逆行カネキくん。   作:とある妖星
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中身

戦闘の最中、時折響くその音は快音とは言えない。肉塊、時として金属を叩きつけるような不快な音が高架下の為か余計に響く。

「ハッ!おせえんだよ!」

「ッチ……」

西尾先輩の放った蹴りは赫子の処理に気を取られていた僕に容赦なく襲いかかる。

(やっぱり蹴りは少し効くな…まあ再生するから大丈夫だけど)

「おいおい……口ほどじゃねぇなあ。手応えなさすぎてつまんねぇなあ片目だけ赫い半端野郎。」

「容姿は関係ないでしょう。後、手応えが無いだのは僕の本気を受けきってから言ってください。」

「へぇ……強がりもそれぐらいにしといたらどうだ?死ぬ前に負けて情けない姿を友達に見られたくないだろ?まあもう永近には友達だなんて思われてないかもしれないけどなあ!」

「まさか友達だと思ってたヤツが『喰種』だったn「黙れ」……あ?」

「それ以上ほざくようなら二度と動けないようにさせてあげますよ。」


「あまり年下を舐めない方がいい。」


殺気が漏れる。感情に身を任せることはあまりないと自負していたつもりなのだけど。

「…‼︎(こいつ……雰囲気が変わった…なんつーかわかんねえ変な気分なんだが……クソが。こいつ一体ナニモンだ?)」

(……頭に血が上っちゃってたな…ヒデのこと話に出されてちょっと焦ったんだろうな…つくづく馬鹿だなあ僕は。さっきヒデのことは考えないでこっちに集中したつもりだったのに……もういいや。これ以上ボロが出ても困るしそろそろ終わらせる…)

余談だけどこういうときに有馬さんならどうするだろうと考える。戦闘においてはチートな彼がいたせいで敵と対峙した時はこんなことを考えてしまう。
いや、有馬さんなら、と考えたほうが楽なのだ。実際にあの人が放つのはいつも最善手。よって、簡単に言えば彼の真似をすれば勝てるのだから。
まあ有馬さんの動きに自分の体がついていけるのかは別の話だけど。
悲しいけど僕は有馬さんほどじゃないからな…テンプレをなぞってみるか。


まずは敵の死角に入って…


「は?」


打ち込む。


「終わりです。」


ズブッ


「な……ん………な、何が…見えな……クソが…」

「…単純な作業って難しいですよね。今やったやつを更にスピードアップさせろなんてとある人に言われたんですよ。鬼畜ですよね…って西尾先輩もう聞いてないか。」

今僕がやって見せたのは捜査官時代に教えられた戦い方。本当に単純なものだけどね。
標的に一気に接近し殺しきる。複数のシチュエーションや武器で多少の差異はあっても基礎基本はこれ。

ハイセには気の毒だけど今思えば捜査官をやってみてよかったと思う。知り合いも増えたし戦闘の幅も広がった。悪い気はしないな。

「急所は外してるんでちゃんと喰べて回復すれば死にはしないと思います。ありがたいと思ってくださいよ…全く。」

僕は返り血のべったりと付いた上着を脱ぐと、血の匂いが充満する高架下で彼を探す。そして、間もなく見つけると彼の方へと歩みを進める。

一歩踏み出すたびに心臓が激しく拍動するのがわかる。足が重たい。逃げ出したい。いくつもの感情が僕の中でせめぎあっては消えていく。


落ち着け…何も悪い結果になると決まったわけじゃない。


近づいて見たヒデの顔には隠しきれない動揺が見える。
さすがのヒデでもまだこの頃は僕が喰種だって気づいてなかったみたいだ。

「か、カネキ…お、お、お前…喰種だったのか…?なんか入院してから雰囲気が違うとは思ってたけど…」

「……その通りだよ。黙っててごめん。ヒデは人間だから…僕は喰種だって言ったらどうなるのか……つまり怖かったんだ。」


「ヒデも…僕が恐いでしょ?」


「まあ怖くないと言っちゃあ嘘になるけど…実際見るの初めてだし。でも俺はお前が悪い喰種だとは思わねえ。実際に今、助けてくれたしな!」

やっぱりヒデは優しいな。前の僕もこうやって打ち明けられればよかったのに。過去のことをいくら咎めても無駄だけど。

「ヒデ……うん。ありがとう。僕も色々と言いたいことがあるんだけど先に西尾先輩をどこかに置いてこないと面倒なことになるからちょっと場所を変えるよ。」

「場所を変える?どこに行くんだよ。」


––––––移動中––––––


「で、なんでここに来るんだよ!」

「いきなりだね。トーカちゃん…いや、ほんとごめん。」

前の西尾先輩はあれから自力で家まで帰ったらしいけど今回は全体的に赫子を突き刺しちゃったから多分それは無理。なら連れていくと考えたときにアオギリは物騒すぎるからあんていくに連れていこうと思ったんだけどトーカちゃん含めみなさん困惑してるよう。

「いや、本当に申し訳ないです…さっきちょっと西尾先輩にちょっかいかけられちゃって…それで返りうちにしたはいいんですが見殺しには出来なかったのでここに持ってきちゃいました。すいません…」

僕が謝ると何か言いたげなトーカちゃんを制して店長たちが話し始める。今日は入見さんや古間さんもいたみたいだ。

「いや、見殺しにはできないっていう人間性が金木くんから消えてなくて安心したよ。君は元人間とは思えないほどに喰種的な思想を持っているからね。」

「ニシキもバカねえ…あなた以上に強いやつは山ほどいるのに喰い場を仕切ろうだなんて…それで新入りに手出して返りうちに合うとか…お笑いもいいとこよ。本当。」

「そうだねえ。とりあえずニシキ君は僕たちが預かろう。店長もそれで問題無いですよね?」

「うん。意識を取り戻すまで少し面倒を見てあげよう。」

店長たちはかなり協力的だな。でもやっぱりトーカちゃんは納得してないみたいだ。

「なんでニシキの面倒なんか…てかそれよりもっとやばいことがありますって!」

そう言って彼女は僕を指差す。

「なんでここに人間を連れて来てんだよ!?」

「ふむ。それは私も気になるね。どうしてだい?金木くん。」


それもそうだ。


「ヒデのことですか…実は僕と西尾先輩の戦いに巻き込んでしまって…本来なら始末したほうがいいのかもしれませんが彼は子供の頃からの幼馴染なので殺せなくて。でもCCGに通報されても困るので連れてきちゃいました。」

(無意識だったけど始末とか殺すとか中々に物騒な言葉遣いになってしまった…ヒデからの視線が痛い)

「……金木くん。君の気持ちはわからないでもないが君がここに人間であるヒデ君を連れてきてしまったことで僕らも立場が更に危なくなった。……ヒデ君が裏切れば私たちは死ぬだろう。私は人間が好きだが、それ以前に喰種だ。その人間が私や他の喰種に被害を及ぼす可能性があるのなら」


「私は手を汚さざるを得ない。」


「…もちろんわかってます。ヒデは人間のままこちら側に入り込んでしまった。言い方は悪いけど僕たちにとっては面倒な存在。でも殺させたくはない。」

「そこで、一つ僕に提案があります。ヒデを生かして僕たちも安全に過ごす為の提案が。」

「そんなものがあるのかい?」

「ええ。ですが大前提としてヒデの同意が必要です。ヒデが生きるためには人間としての生活を捨てなくちゃならないですから。」

そう言って店長からの圧を受け流すとヒデと目を合わせる。

「というわけでヒデ、巻き込んでしまって本当に申し訳ないけどヒデが生きる方法はこれしかないと思うんだ。僕はヒデを殺したくない。同意してくれるかな?」

「同意も何も…断れば死ぬんだろ?同意するしかないだろ。」

「あはは…ごめんね。僕のせいで勝手に人生狂わせちゃって。」

「いや軽いな?!まあ実際巻き込まれたのもお前のせいじゃなくて先輩のせいだし人生って言ったってうちの親とかは…いや、なんでもないわ。
とにかく!俺が言いたいのは人間を捨てたって構わないぜってこと。お前がいてくれればなんとかなるだろ。強かったし。」

(ふぅ…第一段階終了。後はあんていくのみなさんが賛成するかどうか。)

僕は強いだなんて言ってくれたヒデにありがとうって返すとあんていくのみなさんの方に向き直る。みんなすごく訝しげな顔をしている。無理もないけど。

「とりあえずこれでヒデ君の許可は取れたね。で、金木くん。その提案を話してくれないかな。」

「それは…」




「『ヒデを喰種に仕立て上げる』ということです。」