インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜 作:通りすがる傭兵
あーいや、資料ですから......
ところであのゲームの時系列、夏休み終わった後なのか、文化祭終わった後なのか。
それとも潔く2年生?
みなさんはどう思われますか?
「いやー、夏休みは酷い目にあった」
「それで片付けていいもんなんですか?」
「面白かったしいいじゃんいいじゃん」
9月1日、一般的に夏休みが終わり、二学期始業式が行われることが多い。IS学園も例外でなく、9月1日に始業式が行われる。
ワイワイガヤガヤと講堂に向かう騒がしい人並みに紛れて、実は晴れて恋人となった成政と箒が談笑していた。
「心残りといえば、アレだねえ。応援行けなかったコトかな」
「私もその、それどころではなかったですし」
「試合ビデオがあれば良いんだけど」
「部長が親に頼んでおいたものがあるそうです」
「やりぃ!後でダビングさせてもらお」
「ふふ、いつも通りですね」
「そうだね、いつも通り、だねえ」
他愛ない会話。
何気ない仕草。
いつもの日常。
自分たちだけが知っている、日常の尊さ。
今まで知らなかった、とてつもない奇蹟の上で成り立っていたこの退屈な日常を幸せそうに噛みしめる2人。
だが、ここはIS学園。
普通の学園とはちょっぴり日常とかけ離れた場所。この後に待ち受けるのは、夏休みで体にこびりついた退屈さを、熱意と、努力と、根性と、ちょっとの狂気で吹き飛ばす特大イベント。
「盛り上がっていきたいかー!」
「「「「「「「「「YEAAAAAAAAA!!!!!!!!」」」」」」」
「テンション上げていきたいかー!」
「「「「「「「「「YEAAAAAAAAA!!!!!!!!」」」」」」」
「ノっていきたいかー!!!!」
「「「「「「「「「YEAAAAAAAAA!!!!!!!!」」」」」」」
「よろしい、だったら学園祭よっ!」
「「「「「「「「「FOOOOOOOO!!!!!!!!」」」」」」」
そう、IS学園の目玉イベントの1つ、学園祭である。
その後に続く長ったらしい先生方の話も終わり、各々教室に戻っていく、その空白時間のこと。
一足先に戻って提出する課題を纏めていた箒に、暇を持て余す一夏が声をかける。
「よっ、箒」
「どうした一夏?」
「いやあ、学園祭なんて初めてだからさ、ちょっとワクワクしてんだよ。でも外国組がイマイチピンと来てないらしくて」
「外国にそのような文化は無いのか?」
「あの様子だし、多分ないんだろ」
「生徒会長曰く、2週間後からだそうだが、一体どのような出し物をするのだろうか?」
「さあな、無難にお化け屋敷とか?」
「いや、それでは皆が納得しないだろう」
「じゃあ何だろうな、楽しみだ!」
ニコニコと笑う一夏だが、学園祭が学園内外から沢山の人が来る行事、当然珍しい男性、かつイケメンの一夏であれば矢面に立たされるのは確定事項なのだが、いかんせんこの男は鈍かった。それを知りながらも、まあ一夏だしいいかと黙っておく箒。こんな心遣いが彼の唐変木を加速させるのだが、言わぬが花というものだろう。
純和風な日本人らしいこの2人、ミーハーな文化に対するアンテナはもちろん立っていない。
学園祭といえば軽い出店やったり、アトラクションを作ったり......と一昔前の知識しか持ち合わせがなかった。
要するに、テンションの上がりまくった楽しい事好き今時ミーハー女子高生(+男子高校生1名)の熱量を舐めていたのである。
そのぶっ飛んだ発想を含めて(主に男子高校生と生徒会長)。
『あー、あー、マイクテストマイクテスト。
本日はお日柄もよく〜』
「なんだ、校内放送?」
「先輩の声?道理で見当たらないと」
「なになに?なんだろー」
「織斑君何か聞いてる?」
「い、いや、全く」
取り留めのない成政の世間話をバックに、質問が飛び交う1組。当然のように誰も真実を知らず、放送の続きを黙って聞くのみ。
『えー、話は変わりますが。今回の放送なんですがとある方のご助力を賜りまして、実は少し前から計画していたのですよ。
学校のイベント、といえばもちろん、この方』
『はぁい、みんな大好き生徒会長、楯無おねーさんよ?』
「ああ、この声さっき壇上で」
「生徒会長、更識楯無......?」
「さっきイェーイって言ってた人だ!」
「青い髪の人......だっけ」
イマイチピンとこない人も多い中、放送先では知ったことではないと話は進む。
『生徒会が毎年運営する学園祭、2、3年生の先輩方であれば様子はご存知でしょう。
クラス、部活対抗人気投票、個人発表、その他諸々......細かいところは去年と変わらないみたい、ですね。詳しい要項は今週中に冊子でお配りする、との事です』
『去年のアンケート調べで悪かったことは改善するし、ちゃんと他にも新しいイベントも開催するわ、そこんとこ心配しないで』
『生徒会長、扇子広げてもわかんないっす』
『あらごめんなさい、つい』
「仲よさそうだな、会長と成政。知り合いだったのかな、何か知らないかほう、き?」
一夏がそう気軽に振り返ると同時、箒は竹刀を担いで廊下を全力疾走していたのだが、
「告白したばかりと言うのに先輩は......!」
「篠ノ之さんなんか鬼気迫る表情で走ってったね」
「さあ?」
「あーでも、石狩君と篠ノ之さんて仲良いよね」
「それはそうだ、なりさんと篠ノ之は将来の仲を誓い合ったからな」
「「「「なんですと?!」」」」
むしろ残っていた方が、この事故を防げていたので良かったかもしれない。
『あ、そうそう会長、今回の目玉ってなんでしょう』
『そうね、今年は予想外のとっておきが入学してくれたから、活用させて貰いましょうか。
そうね......人気投票一位のクラス、部活には、
「男子2人を1ヶ月貸し出しちゃう権限」をプレゼント、どうかしら石狩君?』
『別に構いやしませんよ?新しい世界に触れるのも好きですし、面白そうです』
『思いつきの割にはいいセンいったわね。
じゃ、許可も取れた事だし決定ね』
『でも1組が1位だったらどーするんです?貸し出しもへったくれもないじゃないですか』
『あら、生徒会だって出し物は出すわよ?部活でなくクラス部門に出場することになるんだけど』
『叩きのめしてあげましょう』
『あらあら、吠えるわね。そこまでいうんだったら、万に1つもないけれど1組が勝った時を考えて、特典は3ヶ月間デザートフリーパスとの選択式、でいいかしら』
『まあそこらへんで妥当じゃないですかね。ここのデザート美味しいですけど財布には優しくないですし』
『決まりね、早速パンフに付け足しておくわ。
......あら、誰かしら』
不審に思った会長が席を外したらしく、物音が遠ざかる。そして成政の叫びと同じくしてマイクにとんでもない衝撃音が届き、1組では聞き覚えのある凛とした声が続く。
『うぇっ!?と、扉が』
『先輩!この私というものがありながら!』
『ちょ、ま、箒ちゃん?!』
『他の女にうつつを抜かすとは......成敗してくれる!』
『箒ちゃん待ったこれ誤解だから真剣はまってぇ!』
金属の擦れる音、棒状のものを振り下ろした時の風切り音など物騒な音がしばらく続き、どっちかが逃げ出したか窓ガラスの破れる音が聞こえ、続いて足音が遠ざかる。
ちなみに、会長の計らいでこの間の痴話喧嘩は全校にもれなく放送された。
『痴話喧嘩も程々にね〜。
はあ、おねーさんも彼氏の1つ2つ欲しくなっちゃう。仲がいいほどなんとやら、とはいうけど、私の妹はいつになったら仲直りを......ごほん。
今回は飛び入りゲストだったけど、明日の昼休みからの放送では、一回ごとにゲストを招こうと思っているわ、楽しみにしていてね。
以上、会長とマネージャーのアイエススクールフェスタラジオ、アイラジ第1回放送を終わります。これからの放送をお楽しみに〜』
「はい?!」
遅れて、自分が生贄になった事を思い知る一夏であった。
「......」
「酷い目にあった」
「そ、そうですわね......」
「だいじょうぶ、成政?」
「心遣いだけ受け取っておくよ」
顔に青あざを作った成政と、怒っているのかそっぽを向いている箒がしばらくして戻ってきた。実は集合時間に少し遅れて、だったがのだが、ちょうど千冬が席を外していたおかげで出席簿の魔の手から助かった。
「集合時間はしっかり守ってくださいね、石狩君、篠ノ之さん」
「も、申し訳ありません」
「す、すみませんでした......」
山田先生にはきっちり絞られたが。
千冬「私は手遅れじゃない私はまだ大丈夫私はまだ大丈夫私はまだ大丈夫私はまだ大丈夫私はまだ大丈夫......」