√シルバー【完結】   作:ノイラーテム

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変転する運命

●偶然が描く理想郷

 七草・弘一に一花先輩経由で面会を求めたところ、意外なほどの早さで返事が戻ってきた。

 その奇妙な条件には首を傾げざるを得無かったが……。

 

「四葉に属する僕達だけならともかく、琢磨くんまでとは思いませんでした」

「交渉をカモフラージュする意味では間違ってはいないがな……」

 正式に呼ばれたのは俺、文弥、そして七宝の三人。

 七草家の屋敷ではなく借り受けた大きな庭園に招かれ、俺たちは紋付き袴を余儀なくされた。

 もちろん旧正月を祝う為では無く、七草家の勢力に所属する女性達とのセッティングを世間体なお題目にしているからだ。

「でも七草の娘と見合いなんて……っ」

「カモフラージュと言っただろう琢磨。我慢しておけ」

「そうですよ。お兄さまも我慢していらっしゃるのですから」

 正式に呼ばれたのは男性陣三人ではあるが、深雪達が訪れるのも禁止されてはいない。

 むしろ一条を呼びつけることで、見合いと言うコンセプトをこれでもかと主張して居た。

 

「でも深雪さん。何を企んでるのかしら?」

「あら、私は何も考えて居ませんよ。お兄様のお役にたてるならば……と思っているだけです」

 亜夜子の視線に深雪が静かに首を振る。

 振り袖姿が実に似合っているが、その表情に変化は見られなかった。

 

「名倉と申します。本日は主人の使いでお迎えにまいりました」

「お手数をおかけします」

 暫く待って居ると、名倉と名乗る男が迎えに来た。

(「達也兄さん。この人って……」)

(「だろうな。あくまでそう名乗る別人だ」)

 七草家の裏で動いていた名倉という男は、既に喰われて存在を消失している。

 だが今日の催しが表向きであり、裏のある交渉だと示すには判り易い名前ではあった。

 

「あちらの棟に一条さまがお待ちです。下のお嬢様がたも御一緒されております」

「それではお兄様、また後ほど」

「ああ、深雪も気を付けてな」

 一条や吉祥寺の姿を見付けたことで、深雪はそちらに軽く頭を下げて移動を開始する。

 合わせて文弥たち中学生組もあちらの双子の方に通されて、予定通り七草・弘一との会談に向かった。

 

「司波くんと合うのも久しぶりですね」

「先輩達は三年生は必要な時だけ登校ですからね。まだ御挨拶をするほどのタイミングでもありませんし」

 利用されて不機嫌なのか以前の静かな怒りが収まって居ないのか、一花先輩の顔は澄ましたままだ。俺は苦笑しながら頷いて、奥の間に座って居る男に手土産のデータと共に抗議の話題を向けた。

「見合いと言うのはあくまで表向きの理由だと思っていましたが?」

「こちらの条件と老師の思惑を端的に現したつもりだったのだが、気に入らなかったかね?」

「……っ」

 七草・弘一の脇には七草先輩が張りつけたような笑顔で沈黙しており、その隣に一花先輩が座ると針のむしろが形成される。

 俺は仕方無く先輩達と相対する形で着席することになったが、良く見ると渡辺先輩と千葉の次男が少し離れた場所に通されていた。

 カモフラージュのはずであるが、既にペアとなっている渡辺先輩たちまで呼ぶのは演出過剰だと思われた。

 

「老師の思惑ですか?」

「そう直裁に進めるのもどうかと思うが……まあ良い。この光景が老師の望んだ光景だろうと私は判断する」

 七草・弘一はサングラスを外すと、若い日に痛めた目をさらけ出した。

 それで本音を出して居ると信じるつもりはないが、有る程度の思惑を語る気ではあるのだろう。外患誘致の件などよりも関心度は高いので聞いておくことにする。

「七草は渡辺家や一花家などを支援して、ナンバーズにおける勢力と権益を復活させた。四葉は同様に黒羽家や津久葉家と……上手くやって居る様に見えるが、落とし穴も無いでは無い」

「老師がそれを誘導して居るから……ですか? 何の得もしていないような気がしますが」

 この男が語る内容のほかに、渡辺家には千葉家から次男を引き抜いている。

 同じ様に四葉も新発田家を六塚の縁と称して、遠回しにではあるが発言権や権益を確保して居た。

 

 しかし、それのどこが老師の思惑と通じるのだろうか?

 九島の家は何の得もしておらず、あえて言うならば藤林中尉と千葉の長兄が婚姻すれば九の家として多少と言う所だ。

 

「負けるが勝ちという言葉もある。……現在の勢力や権益はともかく、次世代の当主達はそこまで思惑が一致するものかな?」

「リソースの分散を図ったということですか? 確かに表向きはともかく当主の意向がどうなるかまでは判りませんね」

 説明されてようやく見えてきた。

 確かに七草家や四葉家の勢力や権益は復活したが、それはあくまで現当主の絶対性が保たれているならばの話だ。例えば新発田家に任せた力を、次期当主が四葉本家の為に使うとは限らない。

 名目上は独立した家になっているので無条件に従う理由は無く、分家と公表して居る黒羽家とて本家に従うとは限らないのだ。

「老師の目的は魔法師社会全体の安定と円熟だろう。今のところ上手く行っている……四葉がシルバー社を抱えている件を除いてね」

「まさか……」

「俺が邪魔と言うことですか? それは流石に思ってもみませんでした」

 冷たい笑顔のまま黙って居た七草先輩の顔色が変化する。

 俺個人が次世代の妨げに成っているとは、それほどまでに驚きだったのだろう。

 

 俺としても思ってもみなかった切り口ではある。

 ずっと四葉が所持する兵器としての意味合いしか無かった筈だが、それほどまでに評価されているとは思いもしなかったという方が正しいだろう。

 

「所詮は学生だとは言わないで欲しい所だな。九校戦に始まって、大亜連合に対する冷静な仕切りで明らかだ」

 反論しようとする俺の言葉を七草・弘一は苦笑一つで押し留めた。

 苦い笑いを含ませながら、一つ一つ指摘して行く。

「君が思うよりも君の差配に注目していた者は多い。大したことは無いと言うならば、努力してもそれだけの成果を得られなかった者の立場が在るまい」

「それは……」

 随分と気楽な物の見方もあるものだと思った。

 俺は冷静なのでは無く感情が無いも同然なのであり、やってきた事も任務の延長線上なだけだ。だが指摘された事が一つの見方であるのは事実だろう。問題なのは老師がそう確信して居ると言う事だった。

 

「そして今回の脱走兵に寄る襲撃事件を片付けたことで決定的になった。戦術魔法のみならず戦略魔法を作りあげ、国内に住まう勢力を一つ片付けたのだからな」

 その魔法はダミーだと言っても聞く耳を持つまい。

 そう誤解するように仕向けたのは俺自身であり、少なくとも戦術級魔法を二つ三つ用意したのは間違いが無いからだ。

「君は知らなかったかもしれないが、旧派に属するフレイムヘイズという有力なグループが彼らには協力して居たのだよ」

「あれはフレイムヘイズだったのですか……」

 七草・弘一は誤解しているようだが、フレイムヘイズは政治的なグループではない。

 あるいは七草先輩たちの手前あえてそう言ったのかもしれないが、多少のショックを覚えていた。

 

 パラサイトと呼ばれる異世界の住人やソレに寄生された連中の中で、『紅世の徒』と対峙する組織がフレイムヘイズだ。

 マテリアルバーストを狙った以上は始末するのが当然とはいえ、できれば味方に成って欲しいとは思っていたから、ショックが無いと言えば嘘に成るだろう。

 

「納得が行くかは別として、話は概ね理解できました。しかしこの馬鹿げた集団見合いを演出する必要は無かったと思いますが」

「君も呑み込みの悪い男だな。それとも聡明さと朴念仁は同居する資質なのかな」

 喉の奥で笑う独特の笑み。

 七草・弘一は意地の悪い笑顔を浮かべてサングラスを掛け直した。

「四葉が君を抱えて居るのが問題だと言った筈だよ? うちの娘も憎からず思っているようだし、この際は一花くんでも良い。要するに君が四葉の外に出て新しい百家になってしまえば良い」

「俺が先輩達の誰かと……ですか?」

 思ってもみなかった切り口の二つ目だ。

 俺にそんな自由があるかは別にして、確かに四葉から出れば老師の掣肘から外れる可能性は高い。

 

「ちょっとお父……」

「嫌いじゃないんだろう? 一花くんもそんな感じに見えるんだが」

「会話するに値するべき相手が少ないだけです。以上」

 驚く七草先輩に鉄面皮で流す一花先輩。

 このやり取りも随分久しぶりだなとは思いつつ、二の句が告げないで居た。有効な方法とは言え俺の一存で対処できる問題ではないからだ。

「失礼ですがそれで何とかなったとしても、翻意するのはあくまで老師だけ。九島の家やその下で動く者たちが納得するとも思えませんが」

「彼らは小物だよ。放っておけば状況に流される存在に過ぎん」

 本当にそうだろうか?

 一応の当主である九島・真言に関してはそうかもしれないが、取り入っている(チョウ)たち大漢残党の導士たちはそうもいくまい。

 

 そしてこれが最も重要な事なのだが、大亜連合に対する大漢の残党という構図だけでは無かったらどうだろう?

 大亜連合の協力者だと思っていた襲撃して来た連中が、フレイムヘイズだったと仮定するならば……。大漢残党と思っていた連中が『紅世の徒』である可能性もあり得る。

 もちろんその可能性もあり得る程度なのだが、状況をみると嫌な予感が生じる。

 

(もし、もしも奴らが『紅世の徒』だった場合だ。九島老師が亡くなった時。九島の家を隠れ蓑に行動するのではないか? そうなれば裏社会どころではない餌場を与えることになってしまう)

 魔法師全体のオブザーバーである老師のツテがあれば、幾らでも暗躍が出来るだろう。

 今現在の進行形で、各方面に潜り込んでしまえば老師が亡くなっても問題は無い。むしろ監視が無くなって好き放題に食い散らかす可能性すらあった。

 そしてその考えが頭を掠めた時、電撃的に思い至った事がある。

(待てよ。……既に魔法師協会に入り込んでいるならば、フェードアウトした技術者を狙う事ができるんじゃないか?)

 関本先輩の様に失意のまま名前が聞かなくなった技術者が、襲われたと思わしき痕跡があった。

 その時期は(チョウ)が老師に取り入った可能性のある時期に前後する。

 

 そこまで考えてしまった以上、脳裏にこびりついたまま離れることが無かった。

 七草・弘一の話や先輩の抗議など既に耳に入らず、右から左に抜けて行くのを感じた。

 

●一時の共闘

 カモフラージュと取引の入り混じった馬鹿馬鹿しい会談がようやく終わりを告げた。

 重要な情報を見付けたことで流されそうだった認識に急制動が掛り、俺の意識は再構築を始める。

 

(紅世の徒が潜んで居たとして、どうしたものかな。おびき寄せるか、こちらから襲撃するか。それとも……)

 七宝や文弥たちが送迎の車から降りるまでの間に、大凡の考えがまとまって来た。

 確実なのは罠の中におびき寄せることだが、この間の事があったばかりでそれは難しい。あちらも警戒するだろうし、今やってもその辺の犯罪者を手駒として送りつけられるだけだ。

 

「旦那さまの御申出を受けていただけますでしょうか?」

「急ぎの返事は必要なかったと窺いましたが? ……そもそも考慮する意義は認めても、求めて受け入れる必要を感じません」

 名倉と名乗っている人物の言葉に俺は苦笑せざるを得無かった。

 当面の問題を回避するには有効だろうが老師の目的の一つでしかない上に、今後も変化しないとは断言できない。

 便乗して他の家ではなく自分の家との結びつきを求める七草・弘一の思惑など、輪を掛けてどうでも良い。

「当面という意味では、魔法師の極北たらんとする四葉の目的にも合致するとは思いますが?」

「そこは重要ではありませんよ。ソレを必要だと思うならば俺達の方で拾えば済む話です。だいたい……」

 四葉とそのスポンサーの目的の一つには、魔法師としての能力を磨き、かつ他国に脅威を与えると言うモノがある。

 確かに優良な魔法師を次世代に残すだとか、勢力を急速に回復して外敵を圧倒するという意味では婚姻政策は悪くない選択肢だ。血族間の交流を強くしておけば、次期当主の影響度もある程度は保たれる。

 

 だがそれでは俺達の目的、そして四葉の持つ根本的なアイデンティティとはそぐわないのだ。

 必要ならば積極的にその方針を取るだろうが、他家に押しつけられて受け入れたのでは矛盾してしまう。

 

「貴方のスポンサーは別に七草だけではないでしょう、師匠?」

「ええ……っ? 八雲先生なのですか?」

「おや。達也君の目は誤魔化せない用だね。精霊の眼は何とかしていたつもりなのだけれど」

 深雪は驚いているが、運転手が振り向いた時には既に顔が入れ替わって居た。

 化けの皮がはげ落ちて、身知った禿頭の男に変わる。

「演出過剰なんですよ。それに、シリウス少佐のパレードを見て居たこともありますしね」

「う~ん。纏いの逃げ水はパレードの源流だからねえ。似た魔法を見た後ではバレバレだったか」

 もし名倉という人物では無く普通の執事に化け、気配やエイドスの情報も一般人に似せて居れば判らなかったかもしれない。

 それでもあえてそう名乗ったのは、ここでの接触を狙っただけだろう。俺が自分で気がつかねば有り難い授業として驚かされただけの話だ。

 

「察するに複数筋の要望があっての接見と見ましたが? 俺の説得に協力するというのは七草家か九島家の依頼もあっただけのことで」

「まあ、ね。一応は本当に頼まれたんだよ」

 俺を説得するだけならばこの場でする必要は無い。

 受け入れるか判らない状態で反発させるよりも、折りを見て手段の一つとして入れ智慧を装う方が確実だろう。そっち方面の依頼主もそう考えている可能性の方が高い。

「定番だけど良い情報と悪い情報、どっちから聞きたい?」

「定番ならば悪い方からというのがセオリーでしょう」

 拍子抜けした風を装って師匠が肩をすくめるが、予想して居たのだろう。特に表情が変わる様子は無い。察するに良い情報は紅世の徒を殲滅するのに使えそうな情報だろうが、悪い方はどうだろう?

 

「君の所の御意向はね、今から顔繋ぎする相手との共闘は途中までにしておけってこと」

「四葉の……? ということはまさか……っ」

 おふくろの要望なのか、それともメインスポンサーの意向なのか。

 いずれにせよ四葉家が組む相手ではない対象と、一時的な共闘を持ち掛けられているのだ。USNAですら駒とする四葉にとって、禁忌とする相手はそう多く無い。

「大亜連合……」

「大亜連合の陳・祥山氏が再来日していてね。劉閣下からぼくの事を聞いていたらしい」

 利用される危険性はあっても侵略する気の無いUSNAと違い、大亜連合は明確な敵だ。

 この間の敗戦で正式に休戦協定を結ぶという話が模索から実現段階に入ったらしいが、それでも手を組むべき相手ではなのは確かだ。

 

 とはいえ紅世の徒を襲撃し易くなる共闘相手が良い情報だとするならば、一時的にならば組み価値はある。

 奇妙な話だが老師や七草の話が良い話でも断る気なのと対照的に、こちらの目的上にある利点だからだ。他所の思惑には縛られず、我道を貫き続けられることが重要だと言っても良い。

 その意味では婚姻政策も押しつけられず、こちらの路線の上でならば相手が七草だろうが一条だろうが、それこそ北方でも構いはしないだろう。

 

 

「行方不明だった部下が大漢残党の元に居ると言う。当初は変節を信じられなかったが……」

「パラサイト問題を聞いた、と?」

 家に向かう途中で陳・祥山を拾い、移動時のみの制限時間で交渉を始めた。

 お互いに前置きを抜いて情報整理を進めて行く。紅世の徒・フレイムヘイズともにパラサイト問題に含まれるので、ここはあえてどちらとも言わないでおく。

「……なるほどこの男であれば手間を掛けて操る理由も判る」

 渡された写真は呂・剛虎(ルウ・カンフウ)の物。

 上からの命令的にも陳個人の心情的にも、このままにしておけない理由が一目で判る相手だ。

 

「こちらの情報網でも、妙に大陸系の連中が動いているのが掴めていた。おそらくはあえて顔を出したのだろう」

「戦死ならばまだ問題ではない。だが洗脳どころか寄生させられた上、本国を裏切るというのは言語道断だ」

 おそらくは呂・剛虎として大亜連合系の末端から情報を抜き出し、監視カメラに自らの顔を移すことでその関与をほのめかしたのだ。

 ゆえにこちらは戦略魔法を狙ったという情報を信じ、本気になって対処してしまったと言うところだろう。九島老師のツテを使えばその後に姿を隠すどころか、別人であると認識させることなど造作も無い。

「共闘内容は大漢残党の殲滅。呂上尉の排除に関しては、最低限の目的としたい」

「前半は合意できるが、後半は試す価値を感じない。リスクの上昇に伴う見返りが欲しい」

 この場合の見返りとは報酬と言う意味では無い。

 可能ならば危険を承知でトドメを刺さずに回収する危険、解除できる洗脳だったとしても敵戦力である呂・剛虎をむざむざ引き渡す危険。それに見合った危険を大亜連合にも負ってもらうということだ。実際に九島家の勢力を攻撃するのは俺達だし、大亜連合が安全地帯に居る事を許すことはできない。

 

「パラサイト解除実験のデータでは?」

「その必要性を感じない」

 交渉というよりはお互いの立場の確認が必要だ。

 陳としては回収できるならば優秀な部下を失いたくは無いだろう。だが上層部に掛け合うほどの理由を用意できるとは思えない。

「むしろ別口のパラサイト情報、あるいはリスクの一部を受け持ってもらいたい」

「その辺りが妥当か。近日中にパラサイトの情報を用意しよう」

 ゆえにお前も命を掛けて足止めに来い、あるいは紅世関係の情報を要求した。

 軍人ゆえに生命の危険は織り込み済みだろうが、その後に戦いに成る可能性を考えれば頷くまい。

 

 必要なのはこちらの望む情報を、大亜連合として集めさせること。

 こちらが迂闊に九島の傘下で動く連中の情報を集めれば、直ぐに伝わって警戒を呼び掛けることに成る。その点、大亜連合であれば部下の情報を確認したと思われるだけだろう。

 

「ダグラス・(ウオン)にジェイムズ・(チュー)……。まさかここで名前を聞くことになろうとはな」

 数日後、俺達の元に師匠経由で情報が送られて来た。

 そこには三国志を元にした偽名なのだろう、呂蒙と名乗る呂・剛虎の他、黄蓋や朱旋と名乗る見知った顔が見受けられた……。




 と言う訳で裁判の交渉ではなく、九島に攻め込む理屈が集まったことに成ります。
九島家は大亜連合の勢力を引きこんだと攻守逆転して、周さん達の元に攻め込む予定です。
おそらくは前後編、長ければ前・中・後の三本で戦闘をしてシリーズ終了に成ります。

●老師個人の思惑
 現在の十師族のバランスは非常にうまく保たれており、紅世の徒との抗争で勢力を減らした四葉・七草家が下降。
市原家を一花家など協力者の家を百家に推薦したり、津久葉家など分家を興して勢力を立て直して居る最中です。
その流れを老師は阻むのでは無く、むしろ率先して協力し、当主達の持つ権益などのリソース分配することで、次世代のバランス取りを図って居ます。
警察に強い勢力を持つ千葉家などは積極的に分散させる対象であり、四葉・七草と並んで各方面から縁談を持ち掛けて居る感じになります。

 この流れは七草家が相乗りしたことで一応上手く行っているのですが、達也君の評価がシルバー以外でも上昇して居るので微妙な雲行き。(戦略魔法師でありますし)
達也君を排除するか、あるいは独立させて一勢力として四葉の外に出そうとしている感じです。
老師から見ればせっかくの戦略魔法師を処分する気など無く、しかもCADの開発など魔法師社会に貢献する彼個人は頼もしく思っているというのも理由です(だからこそ中途半端なのですが)。
周さんたちを部下にしたり、乗っ取りをする気配がないので協力するうちは放っておくのもその一環。
もちろん他にも打って居る手はありますが、目下のところ達也君に関連するのはこの辺までに成ります。

●周さんたちの思惑
 時間を掛けて十師族を含む百家に取り入ろうとしており、利用できるならば寄生するのはどこでも良いという感じです。
だからこそ乗っ取りだと思われて処分対象になっておらず、功績争いが起きても、他の人を指示して自分達は実を取りに行っています。
その実と言うのが無名だけど実力を持つ魔法師(多くは技術者や裏の人間)の情報で、彼らから見れば効率の良い餌場であり周囲から見れば権力争いの相手ではない様に見える訳です。


●パラサイト問題
 原作のパラサイトに加えて、紅世の徒・フレイムヘイズなど紅世の関係者を含みます。
しかしながら認識的には『武闘派の魔法師』だとか、内部争いにしか興味ない集団くらいに思われることが多く、それなりに知っている者にとっても人間に寄生する厄介なパラサイトという程度の認識になります。
昔はそうでも無かったのでしょうが、今では紅世の徒・フレイムヘイズ共に大多数が他の世界に行ってしまっており、殆ど居ないと言うのが主な理由になります。
(監視役として残ったフレイムヘイズ達が、積極的に紅世の徒を見付けて討滅しているのも大きな理由ですが)

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