ロクでなし講師と魔眼保持者   作:斎藤

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非日常4

 

 

グレンとアルベルトの姿をしたラヴァルとリィエルの姿をしたルミアが戻ってきた時、午前のように点数を稼げておらずクラスの雰囲気が暗くなっていた。

 

だが、心の支えとしていたグレンが帰ってきたことでクラスは再び活気付いた。

 

「俺がただいなくなったと思ったら大違いだぞ。頼りになるコーチを連れてきた。アルベルトとリィエルだ」

 

「よろしく頼む」

 

「よろしく」

 

どうやってクラスの仲間として入り込むかを考えた末、コーチとしてきた設定になった。今更コーチなど必要ないと思ったりしたが、誰もそこに突っ込む人はいなかった。

それどころか先生が連れてきたコーチということで、より活気付いた。ラヴァルは内心、単純で助かったと思っていた。

 

「にしても、お前ら俺がいなかったらダメダメだなぁ」

 

グレンは笑いながらクラスを煽る。そのことにクラスの面々はイラっとして自然と士気は上がる。

士気が上がる中、システィーナはグレンに耳打ちでルミアの所在を聞いたりしていた。グレンはそれに対してしっかりと報告していた。

 

「お前達の技量ならグレンから聞いている。自信を持って挑め。そうすれば自然と勝てるだろう。グレンなど空気と思っていればいい。優勝、するのだろう?」

 

話し合いをしている二人に意識がいかないようにコーチらしいことを言う。アルベルトの演技をノリノリでするラヴァルであった。そしてその一声がクラスメイト達の自信を上げた。

 

「アルベルトさんも俺達ならいけるって言ってくれたんだからいけるぞ!目指すは優勝だ!」

 

カッシュのおかげでクラスが纏まる。

そこから、二組の快進撃が再び開始された。

 

戻ってきて、最初の競技である『変身』。今ルミアとラヴァルが使っている《セルフ・イリュージョン》で何でもいいから姿を変え、出来栄えで点数をつける競技。これにリンが出場し、見事な大天使ラ=ティリカに姿を変えて満点で一位になった。

 

続く『グランツィア』も逆転勝利をすることでついに一組と並び、残された競技は後1つ『決闘戦』だけとなった。つまり、優勝はギイブル、システィーナ、ラヴァルに託された。

 

「頼んだぞ」

 

裏でグレンはアルベルトの姿をしたラヴァルに言う。システィーナに勝ってしまったことで大将を努めることになったからわざわざ言いにきたのだろう。

 

「グレン先生も既に俺の実力は知ってるでしょ。こちらにも事情があるし頑張るよ」

 

《セルフ・イリュージョン》を解き、通常の姿に戻って言う。

 

「そうだな。でも、意外と順番回ってこないかもな」

 

「銀髪とギイブルなら勝ってくれそうだし、何もしないでいいのならそうしたいな」

 

「はっ、行ってこい」

 

背中を押されて前に出る。一組と二組の生徒3人が競技場に出れば歓声が湧く。

 

『並ぶ一組と二組、2つのクラスの勝負の行方は『決闘戦』で決まる!どうなるかなんて私には予想できない!』

 

実況の声を聞けば、本来ならあぁ、始まったんだなぁと憂鬱な気分になるが今回は別であり、目は冴えていた。真剣な眼をしているラヴァルにギイブルは気持ち悪いと言っていた。

 

だが、ラヴァルは言いたい。試合前に仲間の悪口を言うから試合に負けるのだと。

 

ギイブルの相手は隙なく魔術を扱うことでギイブルの得意とする『錬金術』を全く使わせず、抑えた。相性はかなり悪かった。それでも知識も技量も劣る相手に負けることがギイブルは悔しかった。

 

「ねぇねぇ、今どんな気持ち?自信満々で行ったのに負けた時の気持ちってどんなかんじ?」

 

負けたギイブルに追い打ちをする畜生ラヴァル。普段なら何か言い返したであろうが負けたギイブルにはそんな余裕はなく、黙り込んだ。

 

煽ってる間に第二試合が始まる。第二試合にはシスティーナが出場。二組を何かと煽ってきたクライスが相手であったが完封して勝利した。

 

「ラヴァル、本気でやりなさいよ」

 

「分かってるよ銀髪」

 

システィーナとすれ違う時にバトンタッチをしてフィールドへと上がる。最後が劣等生とされるラヴァルであることに一組はすでに勝利した気でいた。

 

『勝負はいよいよ大将戦!一組ハインケル選手と、二組ラヴァル選手!二人の成績には大きな差があるがどうなるかはわからないぞ!』

 

実況は頑張って盛り上げようとするがラヴァルの成績を知る者は全員がラヴァルには無理だと判断し、一組が優勝すると思った。

そう思ったから、理解し難い光景を見ることになる。

 

『それでは試合開始!』

 

「ハインケル君、悪いけど時間がないから一瞬で決めさせてもらうよ」

 

「劣等生が何を言う。《大いなる風よ》」

 

《ゲイル・ブロウ》を放ち、余裕の笑みを浮かべるハインケル。相手を格下と侮り、完全に油断をしていた。その結果、《ゲイル・ブロウ》の詠唱中に身体強化の魔術を使われ、拳一つで《ゲイル・ブロウ》を打ち破られることになる。

さらに対人戦最悪の魔術を撃たれてしまう。

 

「《マインド・ブレイク》」

 

『精神防御』の競技でツェスト男爵が使った精神破壊の高等魔術を容易く扱う。《マインド・アップ》などする隙がなかったため、ハインケルはその身で受けて倒れこむ。ラヴァルの『決闘戦』は過去最短で勝利の結果で試合が終わった。

 

『ま、《マインド・ブレイク》だぁぁぁぁ!なぜその魔術を使えるかは分かりませんが、ラヴァル選手の勝利!!!強い!強いぞ!』

 

試合が終わることで二組の生徒が会場に集まって勝利を喜ぶ。その脇で一組のクラスメイトがハインケルを運んでいく。その空気は完全に死んでいた。絶対に勝てると思っていた相手に負けることでその心が折られたのだ。

可哀想にと思いながらラヴァルは輪から少し離れているグレンとリィエルの姿をしたルミアのところへ向かう。

 

「じゃ、俺はアルベルトさんの所に行ってきますね。多分黒幕ぶっ倒してくる」

 

「あぁ、無茶はするなよ?」

 

「無茶って…そんな面倒くさいことしたくない」

 

「ラヴァル君、無事に戻って来て…」

 

ラヴァルの両手を握り上目遣いで言う。そんなことされれば普通の男は胸を打たれて動悸が激しくなることだろう。だが、ラヴァルは違う。そのようなことで浮かれることはなかった。

 

「心配しすぎ。ティンジェルはティンジェルでやることあるし、そっちを頑張ってくれ。じゃ、ちょっくら行ってくる」

 

そう言ってグレンとルミアの前から離れて会場を出ていった。

 

 


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