インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜   作:通りすがる傭兵

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ちょこっと展開が早すぎる......?気がする。

主にスパロボキャラが掴めていないので「オメーそこ違うやんけ!」と言う部分あればご指摘願います


第31話

 

 

 

 

 

金属同士がぶつかり合う甲高い音が響く。

謎の赤いISが振るう人間サイズの大斧を、その少女、セイバーは弾いてみせた。

それどころか、弾かれた反動を利用して回転斬りを仕掛け、あわよくば隙を狙ってみせるほどの余裕と余力まで残している。

 

(なかなか、これは手強いな)

 

思わず赤いISのパイロットは歯噛みする。生身とIS、それだけの差があるにも関わらずに自身の斧を弾く力を持ち合わせ、さらに怯まずに勝負しようという気概が構えから溢れている。

武術経験者であるパイロットからすれば、セイバーの構えは無骨。しかし確かな経験に裏打ちされ、研ぎ澄まされたその剣術はたとえ初見の相手であろうと引けを取らない。

 

「どうした、こちらから行くぞ」

 

考え事をして開いた一瞬の空白に合わせるようにセイバーが距離を詰め、足を狙っての薙ぎ払いを飛行して避け、しばらくの思考時間を確保する。

 

『しかし、彼女のISは一体。騎士のよう、と言えばイギリスだが、そんな噂は聞いてはいないし』

「隙だらけだな、たかが空中でやり過ごせると思ったか」

 

思考の海に沈もうとした彼女の目の前にセイバーが突如としてあらわれ、袈裟懸けに剣を振り下ろす。

ギャリギャリと音を立ててバリアが紫電を発し、SEが眼を見張るほどに減少する。

地上に踏みとどまり続け、自分が飛べないと無意識的に思っていた思考が甘いとセイバーは言外に告げているようで、

 

『成る程、まだ私は未熟なようだ』

「これで終わりではないだろう」

 

ニヤリと笑って挑発してみせるセイバーを見、仮面の奥で彼女は釣られて口角が上がる。

 

『楽しませてくれる......!』

 

そして、改めて両腕の斧を握り直した。

 

 

「本当に箒みたいだな」

 

ラウラと剣を交える、赤い機体のパイロット。

ハイパーセンサーを活用してその女性の顔を覗き見れば、見慣れた箒だと判断できる。

もしかすればの可能性もあるが、1番可能性が高いとすればアレだろうとあたりをつけた甲児は4人の誤解を解くべく、

 

「来い、マジンガー!」

 

話し合い(物理)を敢行する事にした。

大音声を響き渡らせ、腕を天高く突き上げる。

 

 

 

ちょうど同じ頃、IS学園寮の廊下では、

 

「「右手上げて左手あげて右手下げないで左手下げる!......なんだ鏡か」」

「「んなわけないでしょうが!」」

 

2人の一夏がネタをかまし、これまた2人の鈴がツッコミを入れていた。

 

「だいたいあんた、何者よ、一夏みたいな顔して」

「いやいや俺だから」

「そんなオレオレ詐欺みたいなのに引っかからないわよ!顔洗って出直してきなさい一夏もどき!」

 

いつの間にか学園寮の廊下に佇んでいた一夏たちは、とりあえず職員室に向かおうとしたところ、誰かにぶつかってしまう。

謝ろうとその人に手を差し出そうとした結果、何故か目の前に同じ顔があり、お約束のようなネタを振ってから今に至る。

 

「そういうあんたの方が嘘くさいのよ!どうせ酢豚にパイナップル入れないくせに」

「酢豚にパイナップルは常識でしょ」

「......」

「「こんなところに同士が!」」

 

何故かハッスルしだした鈴同士が抱きついているが、特に記述するようなこともないので省略する。どことは言わないがないから書けないのだ。

他のメンバーも自分同士でまじまじと見つめあっていたり、自分しか知らないようなことを聞いて答えが返ってきて驚いたりとショックを受けていた。

それはさておき、

 

「......ハイパーセンサーで見ても俺だなぁ」

「そうだな。どうなってるんだこれ」

「僕男装しようか?こうも同じだと紛らわしいよ」

「へ、部屋にあるからついてきて。サイズ合うかなぁ」

「唐揚げにレモンかける?」

「かける」

「よろしい、ならば戦争よ」

「ああん、やってみなさいよ!」

「一夏が2人......これがエクシーズ」

 

ラウラ以外同一人物が2人もいるせいで紛らわしいことになり始めた一夏たち一行。

「よし、何かわかりやすいトレードマークつけよう」

 

どうやらよそ者らしい、いつの間にかここにいた方の一夏の提案によってどうにか判別がつくようになった。

片方の一夏は袖を捲り上げて、

シャルロットはこちらの世界のシャルロットが持っていたズボンに履き替え男装モードに、

ラウラは髪の長さが違うらしく何もせず、

鈴は迷ったら唐揚げにレモンをかけるかどうかを聞く事で判別する事になった。

 

「「あたしの扱いだけ適当すぎるでしょ!」」

 

かけるほうが元からここにいた鈴である。

ちなみにだが、作者はかける派だ。

 

「それで、本題だ。こいつの顔に見覚えは」

 

本来の目的を思い出し、一夏に成政の写真、臨海学校の時ビーチバレーの審判をしていた時の一枚、をみせる一夏。差し出されたスマホを受け取る一夏の後ろから覗き込む元いたらしいシャルロット達。

 

「これ臨海学校の時の人じゃない?髪型はだいぶ違うけど目つきとかそっくりだもん」

「ちょっとしか見てないからな、あんまり覚えてないから自信ないぞ」

「多分そうじゃない?シャルロットの言う通り

目元とか、顔つきとかそっくりだもの」

「ほ、本当か?!今どこに!」

 

一夏に詰め寄る一夏。はたから見れば腐っている人が喜びそうな光景だが、今は夏休みである。

たじろいでしまった一夏が多分と前置きしてから、

 

「ほ、保健室じゃないか......?」

「みんな行くぞ!」

「ガツンと言ってやるんだから!」

「お仕置きでもしなければな」

「みんな程々にね、あはは」

 

答えを聞いた途端、勝手知ったる自分の庭だと一夏達はベランダから飛び降り、空中をショートカットして校舎玄関まで飛んで行ってしまった。

 

「......そんなに、大切な人だったのか」

「どうする一夏、ついてく?」

「そうだな、俺たちも行こう。セシリアとかみんなにも声かけて行こうぜ」

 

こちらは寄り道しながら、のんびりと向かう事になった。

 

「いやー、あっちの俺は彼女持ちかぁ」

「それは、ないんじゃないかなぁ......」

(告白の文言でも聞きに行こうかしら)

 

致命的な勘違いをされていたが。

 

 

 

「私は、強くならねばいかんのだ、この程度の敵などっ」

「とりあえず落ち着いてくれ!」

 

高速の踏み込みからの切り上げを腕を交差させる事で辛うじてガードするマジンガー。

そのままパンチを繰り出し、紅椿にボディブローを決めるものの、箒の気炎は衰えを見せず、今まで以上に激しく甲児を攻め立てる。

(千冬よりは戦いが上手い訳じゃないが、機体性能がここまで高いとやりにくい)

 

この世界に来てすぐに世界最強に勝った甲児とはいえ、その時乗っていたのは訓練機の打鉄。今の箒が乗っている紅椿とは性能は雲泥の差、圧倒的に紅椿が上なのだ。

そして、箒を無意識的に傷つけたくないと攻撃を控えているのもあるが、

(ラウラは......無事、のようだな。あのセイバーとか言う奴は信頼できるみたいだし)

 

ラウラをかばっているのがあるだろう。

甲児が乱入する直前にノックアウトされてしまったラウラを放っては置けず、かといって話を聞きそうにない紅椿に乗っている箒を放っておくのもどうかと悩んでいたところに、

 

「どうやらただ事ではないらしいですね。ここは一時休戦はどうでしょうか」

 

と申し出た金髪の子ことセイバーにより、ラウラを戦いの余波から守りつつピットまで運ぶこととなったのだ。

なるべく被害が出ないように、そして攻撃の余波も出ないようにと回避でもなく防御に徹していたのはそれが理由なのだ。

横目で確認すれば、指示した通りピットの扉をあけてラウラを担ぎ込んでいるセイバーがいる。それならば、現在、アリーナにいるのは2人のみ。

 

「よし、こっからは、本気だっ!」

「ぜやああああああああ!」

 

斬りかかってきた紅椿の刃を半身になることでかわしてがら空きになった胴体に、

 

「ロケットォ、アッパー!」

 

渾身の一撃を叩き込む。

浮いた胴体にもう一撃追い討ちをかけ、回し蹴りで弾き飛ばす。起き上がって来たところでかかってこいと指を動かしてみせる。

 

「っ、まだまだぁ!」

「そうだ、それでいい!」

 

いろいろ溜め込んでいるのなら、体を動かしてスッキリさせてしまえばいい。それでダメならぶん殴れ。

博士らしからぬ甲児の物理で解決しようぜ、と言うこの考え方は、どこぞの熱血バカのが移ったせいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「成政ぁ!」

 

自動ドアが開く時間も惜しいと無理やり手動でこじ開けると、一夏達は保健室に踏み入った。

部屋の1番奥、ちょくちょく皆が世話になった見晴らしのよいベッドの部分だけにカーテンがかかっており、誰がいるかをうかがうことはできない。

もし違うのだったら謝ればいいとなかば投げやりな気持ちで一夏はカーテンを引いた。

そこにいたのは、

 

「......」

 

無言で空を見上げ続ける肩まで伸びる黒髪を下げた、瘦せ細り、目に大きい隈を作っているどこか見覚えのある人物だった。

 

「......今日は一段と騒がしいな、織斑さん。ところで名前を名乗ったつもりはないんだけどな」

 

散々聞いたよく通る低温ではなく、ガラガラと金属同士を擦りあわせるようなかすれ声ではあったが、答えを返してくれた。もっとも、その発言は妙に他人行儀だったが。

 

「いや、俺だよ俺、一夏だよ」

「そんな事は分かっている。

ひとりにしてくれないか、静かに過ごしていたいんだ」

「ちょっと、話くらい聞きなさいよ!」

「大声はお腹いっぱいだよ、帰ってくれないかな、鈴音さん」

「ちょっと成政くん、そんなつっけんどんな態度やめてよ、せっかく来て......」

「折角?親切の押し売りか何かが趣味なのかい、ここのデュノアさんは」

「なりさん!冗談も休み休み」

 

 

聞き分けのないような子供にでも言い聞かせるような様子で、表面上は優しくそう告げる。

知っている人物のはずなのに、他人に話かけているような違和感。そして突き放すような態度。

思わずラウラが声を荒げるが、シャルロットは手でそれを制した。

 

「ねえ、成政くん。

自己紹介、してくれるかな......」

 

震えるような声で、シャルロットは問うた。

「あまり、無理はしたくないんだけどね。こほっ」

 

軽く咳をしながら、思い出すように虚空を見つめた後、彼は話し始めた。

 

「僕の名前は石狩成政、年は17。

7月7日、IS学園の臨海学校の折に拾われたしがない漂流者だよ。

所々記憶が抜けててね、あやふやなところも多いんだ、今はこれくらいしかできないね」

 

 

成政は以前とは比べものにならないような、枯れ木のように細い手で、はにかみながら頭をかいてみせた。

 


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