インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜 作:通りすがる傭兵
追記、できましたありがとうございやす
『キューティーハニー......普段は如月ハニーという長い金髪に赤いカチューシャの女性だけど、その正体は如月博士が死んだ娘のDNAを元に作られた生体アンドロイド。
正確にはサイボーグなんだけど、彼女は博士が開発した空中元素固定装置によってイメージ通りに様々な変身が可能な、通称・アイシステムによって悪と戦う正義のダイナミックヒロインなんだよ!』
「な、なんだってーっ!」
『まあ私も風の噂で聞いた話だし、アイシステムも見るの初めてなんだけどね』
「そうなんかーい」
『「あははははははは!」』
「姉さんと先輩ノリノリですね......」
「ほんの一ヶ月前まで死にかけてたなんて想像できないでしょ?男の子は凄いわね」
事情を知る束のなんか一昔前のナレーションっぽい説明をうけ、これまたそれに合わせて大げさに驚く成政。ツッコミ疲れた箒のおざなりな対応に対して、大人の女性らしく丁寧に対応して見せるハニー。
残り2人はというと、
『な…なんじゃありゃああああ!まるで漫画に出るような変身ヒロインじゃないか、アニメじゃ無いんだからさ!
ってなんでそこの女は反応が薄いのさ!』
「いや、英霊にも似たようなの居ますし......」
天災の束すらこの驚き様なのに反応の薄いライダー。ライダーの様な英霊にとっては、何もないところから武装を呼び出したりするのは基本常識、そこまでの事でもないのだ。
「こっちの方が数は多いんだ、囲んで袋叩きにしてしまえっ!」
「「「おーっ!」」」
「なんか増えてるっ?!」
「数だけの雑魚よ、問題ないわ」
何故か増えた鉄仮面に対し、ウインクすらしてみせるほどの余裕をみせるハニー。そのまま細剣を構え、敵の大集団の中に飛び込んでいく。
「はあああああっ!」
「ぐあっ!」
「こんのぉ!」
「甘いわ!」
敵中ど真ん中、そこでダンスでも踊る様に激しく、華麗に細剣シルバーフルーレを振るう。
その目にも留まらぬ太刀筋、切っ先の迷いのなさ。そして敵中で不敵に笑いながらも、その眼差しは真剣に、相手一人一人を見つめている。
箒はそのハニーの姿に見入り、なぜか自分に足りないものはなんだろう、と考え始めていた。
IS......絶対的な強さを持つ、最強の鎧。それを着ていれば、傷つかず、何をしても相手を傷つけない。
剣道だってそれは同じだ。竹製の竹刀に、堅牢な防具。打ち込んでも痛いだけで、目に見えるような傷は負わない、できて青アザ程度。
それは裏を返せば、相手をどの様にしてもいいという免罪符と同じ。無意識のうちに箒はそれを理解し、故に迷うことはなく、剣を振るうことができていた、今までは。
しかし箒は今、迷っている。
私は、剣を振るっても良いのだろうか。
私に、その理由はあるのだろうか。
私に......篠ノ之箒は、剣を振るうに値する人物なのだろうか。
我武者羅に剣を振るっても、答は出ないままで、無様に命を散らす所だった。
「私は......私は......何者だ?」
「さあね、さっぱりわからない。それが面白いんじゃないの?」
振り返れば、不敵に成政が笑っていた。
「わからないこと、知らないこと、不思議に思うもの。世の中にはそんなものがたくさんある。それこそ、世界中を旅して歩いて飛んで放浪して......何をしてもしたりない程、溢れてる。でも、一番近くにあるのは自分さ。自分が一番自分で理解できない。だからそれがいい」
「先輩は、わからないんですか?あんなにマネージャーで頑張っているのに。自分のやりたいこととか、居場所があるじゃないですか」
「アレは楽しいからやってるだけ。生きる意味なんてさっぱり分かってないよ。
だから、面白いんじゃない!......とまあ、親の受け売りなんだけどね」
「......なんか、最後の一言で台無しです」
「辛辣っ!?」
しんみりとした雰囲気だったはずなのに、箒にガチの真顔で返されて落胆する成政。
「まあとりあえずそんな事よりさ、
......戦場怖いから早く安全な所行きたい」
「通常運転で安心しました」
いくら常識がフライアウェイしていようと根は小心者、怖いもんは怖いのである。
ギャグ漫画よろしく大げさにガクガクと震えて見せる成政の姿に、思わず笑みが溢れる。
「さあ、IS学園に帰りましょう、先輩!」
「ああ、そうだね箒ちゃん!」
「若いって、ほんと良いわよねぇ」
『ほんとほんと、面白いアイデアが浮かぶのは子供のうちだけだからねえ。ISだって考えたの小学生の時だし』
「わ、若い......私だってまだ若いんですっ!」
『お前が張り合ってどうするのさ、この場に限っちゃ明らかに年m』
「殺しますよ?」
『スミマセンナンデモアリマセン』
そんな青春を遠い目で眺める大人一同だった。
時は少しだけ遡る。IS学園、その正門前。
成政たちが目指すそこではあしゅらと鉄仮面軍団や、増援の機械獣が防衛部隊と戦っていた。
「ああもう、台所のあいつみたいでキリがない!」
「この兵士達は元は死んだ人間と聞いた。クラリッサの言っていたゾンビという奴だな。
やりづらさはあるが、ここで止める!」
「野郎オブクラッシャー!」
「マヒロちゃん生き生きしてるね、なんかさっきまで沈んでたのに」
「ロボ見たら元気出た。多分成政も生きてるだろうしいいかなって!」
「素晴らしく単純だな」
「いやそれほどでもー」
「褒めてないと思うよそれ、っと!」
シャルロットが渡されたロケットランチャー、説明によれば甲児が作ったらしい、の引き金を引く。マヒロもそれに倣って、同じくロケットランチャーをブッ放す。
すると弾頭から大きめのネットが出て鉄仮面達に被さって絡まり、身動きが取れなくなる。
そこへ相方のラウラが同じく渡されたマシンガンで蜂の巣にし、断末魔の叫びをあげて倒れ伏す鉄仮面たち。
「今更だけど、あんまりいい気分しないね......人を、撃つなんて。吐きそう」
「同感だ。訓練されたとはいえ、生身の人間を撃つのは初めてだ。いい気なぞしないな」
「だったら下がる?シャルちゃんがいなくてもなんとかなるとは思うけど」
事前に正当防衛として見なされて罪にはならないだろうと言われてはいるが、人を撃ち殺した恐怖や罪悪感を感じてしまうのも無理はない。
軍人で、人に銃を向ける覚悟があるラウラですら青い顔を隠しきれていないのだ。
「でも、そんな暇はないしね、僕も戦う」
「無理をしなくてもいいんだぞ」
「いや、戦う。成政はここに戻ってくるんだよね、だったら守らなきゃ。
それに、別の世界だって言われても。
ここが僕たちの居場所、そのことに変わりはないよ」
「そうか、なら私も張り切らねばな。マヒロに遅れを取るわけにはいかん。生身のやつに負けていられるか!」
その間バリバリバリー、と弾丸をばら撒まくだけで会話に割り込むことはしないマヒロ。
「アニメだとこういうのあるけど、こんなふうに裏方が頑張っているんですっ、画面の外のことも忘れないでくださいな!」
「......お前は一体誰に何を言っているんだ」
「いや、日頃思っていることを少し。こうでもしないとやってられないしね」
「その通りだ、なっ?!」
突然弾幕が強くなり、物陰に隠れる事を余儀なくされる2人。
「怯むなーっ、撃て撃て!こちらの方が多いのだ、押し切れーっ!」
「「「うぉぉぉぉおっ!!!」」」
その隙を見て声を荒げるあしゅら男爵。
先生や有志の生徒で構成された防衛戦、夏休みということもあり、そこまで人数が多いわけでもない。
しかも、通常兵器と侮るなかれ。相手の手持ちマシンガンですら、ISのシールドを削ってダメージを与えられる。もはや通常兵器でISは倒せない、という常識は遥か彼方だ。
「このままでは、長くは持たないぞ......シャルロット危ない!」
「えっ......しまった!」
「隙ありだ、くらえ!」
機械獣と鉄仮面部隊が一斉に放つ破壊光線と特殊振動弾、ISの絶対防御を容易く発動させる衝撃波が襲いかかる。
生身のシャルロットが耐えられるはずもない。
「......ごめん、母さん」
立ち尽くしたままその場にへたり込んで、動かないシャルロット。
思わず漏れた言葉は、天国にいる母への言葉だった。
このままでは間に合わない、と自分の身を盾にして守ろうとするラウラに噛り付いてまで止めようとするマヒロの姿が、視界の端に映る。
だが、彼女は幸運だった。
「 “I am the bone of my sword “」
そこに、正義の味方がいたのだから。
「
「......え?」
「全く、こんな年端のいかぬ少女に命をかけさせるとはな、気に入らん」
いつのまにか、目の前に人が立っていた。
風にたなびく赤い衣に、前に差し出された腕の先には、桃色の花弁が傷一つなくそこにある。
「怪我はないかね?」
「あっ......はい」
精悍な青年が差し伸べた手を素直に取り立ち上がる。青年はシャルロットに怪我がない事を確認し、安心したように頷く。
「ならばよかった。応援もきたようだし、私は他を回らねはならないので失礼するよ」
「あのっ、お名前は!」
「名前かね、名乗るような名前もない。
ただ、名乗るとすれば......」
「アーーーーーーーチャアアアアアアア!!!
また女口説いてんの?!」
「マスター、いや、これは違っごふっ!?」
「屋上から人?!ってリンさん?」
キザに決めようとした青年の上に飛び蹴り、倒れた上に追い打ちにそのままげしげしと足蹴りをする始末。これにはこの場にいた全員の顔がひきつる。
「あら、ごめんなさいね、おほほほほ......」
全員の注目に気がつき、居心地が悪くなったかアーチャーと呼ばれた青年を連れてそそくさと帰っていく凛。
「......ナニモナカッタ、イイネ?」
「あっ......うん」
「そう、だな、そういう事にすべきだろう」
「もう1人の僕大丈夫?って何この微妙な空気」
「おい、デュエルしろよ」
「ごめんちょっとわかんないかな」
偶然なのか狙っているのか、某決闘するカードゲームアニメの台詞を口走るもう1人のシャルロット。それに真っ先に食いついたマヒロがやんわりと否定されたところで、場が動く。
「さて、もう一人の僕やラウラを痛めつけてくれたんだ、それ相応のお返しをしないと......ねえっ!」
その途端、もう1人のシャルロットはラファールの両手にマシンガンやアサルトライフルを展開、一斉に弾を撃ちまくる!
鉄仮面達の断末魔の悲鳴などが聞こえるが、彼女は気にせず攻撃の手を緩めない。
数を大分減らしたところで締めとばかりに、エネルギー式のバズーカを右手にコールしてそのケーブルを自分のラファールに繋ぐ。
「ダウンサイジングの問題もあったけど、取り回しの良さとかも含めてこの形になった、超高熱ビームバズーカ......目標をセンターに入れて......当たれぇぇーーっ!」
チャージが完了し、鉄仮面の集団と機械獣に向けて放たれたその光の奔流は、鉄仮面達も3体の機械獣も纏めて一気に焼き尽くした。
「ふう、スッキリした」
「いやスッキリってもんなのこれ?!」
「それでいいんじゃなーいの?」
「細かいことは考えたらきりが無いよ、もう1人の僕」
「えええ......」
「シャルロット、クラリッサからこのような言葉を聞いたことがある。
......考えるな、感じろ」
「おのれ、だがまだまだ。残存部隊、よーい!」
それでも撃ち漏らしは多く、あしゅら男爵の号令で体勢を建て直して再び仕掛けようとする。が、
「
またしても閃光一閃。先ほどとは段違いの光が敵を消し飛ばす。そのまま叩きつけられた光は天に昇り、雲を切り裂き空を照らす。
「......あ、成る程」
シャルロットは、深く考えるのをやめた。