√シルバー【完結】   作:ノイラーテム

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本格的な戦闘

●混戦

「それじゃあこれは家で弄らせてもらうよ」

「五十里先輩の都合の良い時間で構いませんので、よろしくお願いします」

 千代田先輩に引きずられるように、用件を終えた五十里先輩達は帰ることを決める。

 町へ遊びに行く二人に例のCADや魔法陣入りの布を渡し、家に戻る中条先輩には生徒会向けの資料を渡すと、俺たち三人だけが残る計算になった。

 

「まさかコミューターが無くなっちまうとはな」

「御客や他の研究者も使ってるからな。それにFLTの近くは元もと多くないからその辺は仕方ない」

 無人タクシーであるコミューター、そして小形電車ともいえるキャビネットの導入により交通の便はかつてと比較にならない。

 だが全てが改善されるはずもなく、運行会社が想定する以上の利用客が居れば足りなくなるのは道理だ。

 

 特にこの辺りは研究員の他には相談に訪れる客がメインで、不特定多数の大規模客が存在する訳でもない魔法系の会社となればその傾向がある。

 何かの行事で付近のコミューターが使われて居れば、残る数台を取り合うのも道理だろう。

 

「だけどよお次のが来るまで随分あるぜ? どこかで時間でも潰すか?」

「そうだな。面倒でなければ少し歩くのはどうだ? 協力してもらった御礼に何処かで飯でも奢らせてもらうが」

「やっり♪ ちゃんと覚えてくれたのね。それなら幾らでも歩くわよ」

 自動化により改善されたポイントの一つとして、いつ来るか判らないタクシーと違って予想時間が読める。

 勿論、車両ゆえに込み具合にも寄るので一概に良い点ともいえないが、今日の様に歩ける選択肢があるなら良い目安だ。

 こうして俺達は適当な店に寄り、そこで食事をしながらコミューターが来るのを調整する事にした。

 

 …別に油断して居たつもりはない。

 ちょうど安心して戦える者ばかりであり、何か問題が起きるなら足手まといが居ない今の方がありがたいくらいだった。

 

 …だが結果として厄介な敵に遭遇してしまったので、油断していたと言う事なのだろうか。

 だとしたら、深雪がこの場に居なくて良かったと思っておこう。

 それが誰にとっての幸いかは別にして…。

 

「ヒュウっ! 兄ちゃんたち随分と可愛い子連れてるじゃねえか」

「エスコートを変わってやるから男だけで帰りな。つーか邪魔だから帰れ」

 始まりは今時珍しい、十名弱のチーマー集団だった。

 全員が防弾防刃チョッキやパワーアシストのインナーをラフに着崩し、あるいは遮光グラスや暗視ゴーグルを付けた準ミリタリールックの連中というのが一風変わって居るだろうか。

 武闘派集団というには中途半端で、ファッションというには身につけたメタルパーツが浮いていた。

 

 肩に担いだコンポのリズムに乗って、手にするパイプやバットで地面を叩き口笛や指を鳴らして取り巻き始める。

「どうよ嬢ちゃん。一緒に付けてきたら夢見心地にさせてやるぜ」

「ひゃひゃひゃ。腰が抜けて帰りたくなくなるかもしれねえけどな」

 退廃的で後ろめたい用事を隠す事も無く、暴力と数に任せた有利を微塵も疑っていない様だ。

 その脳天気で救いようのない頭脳には、開いた口が塞がらずどう対処すれば良いか逆の意味で思い付かなかった。

 

「うわっレオの他にこんな時代錯誤の絶滅危惧種が居たんだ」

「古臭いのは認めるが、こんな連中と一緒にしねえでくれよ」

「ああん? 俺らを馬鹿にしてやがるのか? うらなり瓢箪と木偶の坊が居たところで役にも立たねえぞ」

 エリカとレオの会話をチーマーの一人が聞きつけて、止せば良いのに怒り始めた。

 因縁を付けているのではなく本気で怒っている当たりが救いようが無い。

「聞いた? うらなり瓢箪に木偶の坊だって! そんな難しい言葉良く知ってたわね。意外に学があるのね~」

「このアマっ! 黙って聞いてりゃ、ふざけやがって! 相手しただけで帰れると思うなよ!」

 くだらなさ過ぎて迷っている俺と違い、エリカの方はさっさと態度を決めたようだ。

 冷静さを奪う…というよりはワザと挑発するような言葉を掛けている。

 

「どうするよ? 俺は構わねえけど面倒だな」

「アレは使うなよ。それとエリカ、できれば無傷で収めたい」

 レオに持たせておいた訓練用の小通連は武装一体型だが、そのままでも打撃武器として使用できる。

 形状が剣に見える事もあって、過剰防衛にならないように釘を刺しておいた。

 それは当然、エリカの方もだ。

 

「はあ? こいつら無傷で帰れるつもりだぜ?」

「頭沸いてんじゃねえの? この人数に勝てるつもりかよ」

「プップー馬鹿ねー。無傷ってのはあたし達のことじゃなくて、あんたらのこと。怪我させたら可哀想だって心配されちゃったの」

 自分達が無傷で居るのはもはや当然だ。

 ならば心配するのは過剰防衛であらぬ噂が立つことである。それでなくとも魔法師を目の仇にするブランシュが近くに居るのに大事にはしたくなかったのだ。

 

 あまりにも圧倒的な実力差ゆえに、俺はそんな甘い事を考えていた。

 もし深雪がここに居たら、そんな余計な躊躇などはしなかっただろうが。

 

「このアマ、本当に頭おかしいんじゃねーか?」

「顔と体が良ければオツムは気にしなくていいだろ。どうせ薬でハイにするんだし」

「タカさん、こいつらもしかして魔法師じゃないっすか?」

 エリカがどの程度の強さを持つか想像することすらせず、自分達の優位を疑いもしないチーマー達も、流石に魔法には恐怖を覚えたようだ。

「ま、魔法師だって!? ど、どうするよ…」

「慌てんな! お、俺は知ってるぞ。こちらの魔法はチャカと同じなんだ。俺ら一般人に使ったらサツに捕まるのはてめえらなんだからな!」

 怯える舎弟達を鼓舞する為、リーダーらしき男はことさらに言葉を荒げた。

 そしてこちらを恫喝する為、自分達が暴力や薬で恐喝して居ることなど気にも留めずに一方的にわめいている。

 

「勘違いが三つある。一つ目は自衛目的ならば制限が緩められる。二つ目は攻撃する為の魔法でなければ咎める可能性は低い…」

「三つ目はあたしに言わせてよ、達也くん」

 溜息つく俺の言葉を遮って、エリカがウインクしながら振り向いた。

「…あんたら如きに魔法は必要無いっての。足腰抜けるまで付き合ってあげるから掛ってきなさいな!」

「言ったな、このアバズレ!」

「囲んでフクロにしろ!!」

 エリカの易い挑発に乗ってチーマー達が一斉に襲いかかる。

 頼むから手加減はしろよと声を掛けて、俺達も参戦する事にした。

 

 そこから先は一方的な展開だ。

 千刃流の達人であるエリカが素人相手に苦戦するはずも無い。

(一番弱い所から落とすのか…定石だが、物騒な女だ)

 エリカくらいになると活殺自在なのだろう。

 あっという間に一人・二人と脱落させている。峰打ちで気絶させられた一人目はともかく、二人目が軽い打ち身なのに復帰を躊躇っているのは、実力の差を自覚してしまったからだろう。

 

 何しろ鉄パイプを持った奴やパワーアシスト機構を使った奴を無視して、悠然と弱い順位に倒しているのだから仕方あるまい。

 復帰すれば真っ先にやられるのは自分、運が悪ければ一人目の様にアッサリと気絶させられてしまうのだから。

 

 無傷で自衛するどころか、一人も逃さない…。

 全員にエリカの意図が伝わったのは、三人目を打ちすえてからだ。

「ど、どうしようタカくん。こいつら…こいつオカシイよ!」

「ちっ。仕方ねえ、バイ(買い)に来てた連中を呼び戻せ!」

 怯える舎弟たちを勇気付ける為というか、激怒のあまりこだわりを無くしたのか。

 他のチーマーを呼び寄せて、俺達…特にエリカを叩きのめす事にしたようだ。

 

 しかしこれで、コミューターが品切れだった理由も判った。

「まだ遠くに行ってねえはずだ。そのくらいの役に立て腰ぬけが!!」

「す、直ぐに連絡するっ」

 連中は周囲に家が少なく、パトロールも研究塔周辺にすることを活かしてドラッグの売買をやっていたらしい。

 顧客である他のチーマーに金なり追加の薬を約束に、言う事を聞かせるつもりのようだ。

 

「うわっ。聞いた? 信じらんなーい。こいつら芋蔓式に一網打尽に成ってくれるんだってさ。…少し本気出していいかな?」

 エリカはどこまでも上から目線で構えていたが、ドラッグ売買を一気に叩き潰せるとあって考えを変えたようだ。

 その時に唇を舐めたのは闘いの予感に興奮したのだろうが、不思議と厭らしさを感じさせない。

「じゃあ俺も万が一に備えてあっちの方を試すとするかね」

「それよりも美月の言っていたフォーメーションを試そう。一人前に置いて二人が脇で支えて専念させるやつだ」

 レオは鞄から籠手型のCADを取り出すと、上着を脱いで硬化魔法の準備を始めた。

 どうやら小通連の方では無く、布の方の使い方を試すらしい。魔法陣が無い分だけ手こずっているようだが、間にあわなければ使わなければ良いだけなので問題はあるまい。

 

 そして思ったよりも近くに居た奴らを中心に集まり始め、やがてその数は膨れ上がっていく。

「やつらが魔法使わないって本当なんだろうな!?」

「チャカぶっ放すようなもんだからな。薬はたっぷり弾むからちょいと頼まあ」

「そういうことならタカ達に貸しを作るのも悪かねえな」

「俺は薬よりもあの女が良いなあ。反応が無くなるのはつまらねえから、順番待ち無しか完全に壊れる前にくれよ」

 まったく深雪が此処に居なくて幸いだった。

 エリカなら良いと言う訳でもないが、こんな連中の目に俺の妹が晒されると思うと耐えられん。万が一にも危害が及ぶとあれば手加減もしたくなくなるからな。

 

「きゃー助けてーヒーヒー言わされちゃうー。…まあオモチカエリされるのはこいつらの方なんだけどさ」

 連中の下卑た視線もなんのその、エリカの方はむしろ楽しそうだった。

 負ける要素を全く考えて居ないと言うか…。まあ唯一の危険性である後方を俺たちがカバーする以上は危険などあるはずもないが。

「作戦を説明するぞ。エリカはアタッカーで落とすことに専念してくれ。俺はフォローしつつチャンス次第で当て身を。レオは攻撃よりもバックアップだ」

「少しは乱戦を愉しみたいんだけどなー。まっこいつらじゃ実戦の代わりにもならないか」

「おーこえ。それはともかく護る方はまかせとけ。俺のは誤魔化し易いしな」

 エリカを頂点に置いた三角形のフォーメーションで、両脇から俺とレオがカバーに回る。

 剣の腕があるエリカは攻撃に専念することで、ひたすら気絶させて行けば良いということだ。

 一回の攻撃で確実に一人、運が良ければ俺加わって二人ずつ気絶させれば、逃がさないようにというのは無理でも壊滅させるのは簡単だろう。

 この態勢を維持する為にも、体格が大きくタフネスなレオには攻撃よりもカットインの方が良い。

 

 やがて遠巻きにこちらを見ていたチーマー達も、バットや角材などの即席の武器が揃ったのか…。

 あるいはこちらが魔法を使わないと納得したのか迫って来た。その勘違いを指摘する意味は無いので勘違いさせておこう。

「俺から行くぜ! 一番乗…り」

「はい、終った」

 押し倒す権利を争った愚かモノが、最初の犠牲者に成った。

 エリカは驚くべき早業で自分から相手の方に接近すると、バットを振りあげた手を軽く押さえ一撃入れて気絶させてしまう。

「ゴメンねぇ。あたしの方が待ちきれなくて先に入れちゃった♪」

(縮地の術理は幾つかあるが、今のはカウンター移動か)

 相手から見て二・三歩の距離だとしたら、敵が踏み込む一歩に合わせてこちらも一歩。

 少し前に出て振り被ったつもりなのに、いきなり距離が詰まって驚いただろう。キスしそうなくらいに顔が急接近して居たのに気が付く暇も無かったかもしれない。

 

 そして崩れ落ちる体を盾にして、今度は反対側の奴が驚いている間に踊りかかった。

 もはや一撃離脱というよりは手当たり次第である。

「速ええ、もう二人…いや三人か。恐ろしい事に積極的に動かなきゃ、こっちの肩鳴らしも終らねえぞ」

「一人で全員倒すなと忠告が必要かもしれんな…」

 社でやった硬化魔法の応用を、実戦で見て見たいと言うのもあるが…。

 俺は別の意味で簡単に状況の推移が起きることに躊躇を覚えた。

 特に通報した覚えは無いが、これだけの暴漢が集まって警察が動かないなどありえない。

 

 チーマー達の一部が他で騒ぎを起こして、警察の目をそちらに呼んでいるのならばまだ良い。

(問題は第三者がこの騒ぎを利用しようと、周囲にカモフラージュをしていた時だな)

 一番あり得るのはシルバー狙いの他国エージェント。

 次にあり得るのは剣道部の連中、そして引いてはブランシュ達だ。

 

「二人とも。愉しむのは構わんが、余計なことは話すなよ」

「あー判った。『こないだの送り狼』さんたちが居ても困るもんね」

「ん? 家……ああ。そういうことか、了解」

 リンの事はしゃべるなよと最低限の釘を刺し、俺は対処を考え始めたが少しだけ遅かったかもしれない。

 追い詰められたリーダーが、メンツを保つよりも事態の打開を測ったからである。

 

●楽勝からの暗転

 

「はいつぎ―、並んでならんでー」

「くそお!」

 それは既に戦いと呼べるモノでは無くなっていた。

 

 エリカの特性はスピードではなく知覚能力にこそあり、咄嗟に行動変更できるのが最大の長所だ。

 実力的にも一対一で対抗できる者がおらず、トランプで言えばエースをすれば前に数字札と絵札くらいの差があろうが同じこと。

 倒せる奴は倒す、倒せないなら隙のある奴を狙うことであっと言う間にチーマーが倒れて行く。

 

「こっちの数は十倍じゃ効かねえんだぞ! 何やってる!」

「全員が一度に掛ってくればの話だな」

 戦闘は数がモノを言うので囲めば別なのだろうが、俺たちは分断に徹して背後のカバーをしているので状況は変わらない。

「早過ぎたっての追いかけるこっちの身にもなれよ」

「あはは、ごめーん。こいつら御話にならなくって」

 エリカからしてみれば普通の乱戦と違って隙を作らないように守る必要が無く、気絶させることが可能な奴を狙うだけで良いのも大きいだろう。

 次々にチーマー達が転がり、むしろ動き回って囲むのを難しくしていた。

 当初は遠慮なしに前に出るエリカに合わせて必死に追いかけていたものだが、今では余裕すらある。

 

 だが思えば対処を決める前にやり過ぎたのだろう。

 やつらのリーダーからしてみれば増援を呼んだはずが薬物売買の証人を増やすだけに留まっており、メンツを立てるどころかこれ以上ないくらいに追い詰められて居たのだから。

 

 最初は銃を取り出していつ使おうとかと思っていたようだが、既にそんな状況では無い。

「…う、(ウォン)さんに頼むっきゃねえ。お前ら連絡が取れるまで俺を守れ!」

「薬の仕入れだけじゃなくて尻ぬぐいまで頼むのか? 幾らとられるか判らねえぞ? それに客の前に呼ぶのは…」

 こうなれば数の優位など意味がない、警察が来たら一貫の終わりだと気が付いたリーダーは携帯を取り出して電話を掛け始める。

 薬物売買の黒幕らしき男の名前が、つい最近になって聞いた名前だと気が付いた時は遅かったのだろう。

「ウルセー! 今パクられたら何もかもおしまいだろうが! こいつらには他の連中よりも安く売れば済むだけだ!」

「うわっ。今さら気が付いた揚句に保護者まで呼ぶとか。プライドってもんはないのかしら」

 怒鳴り散らして納得させるリーダーにエリカは呆れ顔だが、俺はそれどころではなかった。

 (ウォン)というのがダグラス・(ウォン)のことであれば、笑って見て居られる状況ではないからだ。

 

「こいつらはともかく、その保護者を舐めて掛らない方がいいぞ。地元の連中で聞いた名前じゃない、マフィア崩れかもしれん」

 マフィアがチーマー相手に薬物売買というのも情けないが、小集団というものはそんなものかもしれない。

 資金を稼ぎイザという時に動かせる人数を増やす為に、情報収集を兼ねて少しずつ何かで稼いで置くのは常套手段だからだ。

「その可能性はあるか。ゴメン、ちょっとはしゃいでた見たい」

「骨のある奴との戦いか。一気に目が覚めるな」

 そのことに気付きエリカ達も先日の強化人間との戦闘を思い出し、気を引き締めていた。

 

 そして警戒して居た人物は意外なほどの早さで現れた。

 警察が来ないのが人払いの結界だとすると、様子を窺っていたのかもしれない。

「ガキどもの世話を押し付けられた時はどうしようかと思ったが…。ミスター・シルバーが手に入るなら話は別だ」

 出て来たのは恰幅の良い初老の男だ。

 葉巻をくわえ高級そうなスーツがこの場と比べて浮いているが、少し大きめのアタッシュケースを持っているのでやり手のビジネスマンに見えない事も無い。とはいえビジネスがドラッグであるならば笑いごとでは無いのだが。

 

(なるほど俺のことに気が付いて、介入のタイミングを窺っていたのか)

 となると人払いをしているのはこいつだろう。

 俺の目に結界構築の反応が無かったのは、強度的に能力が足りないか、離れた場所で複数の場所に設置したかのどちらかと思われる。

 魔法師としての腕前よりは、俺達の思い付かない技術との組み合わせだったり荒事の知識の方が厄介かもしれない。

 

(ウォン)さん! こいつら何とかしてください。金ならなんとか…」

「金なら私の方から出そう。後ろに居るあの男を逃がさないように手助け出来たら、参加した一人に付き百万くれてやる」

「ほっ本当ですか!? 俺らは逃がさないだけでいいんすね?」

 ニヤリとした笑いを黄は浮かべ鷹揚に頷いて懐に手を入れた。

「本当だとも。前金代わりにさっきの金を返そうじゃないか。逃がさなければ構わないが…、聞きたいことがあるからな意識不明の重体というのは困るぞ」

 財布を取り出したように見えるが、簡単な魔法を使ったことからCADをオンにしたのだと判る。

「そういうことでしたら…。よしお前ら! この金で今夜は豪遊だ!」

「おう、任せとけ!」

 男が投げ捨てた財布を、タカと呼ばれたリーダーが拾って豪語するが大したことは無さそうだ。

 むしろ連中自身が出した金と約束手形の後金だけで、下降気味だった連中の士気を煽って見せた(ウォン)の方が危険だろう。

 これで奴は壁役と追撃役の両方に使える……捨てても良い捨て駒を入れたのだから。

 

「大した自信だけど、オジサマを捕まえれば終わりで良いのかしら?」

「薬に関してはそうだな。私が捕るほどなのに、無理して端下金を稼ごうとも思わないだろう。それよりも聞きたいんだが…」

 一見すると不思議なことでも、幾つかの情報を知っていると推測できることもある。

 例えば(ウォン)がエリカの質問に応えながら悠長に話しているのは、緩やかな風を作る魔法でナニカを飛散させたからだ。

 チーマー達が回り込む時間稼ぎと見せながら、渡辺委員長の様に香料か何かを飛ばしているとしたら…抜け目のない試合巧者と言う他は有るまい。

 

「キャスト・ジャマーの技術を解明したそうじゃないか。私に教えてくれるなら幾らでも金を出そう」

「何よソレ。知らないし言ったところで無事に返してくれる保証も…」

「薬か何かをまくための時間稼ぎだ。付き合うことは無い」

 そしてキャスト・ジャマーという言葉に関してもそうだ。

 俺が使った干渉波に適当な名前を付けたのか、どこかの軍が開発した技術なのかもしれない。

 それに付いて質問したように見せ時間を稼ぎつつ、強い言葉を刷り込むことで後で暗示を掛け易くしているのだろう。

 洗脳系の魔法は万能ではないが、こうやって段取りを踏むことで条件が変更可能な性質がある。

 

 ブランシュと無頭竜の繋がりを知らなければ俺も戸惑っただろうが、知っているからこそ、(ウォン)の言葉を関連付ける証拠として認識した。

 アンティナイトを使わないキャスト・ジャミングの技術を手に入れるとしたら、チーマーの抗争に介入する意味もあるということだ。

 あるいはその可能性を高めるために、人気が無いなら何処でも良いはずの取引を、この近辺でやったとすら思われた。

 

「自分の力じゃなくて薬に子分、あげくに時間稼ぎとはオジサン情けないんじゃないの?」

「なんとでも言ってくれ。それにもう……遅い!」

 エリカが加速魔法で(ウォン)に切り掛る隙を窺うよりも早く、やつは息を吸って大きく煙を吐き出した。

 煙草の煙のはずなのに濛々と拡がる様子は尋常ではない、だが重要なのはそこではない。

「幻覚だ」

 煙が見せる異常なまでの拡がりは光振動を移動させる幻影に過ぎない。

 (ウォン)が使った風によって煙草の香りが拡げられており、一見してソレと気が付き難く目と鼻を同時に迷せる。

「仕掛けて来るぞ。態勢を崩すな」

「判ってる!」

 他愛ない幻覚魔法を段取りを踏むことで強力に見せているが、それはあくまで手品と同じレベルで意表を突いただけだ。

 最大限に生かしてはいるが、大した魔法では無いからこそ次の札が伏せられているべきだ。

 

 やがてキン! という音と共にエリカが警棒で宙を切った。

「含み針? 絶滅危惧種とつるんでるだけあって、随分と古風でコスイのね」

「いやいや、これが実に有効でね。並の相手ならばこれで十分だったんだよ」

 ここまでの段取りを踏んだにも関わらず、エリカがアッサリと対処したことを(ウォン)は少しも悔しがっては居ない。

 むしろ良くやったと褒めているかのようで、少しは本気を出すかという風情だ。

 

「さあ、レッスンといこう。手順は先ほどと同じだぞ」

 先ほどの攻撃は煙を広げてから放ったが、今度は即座に行われた。

 更に違いと言えば、先ほどよりも澄んだ音がしてナニカが落ちた音がしたくらいだ。

「うわっ胡散クサっ。どの顔して信じてくれって言ってんのよ。察するに無香ガラス製の針だろうけど御約束にも程があるわ」

 だが地面には何も見受けられず、ソレが先ほどとの差なのだろう。

 武技としての駆引きとして判断するならばエリカが言うようにガラス針というのは十分にあり得た。

 

(妙だな。煙以外に何も撒き散らした効果が出て居ない。色と香りを誤魔化すだけにしては大袈裟過ぎる罠だが)

 煙からは知覚や体感を上げ下げする様な薬物は見受けられない。

 深くエリカの状態を目で視ても体調に変化は無く、(ウォン)の方にも差は見受けられない。

(…今度は練り込んだサイオンが妙に多いが、俺の介入を警戒したのか?)

「やれやれ、これでも駄目かね? 棒振り芸以外でもきちんと仕込まれているようだ。では次の…」

 (ウォン)は三度同じ攻撃を繰り返す。

 だがサイオンが多く練り込まれ、加重や移動といった魔法が小さく併用されている。

 現代魔法の常識で考えれば、グラム・デモリッションや領域強化に邪魔されないようにしたとした思えないのだが…。

 移動魔法は針か何かを操作するとして、補助として使用した加重魔法は何に使ったのだろうか?

「させるかっての!」

「待て、迂闊に飛び込むな!」

 勝負の掛け時だと思ったのはエリカもらしい。

 これまでにない詐術か武技が含まれていると判断し、先制して飛び込んだ。

 そして加速魔法による踏み込みで一気に接近しはするが、手前で着地して軌道修正し奴の口元を狙う突きに変更する。

 今までと同じ攻防であれば、連射であろうが遅延発動であろうが倒していた筈だった。

 

 そう、今までと同じ攻防であればの話題だ。

「遅かったな。同じ攻撃なら一巡前に様子見せずに飛び込むべきだった。まあそれならそれで手を変えたがね」

「…あ? 影打ちじゃ……ない?」

 再びキンと言う音がした後、エリカの体がバタリと倒れる。

 針は近くに落ちており、もう一本か二本刺さっている様には見えない。

 しかし速攻性の薬が注入されたとしか思えず、効能によって体調が変わっているのが見て取れた。

「エリカ! パンツァー!」

「おっと、いかせねえっての」

 レオがバックアップに回ろうとするが、有利と見たチーマー達がワラワラと近寄って邪魔された。

 連中の攻撃力はレオのを傷つけるには程遠いが、他がエリカを確保するには十分な時間だ。

 

「高い授業料だったな。…お前らはその女の相手をしていて構わんぞ」

「さすがは(ウォン)さん、話が判る!」

「へっへへっ。さっきの御礼をしねえとなあ。気絶した連中も叩き起こせ!」

「こお、の、げすど……も」

 筋肉が弛緩し始めているようで、エリカは抵抗どころか徐々に呂律が回らなくなっている。

 目を使ってもソレを裏付けるだけで、先ほど何が起きたのかが判らない。

 

 浚われて日が立つならまだしもまだ戦闘中だ、チーマー達はこちらが一気に取り返しに来るのを警戒しながら、エリカから恐怖を引き出すべくゆっくりと服を剥ぎ取っていた。

 俺の固有魔法である『再生』を使えば薬物を取り除いた状態まで戻すのは簡単だが、カラクリが不明なのでエリカには悪いがもう少し可哀想な被害者役をやってもらおう。

 

●魔人の戦い

 全て終ったところで殴られる覚悟を決め、俺は簡単に救出できるエリカを放置して話題を振ることにした。

「幻覚魔法だけでよくもやる。筋肉弛緩剤系の薬品を組み合わせて速攻性にしている所までは判ったが」

「化成体といっても判らんか、…どうかねミスター・シルバー。何が起きたか説明しても良いし、交渉次第であっちの中断をさせても良いが」

 人質を取ったことで、絶対的な優位を確信したのだろう。

 (ウォン)は少しだけ情報をもらすことで、交渉が出来るのではないかと錯覚させようとしていた。

 

 勿論それは偽りの姿で、先ほど同じ魔法を感知され難い様に準備し始めている。

(こちらも乗ったフリをしておくか。俺が自白剤なり睡眠剤で狙われているなら再生で無効化できるし、弛緩剤でレオを狙われても薬の効果が同じだからエリカと同時に起こせる)

 使用している薬は薬剤として危険な濃度にして効能を高め、複合して相乗効果を持っているのだろう。

 だが、『再生』は元の状態に戻す魔法なので問題はない。

 

 情報を引き出しつつ、少しずつ間合いを詰めて(ウォン)を捉えられる位置に移動しようとした。

「干渉波で邪魔するという基本は同じだ。コツは三つほどあるが、一つ目を話す代わりにまずその女から奴らを少し離してくれ」

「まだ手を付けてないなら何人か少し離れてやれ。ああそうだな、どんな姿をしているか見せてやってもいいぞ」

 俺が交渉に乗ってやると、(ウォン)は顎でしゃくってチーマー達に指示を出す。

 もちろん行為を中断させはせず、視界を少し開けさせたに過ぎない。

 

 そこには服の一部が剥ぎ取られ、途中で面倒になったのか脅しを兼ねてナイフが顔近くの地面に突き刺してあった。

 エリカは汚されてこそいないものの、半裸の状態で足や腕の一部を掴まれている。

「だ、……め。たつ…」

(…あの連中救いようが無いな。(ウォン)は俺達が何かしても良い様に捨石にしているだけなのに、優位を信じて疑っていない)

 実際のところ(ウォン)は交渉する気も無いし、連中を留める気も無い。

 

 何故ならば現在進行形の暴行を留めなければ俺たちは焦るし、強力な魔法を隠していたとしてもその暴発でエリカの救出を測る様に仕向けている。

 その間に先ほどエリカを倒した魔法を、出来るだけ気が付かれ難い様に隠して発動準備を整えているのだ。

 

「さあ、離してやったぞ? コツを話してもらおうか」

 針を俺に撃ち込みさえすれば、後はどうとでもなると思っているのだろうし、連中も交渉モドキも全てはその時間稼ぎに過ぎない。

 俺がコツを三つと言った事すら、自分が欲して居る時間を稼ぐために利用して居る。

 さきほど試合巧者だと思ったが、なるほど無能では無頭竜の上層にはなれんか。

「どうした? 理論がまとまらないなら、そうだな。服が一枚一枚剥がされて生まれたままの恰好になるまでなら待ってやろう」

「へへっ。お愉しみタイムだぜ…」

「…っ」

 (ウォン)はあいかわらずチーマー達を使って状況を動かしている。

 こちらに余裕を見せたようにみせて、追い詰めているつもりなのだろう。

 

「コツの一つ目は波調の絶対強度を抑えて全員の無力化を諦めることだ。どうせグラム・デモリッションや戦術魔法級の使い手にはあまり意味が無いからな」

「ふむ。確かにそのクラスだと無効化手段があれば身につけている可能性があるからな。コントロールに全力を注ぐのか」

 これは嘘ではない。

 干渉波で邪魔する方法は、対象はともかく調整自体には精緻なコントロールを必要としているし揺さぶるには速度勝負なのは間違いが無い。

 相手の位置を掴む必要はないのでステルスしていても無効化できるが、上手く調整しないと意味が無いのは本当なのだ。

 

(助けさせろと言って距離を稼ぐか。服を全て剥がれた上に薬で足手まといと思えば、本当に渡してくれる可能性もある)

 そこまでの期待はしていないが、(ウォン)に接近できれば何の魔法を使ったか誤魔化して倒す事も出来る。

 せめてあと一歩か二歩、できれば距離を半分まで縮めておきたいところだ。

 この距離だと少なくとも再生行使が必要で、倒す為にはそれ以上の秘密がバレる可能性がある。

 (ウォン)だけならまだしも、バックアップがチーマー達の中に隠れていれば秘密を探られる危険性もあった。

 

 そう考えて距離を稼ごうとした時、意外な声が掛った。

「次のコツだが、話す前にその連中を本当に遠ざけてくれ。助けさえてくれるなら三つ全部喋っても…」

「達也、もう良い。後は俺がやる」

 感情を押し殺してなお、漏れ出る殺気がレオから零れた

 さきほどまで黙って見ていたのは、焦っているからでも、解決策を思い付かなくて茫然としているからでもなかったようだ。

 

 意外なことに、俺と同じ様に距離を稼ごうとしていたのだろう。

 その手段を思い付かないから必死で考え、それでも思い付かないから俺の言葉を見守っていたに過ぎないのかもしれない。

 しかし、視界が開けたぐらいでレオに何かできるとは思えないのだが…。

 

 その認識は、レオの実力を相当に見謝っていたと言えるだろう。

 得意分野だけなら、レオは一科生を上回る。

「はっはっは。これは傑作だ!この状況で何が出来るね? 仲間は人質に取られ君らも完全に囲まれているじゃないか」

 心底おかしそうに(ウォン)は笑い出し、抜け目ないことに魔法を急ピッチで完成させた。

 レオが何かしらの切り札を使うと見て、なりふり構わず魔法を仕上げたのだ。

 

 レオはそれには答えず、振り回していた上着を投げ捨てるとタックルをするかのような構えに入った。

「指を一本ずつ投げ返してやれ。そうすれば大人しくなるだろう」

「え? 指ぃ?」

 最後までチーマーを壁と囮にすべく、容赦ない言葉を投げかけた。

 スプラッタな要求にチーマーの方が対処に困るが、ナイフを取りあげるよりもレオの魔法の方が早い。

「ジークフリート!」

 何故かレオはぎこちない動きで走り出すと、続けざまに硬化魔法を放つ。

 一つ目は今一ピンとこない使い方だったが、二つ目は俺が教えた使い方だけに良く判る。

 そう、今日ラボで散々試した、あの使い方だ。

「シュバルツシルト、エリカ!」

 上着に掛けた硬化魔法が、相対位置を一定に保つ。

 その対象は呆れたことにエリカであり、投げ捨てられた上着が拡がった状態で彼女に覆い被さった。

 

 レオはその間も走り続けているが、動きは鈍くチーマー達が袋叩きにするのは当然のことだ。

 連中が動き出すのを待ってから(ウォン)も魔法を放ち、続けざまに高速で二発目を準備し始める。

 だがしかし…。

 

「き、効かねえ!?」

「まるで鉄を殴ってるみたいだっ」

「馬鹿な。私の『煙針』すら効いて無いだと?」

 あらゆる攻撃を弾き返し、レオは突進を掛けた。

 バットや鉄パイプも、ナイフや銃弾に至るまで無効化している。

 (ウォン)が使ったと言う『煙針』がどんな魔法かしらないが、その変化も薬の効能も一切が効いて居なかった。

 

(固定して居るのは肉体の基礎状態か! 皮や内臓などの体組織全ての基礎情報を固定して居る)

 不壊の肉体。

 あらゆる干渉を跳ねのけ、あるがままの方向にしか動かす事が出来ない。

 ゆえに体は鋼鉄の如くに干渉を跳ねのけ、刃や打撃どころか薬品でも基礎状態から動かせない。

 目を突けば眼窩と目の中間に、口を狙えば喉にネジ込むことはできるが、一切のダメージは入らないだろう。

(唯一動かす方法は、無理やり筋肉で操作するだけだ。しかし何キロもの加重が全身くまなく掛っているのと同じだぞ…)

 体の組織は元の姿であろうとするが、肉体というのは元もと動くようにできている。

 だから重量物と化したと思えば動かせないが、凄まじいカロリーを無駄使いしているはずだ。

 

「不死身の肉体…。まさかローゼンはブルゲ・シリーズを完成させたのか? くそ、今の装備じゃ殺しきれん」

(ウォン)さん!? どこいくんすか!」

 流石にマフィアの連中は一味違う。

 危険だと判断した瞬間に、(ウォン)は平然と逃走を選んだ。

 サイオンを練り込んだ煙が立ち塞がり、俺の目を持ってしても一時的に確認できなくなる。

 

 少し逃げるのが早い気がするが、このまま放置すればレオがタッチダウンを決めるのは確実で、それはエリカが目標と判って居ても無敵の肉体を倒す事ができないからだ。

 それではいつか自分も倒されてしまう可能性があるとしって、チーマーという肉壁を利用して逃げ出した。

 上層部暮らしが長くて意気地がないのかもしれないが、いっそ清々しいくらいの逃げっぷりである。

 俺としてみれば消し去る機会が失われた訳であり、運は奴に味方したと言えるだろう。

 

「ち、近寄るな化け物! このナイフが見えないのか!」

「そうだ女の命が欲しかったら…」

「ナイフ…。それはどのナイフのことだ? お前が持っているナイフのことか?」

 俺は馬鹿が混乱している間に、再生を使ってエリカの肉体情報を薬物が入れられる前に戻しておいた。

 

 となると当然…。

「え? ナイフって…。ひあ!?」

「ゆ、指があぁ!!!」

「よくも、ひんむいてくれたわねぇ!!」

 エリカは顔の近くに突き立てられたナイフを引き抜いて、側に居るチーマーの指を切り割いて行った。

 先ほど(ウォン)がやれと言った事を、立場を変えて実行したらしい。

 

「あれは相当に怒っているな…。仕方無い。後で一緒に殴られるか」

「そうだな。そのくらいは仕方ねえ」

 俺とレオはできるだけエリカの裸身を見ないようにして、チーマー達を蹴散らしに掛った。

 当然ながら全員を捕まえることは出来なかったが、これだけ居れば薬物売買を調べるには十分だろう。

 

 そして不自然な笑顔を浮かべたエリカに、問い詰められるのはそう遠い話しでは無かった。

「見た?」

「見たが…」

「見るだけだな。記憶するような余裕はねえよ」

 余計なことを言ったレオが、余計な分だけひっぱたかれた。

「記憶しようとすんな! あと、後ろ向け!!」

 俺が一発でレオは往復。まあ妥当な所だろう。

 

 引き裂かれた服の代わりに、サイズの大きいレオの服を羽織ってエリカは事後処理を始める。

 今日起きた恐怖を忘れるには、忙しい方が良いかと思った訳だが…。

 現実には、エリカという女はもう少しタフらしい。

「何も出来なかったのが悔しいのよね」

「活躍してたじゃねえか。物凄い勢いで蹴散らしてよ。一人で十人どころのスコアじゃねえぞ」

「これが戦場なら立派なエースだな」

 エリカは涙を流していたのを隠しもせずに、赤い目をこすって地元警察と本庁のエリート達に連絡を付けたようだ。

 恐怖の涙ではなく、悔し涙というのがらしいところだろう。

 

「雑魚なんて星勘定に入らないわよ。親玉も含めて自分より下と思っていた奴に、実際には勝てなかったってのが悔しいの」

「なぁ、自分よりしたって俺も含めてないか? お前の方が強い恩は確かだが…あ痛て」

 止せば良いのにレオはエリカに軽口を返し、今度はゲンコツで殴られていた。

 おそらくは、レオが最後に使った不壊魔法と言うべきアレを指して、勝てなかったということだろう。

 

 …その時の俺は、本当にそれだけの事だと思っていた。

 エリカとレオの間に妙な縁があるなどと、知る由もなかったのだから…。




 という訳で、帰り道に戦闘が発生しました。
1:アウトローズ(五巻)に対し、逃がさずに叩きのめす余裕で薬物売買の証拠確保
2:チーマー集団複数を前に、パンツアーカイル戦術を試しながら余裕で粉砕。薬物売買の分解を目論む
3:ダグラス・(ウォン)にエリカが負ける。決まり手は二回フェイントの後での化生体で作った針
4:例のキャストジャミングもどきの話題で時間稼ぎ。黄さんも嘘八百しながら時間稼ぎ
5:ブチ切れたレオが、ジークフリートで無双
 と言う感じになります。
黄さんが山田風太郎とか横山光輝の世界の住人みたいなことになったので、字数が限界突破しそうになりました。
とはいえレオの切り札を知ったので、次は殺しきれる装備を持って来るでしょう。パーフェクトだグレゴリーって感じで。
基本的にこのストーリーには汚れた大人しか居ないので、一度知った事に関してはメタって対策を立てる感じです。もちろん朱さんも装備を変更して帰って来るよ!

 次回はエガリテ・剣道部組が動き出して、達也くんのことを真に受けたさーやが、強化付与した手裏剣投げで伊賀十字撃ちとかしてくる回になります。

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