インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜   作:通りすがる傭兵

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作(何かと話題になったりならなかったりしなかったヤツが登場します。
⁇(ロマンが俺を呼んでいる...
作(呼んでないです。


では、どうぞ。


第4話

 

「まあ、作戦なんて、レベルを上げて物理で殴れ、くらいじゃね?」

 

「「......」」

 

「真面目にやるよ、だからそんな目で見るなよなぁ!」

 

「早くしろ」

 

  箒に急かされて真面目モードになる成政。

 

 2人が気張りすぎだから気持ちをほぐそうと思ったのに、とぼやきながら鞄を漁る。

 

 暫くしてその中から白いディスク取り出すと、某ドラゴンなクエストのような効果音をつけながら掲げた。

 

「一応、というか入学試験の分だけだけど、セシリアさんがISに乗ってる動画をゲットしました。山田先生には感謝しないと」

 

「成る程、対戦相手の動画か。それがあれが試合が楽になるな」

 

「そのとーり。しかも相手は専用機、だったから尖ってるし、対策はしやすいよ」

 

「それはいいのか悪いのか...」

 

  溜息をつく一夏に対して、若干作り笑顔だったが成政は笑って言った。

 

 こうでもしないと不安が隠せないから。

 

「戦闘スタイルがわかれば、それの対策が立てやすくなる。得意分野を徹底的に潰すか、それで隠したい弱点をあぶり出せばいいからな」

 

  1週間の付け焼き刃ではなんともならないものなのだが、と心の中で付け足してはいる。

 

「そうだぞ、何事も前向きに、だ」

 

  大真面目にそれに頷いている箒を見ていると、少しだけ気持ちも軽くなる。

 

 

 

  その代わり、と前置きして成政は話を続けた。

 

「それを借りる交換条件として、3人の入学試験の時の動画を献上する事になったけど、まあ不可抗力、ということで」

 

  そのまま入学試験のISを使った模擬戦の話になったのだが、何故か気まずい表情をする一夏。

 

 不思議に思った箒がその理由を聞くと、

 

「いや、対戦相手が山田先生で、勝ったには勝ったんだけどさその」

 

「その...?」

 

「張り切りすぎて壁に突っ込んで勝手に気絶したから勝ったというか...」

 

 あっけに取られて一歩も動けなかった、と語る一夏、それを聞いてせっかくの貴重な起動チャンスを棒に振るなよなぁ!と胸元を掴んで揺さぶる成政。

 

 箒が騒ぐ2人を溜息をつきながら叩いて止めると、視線で成政に無言で続きを促す。

 

「で、手に入れた映像がこちらです」

 

  備え付けのAV設備の中にあるDVDプレイヤーの中に、ディスクを取り込むと動画が再生される。

 

 編集もされていないので、タイトルも無く、もちろんBGMもない。

 

 突然流れ出した動画を、3人は食い入るように見つめた。

 

 正味5分ほどだったが、彼らには1時間に感じられるほどだった。

 

  動画が終わった後も誰も口を開かない。

 

 成政は何か思案をするように頭をかき、

 

 箒は目を閉じたまま動かず、

 

 一夏は動揺を隠す様子もなく頭を抱えた。

 

 暫くして、一夏が口を開いた。

 

「...射撃だな」

 

「射撃一辺倒だったな」

 

「剣を使う素振りすらなかったな」

 

  セシリアの使う機体は射撃編重タイプで、近接戦闘をする場面は一回もなかった。

 

  教官のISから常に一定の距離を取り続け、時々ビットからレーザーを撃ち、最後は手に持っていた大型のライフルで一撃。

 

  さて、ここで確認しよう。

 

 ここにいるのは、剣道バカ2人、そしてバイトに明け暮れていた学生。

 

 この3人は射撃のイロハをわかるような人材か?

 

 もちろん答えは否だ。

 

「「「対策がわからん(ない)...」」」

 

 当然の如く、こうなる、が、

 

「まあ、素人意見でもいいから出してこう」

 

「もう一回DVD見せてくれないか?」

 

「私ももう一回見せてもらおう」

 

「じゃ、ずっと再生しとくから」

 

  思考停止しない事、試合であれ、他であれ、大切な事だ。成政と箒は経験則から、一夏は姉から、それを教わっていた。

 

  動画がループになるようにリモコンをいじると、成政はホワイトボードをもう一度使えるよう消しにかかる。

 

 それは些細なことでもいい、と言う藁にもすがる思いの裏返しでもあったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 暫くして、気づいたのは、一夏だった。

 

「なあ、ちょっと止めるぞ」

 

「どうした、何か見つけたのか」

 

「いや、気のせいかもしれないけど、セシリアってさ、自分で動く砲台みたいなの、あるじゃないか」

 

「あれビットって言うらしいぞ。自立砲台だってさ。山田先生が言ってた」

 

「アレを撃ってる時のセシリアさ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ーーー止まってないか?」

 

「その話もっと詳しく」

 

  突破口が、見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏の話を聞くと、セシリアはビットを撃つ時、動きが止まるという弱点がある事がわかった。何度も動画を確認して、それが一夏の勘違いでない事がわかった。そうなれば、それを軸として作戦を組み立てることとなる。

 

「一番早いのは、ビットを撃つ瞬間に被弾を無視して突っ込んで一撃、だろうなぁ」

 

「そうなのだろうが、おそらく一発きりになるぞ、自分の弱点は把握しているだろう」

 

「となると、千冬姉みたいな『零落白夜』のような一撃必殺、とか」

 

「千冬さんのそれは、確かワンオフ・アビリティという機体固有の物だ。私たちでは使いようもない」

 

「というか、ISを一撃で倒すロマン溢れる武装ってあるわけ?バランスブレイカー過ぎだろう、あるわけ無い」

 

「あったとしても、此処は学校だ。

 

 そんな都合よく置いてあるわけ無いだろう」

 

「ですよねー」

 

  意見を出せば出すほど非現実的になっていく作戦。話せば話すほど勝利が遠のく現実に、3人は思わず頭を抱えた。

 

「今から射撃訓練でもするか?多少でも知っていれば」

 

「下手の横好きレベルにしかならん。余計な事を考えるな。ただでさえ剣道の腕が錆びついているというのに」

 

「あだっ!」

 

  意見を出した一夏の頭を軽く叩く箒。

 

 その瞬間、部屋の電気が消えた。

 

「なんだ?!停電か?」

 

「箒、竹刀!」

 

  「なんで、停電じゃ無いのか?」

 

「ここら辺の電気が消えてない、この部屋だけだ!伏せていろ一夏」

 

  窓の外を一瞥しただけで状況を把握した箒は、狼狽える2人を守るように竹刀を持って立つ。

 

「先程から、人の気配がした。他の生徒かと思っていたが、これは都合が良すぎる」

 

「つまり、特殊部隊か何か、と言うこと」

 

「ど、どうするんだよ箒!」

 

「どうも何も戦うしかなかろう!」

 

 竹刀を構えるが、見えるのは暗闇ばかりで、まだ目が慣れるまでは時間かかかる。

 

  (暗くて何も見えない、ならば...)

 

  目を閉じ、意識を他に集中させる。

 

 試合の時以上に、ギリギリまで神経を尖らせ、僅かな音も聞き逃さない。

 

 

 

 カサリ

 

 

 

 成政の背後、入り口近く。

 

「...っ!そこ、はっ!」

 

  物音だけを頼りに、竹刀を振り下ろす。

 

「いたっ...」

 

「もう1人!」

 

  箒は、物音の発生源は2つだと見抜いていた。そして、1人を叩き伏せた今、残るは1人。

 

「チェストォ!」

 

 横薙ぎの一閃、胴を撃つその一撃。此処暫くで最高の胴打ちだと撃った本人が思うほどのそれは、

 

「なんのこれしき!」

 

「っ、防ぐか!」

 

「よし、見つけた!」

 

  そのタイミングで、壁伝いにスイッチを探していた一夏が電気をつけた。

 

 そこにいたのは、

 

「フハハハハハ、俺、参上!」

 

「「...誰だ?!」」

 

 不審者が、ベッドの上で高笑いをしていた。

 

 雑に切られてボサボサのショートカットが男らしい、IS学園の制服を着た女子生徒。手には竹刀の一撃を防いだであろうおもちゃの刀らしき物が。

 

「うう...痛い...」

 

「ごめんね、モッピーちゃんが迷惑かけて」

 

 そして巻き込まれたであろうメガネに水色の髪の生徒、近くにいた成政がそれを慰めている。

 

「むしゃくしゃしてやった。しかぁし!俺は後悔していないぞ簪ぃ!だから私は謝らない」

 

  異様な雰囲気を纏い、大声で喚き散らす不審者。

 

「夜中に叫ぶな!近所迷惑だろう」

 

「いやそこじゃないだろ!、と言うか君誰?」

 

「ふっ、コノシュンカンヲマッテイタンダー!」

 

 変な叫びをあげてその場で宙返りをすると、一夏の前に着地、そのまま彼を指差して、大声でいった。

 

「愛と正義と火薬を振りまくロマンの勇者、又の名を妖怪ロマン馬鹿、そう呼んでくれたまえ」

 

「ええ...」

 

((すごく面倒な奴が来たな...))

 

 仲良く同じ事を思っていた箒と成政だった。

 

  そんな事のためにここまでするかとと箒が八つ当たりで追いかけ回したが、

 

「夜中に騒がしいと言っている!」

 

「フハハハハ、未熟未熟ゥ!」

 

 とカンフー映画ばりの身体能力を見せつけるだけに終わった。

 

  ちなみに、下に短パンを履いていた、とだけ言っておく。

 

「放課後からずっと段ボールに隠れていた甲斐があったよ。まさに、スニーキングミッション。松明で儀式しなきゃ」

 

 箒が疲労困ぱいするまで鬼ごっこを続けた後、またふざけ出した不審者。ISでも使っているのか、虚空から松明を取り出して振り回す始末。

 

  飛び込んで来た謎の少女は支離滅裂な事ばかり言って目的が掴めない。悩む成政に助け舟を出したのは、巻き込まれた水色の髪の子だった。

 

「私は簪...マヒロ、自己紹介は?」

 

「私はマヒロなどと言う奴ではない。そう、通りすがりの「仮面ライダーじゃないでしょ...失礼」

 

  台詞を先回りされて明らかに動揺する不審者と、若干誇らしげにする簪。

 

  「...私だって、成長してる...」

 

 不審者は大きく息を吐くと、ここは簪ちゃんに免じてやってやりますか、と言って、

 

「...ごほん。3組、神上マヒロです。

 

 好きなものはロマン。趣味はアニメと特撮鑑賞。蔵王工業の専属パイロットやってます。ハイこれ名刺ね」

 

  自己紹介と同時にサラリーマンよろしく名刺を配るマヒロ。その変わり身の早さに目をパチクリさせていたが、すぐに再起動して名刺を受け取った。

 

「はあ、どうも」

 

「蔵王、工業...?」

 

「そーう、蔵王工業。愛と火薬とロマンを振りまく素敵な会社ですよ」

 

  名刺を配ったのは、社員としての義務だと彼女は語った。

 

  ISというまだ未知のジャンル、そして現れた男性操縦者。他の企業に先駆けて、他を蹴落とさなければ生き残れない。

 

 いや、蹴落として来たからこそ蔵王が生き残っている事なのだが、

 

「私にもくれるのか。特にネームバリューも無いぞ?」

 

  「またまたご冗談を。もしこれを見て束さんがウチに来たら、洗n...特撮とかいっぱい見せてロマン馬鹿にしてロマン兵器一杯作って貰うんだー」

 

  単純に変態技術者しかいないから他が手を出さないだけなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳でさ、もし束さん見つけたら連絡ちょうだいね?すぐに駆けつけて簀巻きにして連行するから」

 

「いいぞ、どうせ姉さんだし」

 

「いやそんな扱いでいいのか?!」

 

 あっけらかんとそんなことを言う投げやりな箒の態度に思わずツッコミを入れてしまう一夏だが、

 

「どうせどこかほっつき歩いているのだし、定職につければ万々歳だろう」

 

 そもそも姉さんはどこから金を手に入れているのか、と実の妹が思うほどに、束の生活は謎に包まれているのだ。これを機に真っ当な人間に、と思っているのだが、一生叶わぬ願いである。

 

「ところで、蔵王工業はどんなものを作ってるんだ?聞いたこともないんだが」

 

「主にグレネードとか、大口径砲とか、ロマン溢れる兵器かな」

 

「威力は?」

 

「へっぽこISなんて木っ端微塵です」

 

「そこもっと詳しく」

 

 猫の手も借りたいような、この状況。

 

 選手を勝たせるためなら(スポーツマンシップの範囲で)あらゆることを行う成政。

 

  たとえ悪魔だろうか天使だろうが、ロマンロマンとうるさい妖怪だろうが、この行き詰まった状況を打破するために手をとりたかった。

 

「ちょっと待った、イヤイヤおかしいだろ!」

 

 それに待ったをかけたのは、一夏だった。

 

 2人の間に割って入ると、

 

「いや、よく考えろよ!部屋に忍び込んでくるような不審者だぞ、ちょっとは疑えよ」

 

  正論を言う一夏に対して頭を冷やしたか、

 

「...言われてみれば確かに」

 

「むー、不審者とは心外です」

 

  ぷんすか、とわざわざ口で言って怒りをあらわにするマヒロ。もちろんわざとやっているので全然可愛くない。

 

「ちゃんと山田先生に許可はとりましたよ?引っ越し祝いに隣に蕎麦配るので鍵を開けてくださいって」

 

 何故か随分と古風な慣習だった。それならしょうがないと言いかけたお人好しの一夏だったが、

 

「...あの手この手で丸め込んで...誤魔化しただけ」

 

「それは言わない約束でしょ簪ちゃん!」

 

「ダメじゃないか!」

 

  疲れきっていて早く寝たいと思っていた箒が、2人を物理的に叩きだそうと竹刀に手をかけたその時、救世主が現れた。

 

「ほう?騒がしいと思えばそんな事をしていたのか。不法侵入なぞ、反省文ものだぞ」

 

「ちっちっち、バレなきゃ犯罪じゃぁ無いんですよ」

 

「バレてしまえば犯罪と言うことだな、神上」

 

「そうそう...うん?」

 

  流れるように会話に入って来た声の主。

 

 この場の雰囲気すら変えるほどの存在感を持ったその人は、

 

「千冬姉、どうしたんだよ?」

 

「寮長としての義務を果たしに来た」

 

 1年1組担任、織斑先生だ。

 

  「消灯時間も近いと言うのに他人の部屋で何をしているのだ、よりにもよって一夏の部屋で」

 

「いやそれはですねちょっと企業の売り込みに参った次第で」

 

「話は寮長室で聞こうか」

 

  部屋にずかずかと入った千冬は、簪とマヒロの襟首を掴むと、部屋の外に引きずっていった。

 

「石狩も部屋に戻れ、次はないぞ」

 

 そう言い残して扉は閉まった。

 

「ふははは、この俺を倒しても第2第3の俺が貴様にあいにいくからなぁぁぁぁぁぁあ!」

 

「...あれ、私も?」

 

 マヒロのどこかで聞いたような断末魔が響く。

 

 この時、3人の心に、織斑先生を怒らせてはいけないと刻み込まされた。

 

「「「......」」」

 

 凍りついた角部屋で最初に動いたのは、成政だった。

 

「じゃあ、僕帰るから。おやすみ」

 

「そ、そうか、おやすみ」

 

「おう、また明日な」

 

  成政の一言で、今日はお開きとなった。

 

 次の日、3組と4組のとある生徒は、体調不良で欠席したと言う。その日からか、IS学園寮には幽霊がいると言う噂がまことしやかに囁かれることとなった。

 

 




今回、他作品キャラが出張してます。
自分にssを書かせてくれたきっかけ、の作品、
葉川柚介さん「IS学園の中心で「ロマン」を叫んだ男」
https://novel.syosetu.org/55310/
より、主人公「神上真宏」と蔵王重工をお借りしました。
葉川さん、ありがとうございます。

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