JKが紡ぐ、青春協奏曲   作:Cr.M=かにかま

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星4モカちゃんが来ない(泣)
あと、皆さんに聞きたいんですけど、まりなさんのこと知ってますよね?(震え)


4.あるゲーマーのオフ会

梅雨が明け、先日応募した日雇いバイトの面接に向かうために地域の自治会館へ向かっている。

場所でいうと花咲川の商店街と住宅街のちょうど間くらいのところだ。

 

「失礼します、先日お電話させてもらいました。五葉と申します」

「あ、どうぞどうぞ」

 

失礼します、と。

 

「ふむ、君が五葉君禎君か。公立華丘大学の二回生、今はコンビニでバイト中らしいね」

「はい」

「一人暮らしかい?」

「はい」

「.....髪、黒染めする気はないのかな?」

「やっぱり、マズイですか?」

 

懸念してたのはここだ。部分的に脱色してるためシルバーにも似た色と元々の黒髪のツートンになってる。

コンビニの方は店長が緩かったのでなんとかなった、今井と青葉、それにあの変態はコネだとしても、バイトできてるんだ、それに髪色に関してはこの街でどやかく言われることはないと思ってた。

天然か染めたのかはわからないが、個性的な髪色が多いからな。

 

「いや、この際目を瞑ろう。言い始めたらキリがない」

「あ、はい」

 

なんだろ、なんか物凄い苦労してきてらしたのかなと思う。

向かい合ってるだけで哀愁が漂ってくる。

 

「で、今回の仕事内容の天体観測の引率スタッフなんだけど、星に関しての知識は?」

「基本的な名前と、形くらいは」

「なら、いいか」

「軽!?」

 

え、そんなんでいいの!?

思わず声に出しちゃっけど、本当にそんなのでいいの!?

 

「いいのいいの、どうせこの辺でしかやらないような、小規模なイベントだから。五葉君もこの辺住みなんでしょ?」

「ま、まぁ一応」

「ならいいか。当日もよろしくね!」

 

そういうわけで、日雇いが決定した。

 

 

 

とは言ったものの、星に関する基礎的な知識はあった方がいいだろうと思って図書館へ行くことにした。

名前と形だけではさすがに味気ない、他に誰がいるかわからないが雑学なんかも交えた方が楽しくなるはずだ。

大学の図書館でもよかったけど、距離的に街の図書館の方が近い。

 

久々に来たなぁ、中学の時以来かもな。全然変わってないや。

あそこに植えてあった木が随分大きくなってる!スゲー!

平日の昼だし、人が少ないな。土日に来ると小中学生が勉強しに来たりしてるんだけど、俺にとってはこのくらいの静かさが丁度いいかもな。

 

–––小中の頃、騒がしい家族から逃げ出すようにして図書館に入り浸ってた日々も思い返せば懐かしい。

姉ちゃんはライブハウスを巡っては色んなバンドを応援してたし、君邦はアホだし、蜜柑は、うん、今井に迷惑を掛け続けてるに違いない。

そして俺はここで色んな本を読んでた、だから星関連の本がどこにあるかすぐにわかる、やっぱここか。

昔っから変わってないな。それにしても、数年ぶりの流星群か、ニュースで見たときちょっと興味惹かれて、この辺で見れる場所にちょうどツアーのバイト募集してたから、どうせなら金も稼ごうって下心はある。

参加費払うよりも、収入になった方が嬉しいし。

 

にしても、知識って使わないと忘れるものだな。昔はもっとわかってたつもりだったのに、大分わからなくなってきてる。

ま、一回覚えたことあるやつだし、見返せば思い出すでしょ。数式とか見るよりはまだ苦じゃないからな。

 

 

 

うぉ!?閉館時間間近じゃねぇか、ヤバイヤバイ!

帰って夕飯の仕込みとか洗濯物とか回さねぇと!

ていうか、今日夜勤だった!

 

 

 

ネトゲーのイベントが本日付で終了した。

目的だった武器は何とか最終段階まで進化することができて、満足満足。

ランキング報酬も上位のものではないが、中の上のブツを回収することができた。

さて、明日は日曜日だから、うちのトリオチーム恒例のあれだ。

 

–––イベントの打ち上げ!

 

 

 

まりなのバイト先のライブハウスCiRCLEの外には小さなオープンカフェがある。

センタースペースには噴水があるのだが、ある日は盆栽、ある日には足湯と時々ありえないだろって頻度で変わったりする。

商店街のマスコットキャラのミッシェルの銅像が建っていたときは焦った。

 

さて、いつも通りプラチナ、もとい白金と➕大魔王ツバサ➕、もとい宇田川の二人と一緒の席に座ってメニューを注文する。今日は臨時収入もあるから俺の奢りだ。

 

「す、すみません」

「白金、こういうときはありがとうって素直に言っとくんだ。宇田川を見てみろ、一番高いの注文したぞ」

「あ、あこちゃん!」

「りんりんも早くしようよー!あこ、早く食べたい!」

 

うむ、宇田川。お前が中学生だとは思わなかった。初めて会ったとき素で小学生だと思っちまったからな。

そして白金も、大学生で一つ年下くらいだと思ってたが、高校生だとは思わなかった。

正直、こんな両極端ともいえる二人が親しい仲だと知ったときも驚きだったけどな。

 

「ま、そう気にすんなよ白金。素直に奢られとけ」

「で、ではお、お言葉に甘えて–––」

 

ちなみにこのオフ会でマカロンタワーを頼むのは恒例行事となっている。

飲み物と食べ物がそれぞれの手元に届いたところで宇田川が素早くマカロンタワーのピンク色のマカロンに手を伸ばす。これも恒例行事だ。

 

「あ、あこちゃん!」

「いいんだって白金、子供は元気なくらいがちょうどいいんだ」

「そーだよりんりん!ここは五葉兄ちゃんに甘えるのが正解だよ!」

 

うむ、何度も思うが俺にはこいつがとても中学三年生にはとても見えない。

 

「それにしても、今回のボスは耐久高かったよな」

「そう、ですね。特に弱点が風だけ、というのもネックでした。風で火力の高い武器は、限られてますので」

「だからって無属性で押したとしてもダメージカットがあったからなぁ、よくソロ周回できたよな白金」

「あ、あれくらいなら...」

 

さすが、今回のイベントランキングトップ十に入っただけのことはある。

平日は学校もあるだろうに、全国の廃課金者が涙するぞ。

白金のプレイは実際に無駄がないからな、必要なところで必要なことしかしない。だから強い。

 

「でも、今回の武器の見た目微妙に格好良くなかったよね」

「–––愚か者!性能バカみたいだっただろうが!」

「–––そうよあこちゃん!あれは今後絶対に必要になってくるから!」

「あ、はい。り、りんりんが珍しく怒ってる」

 

宇田川は基本見た目が格好よければそれでいいみたいだ。まぁ、俺も昔はそうだったからな。

見た目が強そうだったり、限定とかは強いと信じてどれだけ育てたことか。

あぁ、ポケットの中のモンスターの話な。

 

「それに、今回は久々に、スクフェスの、方のイベントもやって、たので」

「え?それであのスコア?」

 

 

 

「そういえば、あのヒナって人は誰だったの?」

「え、あこちゃんの知り合いじゃなかったの?」

「違うよ、あこあんな人と狩りに行ったことないし」

「あー、多分俺がソロ時代にエンカウントした人だ。フレンド履歴見たら結構前に登録してた」

 

俺が一本吸ってる間に話題が変わってたらしい。

そういえば最後の方でヒナも来てたんだな、あの気まぐれはぐれプレイヤー。

 

「あこ、今度のオフ会、誘ってみようかな」

「え、えぇ!?」

「りんりんもいい加減他人と会うの慣れなよ〜」

 

そういえば、俺と初対面のときも凄かったな。

無言で諭吉さんを差し出されたときはどうしようかと。

 

 

 

四日ぶりの夕勤だ。

今日は青葉とレジ、客も少なくスタッフも少ないため大変平和だ。

 

「ありがとうございましたー」

「さんしゃいん〜、あぅ!?」

「何を言うとるんやお前は」

 

何だよ、サンシャインって。そんな挨拶の仕方があるかってんだ。

 

「いやぁ、ありがとうございましたをどこまで崩して気づかれないかどうかの実験をですな」

「せめて勤務中は真面目にしてくれよ、頼むから」

「昨日は有明海って言ってもスルーされたんですよ」

「んなこと、言ってんのは、この口か、コラ!!」

「い、いひゃい!いっふーふぁん、いひゃいいひゃい!」

 

他の客がいないからガツンと言ってやるとにする。せめて挨拶くらいはできる子に育ててやるのが先輩としての義務だ。今後挨拶で人生が左右するって言ってもいいくらい大切だからな。

ていうか、結構モチモチしてるな。

 

「お前、最近太った?」

「いやいや、それはないですよ〜。ひーちゃんにカロリーを送ってるので」

「も、モカ!?」

「うぉ!?いらっしゃい!?」

 

気がつけばレジに常連さんがいつものお菓子を持ってやって来てた。ていうか、いつ店に入ったんだ?

 

「あ、ひーちゃんだ。いらっしゃ〜い」

「もー!何でモカはそう言うこと言うかなー!?一瞬ドキッとしちゃったし、店員さんにも話しちゃうし!」

「今のモカちゃんもここの店員さんだよ〜」

 

なんだ、青葉の知り合いだったのか。羽丘の制服着てるからまぁ、不思議ではないか。

えっと、エクレアが230円、フルーツタルトが217円。

 

「そうだけど、そうなんだけどッ!!」

「いっつーさんいっつーさん、ひーちゃんと一体どういう関係なの?」

「.....よくレジで顔合わすだけだよ、三点で合計748円になります」

「わわ、すみません!ちょっと待ってください!」

「いや、別に焦らなくても大丈夫ッスよ。なんか、いつも青葉に振り回されてる感じですかね?」

「い、いえいえ!そんなことは!」

「そうだよひーちゃん、正直に言っちゃいなよ〜」

「ややこしい!」

 

ダメだ、完全に青葉のペースだ。

 

「せ、千円から」

「.....お客さん、これ五千円札です」

 

 

 

あのお客さんはどうやら青葉のバンドメンバーらしい。いつも苦労してるみたいで、客もいなかったので愚痴られた。

青葉も適当に相槌をくりかえすということをあれから十五分くらいはそんな感じだった。

 

ついでに八月にやるミニライブのチケットまでいただいてしまった。

バンド名はAfterglow、会場はCiRCLEでやるみたいだ。

「夕影、鮮明になって」というイベントの名目でやるらしい。まりなにまた色々聞いてみよう。

 

 

 

その日の夜勤、海輝とシフトが被ってしまったことに後悔しながら、長い夜を過ごした。




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