、私は関係ないです!えへへ、ダメですか?」

 

 伝えていた作戦では、背負われている時に妹紅の背中を毒ナイフでチクッと刺すだけだった。それだけで十分な毒は注入されるとトガには説明していたし、彼女もその時は『分かりました!』と元気よく返事をしていたのだ。

 しかし、その結果がコレだ。抵抗されたから仕方無く…という訳でも無く、彼女の偽者は完全に己の欲望のままに犯行を行っている。それを黒霧に咎められ、返答に困ったトガは開き直って全ての責任を消えてしまった偽者に押し付けた。しかも、テヘペロのおまけ付きである。あざとい。

 

「…仕方ありませんねぇ、今回は目を瞑ってあげましょう。それよりも仕事の続きです。襲撃のプランは覚えていますよね?事は順調に運んでいますので、計画通りお二人にも動いてもらいますよ」

 

 トゥワイスの『二倍』で増やされた人物は、記憶も性格も複製される。つまり、本物のトガであったとしても妹紅を惨殺していたという事だ。しかし、黒霧は深い溜息と共に許してくれた。元から黒霧も彼女ならやりかねないと思っていたからだ。

 それを踏まえながらもトガを拉致実行犯に選んだのは、妹紅に人質という存在を強く意識させる為だった。これで神経毒が抜けた後も妹紅は人質を意識してしまい、ヴィラン連合に逆らえなくなるだろう。

 しかし、襲撃はまだ半ば。妹紅を拉致し、ラグドールも既に拉致した後だが、まだ爆豪が残っているのだ。

 

「もちろん、覚えているぜ!なんだっけか!?荼毘をコピーして、ガキ共の施設に送り込めばいいんだろ!ド迫力のキャンプファイヤーを見せてやるぜ!荼毘と一緒に炎を囲んでマイムマイムだ!」

 

「私は今から適当に生徒たちを襲撃してきます。もこたんと遊べなかった分、いっぱい楽しんできます!」

 

 爆豪拉致の実行はコンプレスが行う手筈になっている。彼等はその補助だ。トゥワイスは荼毘と共に教員ヒーローの足止めを。トガは誰でも良いので生徒の血を採取するようにと言われている。採血数のノルマは無いので自由行動のようなものだが、現場の撹乱くらいにはなるだろう。

 

「よろしい。では、トゥワイスは荼毘さんの元へお送りします。貴方自身の戦闘力は高くないのですから、彼から離れないように気をつけて下さい。油断してはなりませんよ?お伝えしていた通り、私はこれから死柄木と共に東京拘置所を襲撃しに行きます。撤収予定時間以外は皆さんを回収する事も助ける事も出来ませんので、そのつもりで―――」

 

「分かってる分かってる!それも覚えてるって!心配性だぜ、黒霧さん!剛胆だな!さぁ、送ってくれ!荼毘が寂しくて泣いてるかもしれねぇ!」

 

「分かりました。では、ご武運を…」

 

 トゥワイスを荼毘の元へ送る黒霧。彼を案じたのは本心からだった。トゥワイスの『二倍』は非常に便利で強力な個性なので、彼は絶対に失いたくない人材の1人なのである。

 そして、それはトガも同様だった。

 

「さて、トガさんは好きなように動いてもらって構いませんが…おや、そういえば藤原妹紅は八百万という女子と一緒に居たはずですが、彼女の血は採っていないのですか?」

 

「ああ、あの人ですか?もこたんを騙すために拘束された振りをしていたので、採る暇が無かったのです。最優先のもこたん以外はどうでもよかったので」

 

 八百万はトゥワイスに殴打されて気絶した後、妹紅の目の届かないところまで引き摺られ、そのまま森の中に放置されていた。はっきり言って、拉致実行中のトガやトゥワイスにとって彼女は不確定要素でしかないので、邪魔にさえならなければそれで良かったのである。

 故に、トゥワイスは全くの手加減無く、落ちていた拳大の石で彼女の頭部を殴打していた。気絶させた後は彼女の状態すらも確認していないので、八百万は脳内出血で死んだかもしれないし、軽傷で済んで生きているかもしれない。そこに興味が湧かないくらい、トガにとって八百万はどうでも良かった。

 

「カァイイ子でしたけど、そこまで食指が動く子ではありませんでした。だから、あの子には成れなくても別にいいです。そんなことより、私はもっと素敵な出会いを探すのです!黒霧さん、あの辺りに送ってもらっても良いですか!?今、そこの近くに誰かが歩いているのが見えました!乙女センサーに反応有りです!きっと、とってもカァイイ子だと思います!」

 

「分かりました。撤収予定時間には指定の場所に戻って来て下さいね。それでは、お気をつけて」

 

 妹紅で発散出来なかった欲求不満を他の者にぶつけるつもりなのだろう。獲物を見つけたトガの瞳は猫のように爛々と輝いていた。そんなトガに黒霧は気遣う言葉をかけて、彼女が指差した位置へと送り届ける。

 

「さて、そろそろ私も行きますか」

 

 黒霧の眼下に広がるは、森に燃え広がっていく炎と渦を巻いていく毒ガス。全て計画通りである。

 彼は小さな笑みを浮かべると、黒い霧を纏いながら消えていくのであった。

 

 




 後書きが長くなってしまったので適当に読み飛ばして下さい。

 MOKOU’S(モコウズ)キッチン
 幻想郷屈指のイケメン、藤原もこうみち君によるキッチン・バラエティ番組である(大嘘)。
 本家M○KO’Sキッチンは、オリーブオイルをドバドバ使うことでも有名。また、視聴者リクエストでは、八雲紫(24歳)という女性から投稿が来たことがあり、他にも、ゆうかちゃん(10歳)や、チルノ(17歳)、野獣先輩(24歳)といった人物たちからも投稿が寄せられたこともある。なんだこれは、たまげたなぁ…。


 取蔭=飛頭蛮説
 取蔭ちゃんは、ばんきっきだった…?まぁ赤蛮奇の種族は正確にはろくろ首らしいですが。
 なお、妹紅の場合、首を切り落としたところで身体部分から新たに頭が再生されるのか、頭から新たな身体が再生されるのかは妹紅本人ですら分からない模様。

 トガちゃん「すごいです!さすが不死鳥!ホントに死にません!!」
 ベルセルクの主人公、ガッツの「すげえぞ!さすが超越者!ほんとに死なねえぜ!!」という台詞を参考にしました。もこたんが使徒である可能性が微粒子レベルで存在している…?

 『不死身の捨て身』
 元ネタは弾幕アマノジャクの『惜命「不死身の捨て身」』から。ゲーム画面内を縦横無尽に突き進み、広範囲の爆発を引き起こすスペルカードです。
 このSSでは単純な自爆技として採用。自爆後は周囲に肉片が飛び散り、地獄の様な光景が辺りに広がる。なお、今話は実行までには至らなかった。

 テトロドトキシン
 実在する自然由来の神経毒。フグの他にもヒョウモンダコなど幾つかの生物がこの毒を持っている。人間の経口摂取におけるテトロドトキシンの致死量は0.001~0.002g。食べてから20分~数時間で症状が現われ、重症化した際は24時間以内に死亡する場合が多い。血中に注入された場合は、更に少ない量でも死に至り、経口摂取の100倍近い速さで全身に毒が回るという。
 テトロドトキシンは神経細胞や筋繊維のイオンチャンネルを抑制する作用がある。イオンチャンネルが抑制されると他の体組織に情報を伝達出来なくなるので、身体が麻痺する。
 この毒で中毒を起こした場合、意識は明瞭なまま麻痺が進行する。死因は呼吸器系の麻痺による窒息死。つまり動けず徐々に息が出来なくなっていく恐怖を味わいながら窒息し、死に至るということである。
 未だ解毒方法は見つかっていないので、人体内の代謝によって分解され無毒化されるまで耐えなければならない。逆に言えば、中毒症状によって呼吸が止まっても人工呼吸を行い続ければワンチャン生き残れるという事でもある。
 細胞を破壊するような毒では無いので、『不死鳥』では麻痺を再生することが出来ない。窒息することで、意識消失。心肺が停止した辺りで初めて蘇生が行われる。しかし、毒が抜けた訳では無いので再び窒息して死ぬの繰り返し。苦しそうですが、最初に意識消失して以降は、ずっと意識は無いので大丈夫です(平気とは言っていない)。

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