JKが紡ぐ、青春協奏曲   作:Cr.M=かにかま

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3.あるカップルの日常

 

六月になった、最近雨続きで洗濯物が乾かなくて困ってる。

バイトもヘルプで入ることが増えた。

バイトといえば、この間の立ち読み客追い出したことがネットニュースに上がってた。批判もあれば称賛の声もありで複雑な気持ちだったけど、店長が「やったね!これでうちの知名度上がった!」とか喜んでたこともあり、特に処罰はなかった。

まぁ、ヘルプが増えた理由としては高校生組に中間テストがあったからだ、今となっては懐かしい。

だけど青葉だけは来てたな、あいつ補習とか受けてそうだけど大丈夫なのかな?

二日ぶりの晴れなので、散歩がてらスーパーに買い物に行こう。そろそろ貯蓄しておいた食料品が底をつきそうだ。明後日まりなも久々にウチに来るし、ちょっと奮発しておくか。

 

「タイムセール!タイムセール!今日は惣菜が安いよー!数に限りがあるから早い者勝ちネー!」

 

–––っしゃあ!これで一週間は凌いでやる!!

 

 

 

ピンポーン。

我が部屋の鳴ることがほとんどないインターホンが鳴る。

もう来たのか、思ったより早かったな。

 

「あ、君禎。ちょっと早く来ちゃったけど、大丈夫かな?」

「あぁ、全然大丈夫。片付けも済ませたし、掃除もしといた」

「.....そういうことって隠しとくものじゃないの?」

「隠したところでだろ、それにまりなに嘘つきたくないし」

「そ、そう」

 

まぁ、今日は久々に二人で過ごすんだ。楽しくやりたいし。

 

「まぁ、上がれよ」

「お、お邪魔します」

 

まりなを入れて扉を閉めて五重の鍵を掛ける。

よし、きちんと全部掛けれたな。

 

「.....何もそこまでしなくてもいいんじゃ」

「甘いよ、ここまでしないとあの変態が上がりこんでくる」

「あぁ、白夜君!彼ってあと何回留年するのかな?」

「知らん」

 

まぁ、他人の人生なんて知ったこっちゃねぇ。

小さな机に向かい合って座る。なんだろ、改めて向かい合ってみると本当にまりなって美人なんだよな。

よく、こんな先輩と付き合えることになったな、ホント人生ってよくわからん。

 

「君禎最近大学行ってるの?」

「いや、出る講義ないし。まりなは?」

「私も、もう必要な単位は取ったし卒論のことくらいでしか行くことないかな」

「ってことは、あのライブハウスのバイトが続いてんのか?」

「そうだね、最近になって新人君も入ったからこうして君禎に会える時間も作れてるし」

「.....お、おう」

 

あー、ヤバイわ。破壊力ヤバイわ、浮気なんて出来るわけねぇ。

 

「すまねぇ、一本吸っていいか」

「もう、まだ吸い続けてたの!?」

「.....まぁ、うん」

「健康に悪いからやめといた方がいいよ!今すぐにでも!」

「いや、でも、ちゃんと室内では吸わないから、さ!」

「.....仕方ないなぁ、あまり触れないつもりだったけど、最近また本数増やしてるんでしょ?リサちゃんとモカちゃんから聞いてるよ」

「おま、青葉とも知り合いなのかよ!?」

 

ヤバイ、今井ならともかく、青葉は何口走るかわかったもんじゃねぇ!

とりあえず一本吸わせてもらうか、窓を開けて換気扇回して、ふぅ。

 

「あれ、知らないの?モカちゃんもうちの常連だよ」

「.....ってことはあいつもバンドしてんのかよ」

 

なんてこった、俺の周りの知り合いはバンドしてる法則でもあんのか?

海輝の野郎もやってる、なんてことはないよな。ありそうで怖いけど。

 

「.....最近のバンドブームには恐れ入るぜ」

「本当にすごいよ、皆上手だし」

 

–––いやぁ、青春してますなぁ、十代!

 

「あれ、でも君禎も昔やってたんじゃなかったっけ?」

「お遊び程度だよ、そこまで本格的なもんじゃねぇ」

「そうなの?」

「そうなの」

 

実際、半年ちょっとで解散したし、五年くらい前の話だし。

姉ちゃんの紹介だったっていうのもあるからな。

 

「そういや、姉ちゃんがまた今度ガールズバンドの取材でそっちに行くかもしれないってさ」

「柚子さんが?」

「近いうちにアポ取りに行くって言ってたから、一応伝えとくわ」

 

姉ちゃんは現在バンド関連雑誌を発行する職についてる。そんなわけで嫌でも情報が今までは入ってきてたわけ。

二本目の煙草を吸おうと箱から取り出したところで、まりなの腹がぐぅぅと鳴った。ヤバイ、可愛い。

 

「そういや飲まず食わずでだいぶ話し込んじまったな」

「そ、そうね!そろそろ飲みましょうか!私お酒持ってきてるの!」

「.....え"?」

 

–––どうか、苦情が来て追い出されませんように。

 

 

 

「あははははは!!それでね、聞いてるの、きみさだー!?ていうか飲んでるー!?」

「の、飲んでるよ、うぷ」

 

こ、この酔っ払いめ!

ていうか相変わらず持ってきた酒のラインナップがおかしい!スピリタスにジンにバーボンにテキーラとか、頭おかしいんじゃねぇの!?

俺を殺す気か、俺の彼女は!?

水割りでもしんどいってのに、ていうかこんだけ度数が馬鹿高い酒をどっから調達してきたことやら...

このペースで二時間も飲み続けてるってのによ、なんでまだ飲めるんだ?

 

ピンポーン。

げ、まさか早速苦情か!?

 

「はいは〜い、いまでまーす、よ!」

「お前が行くなぁ!」

 

マズイ、普段のまりなならともかく、あの酔っ払いを玄関に立たせるわけにはいかねぇ!

足がガクガク震えるよ、クソ、皆も無理な飲酒はいけないぞ!自分のペースは守れよ!

 

ていうか、なんであいつうちの鍵の解鍵ボタンの存在を知ってんだよ!?

 

「あ、五葉さ...まりなさん!?」

「りさちゃんじゃないの〜こんばんは〜」

 

よかった、苦情じゃなかった。

って、そうじゃなくてこのタイミングで今井だと!?

 

「ちょ、まりなさんが何でここに!?ていうか酒臭!」

「うへへへ〜、わけぇ高校生だぁ」

「に、逃げろ今井!今のまりなに関わるな!」

「.....五葉さん、夕食が余ったから持ってきたんですけど、いります?」

「あ、肉じゃがだ。ありがとね〜」

「お、お、お前が受け取ってんじゃねぇ!すまねぇな今井、わざわざ夜遅いのによ」

「え、えっと、もしかして私お邪魔でした?」

「いや、んなことない。けど、夜も遅いから気をつけて帰れよ」

「なーに言ってんの!送ってってやんなさいよ!」

「今のお前に俺の部屋を任せられるか!」

 

この酔っ払いを一人部屋に置いとくわけにはいかねぇ!

 

「ほらほらほらほらほら!りさちゃんもどーう?ウォッカ」

「高校生に酒を勧めるな!しかもそんな度数が馬鹿みたいに高いやつ!!」

 

 

 

十分後、まりなは眠りについた。

 

「.....悪いな今井。付き合わせて」

「い、いえ、なんかその、こちらこそ」

 

ベッドで眠ったまりなを置いて今井を家まで送っていく。酔いも覚めたし、歩けるレベルにまでは回復した。

まりなの暴走を止めるのに精一杯で飲んでる暇がなかったっていうほうが正しいのかもしれない。

 

「あのー、まりなさんって普段からあんな感じなんですか?」

「酒を飲むとな。しかも、自分から度数が高い酒を買ってきてあんな風になってる」

「あ、あははは」

 

あいつも禁酒すべきだ、そうすりゃ俺も禁煙を考えてもいい。

 

「あと、肉じゃがありがとな。惣菜が切れちまって食う物に困ってたんだ」

「いえいえ、また何か困ったことあったら言ってくださいね!」

 

ええ後輩や。

 

 

 

「貴様にリサはやらんぞー!酒臭いぞ若造ー!」

「娘さんと俺は釣り合いませんよ!ていうか俺にはもう彼女いるって何度も言ってますよね!?」

「いやー、何回してもこのやり取り飽きなくて!つい!」

「五葉さん、毎度夫の茶番に付き合ってもらってありがとうございます。よく言い聞かせておきますので」

「茶番!?」

「あ、いえいえ。あと、肉じゃがおいしかったです」

「.....お父さん、恥ずかしいからやめて」

 

うむ、今井のご両親は今日も変わらず愉快な方だ。

 

 

 

俺は結局床で寝た。まりながベッドを独り占めしてるからだ。

ていうか、ほとんど寝れなかった、頭がめっちゃガンガンする。

 

「ん、おはよ、君禎」

「.....おはよ」

「シャワー借りてもいい?」

「どうぞ」

 

よかった、酔いは覚めてるみたいだ。

記憶の方は微妙なところだけど、俺の部屋に泊まったっていう事実を受け止めてるっぽい。

まりながシャワーに行ってる間二本吸った、やっぱやめられねぇや。

 

俺はとりあえず二日酔いが原因で今日のバイトは休んだ。




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