JKが紡ぐ、青春協奏曲   作:Cr.M=かにかま

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6.ある妹の訪問

 

第一話、つまりゴールデンウィーク以降初めて休憩室に俺、青葉、今井、変態の四人が揃うことになった。

–––最悪だ。

 

「.....青葉、今井、悪いが帰っていいかな?」

「だーめ!喫煙所までなら許す!」

「ありがとう青葉、ちょっと行ってくる」

「君禎ぁ!?そんなに俺と一緒にいるのが嫌なの!?ねぇ、ちょ、やめ、灰皿で殴らないで!」

「まぁまぁ」

 

全く、今日もいないと思ってたのになんでいるんだよ、コンチクショウめ。

今日だけで一箱消費しそうだ、新しいの買い足しとかないとな。

 

「で、お前はいつになったら解雇になるんだ?」

「嫌がりすぎじゃない!?」

「生憎俺は好き好んで脱いだ制服の匂い嗅がれてそれをもう一度着たいってほどアブノーマルじゃないんでね!」

「そ、そんなこと言うなって!君禎の制服の匂いは煙草の匂いもあるけど、最近暑くなってきたし汗から出る塩分の匂いと店の匂いがいい具合にマッチしてて、ニコチンの度合いによって何本吸ったかもわかるんだよ!ちなみに今日ここに来てから君禎は十三本消費しただろ!」

「正解だよ、本格的にキモいわ!」

 

あ、つい灰皿で後頭部思いっきり殴っちまった。まぁ、いいか。

だってあの青葉もドン引きし始めたし。今井は苦笑いだけど、絶対内心引いてるな、うん。

 

「いっつーさん、これどうするの?」

「そうだな、粗大ゴミとして出したいけど店長の許可も欲しいところだ」

 

店長を味方につけちまえばこっちのもんだ、親族からの了承ってことで罪は軽くなるはず。

さて、あいつも倒れたことだしちょっと吸いに行くか。戻ってきて意識が戻ってるなんてことは嫌だけど、吸いたいものは吸いたいんだから仕方なし。

 

「あ、君禎おかえりー」

「起きたんなら、さっさとレジに戻れ!」

 

 

 

「ねぇ、いっつーさん。どうやってびゃくさんと知り合ったの?」

「んだよ、藪から棒に」

「いやぁ、お二人の馴れ初めがモカちゃん的にとっても気になるというか何というか〜」

「気持ち悪い言い方すんなよ、馴れ初めとか」

 

ヤッバ、鳥肌立ってきた。

 

「すまぬすまぬ」

「まぁ、去年大学で偶然会っただけだよ、そっからは腐れ縁というか何ていうか、な–––」

 

 

 

一年前。

華丘大学の食堂にいた時だったな。

 

「なぁ!お前さっきの講義出てただろ!あれ、あの、あれだ!」

「どれだよ」

「あれあれ!片センのやつ!ノート写させてくれ、頼む!」

「嫌だよ」

「頼むよ!また単位落として留年しちまう!学費で一件家が建っちまうよ!」

「あんた先輩かよ!?」

 

まぁ、結局あいつは留年して俺と同学年になったんだがな。

 

 

 

「まぁ、こんな感じよ」

「全然エモくないね」

 

 

 

休憩が終わり、在庫確認の仕事をすることになった。現在レジは今井と川島君がやってくれてる。

ていうか青葉のやつは一体いつまで休憩してるつもりなんだろ、今日ずっと休憩室にいる気がするが、気のせいだろうか。

 

「よ、頑張ってるか若人よ」

「あ、店長。お疲れ様です」

 

やっと戻ってきたのか。

 

「そうだ、表に出してるアイスと冷凍庫の中にあるもの合わせてもそろそろ切れそうです」

「やっぱりかぁ、最近暑いし賄いでも配っちまったからなぁ。あとどんくらい保ちそうだ?」

「二日保てばいい方かと」

「じゃあ、多めに注文しとくか。他には?」

「今チェック中です」

「オッケーオッケー、じゃあ俺は他の様子確認してくるわ」

「ウィッス」

 

うん、息子とは違って人間が出来てらっしゃる。何であの人の息子があんな匂いフェチのチャラい変態になっちまったのか理解に苦しむぜ。

あ、割り箸と紙皿もそろそろヤバイな。飲み物類の減りも激しい、もう七月に入ったからなぁ。

夏かぁ、この前進級したばっかなのに時間が経つってのは早いもんだなぁ。

 

「あ、五葉さん!店長が在庫表を見せてくれと」

「わかった、もうすぐ終わるって伝えといてくれ」

「はい!」

 

さて、もう少し頑張りますか。

 

 

 

ピンポーン。

勤務が終わり、家に帰って寝てしまったみたいだ。ていうか誰だ、今何時だ?

 

朝の九時。

もうそんな時間か、上がってからの記憶があやふやだな。ったく、時間帯的に集金か?

 

ピンポーン。

 

「ったく、ハイハーイ!」

 

人の睡眠時間奪いやがって、誰か知らねぇが許さないからな!

寝汗で湿ってる寝巻きから着替えんのも面倒だ、そのまま出よう。

 

「おっす兄貴!元気してるー?」

 

–––隣から苦情がきてもおかしくない強さで扉を思いっきり閉めた。

 

さて、眠いし寝るかぁ。

 

 

 

「って、ちょっと待てー!兄貴!?今の兄貴だろ、ウチだよウチ!ユーアーリトルシスターの蜜柑だよ!?悲しいよ、せっかく久々に顔見せたのに鍵まで閉めるとか、てか固!?なんだよこの扉、ガチャンって音までしないとかどういうことだよ!?びくともしないし、え、何?これ変態対策なの!?兄貴変態に追い回されてんの!?おい、大丈夫なのかよ、サツに通報とかしなくていいのか!?一大事だ、姉貴にも報告しないと、こりゃ家族会議ものだぜ!第1453回五葉家緊急会議を一週間ぶりに始めなきゃいけねぇ、事態–––」

「やかましいわ!!近所迷惑ってのがわかんねーのか!?」

「ごば!?」

 

 

 

「てなわけで、久しぶりッス兄貴。デコ痛い...」

「ったく、苦情来たらお前が全部対処しろよ」

「えぇ!?」

 

ったく、朝っぱらから人の部屋の前で騒ぎやがって。うちの防音設備ガバガバなんだから勘弁してほしい。

.....ていうか、ちょっと待て。

 

「なんで今井と日菜までいるんだ?」

「いや〜、あはは」

「そんなことどうでもいいじゃん!やっぱり蜜柑ちゃんのお兄さんだったんだ」

「そう言ったろ」

 

ダメだ、頭が痛い。蜜柑だけでも大変だってのに、日菜までいるとか。

 

「あれ?ていうかお前ら学校は?」

「今日は日曜だよ」

「あ、そっか」

 

ダメだ、本格的にボケてきた。そっか、高校ってたしか土日は基本休みだったんだな。

 

「で、何の用だよ蜜柑」

「.....いやぁ、兄貴が餓死してないか心配で」

「相変わらずの心配性だな、お前は。俺よりもあのDQNの面倒見てやってくれよ」

「いや、君邦はもう生理的に受け付けられないっていうか」

「仮にもお前の兄貴だからな」

 

君邦よ、お前とうとう妹にも見放されたぞ。

 

「つーか、何メッシュ入れちゃってんだよ!髪が傷むだろ!」

「兄貴にだけは言われたくない!」

 

元々灰色に近い黒髪で結構綺麗だったのに、毛先を緑にしちゃってるよこの愚妹。

兄貴は悲しいぞ。

 

「あははははは、仲良いんだね!」

「ていうか、今更ながらお前らどういう繋がりなんだよ?高校は同じって聞いたけど」

「あぁ、それは簡単です。私と日菜がクラスメイトで私と蜜柑はダンス部が一緒なんで」

「それでウチと日菜ちゃんは学年トップ争いをしてる仲ッス」

「思ったよりも面倒くさい関係だな」

 

全員クラスメイト、もしくは羽丘の生徒、それじゃダメなのか?

ていうか、暑い。こいつらが来たせいで室温上がって汗がヤバイわ。

 

「ちょっと俺シャワー浴びてくるわ、さっき起きたとこだし」

「あ、五葉さん朝ごはんまだですよね?作っときますよ」

「悪いな今井、冷蔵庫何もねーけど適当に使っといて。あと蜜柑、覗くなよ」

「は?」

「なんもねー」

 

 

 

いつもの癖でパンツとズボンだけの状態で居間に戻ったら、蜜柑に殴られた。そういやコイツらいたんだった、日菜は顔逸らしてる。こいつ意外に純情なのか?

 

「さて、できましたよー!ついでに皆の分も作った!」

「わー、リサちんさすがー!」

「やっぱリサ姉と呼ばれるだけあるね!」

 

何だろ、前々から思ってたんだけど今井ってかなり家庭的なんだよな、ガサツを二乗したような蜜柑と違って。

 

「じゃあ、いただきます」

「「「いただきまーす!」」」

 

あ、この卵焼き美味しい!

ていうかリモコンリモコン、あったった。朝はニュースを観るのがいいよね、もうほぼ昼だけど。

 

「あ、Marmalade解散するんだ。結構好きだったんだけどなぁ」

「え、五葉さんアイドルとか興味あったの?なんか意外」

「兄貴って昔から芸能界好きだもんね」

「そうでもねぇよ、点けたらやってるから観てるだけだよ」

 

でも、実際Marmaladeはアイドルの枠を超えて色んなことをやってたからなぁ、あ、TOKIOほどじゃないけど。

 

「ねぇ、五葉さん、パスパレって聞いたことない?」

「ん?最近頑張ってるアイドルだよな、たしか、何ヶ月か前に口パク事件があって活動を自粛してた」

「そうそう、私ってそのメンバーの一人なんだけど知ってた?」

「うん」

「反応うすー!?」

 

いや、初めて会った時からそんな気はしてたけど、聞くタイミングなかったからな。

 

「ていうかなんで蜜柑ちゃんのリアクションの方が大きいの?」

「いや、ウチは結構驚いたから、兄貴もウチと同じで単純な馬鹿だから反応は同じだろうと」

「おいコラ、それはどういう意味だ?」

 

 

 

「それじゃおっじゃましましたー!」

「また定期的に来るわー、餓死すんなよ」

「またねー!」

「おーう」

 

嵐は去った。

今井は買い物、日菜はスタジオに練習、蜜柑は多分帰った。

さて、もうお昼の時間になっちまったけど休日を過ごすとしますか。

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