√シルバー【完結】   作:ノイラーテム

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金色の女

●ヘル・ダイバー

 九校戦に向けての壮行式と訓示が終わった後の事。

 俺は十文字会頭から一つの用事を押しつけられた。

「司波は風紀委員でもあるからな、魔法使用に関する事は全て任せる」

「お兄様なら無事に運営できます。そうですよね?」

 深雪の曇りない笑顔を見ると、断ろうとしていた気持ちが薄れて行く。

 面倒だと思う気持ちよりも、妹の期待に応えたいという方が断然大きい。

 

「…判りました。可能な範囲で善処します」

 とはいえ月並みな答えだがそれ以外に応えようがない。

 面白味を求めても仕方が無いし、見て居ない生徒の監督責任まで任されても困る。

 

「シルバーくん、判ってるわよね!?」

「今年は三台に分乗ですからね。イザと言う時の警備を兼ねて特性で配分しましょう」

 途中で千代田先輩が強引に捻じ込んで来た事もあり、メンバーを適度に分散させる。

 コネで頼みを引き受けたと言うよりは、どのみち一科生・技術スタッフ・二科生と分けるのは問題しか生まないので、それに便乗した形だ。

 まだ確定事項ではないが、とある懸念事項をエリカ経由で聞けたのも大きい。

 

 中央に遠距離監視が出来る要員として美月・幹比古と行ったメンバー。千代田先輩や沢木先輩ほかをそこに張りつけ…。

 先頭車両に十文字先輩や桐原先輩、最後尾の車両にエリカやレオを配置して、それぞれの車両に防御魔法と白兵戦が出来る者を組み入れておいた。

 これで前後から襲撃されたりバスジャックされても、他愛なく制圧できるだろう。

 

「ゴメン達也くん。明日、家の用事で少し遅れるわ。間に合わない時は現地で合流するから先に行っても構わないわよ」

「少々でしたら待ちますよ。ごゆっくりされるには連絡をくだされば構いません」

 七草会長が自らのスケジュール変更を申請して来たので、何時までに連絡が出来そうなのかを確認しておく。

 

(それはそれとして、明日の点呼が面倒になりそうだな)

 今回は前年までと違って、低スペックCADと少ない工程の魔法で活躍できるメンバーが増えている。

 それに伴って技術スタッフも増えているので(一高は少ないのでどうしても希望者になるが)、バス三台分になっているのだ。

 

「明日はよく晴れるそうだし、大会に備えて朝に予行演習と行こう」

「何をするの達也さん?」

「わ、私に出来る事なら何でも協力させてもらいますね」

 雫とほのかがやる気を出して居るようなので、カンフル剤として利用させてもらうことにした。

 彼女たちが率先して手を挙げた所で、釣られた何人かに消耗度の少ない魔法を要求しておく。

 

「各車両の点呼係は最後まで外に居ることになる。それを踏まえた上で、持続時間の長い魔法を使って見てくれ」

「私、そういうの得意です! 斜光壁とか建てれば良いんですよね?」

「うっ。細く長く…か。達也さんイジワルだ」

 ほのかは光のエレメントであるので、その辺りをコントロールするのは得意中の得意。

 逆に雫は微調整が苦手で、大容量の魔法はともかく繊細な魔法を使うのは苦手としている。

 

「ほのかみたいに得意な者はCADの要求水準を下げて。雫の様に苦手な者は少しでも慣れてくれればいい。上手く行かない場合は車内で待てるからな」

 他のメンバーにも得意な属性を伸ばしたり、苦手な属性の訓練になるように作業を割り当てることにした。

 もちろん俺も実験台である点呼係なので、文句を言う者は少なかった。

 

 

 当日になってやはり七草会長は遅れ、俺を始めとした点呼係は外で待ちぼうけだ。

 しかしみんなが張ってくれた結界のお陰で光や熱気が届き難いことから、別に不快と言うほどでもなかった。むしろエリカが教えてくれた最新情報を元に、全員に注意事項を伝える時間が取れて幸いだったとも言える。

 

 やがて七草会長が到着すると、予定範囲の遅れの後に出発する。

 

「それにしても警備要員の配置なんて徹底してるわね。何かあったの?」

「無頭竜の首領候補だったロバート・(スン)が脱獄しているそうです。念の為と思っていただければ」

 直ぐに動くか判らないが狙うとしたら第一高校だろう。

 恨みがあるかは別として、報復しなければ彼のメンツが立たない。さすがに粛清対象にはならないだろうがレースから脱落するだけだ。

 

「懸念事項ではあったのですが、今朝がた確定しました。会長が来る前に関して全員に注意事項を伝えていましたので、待った…と言うほどには待っておりません」

「達也くんはイジワルだと聞いていたけれど、本当ね。…注意事項と言うのは魔法の相克?」

 そういう噂を率先して流して愉しんでいたのは会長だと思うのだが、あえて口にすることもないだろう。

 俺は頷きながら段取りを説明しておいた。

「何かあった場合は所定の担当者が、防御魔法・状況鎮静・白兵対策を取ります。会長も遠視魔法くらいにしていただけると幸いです」

「判ったわ。自分の魔法で混乱を助長しても自分が苦しいだけだものね」

 同じ場所に魔法が乱れ撃たれると効果を発揮するどころか、発動前に相殺しあってしまう。

 サイオンの嵐を越えて魔法を放つのは難しいので、予め手順を決めておいたのだ。

 

 それでも万全とは言えないので、一番狙われ易い先頭車両に俺が術式解体を使う為に陣取り、限定的ながらにも術式解体を使えると言う十三束選手を三両目の最後尾に回して居る。

 十文字会頭の防御魔法やレオの硬化魔法もあることだし、極論を言えば魔法による直接攻撃であれば、ほぼ無力化する事が可能だろう。

 

(後はロケットランチャーでも持って来るか、パワーライフルを乱れ撃ちにするくらいか?)

 すれ違い様に上手く当てるのは難しいが、あのジェネレーターとかいう強化人間は厄介だろう。

 とはいえ魔法師に有効な手段は限られているので、可能性を一つ一つ潰しておくことにした。

 

 確実に今日襲って来るとは限らないが、可能な範囲で準備は整えておきたい。

 バスで高速移動という、十文字会頭の砂鉄による防壁が使えないこのタイミングを狙ってくる可能性があるからだ。

 

『幹比古。SBを使ってバスの前方に精霊を配置する事は可能か?』

『硬化魔法の応用で相対位置を固定すれば何とか。もっとも…そこまですると今日は殆ど何もできないけどね』

 俺はメールで幹比古に問い合わせると、暫くして可能だと言う答えが返ってきた。

 そこで素早く連絡を入れ直し、ひとまずの対応を終える。

『螺旋状に登る場所とか、立体的に見え難い場所だけで良い。あとは何とかする』

『了解』

 少し過剰な警戒態勢だとは思うが、深雪を守ることにも繋がるので手は抜けない。

 そう思っていたのだが…。

 

 やはりロバート・(スン)はこの移動中を狙って来た。

「それでですね、達也さん…」

「…っ!」

 対向車線から僅かに上がる魔法の反応。

 精霊の眼を使って居なければ気が付かなかったであろう、僅かな時間。

 

「静かに! 会頭、手筈通りにお願いします」

「「え!?」」

「っ!」

 俺が声を挙げると、ドン! という音がして対抗車線で派手な打突音が聞こえる。

 みれば大型車が分離帯に激突して火花を挙げ始めた。

「判った。全員、ここは司波の指示に従え」

 その時にもう一度、更にもう一度魔法の反応を確認した。

 会頭の防壁が張られたのはその時で、ややあって車がスピンすると同時にこちらに飛んでくる。

「市原先輩、ありがとうございます。深雪は消火活動を」

「いえ。問題ありません」

 直撃コースであったはずだが、予定通り市原先輩が車の移動速度を調整。

 会頭が張った数枚の防壁が余裕を持って受け止める。

 

「終わりました、お兄さま」

 担当が決まっていることで速やかに行動が開始され、深雪が瞬時に車の火を停止させる。

 その頃には車のブレーキが完全に機能しており、仮に爆発しても問題無い位置で停止できた。

 

「流石にアレは予想して無かったな」

「思いつける質量攻撃は体当たりか交差路での落下が精々ですよ。…何人か連れて証拠がないか行ってきます」

 十文字会頭の冗談に答えながら、俺は調査可能な魔法を使える者と共に飛び出した。

 その後で会頭が砂鉄を入れておいた容器を開放し、バスが止まったところに狙い撃ちする可能性へ備え始める。

 

 こうして少しだけ予想外であったものの、襲撃を退けて俺たちは富士にある九校戦会場へ辿りついた。

 

●幻術師の悪戯

「ったく、車酔いだなんて情けないわねぇ」

「あれからずっと精霊で監視して居た僕の身にもなってよ」

 エリカが芝生で倒れている幹比古に声を掛けた。

 後半からとはいえSBでずっとバスの前方を見張っていたこともあり、サイオン消費もだが酔いでグッタリとしていた。

 

「まー。その代わりに役得で膝枕なんかしてもらってるんだから良い御身分じゃない。ね、美月?」

「えっ!? こ、これは吉田君が辛らそうだったからっ…」

「……っ」

 ニヤニヤとしたエリカの笑いに、美月と幹比古が顔を赤らめる。

 その様子に他の生徒から痛いほどの視線や、クスクスという笑いが追加された。

 

(それだけ辛かったのか嬉しかったのか知らんが…。衆人環視の元でとは度胸のある奴だ)

 俺もどうかと尋ねる深雪の配慮を断り、そのまま委員会に報告しに行くことにした。

 面倒事は一度で済ませておきたいし、大した証拠が取れたわけでもない。

 その後は事故現場と同じ報告を大会スタッフにした後で、スタッフは機材を設営し選手たちは練習可能な場所を探しに行った。

 

 

 それら最低限の作業が終わったところで、各人は部屋割りに従って移動。

 ホテルの大宴会室で、各校共同の親睦会が始まった。

 

 入室して暫く射る様な視線がこちらに飛び込んで来るが、二人ほど気にせず歩いて来る。

「災難だったそうだな。シルバー」

「プリンスこそ耳が早いな」

 一条・将輝とお互いに異名で呼び合う軽いジャブの後、お互いに肩をすくめて止そうということになった。

 あだ名という奴は本人の意思を無視して居ることだし、公共の場で呼ばれても楽しいモノでは無い。

 …この時はそう思っていたのだが、あだ名のことを徒名と書くことを失念して居た。俺も油断して居たのかもしれない。

 

「吉祥寺の方に確認するが、アレはどうだ?」

「問題無いよ。カスタム化の内容までは教えられないけどね…」

 同じ様に吉祥寺・真紅郎と挨拶を交わしたつもりだが、何か言いたそうな顔をしていた。

 察してく頷き、少し離れた場所を顎でしゃくる。

「せっかくだしあっちでどうだ? …深雪、一条の相手を頼む」

「すまないね。…じゃ将輝、司波さんとよろしく」

 俺としては複雑な気持ちだが、深雪の相手候補なので時間を割くのも良いだろう。

 そしてこの間の話題の続きをするために、人が居ない場所まで移動する。

 

「それで…前に話に出たフレイムヘイズは?」

「先生はこの後で用事を済ませて来るって。ここだと注目されちゃうし、一手間を掛けるとか言ってたよ」

 前回のやり取りである程度は調べていたのだろう、吉祥寺はスムーズにこちらの質問に答える。

 しかしここで疑問に思ったのは、注目されると言う事。そして一手間を掛けると言うことだ。

 

「ということは日本で…いや、世界的に有名な人物なのか?」

「そういうこと。まあ、うちのコーチを頼んだのもバリバリの戦闘系魔法師だからってのもあるけどね」

 フレイムヘイズは数が少なく偏屈な者も多いが、確かに戦闘に置いて傑出した存在だ。

 紅世の徒に復讐する為に日夜追い続ける彼らは、練度も心構えも違う。

 戦闘面を重視する三校としては、確かに優れたコーチになるだろう。今回の九校戦では油断できないかもしれない。

 

 技術屋同士、暫く話して用件を済ませた頃を見計らってエリカが声を掛けて来た。

「参謀同士で何やってんのよ? どんな悪巧みかしら」

「人聞きが悪いな。論文コンペで俺はメインで参加しないと伝えて居ただけだ」

「…もしかして千葉家の? よろしく」

 エリカの隙の無い佇まいを見ただけで、剣の魔法師である千葉家の出であることを吉祥寺は見抜いた。

 三校にもいるのかもしれないが、こちらの陣容を研究しているのかもしれない。

 直ぐに気が付かなかったのは、一科生ではないからマークを外して居たのだろうか。

 

 適当な理由を付けてそのことを探ろうとしたところで、周囲の電灯が落ちる。

 そしてカツカツという作動音と共に段階的にステージに光が集まって行った。

 

(この魔法は…)

 注目を集める為のスポットライトが照らされると前後して、小さいが精神干渉魔法の反応が窺えた。

「ねえ、達也くん。何か変じゃない?」

「そういえば、幻術返しの訓練をしていたな。…老師の悪戯だよ」

 エリカは何が起きているか判らない様だったが、視線を固定する魔法が使用されている。

 特殊な才能が無いと何なんのかは判らないが、干渉強度が最低限で抑えられたとても効率的な魔法だ。

 これをスポットライトやもう一つの仕掛けと共に使用することで、最大限に効果を発揮する。

 

「…金髪の、女性?」

「老師じゃないのか?」

 ザワザワと皆が声を挙げるのも無理は無い。

 姿を現したのはビジネススーツに身を包んだ美女で、挨拶するはずの九島老師ではないのだ。

 あまりにも懸け離れた姿に皆の注目は女性へと集まり…直ぐ後ろに立つ筈の人物へ気が付かないでいる。

 

「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪させてもらおう」

(ん? 今度は逆の…認識度を下げる魔法か)

 老師が挨拶を始めると、再び小さな精神干渉魔法が発動された。

 先ほどの女性はそれに合わせて退場し、周囲には突如入れ替わったとしか思えないだろう。

 

 強さの目安である干渉強度に頼らない魔法だけで、これほどの人数を手玉に取るとは大したものだ。

 皆は老師の言葉に驚いて聞き入り、逆に堂々と出て行く女性のことをまるで気にもかけて居ない。これでは道中で出逢ったとしても、この余波で気が付けないかもしれない。

 

 余興だから良いものの、もしこれが実戦だと思うと身がすくむ思いがする。

 自分だけならばまだしも、ここには守るべき深雪が居るのだ。

 最高にして最巧と呼ばれた老師の手腕に、俺は無い筈の感情を揺らして居たのかもしれない。

 

●紅世の文法と、徒名

 静かな興奮も冷めやらぬ間に、一同は解散して休養や自主練習に向かい始める。

 技術スタッフも調整に借り出されていたが、俺は吉祥寺に呼ばれているので断りを入れてから後で向かうことにした。

 

 言い訳になるが、俺はフレイムヘイズや紅世の徒に直接合った事が無い。

 まともに話したことが無いので、失念以前に知らなかったのだ。

 彼らの本質が名前では無く徒名の方であることは知って居ても、どう呼び合うかまで…。

 

 そして彼らのカテゴリーからすれば、俺もまたフレイムヘイズであるということを知らないで居た。だからこれは、俺の失敗であり秘密にする為伝えないで居たお袋の失敗でもある。

 

 先ほどステージに居た女性が、大きな本を担いでこっちに来たのだが…。

『よう”摩醯首羅”、直接会うのは初めてだっけか?』

 陽気な声が書籍型のCADからする。

 大型とはいえ本が喋る…それは良い。

 コンピュターに言葉を喋らせるなど、二十世紀ですら可能だったことだ。

 

 だが俺を絶句させたのは、秘密にせねばならない筈のことがいきなりバラされたからである。

「なん……だと」

「うそ……だろ」

 俺に続いて一条が唸った。吉祥寺はピンと来てないようだが、さすがに家経由で聞いているのだろう。

 驚愕する俺たちをしり目に、ゴツンと書籍型CADに鉄拳が降り注いだ。

『あいて! 何するんだこの呑んだくれ!』

「このお馬鹿マルコ! 少しは空気を読みなさいって」

 マルコと呼ばれたAI…いや、フレイムヘイズが契約して居る『紅世の王』だろうか?

 そいつに金髪の美女が色々と説明をしている。

 

「司波…お前が沖縄の? 女性だと聞いて居たんだが」

「お前と同じ状況だが、俺の方は顔を隠すスーツがあったからな」

 一条が佐渡でクリムゾン・プリンスと呼ばれた様に、俺も沖縄で摩醯首羅と呼ばれた過去がある。特殊性から俺の方は秘匿され、一条は十師族として名を上げたのだ。

 

「本当は秘密だったんでしょ? 二人とも、できれば他では話さないでくれるかしら?」

「俺も十師族ですから理解はできます。マージョリー先生」

「っ! そうか、どこかで見たと思ったら、マージョリー・ドー!」

 先ほど、老師の挨拶の時にあった精神干渉魔法による認識阻害。

 それは彼女…世界一とも目されるマージョリー・ドーへの注目を隠すのも兼ねていたのだろう。

 なるほど、言われてみれば、あのタイミングで掛ければこの会場に居る殆どのメンバーが気が付かない。

 

「面倒なことになったけど本題に入るわ。こっちの情報も渡すから、あんたが追いかけてる(ともがら)の情報をくれる?」

「了解です。俺が最初に追い掛けてたのは技術者を餌さ場にする奴で、最近になってもう一つ…」

 俺は興奮を抑えながら、書籍型…いや世界最初のCADとも言われるマルコシアスに目を向けた。

 

 マージョリー・ドー美女であるが生憎と深雪や七草会長で見慣れている。

 それよりもCADの元となり、様々な術式を定型管理する形となった最初期の存在に注目するのは当然のことだ。

 先ほど秘匿情報を暴露されたことは念頭から追いやり、精霊の眼でも確認しながらついでの様に説明を続けた。

 

「ふうん、技術者と裏組織か…。これは同じなのか偶然なのか」

「…確認すべきほどの差があるのですか? 気づくことがあれば教えて下されば助かります」

 マージョリー女史には何かのアテがあるようだ。

 追い詰めるにしても情報が足りないと思っていた俺に、想わぬ光明が訪れる。

 最重要で最後まで隠す必要のある戦略魔法はともかく、俺の異名がバレたくらいならば補えるかもしれない。

 沖縄戦での俺の情報は、あくまで再生魔法と単発の分解魔法までだからだ。

 

「可能性としては二つになるわね。一つは最初から二人組…仮面舞踏会(バルマスケ)の居残り組」

 仮面舞踏会(バルマスケ)という紅世の徒の最大の互助会。

 そこに所属するモノは、捜索猟兵(イエーガー)巡回士(ヴァンデラー)が二人一組になっている。

 確かにこいつらであれば、浮上して来た情報が重なり合っていってもおかしくはない。

 

 だが俺が瞠目せねばならないとしたら、もう一つの情報だった。

「もう一つは技術者で裏組織を持つ集団を探してるって事。心当たりがあるでしょ?」

「…四葉家を狙う? なるほど、その可能性は有りますね」

 かつて大漢が滅びるきっかけになったのは四葉だ。

 四葉がそんな事をしたのは大漢のせいではあるが、それを恨みを持つモノも居るだろう。

 

 恨みの螺旋は果てしなく、どちらかが滅びるまで消えて無くなることはない。

 いや、滅びても系譜を繋ぐモノに引き継がれて行く事すらある。

 そのことを考えれば、可能性は限りなく高いだろう。

 

「まあ当時は大亜連合にしても大漢にしても仮面舞踏会(バルマスケ)やフレイムヘイズが一杯入り込んでたからね。調べてみるけどその辺だと思っていたら良いんじゃない?」

「心しておきます。色々とありましたが、今回はありがとうございました」

 俺たちは一条と吉祥寺に堅く口止めをして、再び別れることになった。

 

「いずれ因果の交差路で」

「それまでとびきりの幸運を」

 そう言って作業車に向かい調整作業に没頭する。

 

『お母さんも話は聞いたわ。伝えて無かったし、今回だけだからね?』

 夜分遅く訪れたメールに苦笑して気分良く眠りに付いた。




 と言う訳でサクサクといつものイベント+@を終了。
ヘルダイバーの黒幕に関して原作は知らない相手でしたが、このお話では既に倒して捕まえた相手。脱獄犯の情報は得ていたので、待ち構えて対処する形状に変更しております。
同じ様に立場が違うので、待って居る間のイザコザとか深雪の怒りとかは全部キャンセル。ホテルでも『あいつシルバーだ』ザワザワ状態で警戒されております。

 摩醯首羅バレに関して。
シャナ・ワールドではフレイムヘイズ・紅世の徒・紅世の王いずれも、異名が本質なのでそちらを呼ぶことになります(失礼なので格下が格上を呼ばないことはありますが)。
ソレを利用して一条君たちが知ることで、戦術級魔法師同士(沖縄戦までの情報だと戦略魔法は知られていない)だから油断なく全力で戦うと認識する感じです。
クロス先の設定まで利用して名前バレする必要は無かったのですが、隠しても原作と似たような展開になるだけなのでバレたことにしています。
 なお、四葉が達也くんに人造フレイムヘイズであることを告げて居れば、万が一にそなえて異名で呼ばない様に注意したかもしれませんが
教えてしまうと紅世の王としての人格が生まれてしまうかもしれないので、伝えて居ない。四葉家の責任でもあるので問題にはならない事となります。

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