インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜   作:通りすがる傭兵

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ながらーーーーーーくお待たせしました&短めです。ごめんなさい


第38話

 

 

 

IS学園上空。

成政が駆け付けた先にいたのは、一際大きな機械獣の繰り出す触手のようなものに巻きつかれ、力なく垂れ下がる箒だった。

「箒っ!?」

「成政っ、無事か!」

「んな事はどうでもいい、箒を助けないと」

「そんなボロボロの打鉄で攻撃するつもりかよ、いくら絶対防御があるからって過信できるもんでもないんだぞ」

 

すぐさま飛びかかろうとする成政の肩を掴んで引き止める一夏。

「止めるなよ」

「すまん成政、俺の力が足りなかったばかりに」

「じゃあ足りるようなんとかする」

「っと、危ねえ!」

 

一夏との再会の言葉もそこそこに、成政は箒を助けるための手段を考える。

敵の目の前だというのに体を動かすことも忘れて、思考だけに全神経を集中させる。

 

今できる事は何か。

持ち札はどんなものなのか。

切れるカードは何なのか。

この場における最善策は。

 

「ダメだ、ダメだ、ダメだ......!」

 

このような状況にあっても、成政は冷静なままだった。

正確に敵の力量をはかり、自軍戦力を叩き出し、能力値を当てはめて脳内でシュミレートする。

何回も、何回も、何回も、何回も。

だが、勝てない。

1パーセント以下の薄い希望を見出せたとしても、そこから先は袋小路、敗北一直線。時間稼ぎもいいところだ。

援軍なんてハナから期待などして居ない。そんな御都合主義はありえないと切り捨てた。

 

「成政、まだか!」

「まだだ!」

「なるべく早く頼むぞ、こっちだって戦いっぱなしなんだ!」

 

成政には、勝てる未来が見えなかった。

 

 

◇◇◇

 

 

「なんだ、簡単な事じゃないか」

 

「誰かが犠牲になればいい」

 

「マネージャーなんていても居なくても変わらない」

 

「臨海学校の時もできたじゃないか」

 

「お前ならできる」

 

「お膳立ては裏方の仕事だろう」

 

すとん、と湧いた言葉が心に響く。

そうだ、誰かが犠牲になればいい。

1番この場から居なくなっても、困らない奴が。

 

 

......いや、そうじゃないだろう。

僕は死ねば、きっと誰かが悲しむ。多分。

それに、箒ちゃんには言いたいことは山ほどあるし、伝えてない事だって沢山ある。

それに、1発殴るまでは死んでも死に切れない。

誰も死なずに、全員が笑顔で居られるような結末を。

ご都合主義でも構わない、ハッピーエンドが一番に決まってる。誰も死なないで、またあの生活に戻りたい。

だったら、僕に何ができる。

このボロボロの打鉄と、へっぽこ三流操縦者に、何ができる。

石狩成政に、出来ることは......

 

 

◇◇◇

 

 

「......一夏、箒のこと、よろしく頼む」

「なんだよ急に」

「なに、ちょっと主人公を気取ってみるだけさ」

 

右手に銃を、左手に剣を。

弾はマガジン1つ分と、装填されていた1発の6発きり。刀は半ばでへし折れ、ナイフ程度の刀身が残るのみ。

全力には程遠く、もし万全であっても勝てる相手ではない、そのことは成政とて理解できている。

「......ほんと、貧乏くじばっかだよなぁ」

 

それでも、彼は行く。

 

「なんせ、好きになっちゃったんだもんなぁ!」

 

愛する彼女を、救うために。

 

視界がモノクロに切り替わり、流れる景色が平静のそれよりもゆっくり見える。だが、それは成政の体も同じ。

手負いのISを舐めたのか、機械獣が差し向けた触手はたった数本。

その慢心、その油断の隙間を、針に糸を通すかのような細い道を、成政は選びぬかなければならない。だが不思議と、緊張はしていなかった。

 

身体の中心を貫通するように伸ばされたソレはバレルロールで軸をずらしてかわす。

横薙ぎの一閃を、剣の腹で弾いて逸らす。

斜め上の袈裟懸けに落ち潰そうとするソレを、銃撃で弾き、駄目押しに銃で殴って無理やりどかす。

 

「届け」

 

足に巻きつこうと後ろから迫るものを撃つ。

 

「届け」

 

絞め殺そうと迫るものを斬りとばす。

 

「届け」

 

引き金を引いても何もおきなくなった銃を逆さに持ち、投げ飛ばして邪魔なものを払う。

 

「届け、届け、届け」

 

かいくぐって身体に巻きつかれた、だが問題ない。

ISを解除、勢いをそのままに空中に飛び出し、機体を再構成してかわす。

 

「邪魔だあああああああああ!」

 

彼女に巻きついていた触手を一刀両断する。

代償として、刀は根元から木っ端微塵に砕け散る。

だが、問題はない。

 

「届ええええええええええええ!」

 

手を伸ばす。

意識を失い、落ちる彼女へ手を伸ばす。

目をとじ、傷だらけになった彼女に手を伸ばす。

 

そして、

 

「届、いたっ!」

 

 

訓練機で、鈍足であるはずの打鉄。

 

しかし、搭乗者の気迫がそうさせたのか、機体は全力以上を以て応える。

 

「飛べ、打鉄えええええええぇ!」

 

数多の剣士が目指し、折れていった。

天才と言わしめた剣士、その一握りのみがたどり着くことのできた究極奥義、縮地。

機械の鎧の助けはあれど、石狩成政、そして打鉄の全力は、

 

「消え、たっ?!」

 

ISのハイパーセンサーがとらえきれない程の神速で、空を駆けた。

 

だが、その代償は。

 

「これまで、か。ありがとう、打鉄」

『シスーー......活動、限ーー......。本機は、役にーー、立て......』

「ああ、お疲れさま。いい、試合だった」

『活動、停............』

 

気がつけば立っていたビルの屋上、そこに抱え込んでいた箒を下ろしたところで、打鉄は光と消えた。

しかし、まだ機械獣は健在。

せっかくの獲物は逃がさないと、成政達に触手を差し向ける。

だが、ソレを防ぐすべはもう成政にはない。

 

「......最後に告白くらいはしときたかったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったら、さっさと告白しちまえよ、こんのヘタレ野郎め!」

 


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