原因不明の病魔に取り憑かれた男の話。

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Serial

朝、俺は目覚めると昨日飲んだ酒のアルコールと薬が混ざって気持ち悪くなった。

あぁ、また嫌な朝だ…。

俺は喉が乾いていたので近くにあるペットボトルを手に取り水を飲もうとしたが、底に余った少量の水しか無く、空のままだった。

…そうだ、俺は昨日薬を飲むために水を飲み干したのか…。

…待てよ?俺は昨日の晩、何をしていたんだ?

いつの間にか家に帰り着いていたのはいいが、俺は昨日の晩の記憶が無い事に気がついた。

ふと自分の手を見ると、かすかに残った赤色があり、鼻をつく鉄に似た匂いがした。

俺はすかさず銃の弾の数を数えた。すると、案の定、弾の数が減っていた。

あぁ、またやってしまった…。

体のだるさはこのせいか…。

俺の中に居る悪魔が獲物を喰らい尽くす瞬く間にまた眼を醒ましたのか…。

俺は何度かこの事で医者に観てもらっていたが、医者はどうしようもできないと言い匙を投げた病魔だ。

俺は必死に「信じてくれ!全て本当なんだ!」と訴え続けたが、医者は聞いてくれもしなかった。

だから俺はずっと原因が分からないままなんだ。

もしや、俺がどこかで望んでる?…まさか!そんな事ありゃしねぇだろう?

でも、連続してそれは起きる。

もう俺にできる事は無い。

どうしようもできないのだ。

 

俺の書き換えられない過去を思い、書き足した未来はこの手の元にある。

そのために蓋を閉めたままのボトルのように得体の知れない気配を押し殺す。

震えが出れば毛布にくるまる。そうすると嫌な汗と裏腹な喉の乾燥も、反芻した発砲の反動でさえも忘れるまでは案外すぐだった。

この人生はやり直せる、そうだろう?

一度きりの人生を謳歌しようじゃないか。

この手も目も俺の物でしかない。

全てを“希望”とリアライズするんだ。

気配の正体も無いし、勝敗も無い。

でも、怯えるような必要ももう無いんだ。

朝が来て俺は眼を覚ますと、布団の中がまだ暖かかった。

そう、全ては“悪い夢”だったんだ!

俺はそう考え、今でも繰り返す病魔を乗り越えようとした。

 

しかし、次の日のまだ暗い空を余所に吐き気が襲った。

俺は急いでバスルームに行くと、違和感を感じた。

「…嘘だろ?おい!」

俺のようで俺じゃない顔が鏡の向こうに見えた。

よくも、懲りずにまた現れやがったってのか?!

俺をこんなカラダにしたのは誰だ?!

青から赤、全て神の定めだっていうのか?!

俺は奴が支配する俺の頭脳に怒りと苦悩があった。

もう繰り返したくない、いっそ全て切り刻めば俺は楽になれるのか?!

 

俺は銃をニヤけた悪魔のこめかみに突きつけた。

俺はやっと追いつめたが、悪魔はまだこれでも笑う。

俺はついに引き金に着火した。

その勢いで真っ赤に咲く花火がやけにキレイだ

なんて一人、薄れゆく意識の中で見ていた。



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