インフィニット・ストラトス 〜マネージャーですが何か?〜   作:通りすがる傭兵

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今回の話はちょっと短め。
つまらんシーンは筆が乗りませんねぇ......。

みなさん夏バテには気をつけましょうねー。


第16話

 

 

 

「来月、学年別タッグトーナメントが開催される。ここに登録用紙を置いておくので、お互いの署名の上、来週までに私か山田先生に提出する様に、以上だ」

「起立、礼」

「「「ありがとうございました」」」

 

学年別タッグトーナメント。

一学期のIS操作技術、実践能力を見るため、と銘打たれた、実際は将来有望な生徒を見たいと外が言ったので設けられたイベント。

優勝者には、クラス対抗戦の事故で有耶無耶になった半年間デザート無料のフリーパスが配られる。

優勝商品を目標にするもの、自身の実力を試そうとするもの、それ以外の目標を掲げるもの、興味を持たないもの、もしくは自社商品の売り込みをしようとするもの、理由もやる気も皆様々だ。成政とてこのイベント、スルーするつもりなどない。

 

「さて、と」

 

誰をマネージメントするものか、とイベントで舞い上がるクラスメイトを見回す。

戦う姿も、話したこともないクラスメイトもいる、がそれがいい。

「どうしたものかねー」

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、成政。タッグトーナメントはどうするんだ?俺はシャルと組もうと思ってるんだが」

「しょーじき、勝つんなら専用機持ちの誰か、あと剣道部の誰か」

「仲良い人の方が気が楽だもんな」

「それもあるが、データが揃っていると言うのもある。なるべく同じ組がいいが、文句は言えない」

 

いつもの如く男子2人は相席で顔をつきあわせながら飯を食っている。

今日の日替わりはボルシチというロシアの料理らしいのだが、

 

「辛くない、訴えるぞロシア......!」

「赤いイコール辛い訳じゃないだろ」

 

とてつもなくどうでもいい事を言いながらであるが、箸を休めることはない。要するに意外といける、という事だ。

「うむ、懐かしきロシアの味よ......」

「アキヤマが言うと説得力があるな、日本人だけど」

「赤といえば井伊の赤備えではないか?」

「そこは真田というべきだろう左衛門座」

「赤......赤といえばイタリアの撃墜王レッドバロンことManfred Albrecht Freiherr von Richthofenではないか?」

「「「それだ!」」」

「なぜそこだけネイティヴなのだ。全く訳が分からんぞ」

 

 

隣席で騒ぐ制服をコスプレチックに改造した、もう見慣れてしまった女子の集団を眺めながら、世間話に興ずる。

 

「改造自由とはいえフリーダムすぎないかあれ」

「......僕も改造しようかな。これ動きにくいし」

 

この話は後々波乱を呼ぶことになるのだが、今はまだそれを誰も知らない。

 

「ところで、セシリアや凰とかも居るのにどうしてシャルルと組もうと思ったんだ?」

「シャルルの戦闘スタイルは、相手を牽制してなるべく中距離を保つタイプだろ?シャルが怯ませたうちに、俺が白式で一撃、って訳だ。それに、俺がヘマしてもカバーしてくれそうだし、何より」

「何より?」

 

一夏は一旦言葉を切ると、近くに誰もいないことを確認してから、小声で言葉を続けた。

 

「シャルのことがバレないように、って事。成政の言う通りにはしたけど、その前にばれちゃおしまいだからな」

「......それもそうか」

 

4月に会ったときとは違い、少しだけそういった細かい事にも頭が回るようになってきた一夏、その成長に思わず驚く成政だったが、なんとなく負けた気がするので顔には出さなかった。

シャルルの問題については6割くらいはケリがついていた。後は本人ともう1人の許可さえ取れれば丸く収まる、と言うところまで来ていて、あとはタッグマッチトーナメントに合わせてくるその関係者に最終確認を通して、終わり。

と言う訳なので、タッグマッチが終わるまでシャルルが女という事実を漏らす訳にはいかない。

タッグともなれば顔を合わす事も増え、成政のように部屋に押しかける可能性もなくはないだろう。少しでも秘密が漏れる可能性を減らそうと言う一夏のファインプレーだ。

「で、これから、の話だったな。つまり練習メニューの事だろ」

「ああ、それでなんだが」

「悪い、今回ばかりは出来ない」

「えっ」

 

いつもなら本人が断っても押し付けがましく練習に付き合うような成政だが、今回は無理 、とはっきりと告げた。

驚く一夏を見て、理由を簡単に告げる。

 

「今回はタッグマッチなんだ。自分も1選手として出ないといけないし、一夏たちと当たるとも限らない。そんな相手と一緒に練習して手の内を明かすほど馬鹿じゃないし、何よりタッグのもう1人に失礼だろう」

「あー、それもそうか」

「それに、本当ならマネージャーに頼りすぎもどうかと思うぞ、自分で頑張れ」

「わかった、ごめんな成政」

「気にするな」

 

ごちそうさま、とちゃんと手を合わせてから食器を片付けに行く2人、礼儀は欠かしてはならないと常日頃から成政は言っているし、剣道では挨拶などの礼儀を重視するスポーツだ、必然的にそうなる。

昼休みもまだ半ば、やる事もないのでタッグの相手を探しに教室に戻った成政だが、

 

「私か?残念だが同じ剣道部の四十院さんと組むのでな、すまない」

「わたくしは2組の凰さんと組みますわ。勝てる勝負を捨てる気はありませんの」

 

専用機持ちと親しい箒はもうすでに先約で埋まっていた。一縷の望みをかけ元ルームメイトの本音に声をかけに行ったのだが、

 

「私はかんちゃんと組むから〜」

「さいですか」

 

あえなく撃沈。

一層の事適当に行き当たりばったりで、と考え始めたところで、成政はとあることを思い出した。

目的の席へ向かうと、その席の主は成政の読めない言葉がびっしりと書かれた本を読みながら昼食をとっていた。しかし上の空のようで内容は頭に入っていないようで、ただページをめくっていた、の方が正しいだろう。

彼はその本をひょいと掴んで内容を見る。予備知識もないので読めるはずもない。

「......なんだ」

「別に、ただ、少しお願いがありまして」

 

本を取られてなのか、邪魔されてなのか不満げな表情を見せる彼女に、成政は登録用紙とペンを手渡す。

 

「今度のタッグマッチ、僕と組んでくれませんか?

 

 

 

 

 

......ラウラ・ボーデヴィッヒさん?」

「まず、貴様に私と組する資格があるのか?それを確かめさせて貰おうか」

 

もそもそとしたレーションを口の中に押し込んでから、銀髪の少女は、不満げにそう告げた。

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、

 

「これはどうかな」

「ふん、こうすればいい」

 

自室にて机を挟んで睨みあうラウラと成政。

互いに火花を散らしあう2人の表情は真剣そのもの、誰にも邪魔はさせないと言わせるような雰囲気は謎のオーラを纏い、薄暗い部屋がそれを加速させていた。

そして、

 

「チェックメイト、私の勝ちだ」

「だぁー、負けたー」

 

黒の女王が白の王を盤の端に追い詰め、戦争が終わる。勝ったのは黒、ラウラの陣営だ。

 

「いやー、楽しい試合だったよ」

「こんなゲームの何が面白いのか、私にはわからんな」

 

不満げに盤と駒を箱にしまうラウラだが、簡単とは言えないチェスのルールを理解し、戦略も立てられているということは相当やり込んでいることだろう。

 

「まあ、親交を深めるのも済んだところで」

 

成政は虚空からホワイトボード、ペン、資料などを手慣れた様子で取り出し、ラウラにも手渡す。

ISの収納領域の無駄遣い、とも言われそうだが、本人はISを便利グッズとしか思っていないため、最低限の武装以外にも日用品やこういったよく使うものなどを詰め込んでいる。専用機持ちならではの特権だが、成政以外はしていない。

 

さて、と前置きして、大きく深呼吸をする。

 

「僕がボーデヴィッヒさんの相手にふさわしい理由、それを説明しましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タッグマッチトーナメント、その1回戦第1試合、専用機コンビだったセシリア・凰コンビとの試合を僅か3分で終わらせたマヒロが次の対戦相手は、とトーナメント表を見回していた。

対戦表発表直後の前評判では代表候補かつ専用機持ちの2人の圧勝、だったのだが、

 

「この俺も本気を出さざるを得ない......!」

 

マヒロの悪ノリもとい本気モード、そしてそれをどこからか聞きつけた蔵王工業が変態ぶりを見せつけ、連携なぞなんぼのもんじゃい、とアリーナの空ごと焼き払い、

 

「味方だったはずなのに、ずっと背中に死の気配、っていうのかな。そういうものが張り付いてる気がしていて、とてもじゃないけど生きた心地がしなかったです。代表の先輩のしごきの方が10倍マシでした......」

カナダ代表候補生のパートナーにそう言わしめるほどの圧倒的な火力を見せつけて決着となった。

 

そして、電光掲示板が示すのは、

 

『1回戦第2試合、

織斑一夏 シャルル・デュノア ペア

vs

石狩成政 ラウラ・ボーデヴィッヒ ペア』

 

「やっぱり、.........違うわなー」

 

勝ち上がった方が自分達と戦う訳になる。だと言うのに、マヒロは焦る事もなく、能天気に構えていた。

 

「神上さん、こっちこっち」

「あー、ごめんねー」

 

ペアの子に声を掛けられ、呼ばれた方へ走って行くマヒロ。

「さて、ズレている以上、どう転ぶかな?」

 

 


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