√シルバー【完結】   作:ノイラーテム

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将は道を輝き照らす

●ダイラタンシー流体

「あの魔法の限界が知りたい。まずはレオが近づいて、エリカが離れた位置から頼む」

「ってことは、俺はそれに合わせて軽く戻るんだな? いいぜ囮になってやるよ」

 レオは俺の提案に頷くと、近くの樹に対して硬化魔法を設定して居る。

 最初は何の意味か判らなかったが、戻る為に意味があると考えれば推測するのはそう難しくは無い。

 

「それはあたしの方はちょっとだけ全力を出しちゃおっかな。あの女も会頭には勝ち越して無いみたいだし」

「構わないが油断するな。全力で行って通じないくらいに考えた方が良い」

 殺すなよ…などとは言わない。

 その気で行って当然のように防がれると思うべきだ。

 

 アタッカーであるエリカには常時、教師が見張っていて殺人にならない様に注意して居るはず。それを考えれば手加減を考える必要も無いだろう。

 第一、こちらにそんな余裕があるとも限らないのだから。

 

「そんじゃあ、いくぜえー!」

 レオが硬化させた布を使い、いつぞやの即席手裏剣を作り出した。

 ある程度の速度で接近しながら、勢いを付けて投げつける。

 

『来るが良い、それが通用すると思うならな』

 ゾブリ。

 砂鉄の塊が変形し、容易く弾いて反らせてしまう。

 砂であるがゆえに勢いすら殺され、その辺に落ちそうになったところを……。

「シュバルツシルト、フィーア!」

 レオが硬化魔法で設定していた手元の位置まで引き戻す。

 これが鉄板ならこうも行かないが、布製で軽いだけに容易く回収できた。

「おうら、もういっちょ!」

『ふむ。通用しないと理解できないと思えんが……。まあ、そう来るか』

「……っ」

 レオが突進を続ける中で、エリカが逆方向から声も無く走り出す。

 その速度はレオの比では無く、瞬時に十数mの距離を詰める。

 

「確かに渡辺並の早さだな。だがそれも通用せんのは判る筈だ」

「じゃ、加速するけど…着いてこれるかしら、ね!」

 速ではなく早さ。

 高速ではあるが、恐るべきは到着距離の自由自在さを使いこなす力量だ。

 

 エリカは小太刀型の武装一体型CADを二本使い分け、加速と急加速を使いこなした。

 一度目の着地は周囲が思うよりも手前で、そこから二段階目のステップは更に短い。

 だがその速度は先ほどの非ではなく、さらなる三回目、四段階目のステップでU字状に回り込んだ。

 

「そうれっと!」

『分身…それも四つ身か。体術だけでソレとは…訂正しよう。渡辺以上の早さだ。しかも速さに関しては及びもしない』

 恐ろしいことにエリカは魔法を使った巡航速度を利用して、体術を掛けた。

 左右に移動するステップにメリハリを付け、忍者漫画のように分身して見せる。

 

 これを可能とする種は、あの小太刀型のCADだ。

 あの中に減速や態勢のコントロールは入って居ない。

 右手は加速の魔法だけ、左手は加重系統の衝撃緩和によって体に負担が掛らない為の魔法しか入って居ない。

 これを使いこなせれば、エンピツを高速で振る様に分身してみせることが可能ではある。

 

 だが、理念では可能であっても、使いこなせるかはまた別の話。

「硬ったいったらありゃしない!」

 エリカは布手裏剣の攻撃に合わせ、接近して斬撃を浴びせることに成功した。

 だが、本体より別れた防壁の一部に阻まれ、1ダメージすら入って居ない。

「でも、この対応速度ならいける!」

『分身を減らして速度と精度を上げたか。確かにこれなら追いつけないが…』

 驚かす為に無理やり作った四分身ではなく、二つ、動きのバリエーションが格段に増える。

 その速度コントロールの前に、砂の防壁は置き去りにされ、護るために本体の一部から更に動員されて行った。

 

(さっきの斬撃も防がれはしたが、テロリストの射撃に比べて歪んだ部分が多かったな。おおよその分量が見えて来た)

 あの魔法は一見、無敵の防壁に見える。

 変幻自在で高速で飛来する弾丸には硬化し、緩やかな格闘戦には歪んで衝撃を逃がしてしまう無敵の防壁。

 砂鉄に磁性を帯びさせて領域をコントロールする為、術式解体で解除したとしてもその場に防壁が残ってしまう。

 さらに磁性を帯びて居るという現象自体が、数種の攻撃を緩和するからだ。

 

 だがしかし、その効果はダイラタンシー流体を保つ粉粒体であればこそ。

 固形はないからと自由自在に変形させることができるが、前後左右に拡がり過ぎて一定量の密度を保てなくなれば意味がなさなくなる。

 薄く拡がった砂の幕など、防壁の意味もなければバリケードにもならない。

 

「レオ、足場! もらったああ!」

 体に負担が掛らない状態にして、高速で移動しつつける。

 その速度に砂の防壁は完全に置き去りにされ、布手裏剣を足場にショートジャンプを掛けて真っ向唐竹割りに振り降ろした。

「…千葉。もしやお前は渡辺が同じことをしてないと思ったのか?」

 数枚の防壁を飛び越えて肉薄するエリカに対し、十文字会頭はあくまで冷静だった。

 

『来い。ジャイアント・ローブ』

 十文字会頭の言葉と同時に、分散されていた砂鉄がコート状に集積する。

 展開速度もだが、視認していないことを考えれば、これは予め入力して居たコマンドと思われた。

「嘘っ…音声…入力?」

『できない理屈はあるまい? ちょど良い研究対象がそこに居たのでな」

 予定して居た形状に、自動制御された砂鉄が砂鉄製の甲冑を作る。

 ザン、と硬い音を立ててエリカの小太刀が弾かれた。

 

『それと、参考にしたのは一つだけでは無い。叩け、ジャイアント・ローブ』

 十文字会頭がキーワードを呟くと、砂鉄製の甲冑から一部分が巨大な腕を作りあげた。

 それは会頭が動かす手をそのままトレースして、先ほどよりも素早くエリカを追い掛け始める。

 

「ちっ、今度は相対位置のコントロールもかよ! 一度引くぞ!」

「なんてインチキ! これでファランクスさえ出して無いなんて!」

 布手裏剣の後退コマンドを遅めにして、エリカが捕まるのを待った後でレオは一気に引き戻した。

 

『西城、千葉。お前達は魔法師の戦いを知らなさ過ぎる。もう…遅い!』

「足元から!? あれで全部じゃ…」

 サラサラとゆっくり移動して居た砂鉄が、ザーアーと急速に移動・集結。

 魔法の恐ろしさとは、思い付く使い方次第で自在に変化させられることに在る。

 もちろん魔法のルールの範囲内に限られるが、このくらいの分離コントロールはお手の物なのだろう。

 

(…それにしてもコントロールが上手過ぎる。複数の防壁を操るファランクスの十文字家の妙と言うやつだな)

 流石にここで、俺も介入することにした。

 下手にやると二人の魔法を邪魔するだけだったが、このままでは組み付かれるだけだろう。

 一方で会頭の方は、砂鉄による甲冑をまだ解除して居ない事もあり、走れないだろうと言うのは見て取れた。

 

「もう良い! 撤退するぞ!!」

「悔しいけど、仕方ねえな。アーガトラム!」

「ちょっ!? どこ触ってんのよ!」

 俺がグラム・デモリッションで追いすがる方の砂鉄を撃つと、レオは布を丸めた形状に変形させてエリカを強引にホールドした。

 相対位置の関係で、モロにレオの腕にエリカの体重以上の重量が掛るが、気にせずに走り出す。

 

『思い切りの良い判断だ。しかし、間にあわんぞ?』

「んなことたあ判ってるよ! 引き寄せろ、シュバルツシルト、ヌル!」

 即座に再構築される磁性魔法に対し、レオは最初に位置を定めた硬化魔法を起動する。

 樹に定めた初期位置にレオは引きずられるように加速した。

 

 もちろん、その速度は加速魔法には及ばない。

 だが、砂鉄の一部にしか過ぎない程度の塊の力では、捕まえておくことができないのは確かだ。

 レオが自身でも走るたびに、少しずつ付き離されて行った。

 

『良し! まずは合格としよう。だが、ここからが本番だ!』

「付き合ってられるか、逃げっゾ!」

「だから、おーろーせー!」

 レオは回収したエリカを抱えて、多い急ぎで全力疾走。

 よくもまあ、人一人を抱えて走れる物だとは思うが、俺も悠長に見ては居られない。

 二人の援護をしながら移動を開始し、予定の区画へ向けて走り始めた。

 

●迷いの森

「お疲れ様。成果はどうだった?」

「砂鉄による防壁は限界を把握した。どの程度で寸断すれば、元の強度を保てないかは判る」

 まあ、問題はあの防壁を突破できるというだけだ。

 ファランクスは片鱗すら見て居ないし、十文字会頭は別にBS魔法師ではない。

 あれら反則級の魔法以外に、普通の魔法が使えなかったら笑い話でしかあるまい。

 

「明日のモノリス・コードは十中八九、市街戦か河川ステージだ。今の内に幻覚のパターンを試してくれ」

 今日、森林ステージを使った。

 更に、二科生が圧倒的に不利と判っている平原ステージもありえない。

「そうだね…。みんなを逃がす為の幻影が通用してるし、調子に乗らない限りは何とかなると思う」

 俺達が逃げた方向には、先ほどまでなかったはずの林があった。

 そこに達した瞬間、周囲を覆う木々が追加され姿を覆い隠していく。

 

 それで無事に振り切れたのだが、やはり防壁の強度やコントロールと幻覚を見抜く力は関係ない。

 今日の所は幻覚魔法をフルに使って、十文字会頭を足止めするに限るだろう。

 

「…水を使ったトラップは明日使いたい。霧の発生以外で頼めるか?」

「土剋水? 流石に古式魔法の知識もあるんだね。了解、方向感覚を迷わせることにするよ」

 河川ステージが理想的だが、市街地ステージでも水がある場所はあるだろう。

 砂鉄など水を浴びせてしまえば、重量の問題でコントロールし難くなる。

 もちろん一部ならば別だろうが、少量ならば分断できるのは試した通りだ。

 

「勘違いじゃなければ、精神魔法も防げるんじゃないか?」

「付け加えるなら、あからさまに使うと相子ウォールで術式解体も防げるはずだ。頭が痛い限りだ。…どうだ?」

「問題無いよ。僕の魔法の中には音や視覚を組み合わせるのもあるからね」

 幹比古は少し考えた後、周囲を見渡して似たような木々を指差す。

「石兵八陣を使おう。同じ様な特徴の樹や岩を使って、場所を誤解させるんだ」

「お、それって俺でも知ってるぜ。恰好良い名前だよなぁ」

「ばか! 今そんな状況じゃないでしょう」

 レオがポムっと手を打って感心するが、顔を赤らめた表情のエリカがツッコミを入れる。

 よほど、さっき抱えられて移動したのが恥ずかしかったらしい(後で、お姫様だっこが問題だと聞いたが)。

 

「ということは、太陽が見えない場所が良いのか。上手く誘導できるものか?」

「その辺も含めて術師の腕の見せどころですよ」

 司先輩が眩しそうに見上げると、幹比古は太陽の位置や影の方向も利用するのだと口にした。

 場合によっては、一度見破らせておいて、その向こうの通路にもう一枚の幻覚を用意することもあるのだという。

 

「…せっかくだし、着けて来てる人を利用させてもらおうか。十文字会頭ともども足止めして一気に突き放す」

「あー。アレね。覗き魔さんには良い気味だわ」

「おけーおっけー。勝ち難い相手に、まともに戦う必要無いもんなっ。足止めして間に…あ…?」

 俺が丁度良い場所を探しながらいどうしようと口にすると、悪巧みに乗ってきたエリカはともかく、レオが奇妙な顔をした。

 思いついたと言うか、ついさっきまで忘れて居たという風情だ。

 

「あによ、つまらないこと言ったらブツわよ? 凄いアイデアなら、ほっぺにキスの一つもしてあげるけど」

「ツッコミ入れてから言うなよ。ってーか、そんな安いこと言って後悔すんなよ? スッゲー情報なんだからよ」

 エリカがジト目でツッコミというか、エルボーをレオに叩き込む。

 もはやそれは、肘鉄と言うレベルでは無い。

 だが、レオは気にした様子も無く、快活に笑っていた。

 

「どんな情報なんだ? それ次第では少し作戦を変えるが」

「アイデアつーか、気がついただけだな。苦戦してた揚句に逃げ出したから、忘れてた」

 レオはボリボリと頭を書きながら、核心であり、重要な情報をようやく口にした。

「さっき接近した時に気が付いたんだけどよ、十文字会頭はキングじゃないぜ? エリカと同じアタッカーだった」

「「えー!?」」

 結局、この日の勝負を決めたのはレオの証言だった。

 

 幻覚魔法で十文字会頭と里見選手を足止めをしている間に、部活連側のキングは沢木先輩だと探し当て全員で強襲。

 空気甲冑は強固であったものの、十文字会頭に比べれば対処し易い相手だった。

 後はひたすらに速度勝負に切り換え、逃げ回りながら点数を稼いで勝利をもぎ取ったのである。

 

●プレゼント交換

「ミキに続いて今度はレオが持ってった! なっとくが、いーかーなーい!」

 学校に戻ってきた所で、エリカの不満が爆発した。

 約束通りレオの頬にキスをしたからもあるのだろうが、そんなに嫌ならしなければ良かったのにと思わなくもない。

 まあ、そこはレオが遠慮したらこそ、逆にムキになったのもあるのだろうが。

 

 とはいえそんな雰囲気もここまでだ。

 みな緊張を取り戻し、ロアー・アンド・ガンナーの勝負や、明日の報告を受ける。

 俺はCADの調整もあるので防護服をさっさと着変えたが、何人かはそのまま書類を取りに向かった。

 

「こちらは予定通りですが、そちらは健闘したようですね。十文字君の厳しい顔が見られそうです」

「殆ど逃げ回ってましたから、向こうは向こうで実質的な勝利だと喧伝して居そうですがね。…明日のステージは?」

 出迎えてくれた市原先輩と言葉を交わしながら、必要なことを尋ねておいた。

 河川ステージなのか、市街地ステージなのかで作戦が変わって来るからだ。

 

「丁度良い廃屋が見つかったので、市街地ステージだそうですよ。ただ、検討をする前に司波くんは応接室にお願いします」

「応接室ですか? 生徒会室ではなく」

 市原先輩は頷いて、こちらの会場で使ったCADのチェックを装いながら耳元で軽く囁いた。

 俺はCADからストレージを外しながら、同じく耳元で囁き返す。

「三校の一条君と吉祥寺君が尋ねて来ています。司波君に重要な話があるそうですよ」

「プリンスとカーディナル・ジョージが?」

 こと更に秘密にする案件とも思われないが、先に知った市原先輩には思い当たるフシがあるらしい。

 

 俺はストレージを懐に入れて、そのまま応接室に向かった。

 とはいえ、ブランシュの件が終わった以上は、俺と市原先輩の間で秘密にせねばならない情報などそうはない。

 直ぐに思いつかなかったのは、まさかという気持ちもあるが、できればそうなって欲しく無い悪い予測だからだろう。

 

 応接室では七草会長が主に話し込んでおり、プリンスこと一条・将輝は適当に話しながら深雪の方にチラホラと目を向けて居る。

(そういえば、深雪や亜矢子の相手の候補に挙がったこともあったな)

 戦闘力のある魔法師であることから、プリンスは四葉でも注目されていた。

 だが、とり重要だったのは、深雪や亜矢子が当主になった時の婿候補の一人であることだ。

 十師族であるだけでなく、同年代の強力な魔法師でありリーダーシップを取れる男子で、妹が居ることから家を出る選択肢もあると有力候補であった筈…。

 

 だからと言う訳ではないが、違和感その物は無い。

 前から並べて考えたことはあるからだが…。

 大切な妹の相手と考えると、少しモヤモヤした物を感じる。

 感情が無い俺ではあるが、こと深雪に関しては例外なのでこういうこともあるだろう。

 

「達也くん、向こうも終わったのね? こちらが第三高校の一条・将輝くんと吉祥寺・真紅郎くんよ」

 七草会長は、紹介するまでもないかな? と冗談めかしてウインクする。

 会長の性格を知っている俺は適当に受け流したが、真面目な一条達は戸惑ったようだ。

 

「挨拶はお互いに不要として、まずはジョージの話を聞いてもらいたい」

「そうしてくれると助かる。お互いに予定が詰まっているみたいだからな」

 ワザワザ金沢から来ている一条たちも、本来であれば九校戦の準備を開始した頃だ。

 彼らがメイン・スタッフに選ばれるのは確実であり、予選やってるこちらほどでもないが忙しい筈である。

 おそらくは、十師族の用事で来たついでに寄ったのだろうが…。

 

 だが俺の楽観的観測は他愛なく崩れ去ることになる。

「協会経由の情報で、君の研究が漏れた。主に僕が調子に乗って推測を喋ったせいだけど、一応は謝っておこうと思ってね」

「…何、それこそお互い様だ」

 動揺しないで居られたのは、感情が無いお陰だろう。

 今日は十文字会頭の強襲でタップリ驚いていたことも、関係して居るかもしれない。

 

「研究畑に居ると良くあることだけど…、うーん。これ以上は言い訳になるな。僕なりにまとめたデータを進呈しておくよ」

 研究用のカーディナル・ジョージこと吉祥寺・真紅郎は大容量ストレージを取り出して、テーブルの上に置く。

 七草会長は何のことだろうと戸惑い、事情を知っている深雪は口元を押さえて驚いていた。

 

「そうか。…せっかく金沢から来てくれたのに何も持たせないのは気が引けるな。持って行ってくれ」

 壬生先輩に後でお詫びをすることにして、彼女のストレージを吉祥寺の前に置いた。

 

「それは? 何をジョ-ジに渡したんだ?」

「散弾型に改良した『不可視の弾丸』(インジブル・ブリット)だ。処理容量の方も軽くしてある」

「っ!? やってくれる、やってくれるね…」

 自分の研究データのコア部分を暴いただけでなく、改良したことに吉祥寺は顔色を変える。

 とはいえ既に公開されているデータを渡すのと、本来は秘密で無ければならない研究を暴かれたのでは重みが異なる。

 第一ラウンドは俺の負けだろう。

 余裕ぶって紳士らしく振る舞いに来た男へ、ささやかな返礼をしたに過ぎない。

 

「この決着は九校戦で」

「望む所だ」

 俺達は短く言葉を交わし、睨みあいながら涼しい表情を作ることに務めた。

 そこで新しい話題を切り出したのは、一条の方だ。

「二人が納得しているのは良いんだが、こっちの会頭から要請があるんだが、良いか?」

「何を言いたいかは想像が付く。…九校戦が始まるまでに飛行魔法を公開するとしよう」

 今度こそ七草会長も驚きの表情を浮かべた。

 この魔法に関しては極力秘密にしており、生徒会や風紀の中でも少数にしか教えて無いのだから。

 

(しかし、とんだことになったな。…完全版の公開はまだ先としても、完成させたことは届けた方が良いな)

 その後も色々とあったが、大事は存在しなかった。

 パーソナルデータごと渡してしまった壬生先輩に埋め合わせを約束し、その日はなんとか過ぎ去ったのである。

 




 と言う訳で予選二日目も終了。
十文字会頭の無敵ぶりに改めて驚愕しつつ、試合に勝って勝負に負けながらデータを把握。
さて、明日の対策を練るか…という辺りで、三校から来た二人とやり合うことになります。

 スティーブル・チェース・クロスカントリーは真面目にやっても良かったのですが、あくまで予選なので簡単に終わらせました。
あくまで砂鉄を使った防御魔法の攻略パターンを見切って、次の日のモノリス・コードにつなげる感じです。
十文字会頭が色々な発動手段を取り入れて居たのは、二科生側を研究して居ることと、脳筋ではないので効率無視したら可能だとやって見せて、達也くんが油断しない様にと忠告を兼ねたりしています。

『衝撃緩和魔法』:ロストユニバースのラグドメゼキスより着想
 加重系統の一種で、高速移動したときの反動を和らげるもの。
これを使うと、ジグザグ機動をしても体が痛まない。

『来い、ジャイアント・ローブ』:FSSのボスヤスフォートの流体金属装甲とジャイアントロボより着想
 音声入力で即座に甲冑のような形状に移行する為のコマンド。
ファランクスと比較して処理量は少ないものの、扱いが面倒な砂鉄の防壁を簡便にしている。

『叩け、ジャイアント・ローブ』:ブリーチの千本桜高速モードとジャイアントロボより着想
 音声入力後に相対位置のコントロールを、手の動きでコントロースする。
動きがいまいち遅い砂鉄を、高速で動かす為に用いる

『ハイド・イン・サンド』:FSSのボスヤスフォートのルシェミより着想
 扱っている砂鉄の一部を、相手の動きに合わせて散布。
視界の外からゆっくりと集め、気が付いた時には拘束する。

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