ロクでなし講師と魔眼保持者 作:斎藤
目が覚めたら見慣れない天井が目に映った。
昨日何をやったのか考えればなぜ見慣れない天井が目に映るのか理解した。
ルミアの告白や手を繋いでいたことが恥ずかしくて忘れようと酒を飲みまくったんだ。そして倒れた。覚えているところをみると倒れ損だったな。
ならここはどこだ?誰かの家、病院。どちらだ。
「ラヴァル君、目が覚めたんだね」
横を見れば微笑んでいるルミアがいた。ここにルミアがいることでフィーベル家という線が濃厚になった。
「ルミア、ここはどこだ?」
「ここは私が居候させてもらっているシスティの家だよ。昨日はラヴァル君が倒れちゃって、グレン先生が運んでくれたんだからね」
あのグレン先生が運ぶことに驚いた。あの人って結構生徒思いなんだな。
「ごめん。ありがとう」
「どういたしまして」
ルミアは笑顔を向けて来る。
「今日が休日で良かったよ。朝から銀……フィーベルに煩く言われるのは嫌だったし」
「ラヴァル君、今日は暇?」
「今日も帰って寝るから暇じゃないかな」
「暇なんだよね。買い物に付き合って貰えないかな?」
「えぇ…遠慮がなくなってない……ま、いいけどさ」
「ありがとう!初デートだね」
「デートなのか?」
「好きな男の子と買い物を行くんだからデートだよ」
「よく恥ずかしくもなくそういうこと言えるな。ほんとすごいよ」
「だって、ラヴァル君から来てくれることなんて天地がひっくり返ってもないでしょ。だから私からいくの」
「なるほどな。仕方ない。行くか」
ベッドから降りて立ち上がる。昨日の酒が少し残っているのか、寝てすぐだからか少しフラつきそうになったがなんとかバレずに済んだ。
「うん!」
凄い嬉しそうだなぁ。としか言いようのない元気有り余る返事で、何故俺なんかと遊んで喜べるんだと思いながら二人でフィーベル家を後にした。
二人で街中を歩く。俺の右手はルミアの左手に握られている。そのまま引っ張られながらルミアが行きたいところに回っていた。ちなみに何1つとして買っていない。装飾品を見たり服を見たり俺を着せ替え人形にしたりと正直疲れた。そして昼時になることでカフェ的な所に向かっている。
「それでね。ここのパンケーキがすごく美味しいの!ラヴァル君は甘いもの苦手?」
「甘いものは好きかな。魔法使ってると頭使うし、糖分取らないとやってられないからね。それで、今向かってるのは…」
「ラヴァル君の予想通りそのパンケーキのあるお店だよ」
何やら今向かっているのはフィーベルと行ったらしい絶品のパンケーキがある店のようだ。割と甘いものが好きだから嬉しい。
「今から期待してるよ」
「うん。絶対に美味しいから期待してて……と、ここだね」
お洒落な店の前で歩を止める。窓から少し中が見えるが女性客ばかりだ。男性客が全く見当たらない。
入り辛いと思っていたらまた俺の手を引っ張って店内にルミアが入っていった。入っていけば店員に席を案内され、座ることができた。やっぱ立つより座る方が楽だ。
俺が楽だと思っている間にルミアが何も分からない俺の分も注文してくれた。俺は何がいいかなど全く知らないためそうしてくれると本当にありがたかった。
「ラヴァル君は過去に付き合った人とかいるの?」
突然切り出された会話は俺の心を抉った。恋人いない歴=年齢な俺にはこの質問は効く。だけど恋人がいなかったのは仕方ないことなんだ。前の国にいた頃はずっと戦場にいたから仕方ない。これは自分に言い聞かせてるわけではない。戦場にいる人間に彼女なんてできないからな。まず必要と思ったこともないし。
「い、いやいない……」
「良かったぁ…」
心底嬉しそうに安心している。別に交際経験があったとしても今付き合っている人間がいなければいいんじゃないかな。そう思うのは俺だけだろうか。
「なんでそんなに嬉しそうなんだよ。言っとくけど男で彼女いない歴=年齢は割と恥ずかしい称号だぞ」
「そうかな?私達はまだ15,16歳だからまだ大丈夫じゃないかな?」
「甘いな。早いやつは先の先へ行っているよ。前の国ではそうだった」
「前の国……私、ラヴァル君のことまだまだ知らないんだね」
「そりゃ、何も言ってないからな。そういや俺のこと知りたいって言ってたよな。良い機会だし質問に答えてるよ。言いたくないことは言わないけどね」
「ほんとに?なら言葉に甘えてまずは、前の国ってどういう国なの?」
「そうだな。年中戦争する頭のイカれた国かな。だから戦争孤児が多いし、俺もそうだった。子供の頃は死体から装備品を剥ぎ取って生計を立ててた」
「それは…」
何を言えば分からない。困ったような顔をしている。ま、普通はそうなるよな。俺でも逆の立場なら何を言えばいいか分からない。
「もう昔の話だし別に気にしていないよ。この質問タイムはパンケーキが来るまでだからな」
「え!?じゃあその眼について教えてくれたりは?」
「それはできないかな。この眼については前の国ですら黙ってたから。『魔眼』ってのは想像以上に嫌われてる。見つけたら即殺せってくらいだ。この眼を知ってる人なんてルミアを含めて4人。グレン先生とフィーベルが気づきそうなくらいか」
「ごめんね」
「ルミアは悪くないだろ。悪いのは『天の智慧研究会』でしょ。グレン先生やフィーベルにバレても何もしてこないだろうと思うしセーフセーフ」
「うん。2人とも優しいから絶対に大丈夫だよ」
「俺もルミアに聞きたいことがあったんだけどいいか?」
「私に?大丈夫だよ」
「自衛の手段を覚える気はないか?」
「自衛の手段…?」
「そそ。いやね、流石に狙われすぎてるから抵抗手段があったら時間稼ぎできて、その間に駆けつけることもできるでしょ」
「……私にできるかな?」
「ルミアは白魔が得意だから俺が教えるとしたら精神汚染系の魔術かな。だからルミアの思い描く将来には不必要なものだけどどうする?」
「私、みんなに迷惑ばかりかけてるから、覚えられるならそうしたい」
「決まりだ。結構時間かかると思うけど俺が教えるよ」
「ありがとうラヴァル君。やっぱり、優しいね」
「よせよ。俺は自分を楽にしたいだけだよ。ルミアを守るってのはアリシアさんとの約束になってしまったからな」
「それでもだよ。照れちゃって可愛いな」
「男に可愛いはちょっとなぁ……あともう1つ。ルミアに魔術を仕掛けておいていいか?」
「私を守るためのものなんだよね。大丈夫だよ」
「1つは準備があるから後でやるけど、ディスペルされた時に俺が検出、そしてルミア自身に結界を張る大魔術とただ単にディスペルされなければ居場所を知れる魔術の2つを掛けさせてもらう。2つ目のは今かける」
そう言って腕をルミアの手に伸ばして魔術を発動させる。これでルミアの居場所が常に知ることができる。文にしたら犯罪臭がするな。
「ほい、これで終わり。即興で作った魔術だからあまり期待はできないけど、後でかける魔術は考えに考えた魔術だから期待できる」
「ありがとう。ラヴァル君には貰ってばかりだな」
「俺は平和な日常さえ送れればいいから気にすんな。ルミアは平和な日常の一部だからな」
「ラヴァル君にそう言ってもらえると嬉しいな」
そこまで嬉しがられるとこちらが照れてくる。照れて後頭部を掻いてると不意に魔術の反応を感じた。感じた場所は店の外。咄嗟に振り返るとローブに身を包んだ人がこちらに魔術を打ち込もうとしていた。
「伏せろ!」
店内に声を響かせる。今店の外から撃たれようとしているのは王国の魔術。つまり、逃げた俺が目的だ。
ほんと、久し振りに遭遇したよ。諦めてると思っていた。現実はそう甘くないということを実感した。
あぁ、面倒くせぇ
ゆゆゆいに課金したらめちゃくちゃSSR出た。FGOのガチャとはマジで比べ物にならないレベルの排出で、作者大満足。ただ、ああいうタワーディフェンス系は少し苦手で、スピクリができずエキスパートに到達できません。興味のある方は一度やって見てください。ガチャ引くのが快感です。