インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜   作:通りすがる傭兵

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大変長らくお待たせしました......

どうにも案が浮かばなくてですね、申し訳ない。
たけじんマンさんには感謝の極みです......
短いですけど。


第33話

 

 

今日も空が綺麗、と言えればよかったがあいにく曇りだ。だがそれもいい。

曇りといえばマイナスイメージが強いが、よく観察すれば時折光が透けて見える。その光の輝きを探すのが、間違い探しのようで意外と楽しい。

 

最近無性に字が書きたくなっている。記憶が確かなら小説を書く趣味もなく、勉強が好きでもなかったはずなんだが。そもそも記憶が確かではないので当てにならないか。

昨日の夕方やって来た謎の隣人は、養護教諭さんの話によればまだ目を覚まさないらしい。

話し相手くらい欲しかったんだが。

 

 

 

 

......そうなると暇だし、ちょっと脱走するか。

 

 

 

 

 

 

 

「すまない、少しいいだろうか」

 

武道場で鍛錬に励む箒に声をかけたのは、セイバー。汗を軽く拭いてから振り向くと、どうやら練習しに来たのではないらしい軽装だった。

 

「何か話か?」

「はい。ホウキの事についてお話が」

「......それは、寝ているもう1人の私についてか」

「はい」

「......解った。その代わり話を聞いてほしい友人を連れてくる。先に向かってくれ」

「分かりました、では失礼する」

 

セイバーが去ったのを見届けると、箒は荷物から携帯を取り出し、2人に電話をかける。

 

「すまない2人、ちょっといいだろうか」

 

それから数分後、保健室にて。

箒の横に座るセイバーの元に、3人が集まった。

 

「少し遅くなった」

「いえ、問題はありません」

 

座ってくださいと3人に促すと、言われる通りに3人は椅子に座る。

「ホウキと、カンザシ。そちらの2人はご存知ですが、そちらは」

「ん、ああ、俺?」

 

他の2人は一応名前だけ知っていたので、残り1人、タンクトップに黄色い安全ヘルメットと、IS学園にしては奇妙ないでたちの男に名前を問うた。

 

「俺は巴 武蔵っていうんだ、よろしくな」

「はい、私の事はセイバーと呼んでください。真名は訳あって伏せさせて貰います」

「わかった」

 

一通りの自己紹介を終え、少しの空白が訪れる。

最初に口を開いたのは武蔵だ。

 

「話では聞いちゃいたが、本当にそっくりだな」

「うん、双子みたい......」

「まあ実際は同じ人物らしい、と聞いた」

「あいつ辺りが好きそうな話だな」

「で、本題はどうなのだ、セイバーさん」

 

脱線しそうになったところで、箒が本題に斬り込む。セイバーは一つ息を吐いて、

 

「......ホウキ、彼女の戦い方を見ていて、どうでしたか」

「どう、とは」

「貴方の戦い方を見ている限り、細部は違えど動きは古武術、篠ノ之流が元になっています。

ですが、余りにも2人の動きは違いすぎる。

その印象を、教えていただきたい」

 

不可思議な問いに、考え込む箒。

暫くして、答えが出たのか口を開いた。

 

「なんというか、勝ち急いでいる、というか。

焦りが見て取れる感じだったし、集中力を欠いていたな。同じ篠ノ之流を修めているとは、一瞬わからなかった」

 

その通りだと頷いてから、セイバーは一言。

「はい、彼女は焦っている。

普段から彼女の勝ちに対する姿勢は貪欲ですが、あくまで一部では余裕を持っていた。

それに、戦い自体を楽しんでもいました。

そう聞いてはいますが、今はその余裕が感じられないのです」

「......スランプ、とかじゃねえのか?」

 

深刻そうに俯くセイバーを見て、理由を察してか黙り込む3人。

聞いた話ですが、と前置きして、セイバーが口を開いた。

 

「......友人が、死にました。

親しい間柄で、練習によく付き合う男でした。

彼が一つ上でしたが、ISとやらを動かしたせいで同じ組に所属することとなったと聞いています。

ですが、彼はホウキ、彼女にどうやら片思いしていたらしいのです。

彼が消えた後、彼女はそれを聞いて何を思ったか、想像に難く無いでしょう。

 

 

 

 

 

 

まあ、この通り生きていたわけですが」

 

がしゃり、とカーテンを引く。

箒の隣、つまり成政があてがわれたベッドがあるのだが、そこにあったのは空のベッド。

 

「「「「えっ?!」」」」

 

思わず空いていた窓から身を乗り出す4人。

もちろん下に彼がいるはずもない。

反射的に簪は横を見ると、カーテンとシーツを束ねてロープにしたものが窓からぶら下がっている。つまり映画よろしくこれをつたって脱走したという訳らしい。

「アグレッシブなこったな」

「ハリウッドみたい」

「馬鹿だな」

 

三者三様な感想を述べる中、セイバーが疑わしげにベッドの端に立てかけられた杖を見ていたが、まあいいかと成政のベッドに腰掛ける。

 

「彼は脚が悪い、探さなくてもそのうち見つかるでしょう」

「いや、探さなくていいのか?!」

「彼の自由奔放さは折り紙つきですし」

「しかし、病人じゃ無いのか?」

「生まれてこのかた病気はした事ないとか」

「......あんまり、関係ない......」

「......過労では、しょっちゅう倒れていたがな」

「そう、彼は本当に......ホウキ?!」

 

ぱさり、と布を払う音がした方をむけば、よろよろと箒がベッドから身を起こしていた。

「......しかし、私が2人か。意味がわからないが、姉さんの仕業だろう?」

「それは、ちょっと違うが......」

 

かくかくしかじか、と箒にセイバーが現状を説明している間に、この世界の箒が2人にとある提案をしていた。

 

「私の悩み、と言ってもそちらの私だが。

私達で解決できないだろうか......」

「いや、心の悩みとかは俺は専門外なんだが」

「......あくまで、ただの他人」

「それでも、だ。

 

 

 

 

ぶっちゃけよく一緒に練習に付き合っているとか明らかに気があるだろう成政という奴」

「「確かに」」

 

親切心がないわけではないのだが、結局他人の恋路が気になるだけである。


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