地霊殿の座敷わらし   作:らずべる

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大変長らくお待たせしました!!
リアルの方もようやく落ち着いてきたのでぼちぼち連載再開していきます。

~前回のあらすじと登場人物~
主人公:(あずま)ゆり 地底に落ちてきた座敷わらし。現在は地霊殿にてこいしの従者をしている。

お空が暴走してどうにも手を付けられなくなってしまったことに悩むゆりとお燐。悩んだ末に博麗の巫女に助けを求めるべく地上へと怨霊を解き放った。


第九話 巫女と従者

 運の悪いことに地底の怨霊たちが地上へと行き来できるようになってしまってからはや五日、ようやく博麗の巫女達が地底へとやってきたようで、旧都の方でまばゆい光とともに弾幕による爆発が起こります。

 地底に暮らす者たちは大概普段の肉体勝負ではない、弾幕ごっこなどというものを見るのは初めてなもので、館で働く大勢の妖精や動物霊たちは玄関先でわらわらと遠くの光を眺め、一体彼女らは何処へ向かうのか、等と賭け事までして盛り上がっています。

 

「おや、もう中に戻るのかい」

 

 私が館の中に帰ろうと立ち上がると、隣で旧都を眺めていたお燐がその場で大きく伸びをしました。

 

「巫女達がどこへ行くのかなんて、賭けるまでもないことですからね」

 

「違いないね、じゃああたいはあの人間たちが迷わずにお空の所まで行けるように道案内をしよう。どこかの誰かさんみたいに方向音痴だといけないからね。……っとと、そんな妙な顔するなって」

 

 そう言ってお燐は笑います。私が方向音痴なのは自分でも認めてますから、特に何も言い返すことがないのが些か悔しいところですね。

 さて、そのまま準備運動を始めてしまったお燐は放っておいて、私は巫女達が襲撃してくるまで普段通り、いつも通りの作業を続けることとしましょう。

 

 

 軽く館の掃除を終え、適当にお昼の用意を済ませて机の上を片付け始める頃にはいつの間にか喧騒が館の中へと入ってきていました。

 妖精達はわいわいと盛り上がって巫女達に攻撃を仕掛け、あまり好戦的でない動物霊達は廊下の隅や部屋の窓からその喧騒を見物しています。見物には攻撃が向かない辺り、どうやら道を塞ぎさえしなければこちらに害を与えるつもりは無いようですね。

 

 おや、いま躍り出た黒猫はお燐ですかね。巫女の前に弾幕を張り、戦いを挑んだようです。…………生憎全て避けられてしまいましたが。

 暫くの間お燐は巫女達を相手に健闘していましたが、その弾幕のほとんどを避けられ、逆に被弾の方が多くなっています。

 どうやら痛手を負う前にさっさと撤退することにしたようで、お燐は中庭へと駆けて行きました。引かれるように巫女達もその後を追います。

 

 道行く先を塞ぐように躍り出た幽霊や妖精達をちぎっては投げ、ちぎっては投げと蹴散らしつつ巫女達は廊下を突き進んでいき…………おっと、この先にあるのは確かさとり様の部屋だったはずです。流石にここまで騒がしくすれば部屋の中まで喧騒は届いているでしょうからそろそろ部屋から出てきてもおかしくない頃合いです。

 今の私は心を読まれてしまうと少々まずい状況ですから、観客の隅に紛れ込んでしまいましょう。

 

「全く………………誰かしら? 人間……? まさかね、こんな所まで来られる筈がない」

 

 噂をすれば早速、さとり様が巫女たちの前に立ち塞がりました。

 

「大丈夫だ。人のいる家の家捜しをするのは基本中の基本」

 

 それに応対したのは白黒の、魔女っぽい方の人間ですね。些か返答になってないような気もしますが。

 

「あんたは何を言ってるのよ。まあいいわ、さっきの鬼は私が戦ったんだからこいつは魔理沙、お願いね」

 

「はいはい。おい、そこの。もっと温泉を湧くようにして欲しいんだがどうすればいいんだ?」

 

 そう言って魔女の方はさとり様と会話を始めます。一方紅白の、恐らく巫女の方は地面に降りるとどうやら観戦に加わるつもりのようで私がいる方とは反対の、廊下の隅に向かっていきました。

 巫女が向かうと流れるように辺りの動物霊達が避けていき、空いた空間に腰を下ろそうとして…………私と目が合いました。

 

 暫くの間なにかを考えるように首を傾げた後、彼女はこちらへと向かってきます。

 その瞳は真っ直ぐとこちらを見据えており、私の近くにいた動物霊達は蜘蛛の子を散らすように逃げていきます。

 視界の端ではさとり様と魔女の弾幕ごっこが始まったようで、色んなものが飛び交っています。

 

「ねえ、貴女。ここの妖怪じゃないでしょう?」

 

 私の前に立って開口一番。鋭い問いが飛んできました。

 

「何故、そのようなことを?」

 

「勘よ勘。巫女の勘ね。あんたはここに来るまでに見た地底の妖怪達とは全く違った雰囲気がする」

 

「あら、霊夢どうしたの?」

 

 どう答えたものかと考えていれば巫女の陰陽玉からどこか聞きなれた声が聞こえてきました。紫様が巫女の後ろに憑いてるのでしょうか?

 

「地底に地底らしくない妖怪を見つけただけよ。ユリの髪飾りをした小さな妖怪ね」

 

「……小さくてユリの髪飾り、ね。もしかしてその妖怪、おかっぱで短い黒髪かしら?」

「なによあんた、こいつのこと知ってるの?地底の妖怪は出会い頭に倒しなさいとか言ってた癖に」

「最近見なくなったと思ったら、地底に迷い込んでいたのね。

……彼女はゆり、人間に利用されてしまった妖怪。そして秋に起こった強盗事件の被害にあった家に憑いていた、座敷わらしよ」

「なんですって!? 人間に利用されていた座敷わらしなんて話聞いてないわよ! それに秋の強盗って(あずま)の爺さんの……っ!?」

 

 気がついた時には人間の巫女に向かって飛びかかっていた。牙もない、爪もない、武器もなければ策もない。ただの無謀な飛びかかり。

 

「……爺様を、返せ!」

 

 彼女に言っても仕方がないのに、言葉が溢れてくる。

 何故だろう、涙が止まらなかった。

 

 

 不意討ちにも関わらずその攻撃は巫女が構えたお払い棒で呆気なく止まり、私はそのまま、崩れ落ちるように意識を失っていった。




なんとか次は2月中に……!

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