インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜   作:通りすがる傭兵

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やべえ、日常回のネタが出ない......


第46話

 

 

 

 

「生徒会長に啖呵切ってきちゃったので一位しか認めない」

「開口一番それかよ」

「一夏をダシにして使い回しまくればいけるよ多分、まあ休みはねーけど」

「俺だけブラック確定!?それを言うんだったら成政も」

「僕は勿論やるよ、だけど人気を考えるに暇になりそうなんだよねー、いやあ人気者はつらいねえ!」

「笑顔で言う事じゃねーだろ!」

 

9月2日、6時間目。

織斑先生の快い計らいで、文化祭に向けての話し合いが行われる運びとなった。

仕切るのはクラス代表の一夏......でなく当然のように成政だ、クラス代表とは一体。

「とりあえず、何にしましょうか、出し物。

前提としてステージだと票は稼ぎにくいから却下で。他のグループも使うし」

「クラス喫茶とかどうだろ、軽食とかお茶とか出せば?」

「もう一声欲しいな、何かインパクトのあるワードが欲しい」

「じゃあ......織斑一夏のご奉仕喫茶」

「おいいいいいい!」

 

誰が言い出したかトンデモ意見、いかがわしい言葉にも聞こえないことはない。

この発言がインスピレーションを与えたか、他にも(とんでもない)意見が続々と。

 

「王様ゲームってどうかな?」

「織斑一夏の執事喫茶!」

「いやコスプレ喫茶よ!」

「ポッキーゲームしたいなあ!」

「猫耳つけよう猫耳!」

「いっそ脱がせない?」

「おい最後の!」

 

聞こえた意見をかつかつと黒板に書いてはいるものの、成政の琴線に触れるものはない。

 

(んー、箒ちゃんの可愛い格好が見たい......)

 

そんな折、1番の被害者が声を荒げる。だが、それが悪手だった。

 

「だいたいなんで俺がコスプレなんか!」

「ヘーキヘーキ、みんなでやれば怖くないのよー、デュフフ」

「それだあっ!!」

 

ガガガッ!と黒板に大きく文字を刻み、思い切り手を叩きつける。

 

「メイド喫茶で行こう!男子は執事服でどうだ!」

「「「「「「「「「さんせーい!」」」」」」」」」

 

1年1組、メイド喫茶に決定。

 

「いーや俺は認めないぞ!だいたいそんな大量のメイド服なんてある訳がないじゃないか!」

「今束さんに発注した。箒ちゃんのメイド服っていったら只でクラス全員分引き受けてくれた、明日届けに来るって」

「何してくれてるんですかあの人は!」

「衣装製作くらい天災にかかればチョチョイのチョイだってさ」

「つーかいつメアド交換したんだよ!」

「交換というかスマホハッキングされた」

「......なら、仕方ないか、うん」

「あ、織斑先生と山田先生の分もあるそうです」

「うぇえええええええええええ!?」

「殺す」

 

 

 

『はーい、みんな大好き生徒会長の更識楯無とー』

『最近同室の織斑の愚痴が止まらない石狩成政の』

『『アイラジ!はーじまーるよー!』』

『1回目の放送は散々だったけど、2回目からは真面目にやっていくわ』

『昨日はお騒がせしました』

『ところで石狩くん?あの後どうだったの?何か聞かれた?』

『......き、聞かないでください』

『あらー、色々あったそうでーす。詳しくは本人から篠ノ之さんにでも聞いた方がいいんじゃないかしら。私、気になります!』

『煽らないで下さい。さて、オープニングトークはこれくらいにしてと』

『まだおねーさん話したい事あるんだけど〜』

『明日にして下さい尺がなくなっちゃいます。

えーと、この番組は、生徒会がお送りする学園祭に向けての情報発信をテーマとした生放送番組です。質問などがおありでしたら生徒会前質問箱にどしどし質問してください!』

『文化祭まであと2週間、出し物が決まっていると言うところもあれば、決まらないと言うところもあるでしょうね。

ちなみに生徒会は、観客参加型の演劇を企画しています、おひまがあれば是非いらして下さいな』

『はいはい宣伝乙。

さて、本番も近づいてまいりました。出し物が決定したクラスは、担任の先生のハンコを貰った上で、申請書を生徒会に提出して下さい。締め切りは今週金曜日6時までとなっていますので、気をつけてくださいな』

『さーて、連絡事項も終わったし、質問コーナー始めるわよ』

『沢山の質問、感謝感激なんとやら、ですが時間もないので厳選させて頂きます。

さーて最初は......ラジオネーム?でいいんですよね』

『いいわよー』

『えー、それでは気を取り直して。

ラジオネーム、2年生のだりーなさん、から。

 

最近みんな文化祭と浮ついていて、授業中オチオチ寝て入られません、何か対処法をお願いします。

 

......どしょっぱつからキワモノですねえ』

『えー、と。私わかっちゃった』

『何がです?』

『クラスメイト全員叩きのめせば快適に寝られるんじゃないかしら』

『そんな脳筋解答誰が参考にするか。

......普通に早寝早起きするか、耳栓でも買えば良いんではないでしょうか。

だりーなさん、購買に耳栓が販売していたと思うので、参考にどうぞ』

『じゃあ次いくわよ?

えーと、1年、あら、隠す気ないわね、話題の織斑一夏君から。

 

 

だれか助けて下さい脱がされます!

 

 

えっとー、うん、頑張りなさい!』

『コラテラルダメージ故、致し方無し。

次のお便りは、おっと、先生がたからですか。名前は、あだ名が多すぎて困ってしまいます!さんから。

 

生徒の皆さんが授業に集中してくれません、ビシッと一言お願います!

 

......だそうですが、生徒会長、一言』

『織斑先生に頼めば良いんじゃないかしら』

『やめてください死人が出ます』

 

 

 

 

そしてなんやかんやあって、学園祭1日前。

今日は授業は丸一日おやすみ、朝から晩まで全ての時間を準備に当てることができる。

 

「そのテーブルこっち寄せて!バランス悪いから!」

「このカーテンどうするの?」

「メニュー表刷り終わったよ!」

「整理券を今のうちに、あと看板も作っとかないと当日慌てるよ!」

「クッキーってどこだっけ?」

「接客班集合、衣装の最終確認するよ!」

 

あーでもないこーでもないと慌ただしく、それでいて楽しく準備が進む。教室前廊下には資材が積み上がり、そこかしこで走り回る制服姿の生徒たちの姿、これぞまさしく文化祭。本番1日前とはいえ、熱気は本番のそれに遅れを取らない。

 

「織斑くんそれ取って!」

「あいよー!」

「織斑くんカーテンレールに手が」

「任せろ!」

「こっちの重い荷物がー」

「よしきた!」

「おりむー私にクッキー食べさせてー」

「はいはい分かりましたよ!」

「一夏ー、2組も手伝ってよー」

「はいはい今行く、ってなるか!」

「ちぇー」

 

男子ゆえいろいろな場所でこき使われる一夏は、ちょいちょいToLoveるも起こしつつではあるが、忙しくも楽しく、かつ順調に仕事をこなしていた。

こんな時に一緒にこき使われそうである成政であるのだが、

 

『ごめん、生徒会の仕事ガー』

 

と顔を出さなかった。

だからいなくても誰も気にしない、と言うわけである。

 

「......怪しい。先輩だったら仕事の百や二百引き受けててもここでする筈。

考え難いことだがサボっているに違いない。

すまない、少し外す」

「どうしたの箒ちゃん?」

「いや、ちょっとな」

 

約1名を除いて。

 

 

 

 

 

「秋さん、正気ですか?」

「正気も何も、上がそう言うんだから仕方ねーだろったく」

「いやそうじゃなくて。こんな事をやらせるのに秋さんをチョイスした上が正気かと聞いてるんです」

「いつもの担当が寿退社した。で暇だったのがアタシだった。お分かり?」

「なんとまあ......御愁傷様です」

「アタシだってやりたかねえよ......」

 

IS学園近くの喫茶店、の奥まった席で2人の男女が向かい合っていた。

モダン風に装飾されたこの場には合うだろうが、街中では浮いてしまうような場違いなタキシードを着た若い男と、OLらしくパンツスーツを着こなし、赤茶けたロングヘアをうざったそうにいじる目付きの悪い女。

 

「つうかよ、ナリ。その服装なんなんだ?」

「制服だと町じゃ目立ちますし、時間もなかったので。学園祭の衣装ですよ」

「似合わねーなオメー。ジャージで十分だろ」

「動きにくくて仕方ないです、けどメイド喫茶なんで」

「メイド喫茶ねえ、最近のガキが考えるこたあ分かんねえな」

「客が入ればなんでもいいんすよ」

「......はぁ。で、約束のモンは良いんだろうな」

「こ本番だと色々変わるとは思いますけど、大丈夫です?」

「大体で十分だ。それにメイド喫茶はご指名が出来るんだろ?」

「うっわ、悪い顔してる」

「うぇ!?マジかよ......直らねえなあ」

 

なんでこうかなあ、と頭を抱える女性。ツリ目に赤い目、と見栄えの悪い事を気にしているのは、乙女心とかそういうのなんだろう。成政にはさっぱり理解不能なのでスルーした。

 

「はいこれ。店のシフト表です」

「さて、目標のシフトは......ん?」

「織斑君は2日ともフルシフトだからね」

「なんだこのブラック店舗」

「稼げれば良いんですよ」

「あと......なんで......漢字読めねえ」

「なんです?」

「なんでこいつのシフトだけ、めっちゃ分かりやすく色分けされてんだ?」

「彼女です」

「......すまん、聞こえ」

「彼女です」

 

無言で成政の手を取る女性。

そのまま顔を伏せわなわなと震えていたかと思えば、

 

「カノジョってなんでか知らんけどめっちゃ可愛いよな、輝いて見えるよな!」

「わかります!?いやあ、ほんっっっっっっっっっっっっっとにカワイイんですよ箒ちゃん!」

「いやいやスコールの方が可愛いに決まってんじゃんお前」

「は?箒ちゃんの方が可愛いですし」

 

そのまま何故かなし崩し的に嫁自慢が始まる2人。その日、喫茶店ではブラックコーヒーの売り上げが増えたとか増えなかったとか。


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