題名は未定 作:俺だよ俺
トランスバール暦412年9月
エオニア軍残党の活動が無人有人問わず活発化していた。
皇国の輸送船や民間の商船が襲われ物資が強奪される。皇国軍のパトロール艦隊が攻撃を受けた等、情勢は安定しなかった。
それどころか、無人艦の出現情報が増えて一部の星系からは不安の声が上がり始めていた。
トランスバール暦412年10月
正統トランスバール皇国ことエオニア軍が滅亡して3ヶ月が経過した頃からトランスバール皇国各地で無人艦による襲撃事件が多発、これの調査のためにエンジェル隊が駆り出されることとなった。
そのエンジェル隊は奇しくもテオ星系でミルフィーユ桜庭と共に船を下りていた皇国の英雄タクト・マイヤーズと再会し彼の指揮の下、新しいエンジェル隊の隊員烏丸ちとせを加えて幾度となく襲撃を重ねてくる残党軍を退けて、背後にいた存在と直接戦うことになるのであった。
「宇宙クジラが正体不明の通信をキャッチしたんです。エルシオールの通信記録からも確認済みです。それでその通信の中にEDENと言う言葉が出て来たんです。」
『EDENじゃと?あの大昔の文明の事か?』
「おそらくはロストテクノロジーに関係した何かが発しているものと思われます。そこで、調査期間を延期してさらなる調査を行おうと思うのですが、許可を頂けますか?」
『よかろう・・・・。可能な限りの援軍をだそう・・・・・。』
「おや?急に映像が?おかしいな?」
ルフト将軍たちとタクトの通信が突如として途絶えてしまう。
副官のレスターやオペレーターのアルモが通信を再度つなげようとしたが反応はなかった。
キュインキュインと警報アラームが作動してもう一人のオペレーターのココが正体不明の艦隊のワープアウトを知らせる。
「本艦正面に、艦隊がワープアウトしてきました!」
「なんだと!?」
「識別信号該当なし!皇国軍でも民間船でもありません!こちらの呼びかけにも応じません!」
「レスター!」
「わかっている!総員!第2戦闘配備だ!」
「ココ、敵艦隊の構成は?」
「前方に大型戦艦と思われる艦が1、戦艦級が1、巡洋艦級が4、駆逐艦級が5あります。」
「敵艦から通信です!」
「通信だと?では、あれは無人艦ではないのか?」
「さっそく敵の招待が判明したな。アルモ、メインモニターに回してくれ。」
「はい!」
『あーあーウォッホン!!旧体制に尻尾を振る犬どもに告ぐ!ただちに・・・・・・んなぁ!?き、貴様は!?』
エオニア軍残党の一人レゾムであった。タクトは彼の事はほぼ完全に忘れていてそれが原因で相手を激昂させるに至ったが現在無人艦隊を率いているのが彼で、その後ろにはミステリアスな美女ネフューリアと言うことまでは解った。タクトの「あの美人相手ならもうすこし話しても良かったかな?」発言でフォルテに窘められるなどいつものエンジェル隊の通常運行で戦闘に突入するのであった。
『今こそ真・正統トランスバール皇国軍が世に躍り出るのだぁ!!』
『ではレゾム閣下、我々の力を彼らに見せてあげましょう。』
『うむ!全軍!かかれぇ~!!』
レゾムの号令で無人艦隊が前進を開始する。だが、先の戦いでもそうなのだが彼の戦い方は猪突猛進で読みやすいのだ。
フォルテとちとせだけで全員が集まっているわけじゃないエンジェル隊でもなんだかんだで対処可能な敵であった。
「親玉が自分から飛び出してくれるなんて好都合だね。」
「うまくすれば、ここで一気に敵組織を壊滅できるかもしれません。」
等とフォルテとちとせが言えるくらいには雑魚なのだ。
「敵の攻撃かわしたよ!ちょろいちょろい!」
レゾムの艦隊は馬鹿なのか艦隊を横隊に広げていた為にネフューリアの乗るザーフ級戦艦を躱してしまえばレゾムの艦にすぐに突き当たるのだ。
「いくよ!ストライクバースト!!」
「行きます!フェイタルアロー!!」
2人の機体はミサイルや対空砲火を躱していき・・・
レゾム瞬殺である。
『ぎゃぁああああ!!艦が燃えている!早く消化しろ!!えぇい!撤退じゃあ!!』
むしろ、レゾムが下がった後に指揮を引き継いだネフューリアの方がだいぶ強かった。
「敵の旗艦が後退していきます!」
ココの報告を聞き舌打ちするレスターと手持ちの戦力不足を認め素直にあきらめるタクト。
「ちっ、逃げ足の速いやつだ。」
「しかたがない、今回はあきらめよう。こちらも離脱する。」
ミルフィーユが力を失っており、2機しかいない紋章機でやっていくのは流石に思うところがあるタクトであった。
戦いは始まったばかりである。
そして、エンジェル隊に撃退されたレゾム達は・・・
「くそー!忌々しいエンジェル隊めぇ!!宣戦布告記念・レゾム特製スペシャルグレートミサイルを姑息にも躱し、無人艦隊も撃破するとは・・・・・!ネフィーリア、増援を呼べ!奴らをぎゃふんと言わせてやるのだ!」
「いいえ閣下、今は引くべきです。」
「な、なんだと!?尻尾を巻いて、おめおめと逃げろと言うのか!?」
「今回は、あくまで小手調べ。深追いは禁物ですわ。それに、スプマンテ中将の意向に逆らうことになりますわ。」
「ぬぅううう、じゃが・・・連中に一泡吹かせてやりたいのじゃ。」
「でしたら、中将閣下とは距離を置き独自に動いてはどうでしょうか。皇国最強と謳われる紋章機と渡り合って来たレゾム閣下です。多少の独断は許されるでしょう・・・それだけの功績はお持ちです。」
「そ、そうか。うははははははは!!そうじゃな!!その通りじゃ!!ネフューリアよ!!」
「それでこそ、レゾム閣下ですわ。」
「よし、引きあげだ!ネフューリアよ!あとは任せる!」
「っは!」
そう言ってレゾムが部屋から出て行くのを見送ってから・・・
「・・・・・・そう、今は早い・・・気は必ず熟するわ。もうすぐ・・・もうすぐよ。うふふふ・・・・」
惑星ナンタケットの暗礁宙域で様々なスペースデブリを寄せ集めて作られた正統トランスバール皇国の残党軍の基地、通称【蔓の園】。スプマンテ中将の艦隊を軸として多くの残党兵が糾合され大きな勢力となっていた。
「閣下、レゾムより連絡です。『エンジェル隊と交戦、計画通り小黒き月を持って、エンジェル隊を撃破する。』とのことです。」
「流石は猛将レゾム。自ら囮を買って出るとは見上げた男よ、かの者の忠義に報いる意味でも我々は我々の計画を完遂せねばならん。」
「閣下・・・・差し出がましい様ですが、レゾムの動向にご注意ください。レゾムの手持ちの戦力、本人の報告よりも明らかに過大です。なにかしらの企みがあるのやもしれません。」
「お主が言いたいのはネフューリアとか言うレゾムの横にいた女のことか?」
「はい、その通りです。閣下、我々とて軍内では高位に居ました。秘匿基地の管理人などと言う重要な存在が我々の知らぬところとは思えません。特に閣下は今は亡きブリストル閣下に並ぶ重鎮。その様な方が知らぬとなると・・・」
「ネフューリアとか言う女が、我らの手の及ばない黒き月のインターフェイスのような存在なのではないかと疑っておるのだな。」
「・・・・・・・・・」
「そうだな、警戒はしておこう。レゾムがあのような女に誑かされてエオニア様に引き立てられた恩を忘れるとは思わんが、我らも警戒することにしよう。」
レゾムとの戦いが本格化していくのを感じるクルー達、それを感じて自分の愛する人のためにミルフィーユは先の戦いで失った力を取り戻そうとフォルテのまねをして銃を撃ってみたり、ランファのまねをしてトレーニングをしてみたりして、いろいろなことに挑戦したが結局取り戻すことは出来ず。思い詰めた彼女は独断で紋章機『ラッキースター』で出撃してしまったのだ。強運を持っていた頃の様に高速でラッキースターを手足のように動かせているわけでもなく、出力が安定せず通常速度よりすこし劣る程度の速度で敵の攻撃衛星に進んでいく、通信がつながらないミルフィーユの乗るラッキースターを止めるためにタクトはシャトルに乗り込む。
「目の前に攻撃衛星がいる。すぐにエルシオールに戻るんだ。」
「敵がいるのはわかってます。だから、あたしがやらなくちゃ!」
「タクトさんこそ先に帰ってください!ここは危険です!!」
「できるわけないだろう!?どうして勝手なことばかり言うんだ!・・・・・・・・ミルフィー、頼むから戻ってくれ。」
すれ違うふたり
「イヤです!」
「なんでわかってくれないんだ!?君を危険な目に遭わせたくないんだ。聞いているのか、ミルフィー!勝手なことをしないで言うことを聞いてくれ!」
男の意見を押し付けるような言い方、緊急事態であるがゆえにタクトもミルフィーを りつけるような一方的な形になってしまう。そうやって責められた彼女も追い詰められ感情が爆発してしまう。この流れは場合によってはカップルが破局に向かう喧嘩が勃発する流れにもなるのだが、今回はお互いの気持ちを吐露し合うことで良い方向に向かって行く。
「あたしはタクトさんのために、ケーキを焼きたいんです!ケーキを焼いて、お茶を淹れて、タクトさんと一緒に過ごしていたい・・・・・・。ふたりで笑って、タクトさんがケーキをおかわりして、それをあたしが切り分けて・・・・・・・・・そうやって、普通に過ごしていたい。・・・・でも今は戦争だから、ふたりでおしゃべりすることも、一緒にごはんを食べることも出来なくなって・・・・・・。そばにいる事も出来なくって。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「早く平和が戻ってきて欲しい。みんな、ニコニコ笑えるようになって欲しい。タクトさんと、また遊園地に行って、お弁当を食べて一緒に過ごしたい。あたしの作ったケーキを食べて、「おいしいよ、ミルフィー」って言って欲しい。タクトさんに・・・・・・笑って欲しい。だからあたし、この戦いを終わらせたいんです!そのために、何かしたいんです!タクトさんのために・・・みんなのために役に立ちたいんです!!・・・だってあたしは、タクトさんの事が好きだから!ずっと一緒にいたいから!・・・・・・一緒に・・・・いたいです・・・!いつだって一緒に・・・・。タクトさんと・・・・・一緒にいたいよう・・・・・・!うぅ・・・・・・ひっく。」
「ミルフィー、すまなかった。ミルフィーを守りたいって気持ちは本当だ。でも・・・・・いつの間にか俺は君の気持が見えなくなっていた。ちゃんと見ようとしていなかったんだ・・・。ごめん、ミルフィー。本当に・・・・・・すまない。一方的に守ったり、守られたりするのは、本当の好きなんかじゃない。お互いに守り合い、支え合うのが好きってことなんだ。」
タクトの本当の心からの気持ちに触れたミルフィーは胸に手を寄せ「好き」と復唱する。その顔は気恥ずかしさなのか、自分の気持ちを吐露する時に泣きはらしたからなのか桃色に朱が差していた。
「ミルフィー、俺には君が必要だ。だから・・・・一緒にいて、力を貸してくれ。一緒にケーキをたべたり、いっしょにおしゃべりしたり、ためにはケンカなんかしたりして・・・。そして・・・・・・ふたりで一緒に力を合わせて生きて行こう。だって俺は・・・。ミルフィーが、大好きだから。」
「タクトさん・・・」
「これからは、どんなときでもふたり一緒だ。」
「はいっ!あたしも好きです!タクトさんのこと、だいだいだ~い好きです!!」
「ミルフィー」
『おい!聞こえるか!?タクト、応答しろ!』
タクトの乗るシャトルとミルフィーのラッキースターの両方の警報装置が作動して敵の接近が伝わり、レスターからの緊急通信が繋がる。
「レスター!通信が回復したのか?」
『それどころじゃない!攻撃衛星がミサイルを発射した。逃げろ!』
レスターからの通信でかなり切迫した状況が伝わる。
「タクトさん!ミサイルがいっぱい飛んできます!」
『タクト!ミルフィー!あたしたちが行くまで辛抱しておくれ!』
『で、でも、フォルテ先輩、間に合いそうにありません!』
フォルテとちとせの紋章機がふたりの救援に向かおうとするも間に合いそうになかった。
「ミルフィー!ミルフィー!!逃げるんだ!!」
タクトの叫びがこだまする、一巻の終わり。だが、奇跡は起きたのだ。
「大丈夫です!タクトさん!いまのあたし体中に暖かい力がどんどんみなぎってくるみたいなんです!」
ミルフィーの言葉に反応するかのように紋章機が淡い光に包まれて、光の羽が発現する。
「ラッキースター、シールド全開!」
天使の羽が包み込むように機体を守り、殺到するミサイルを全て防ぎきる。
白い翼を生やした幸運の女神に傷をつける事なんて出来ないのだ。
「いっけぇええ!!ハイパーキャノン!!」
放たれたハイパーキャノンは今までため込んでいたミルフィーの強運を吐き出すかのように高威力で期待を旋回するとまるで鞭のようにビームが波を打って周りの敵を撃墜して行く。
「タクトさん、あたし・・・ラッキースターを動かせます!」
「ミルフィー・・・・・まさか!強運が戻ったのか!」
「タクト、ミルフィー!よかった・・・・・・無事だったんだね。」
「だいじょうぶですか、タクトさん!ミルフィー先輩!?」
「フォルテさん、ちとせ!」
「まったく、ヒヤヒヤさせるんじゃないよ!寿命が縮むったらありゃしない。」
「す、すいませ~ん・・・」
フォルテに少し怒られて申し訳なさそうにするミルフィー。
「しかし・・・・・・本当に、ラッキースターを動かしちまうなんてねぇ。」
「フォルテ先輩、ミルフィー先輩。敵が接近してきます!」
「追っかけてきたか・・・・。打って出るよ、ちとせ!」
「フォルテさん、あたしもいきます!」
「いけそうなのかい、ミルフィー?」
「はい!どうにもこうにも絶好調です!」
「どうするんだい、タクト?」
フォルテは一応確認のためにタクトに許可を求めてきたがそんなことはもちろん決まっている。
「もちろんOKに決まってるさ。」
「タクトさん・・・」
「それじゃあ、俺はエルシオールに戻って指揮を執る。ミルフィー、あてにしてるからね。」
「はい、任せてください!バーンってやっちゃいます!」
タクトの言葉に明るい調子で答えるミルフィーを見て、タクト達はミルフィーの完全復活を確信した。
「はーい!ミルフィーユ、いっきま~す!」
その後の戦闘も完全復活したミルフィーをもってすればもはや何の問題もなかった。
しばらくはオリジナル及びクロス要素なしで進みます。地味ですね・・・
当たり障りのないオリジナル要素はちょいちょい出てますけど、ちなみに残党軍内でのレゾムの評価が高いですがあまり意味はない。レゾムはネタキャラとして結構好きでした。そして、劣化デラーズフリートはネフューリアさん退場までほぼ出番なしです。オリキャラ埋もれる・・・・