インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜   作:通りすがる傭兵

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第2話

「ちょっとよろしくて?」

「はいはい何でしょう?」

成政に話しかけてきたのは、縦巻きの金髪ロールが特徴的な女子。

「まぁ!何ですのその返事は!男の分際でわたくしに話し掛けられるだけでも光栄なのですよ!」

「えーっと、気に障ったんなら謝るよ、えっと、どちら様で?」

「わたくしを知らない?この『セシリア・オルコット』を?イギリス代表候補生にして、入試首席のこのわたくしを!?」

めんどくさい、と成政は一瞬思ったものの、ことを荒立てるのは良くないから、と

「イギリス?それは遠くから、お疲れ様です」

へりくだった態度を取った。

成政はこんな態度の女性は大会や練習試合でよく見たし、怒ってチームに迷惑はかけられないので、自然とこのような態度が身についていた。

「まあ、このような極東の島国に、わたくしが足を運ぶ価値が有るのかは怪しいですが、国のためですもの」

「まあ、日本にも良いものあるから。それで、何の用でしたっけ?」

「こほん。どうせ今までISの事など知らなかったのでしょう?であれば、このエリートのわたくしが教えてさしあげてもよろしくってよ?」

「ほんとに、助かるよ。と言いたいところだけど、お断りするよ」

「何ですって、わたくしがせっかく手を差し伸べて差し上げましたのに!」

「それはもう一人の男子に言ってやってくれないかな、困ってたみたいだし」

セシリアの言葉を遮って、今は不在の一夏の席を示す成政。

納得はいかないものの、彼の断りは正当な理由でのもの。怒鳴り散らすのは英国淑女らしくないとセシリアは怒りを飲み込み、

「そう、ですわね。では、御機嫌よう」

「ごめんね、断っちゃって」

「...やはり、男は軟弱者ばかりですわね」

最後にセシリアが言った独り言は、成政に届くことはなかった。

 

 

 

「次はISの武装についてだが、その前にクラス代表を決めようと思う」

「千ふ、織斑先生、クラス代表って何ですか?」

一夏の質問に、千冬先生はクラスを見回しながら答えた。

「クラス代表というのは、簡単にいえば学級委員長のようなものだ。学校行事でクラスを纏めたり、クラス代表戦に出場したりと、まあクラスの顔だな。

自薦、推薦は問わん、誰かいないか?」

「はいはーい!織斑君がいいと思います!」

「同じく織斑君を推薦します!」

「えっ、ちょ、俺ぇ?!」

「ねえ、石狩さんはやらないの?」

前の喧騒を他人事のようにのんびり眺めていると、成政の隣、白髪の女子が彼にそう声をかけてきた。

「男子だから目立つだろうけど、あいにく僕には荷が重すぎるよ。それに、クラス代表戦があるなら、強い人がやった方が良い」

「うーん、そっか。負けたらみんなに迷惑かけちゃうしね」

他とは違い、落ち着いた性格のようだ。

前の方では、どうやら賑やかしとして一夏の名前が挙がっていた。不思議と成政の名前は上がらなかったが、そのまま特に反対意見もなく、「ちょっと待った、男子なら他にもいるだろ!俺は成政を推薦する!」

「ちょっとぉ?!」

「納得いきませんわ!」

バシン、と机と叩いて怒りを露わにするセシリアが怒鳴った。

「このような選出は認められませんわ!」

まあ当たり前だろうな、と思う成政。

ISの代表候補生、というのは彼はいまいち理解していないが、要するに全日本の選抜メンバーみたいなものだと考えていた。

何であれ、相当な努力を積んできたはず。

クラストップの実力を持つと自負してきたであろうセシリアが、ぽっと出のど素人に出番を取られるなど、怒らない理由がない。

ついでにこのまま自分の推薦を有耶無耶にしてくれれば、と思っていたのだが、

「下等な男がクラス代表なんて、このIS学園での良い恥じさらしですわ。私はにそんな屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

そう声を荒げるセシリア。ついカッとなって言ったかもしれない、とまだ成政の許容範囲だったが、

「実力からすればこのわたくしがなるのが必然!それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!大体! 文化として後進的な国で暮らさなければ行けないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で⋯⋯⋯⋯⋯」

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

成政の中で。何かが、切れるような音がした。

 

 

 

 

セシリアと一夏が口喧嘩をしている時、箒もまた、怒っていた。

思い人が馬鹿にされ、かつ戦友たる成政までもがそうだと言われている。

だからといってそこに日に油を注ぐような行為をするほど馬鹿ではない。そんな訳で上手く丸め込めそうな成政に仲裁を頼もうとして、

「.........」

辞めた。

理由は、成政がキレているからだ。

彼が怒ることはあまり無い。それ故に、その前兆は印象に残っている。

鉛筆をカツカツと叩きつけるのが彼が不機嫌な時の癖で、その速さでどれ程怒っているか大体わかる。

今の成政は、残像が見える程に激しく鉛筆を叩きつけている。つまり、そういうことだ。

その状態になった時、出来ることといえば、

「少し、いいか?」

「なに、箒さん」

「今すぐに耳を塞げ」

「えっ、どうして?」

「良いから塞げ。巻き込まれたくなかったらな」

こう隣に進言する位だ。

 

 

 

 

 

「どうした石狩、自薦か?」

二人の口喧嘩は、千冬先生の一言で一旦区切りとなった。

名前を呼ばれたもう一人の男子に目を向けると、真っ直ぐに手を挙げている。

「いえ、発言の許可を願います」

「許可しよう」

成政は席を立つと、一度深呼吸をして、二人の方を向いた。

「二人の言い分を、もう一度聞かせてもらえないかな?」

その顔は普段どおりで、会話に軽く割り込んでくるような調子だった。

その裏では、怒りを押し込めていたのだが、それに二人は気づかない。

「男子だからって、俺たちのこと馬鹿にしたんだぞ!それに日本の事まで、散々言いやがって」

「男なんて誰であろうと、最低な輩に決まってますわ。それに、このような素人にクラス代表を任せるわけにはまいりません、わたくしこそクラス代表にふさわしいと思いませんか!」

せめて相手の言い分や自分の非を認める気持ちが1ミリでも2人にあったなら、彼はそのままいつもの調子で場を納めただろう。しかし、そうはならなかった。

「...そうですか」

成政は、そう一言呟いた。

暫く黙っていたかと思うと、

「少し、黙れ」

成政が、豹変した。

 

 

 

 

 

 

物腰の柔らかい青年は消えた。

そこにいるのは、鬼そのものだった。

髪を逆立て、肩を怒らせたその姿に、女子生徒がが震え上がる。

立っていた二人が思わず一歩下がる程に、彼は圧力を伴っていた。

「クラス代表は強い奴がやる。文句があるなら、二人で思う存分戦ったらいい。

 

そんなくだらん、意味のない、クソみたいな言い争いに、部外者を巻き込むな。迷惑じゃ、他所でやれ!

そして二人はお互いの国も侮辱した。

それが、どう言うことか分かっとるんか!考えろ!」

大音声でそう見得を切った成政。

隣にいた白髪の子は哀れ目を回しているが、そんな事すら目に入っていない。

暫く肩で息をしていた成政が落ち着くと、いつもより低い声で、質問が飛ばした。

「先生、クラス代表は、強い奴がやる。それでいいんですよね?

であれば、

 

 

俺は、篠ノ之 箒を推薦します。

クラスで、彼女が一番強い、俺はそう思います」

「そうか。では、1週間後、放課後にに4人でクラス代表決定戦を行う。本来ならばすぐにでも行いたいが、織斑は専用機が支給されるのでな、それが届く1週間後にさせてもらう。

鷹月、教科書の、コアについて書かれている部分だ、音読しろ」

「は、はい!」

ISをISたらしめるコアは467個しか世界にない。専用機が与えられるとは、467個のうち1つを自由に扱える、ということになる。

というような内容の文章が読まれた後、織斑先生はクラスを見回すと、

「というように、専用機がいかに貴重で大切なものかわかったと思う。特に織斑はそれをわかって置くように。

そして大前提だが、ISは曲がりなりにも兵器だ。決してファッションと勘違いはするなよ!」

「「「はい!」」」

不満げな3人と巻き込まれた1人を置いて授業は進む。

「...あれ、なんで私がクラス代表に?」

 




なんでほかの人は読みやすくてうまいんでしょうか…

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