相も変わらず真夏を越えるような熱さを誇る灼熱地獄跡。地下に蓄えられた溶岩やあの烏の人達が管理している熱源によって進めば進むほど熱さは増していきます。
……普段では、考えられないほどまでに。
「さて、先程の侵入者はここで何をやらかしていったのでしょう。恐らく、この異常な熱さに関係していそうなのですが……」
「お?ゆりじゃないか!」
しばらく進み続けて奥地にたどり着いた頃、曲がり角に燐さんが立っていました。
「ちょうどよかった!お空がなんかおかしいんだ!力をもらったとかなんだとかで暴れてる!」
「空さんが?それに力をもらったって…………」
どう考えてもあの妙に神々しい侵入者の仕業でしょう。空さんにどんな力がついたのかはわかりませんが、燐さんに先程起こったことを手短に説明します。
「侵入者ぁ!?それは気づかなかったよ! 逃がしちまったのが悔やまれるね。今のお空、あたい達じゃ手も足も出ないさ」
「さとり様に報告しましょうか?」
「そうだねぇ…………いや、ダメだよ。もしこの事がさとり様に知られたら、お空は、お空は処分されてしまうかもしれない」
処分……ですか。私が思うにさとり様はその程度のことで処分してしまうような怖い人ではなかったと思うのですが…………確かに、あの方は何を考えているのかわからないこともあって、安全だと断言できないのも苦しいところですね。
「では、どうしましょう。私たちには手に負えませんが、さとり様に知らせるわけにもいかない。しばらくの間説得に通って落ち着かせてみることにしましょうか」
「…………そうだね、そうすることにしよう」
うつむいていた顔を上げ、燐さんは頷きます。
こうして、私たちはお空の説得に通こととなりました。何度か燃やされそうになりながらも通い詰めること三日。結局お空さんの暴走は止まらず、挙句の果てにその力でもって地上を侵略しようとまで言い始めました。
お空さんが灼熱地獄跡の火力を上げ続けて最早ここは常人の立ち入ること不可能な熱さになっています。その熱によって今頃地上では地下水が温泉となって間欠泉から噴き出していることでしょう。
「ダメだよ、お空がどんなに強い力を手に入れたって、鬼とかの大妖怪には敵わない……逆に消し炭にされてしまうよ……」
燐さんの呟きが地面に転がります。
確かに、あの状態でのお空さんでも全力の鬼や紫さん、博麗の巫女にもかなわないことでしょう。
…………博麗の巫女?
「燐さん」
「なんだい」
「地底に知らせるのがだめなら地上に知らせるのはどうでしょう。確か聞いた話だとつい数年前から異変解決の方法に非殺傷性の方法がとられるようになったみたいですよ。スペルカードルールとか言う試合形式の解決方法」
「地上……かぁ。そうだね、博麗の巫女とはいえ人間が勝てるとは思えないけど、それ以外にいい方法もないしね。それに運が良ければ地上の妖怪が程よく倒してくれるかもしれないしね。」
そういうと燐さんは怨霊を集め始めます。
一体どうやって地上に現状を伝えるつもりなのでしょうか。
「……さて、これからやるのは最大の禁忌。なんてったって、地上に怨霊を放とうってんだからね」
どこか覚悟を決めた顔で呟くと、燐さんは何回か怨霊に指示をすると、勢いをつけて思いっきり、灼熱地獄跡の壁を蹴り砕きました。
「燐さん!?」
「ありゃ、あまりの熱さに脆くなっていたのかね、偶然地上と繋がる空間に自由に行き来できるようになっちゃった」
わざとらしく、燐さんが言い放ちます。
ふふっ、偶然空いてしまったのなら仕方ありませんね、ここが直るまで怨霊が地上へと行き放題になってしまいましたが、このことに気が付くのは暫く先のことになりそうです。
「さて、私は暫くこの辺りで怨霊の数の管理を行っているからゆりちゃんはこいし様の捜索をしてくるといいよ。この三日間見かけていないんだろう?」
ええ、ええ。実はその通りなんです。前は一週間くらいふらっといなくなってることもあったみたいなんですが、私がここに来てからは初めてのことで、この三日間どうやらこいし様は地霊殿に帰ってきていないようなのです。
こいし様を見なくなった時と侵入者がやってきた時がほぼ同時期ですから、どこに行ったのかは大体予想はつくのですが、あの侵入者がどこに住んでいるのかわからない以上私は待つしかなさそうです。
私は燐さんと別れるとこいし様の部屋の掃除を行うべく地霊殿へと向かいました。
……早いこと帰ってきてくれると安心できるのですが。
投稿遅れて申し訳ありません。
次回は七月中には上げたい…………