インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜 作:通りすがる傭兵
ぼちぼちコラボの前振りを......と。
「返すわこれ。何をどうしてもISってわかんねーわ」
昼食も終わり、手持ち無沙汰にしていた専用機組にポイと待機状態のISを興味が失せたと投げ渡す慎二。
「......なんか変なことしてないでしょうね」
「しねえよ」
顰めっ面で睨み返す鈴を適当にあしらったところで、慎二が切り返して聞く。
「で、どうせあいつの場所もわからないだろうし、白旗でもあげてるんだろ?」
「こいつ......!」
ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべ、図星と察すると腹を抱えて笑いだした。
「はっはははは、ははははははっ!」
「何がおかしいのよ」
「いやあ別に、そんな心配無用だって事だよ」
「やっぱ性格悪いな慎二......」
「士郎も僕の性格が悪いって言うの、その通りですけど?」
「自覚してるんなら直せよな」
「だが断る」
「「だはははははは!」」
ひとしきり漫才をしたあと、慎二はさも当然だと言うように、軽く告げる。
「IS学園に剣道部が存在する限り死なないだろあいつ。最悪秋大会には戻ってくるさ」
「微妙に説得力があるけど納得いかないっ!」
「そうだワカメもどき!なりさんを心配しないとはどういう了見だ!」
「ワカメもどきは余計だろ!」
なぜかラウラまで割り込んできて、2対1での取っ組み合いが始まろうとしたが、
「し ず か に し て く れ る か し ら ?」
「「「ハイ」」」
凛が手に持ったマグカップを握り潰しながら言った一言で黙らされた。
「まず、ここから話すことは。常識の外、場合によっては血みどろの裏の仕事に関わることになるわ。その覚悟があるならサインして」
人数分のコピー用紙にプリントされた誓約書。それが人数分差し出される。
各々が内容を把握しよう読み始めた時、ペンを取る音がした。
「はい」
1番先に突き出したのは、なんとマヒロだった。
「俺が成政を殺した1番の原因だ。だったら、責任は取る」
突き出された誓約書に漏れがないか確認したあと、紙は伏せて机の上に置かれた。
若干不愉快な顔になった凛が一堂を見渡す。
「できた」
「はいこれ」
「......」
「覚悟は、できてる」
「当然ですわね」
6人全員、誓約書にサインをした。
ならば、覚悟はできているのねと前置きすると、凛は少し笑ってこう言った。
「あなたたち、魔術は信じているかしら?」
「「「「は?」」」」
(ですよねー)
「魔術?魔法じゃないのか」
「魔法は科学技術で再現できないもの、魔術はできるかもしれないもの、かしらね。
実際に見たら納得できるんじゃないかしら」
そう凛は言うと、指を鉄砲の形にして、あっさりと指先に火をつける。
「こんな感じにね。他にも色々できるけど」
「......ただのマジックではないのか?」
疑り深くそんなことを言いはじめるラウラ。
化学の申し子と言わんばかりに生まれた時から特殊な場所に籍を置いたラウラが一番疑り深いのは当たり前だろう。
逆に、日本人2人とイギリス人は、
「すげー、もう一回見せてくれ!」
「へー、凄いこともあるんだねー」
「これは興味深いですわね......」
「あんたたち適応早すぎよ、もっと疑うとか何かしないとこっちがアホみたいじゃない」
すんなり納得していた。
「あの、マヒロはともかく一夏とセシリアはすごいね。僕なんてもう何が何だか......」
「いや、幽霊がいるなら魔術もあるだろ」
「そうですわね、一夏さんと同じですわ」
「ゆゆゆゆ幽霊?!いるの!?」
「いや、夏になれば特集番組組まれてるじゃないか」
「それほとんど合成だから。俺も作った動画あったし」
「そうなのか?!」
「存在するしないに関わらず、イギリスでは有効的な存在として受け入れられています。
それに、いた方がロマンチックでしょう?」
「なるほど、セシリアらしいね」
実際、イギリスではパブやホテルに幽霊用の席があったりと、身近な存在として受け入れられていたりする。
「それ、俺にも使えないか?」
恐る恐る一夏が聞いた。
魔法が使えるというのは、誰しも少しは憧れるものだろう。後ろではシャルルが目をキラキラさせて凛の方を向いてはいたが、
「......無理ね。才能がないと思うわ」
「あー、IS適正値みたいな奴?」
「あいえすなんちゃらはわからないけど、魔術回路がないと魔術は使えない。
ちなみに言っておくけど慎二もないから一般人と変わりないわよ?」
「けっ、僕にはこの頭があるので大丈夫ですー!」
「そうか、使えないのかぁ......」
「魔法少女とか憧れてたのに......」
「い、意外とロマンチストなのだな」
使えないと言われて肩を落とす2人。特にシャルロットの願望がちょっぴりメルヘンだったのだが、その願いは叶わない方が良いのである。
「話を戻すけど、人探しの魔術だって存在するわ。幸い条件も揃ってるし、今すぐできる」
「本当か、じゃあ今すぐやってくれ!」
「でも、本当にいいの?」
「なんでだ?」
凛の言いたいことがわからないのか、首をかしげる一夏。
それを見て凛はブツブツと何かをつぶやいた後、まっすぐに目を見て告げる。
「この魔術なら、死体であっても見つけられる。今すぐにそこに行ったとして、石狩が死体の可能性もないわけじゃない。
それでもいいの?」
問うたのは、死に相対できる覚悟があるか。
誓約書に書いたとはいえ、怖気ついてもおかしくはないから、と凛なりの気遣いだったのだが、
「構わない、頼む」
一夏は、きっぱりとそう答えた。
それを見て呆れたように頭を抱えるが、諦めて素直に用意をする。
「じゃ、始めるわよ」
「一応説明すると、使うのは地図と宝石と縄。
今からするのは人探しというより、モノ探しをする感じね」
指先に縄をくくり、その先に宝石をつけた凛がみんなに見せつけるように説明する。
それを振り子のように下げると、世界地図を机に広げる。
「私は集中して目を瞑るから、宝石が大きく振れたら教えてちょうだい。
どんどん地図を細かいものにして、精度を上げてくから」
「わかった」
目を瞑り、何かをブツブツと唱えだす凛。
暫くしないうちに締め切った室内のはずなのに風が吹き始め、髪がばさりばさりと揺れる。
しかし世界地図の上をゆっくりと撫でるように動く振り子は、微動だにしない。
時間が経つにつれて深くなる凛の眉間の皺、次第に量が増えていく、頬を伝う汗。
一夏を始め、魔術に理解の無いものは何が起きているかはわからない。
ただ、両手を組んで成功してくれと祈る他ない。
その振り子が、突然触れ始める。
輪の中心は、日本。
それを士郎が告げると、凛はゆっくりと目を開く。そして、
「......やばい、ミスった」
「ミスったってどう言うことだ遠坂?!」
「よりにもよってこんなところでうっかりかよ?!」
「姉さん最低です」
「爆発オチじゃないけど、爆発オチじゃないけどーサイテー!」
その瞬間、衛宮家は光に包まれた。
「シロー、そろそろ昼食をっ?!」
「っ!これは......」
「そこからしばらく経ったわけで、状況はとーてーもまずいこととなっております」
「全くもってその通りだなこの野郎!」
謎の光と同時、日本のどこかに来てしまったらしい一夏や士郎、凛たちなのだが、もれなく
はぐれてしまったのだ。
そう判断したのは、日本語の看板と話し声、これだけのパーツが揃って居れば、そう考えるのも容易い。
この場にいるのはマヒロ、簪、慎二の3人。
そして、冒頭のマヒロの愚痴に戻る。
3人に何かあったわけでもないのだが、ちょうど話し合おうと入った大型デパートにテロリストがやって来てしまえば話は別だ。
いち早くそれを察した簪が指示を出して、現在進行形で女子トイレに隠れている3人なのだが、
「じぃーーー」
「......なんだよ、出てけって?」
「じぃーー」
「......はっきり言えって」
「じぃーーーーーーーー」
「やめてやれ簪、緊急事態だ」
「......わかった」
簪が、場違いな慎二ではなく、何故かマヒロを睨みつけていたのは蛇足だろう。